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「ROBO-ONE14 in ROBO_JAPAN 2008」レポート【予選編】


 2008年10月11日(土)~12日(日)の日程で、二足歩行ロボットによる格闘大会「ROBO-ONE」の第14回大会が、神奈川県横浜市のパシフィコ横浜で行なわれた「ROBO_JAPAN 2008」内で開催された。11日(土)には予選デモンストレーションと宇宙大会選抜競技、12日(日)には決勝トーナメントが行なわれ、総合優勝と重量級優勝が「OmniZero.7」(製作:前田武志。以下同じ)、軽量級優勝が「Cavalier」(えまのん)に決まり、それぞれ100万円の賞金と、総合優勝の「OmniZero.7」にチャンピオンベルトが贈られた。まずはその予選の模様をお伝えする。


予選

 ROBO-ONEは格闘競技会でありながら、予選は1機ずつ2分間のデモンストレーションを行ない、その内容に審査員が得点をつけることで行なわれる。その予選に出るためには、参加機体が指定された動作を行ない、一定の能力を持っていることを証明する「参加資格審査」をクリアしなければならない。いわば「予備予選」である。

 今大会の参加資格審査は「自律動作でスロープを上り、フラット部分を越えて下りる」というもの。前回大会と似ているが、前回は20cmで1cmの上下(5%の坂)だったが、今回は20cmで2cm(10%の坂)とほぼ倍の角度になった。前回でも多くの「予備予選落ち」が発生していたが、今回はさらにハードルが高くなったわけだ。

 案の定、この参加資格審査に苦労している参加者が多かった。大会開始前に練習している光景を見ていると、滑って上れない機体が一番多く、次に目立ったのが下り坂から平坦に戻る部分で倒れてしまう機体。全体の半分もクリアしていない印象を受けた。委員会側に話を聞いてみると、ほぼ全ての機体が本来やってほしい「傾きを検知して制御」ではなく、モーションで足首の角度を決めて、歩数を決めて歩く「決め打ち」を行なっていたようで、練習フィールドとのすべり具合の違いなど、外乱の影響をモロに受けてしまっていたようだ。

 あまりにクリア選手が少ない惨状に、ROBO-ONE委員会は急遽スロープを上りきればOKという救済措置を出した。しかも大型機は参加機体数の関係で坂を登ることができなくても、予選のリングに立ち、審査を受けることが認められた。当日にルールが変わるのはROBO-ONEのお家芸のようなものだが、スロープを攻略するために多くの時間を費やし、予選のデモンストレーションのほうに後悔が残っていた一部の参加者や、軽量級の機体でスロープを登ることができなかった参加者たちにとっては、納得しにくいルール変更だったかもしれない。


今大会の参加資格審査で使われたスロープ 【動画】予選開始直前。「だんだだん」(ミステル・タマオ)の参加資格審査は「アウト」の判定。だが、その後救済措置で予選に登場

【動画】「メカボンBRX」(みすみロボット研究所)のスロープ挑戦 【動画】「ケルビム グランデ」(ロボットフォース)。スロープは上れなかったが、重量級は予選デモを行なうことができた

 予選は自分のロボットを動かしながら、2分間でその長所をマイクアピールとともに審査員にアピールする。内容は自由だが、自律動作である必要があり、大会ごとに指定された「規定演技」を盛り込む必要もある(正確には盛り込まなくてもかまわないが、配点の大きな割合を占めているので、単純に不利になる)。今大会では「ダイナミックなダンス」と「3回転連続ジャンプ」が規定演技とされた。

 「ダイナミックなダンス」は、前大会に比べて「リズムに合わせる」ことを意識していた参加者が多かった。特に上位で通過したロボットは、曲の始まるタイミングを待ってスイッチを入れたり、「倒れても立ち上がる」に合わせて起き上がりを披露するなど、その意識がわかりやすい形でアピールされていた。

 リズムに乗ったダンスを左右交互の足踏みであらわすロボットが多い中、軽量級7位で通過した「automo 03(Sandan)」(holypong)は、片足での足踏みと腰のひねりを使い、よりダンスに見えるデモを行なっていた。軽量級の2位で通過した「竜鬼II」(AZM LAB)も床を蹴る高速スピンを組み込んで高評価を獲得していた。一方「3回転連続ジャンプ」は、「黒銀」(TDUヒューマノイド研究会)のように「3連続」にこだわって実施するロボットもいれば、転ばないことを優先して1回ずつ確実に回転ジャンプをするロボットもいて、製作者によって異なる解釈のデモが行なわれていた。

 今回の予選では、上記のような派手なアクションを要求する規定演技が盛り込まれたにもかかわらず、非常に大型の機体が多く登場した。特に注目を集めていたのは、身長130cm、重量16kgという超大型機「ALCNON?」(F1プロジェクト with 大産大テクノフリーク部)である。登場するだけでどよめきが起き、起き上がると大きな拍手。しかもジャンプまで行ない、重量級4位で予選を通過した。ヴイストン社によるバックアップが発表されたチームは、重量級2位で通過した「OmniZero.7」(前田武志)とともに、決勝トーナメントに進んだ。前回チャンピオンであり、今大会も予選1位を獲得した「グレートキングカイザー」(マルファミリー)も64cm/4.8kgと、一般的なホビーロボットたちの中ではかなり大きな部類に入るのだが、それが小さく見える。本来格闘を行なうはずのリングが、この2機のような超大型機が乗るとまるで飾り台のように見えた。

 そのほかにも「アリス」(大同工業大学 ロボット工房)や「ケルビム グランデ」(ロボットフォース)、「Giant Storm Waves」(RobotFactory)など、これまでのROBO-ONEでは1大会につき1機いればいい方だった超大型機が続々と登場し、ROBO-ONEという競技会そのものが変質しつつあるのかもしれない、と思わせられた。


【動画】「黒銀」(TDUヒューマノイド研究会)。3連続ジャンプが見事。軽量級予選8位で通過 【動画】攻撃にも有利になる長い手を手拍子に使った「Gram」(芝浦工業大学SRDC チーム Myosotis)。重量級14位で通過 【動画】両足を揃えて跳ばず、上手に回転する「ナガレ イエロー」(フラワー戦隊ナガレンジャー)。軽量級4位で通過

【動画】リズムに乗ったダンス、という点もさることながら、規定演技以外の見せ方もすばらしかった「ハウザー」(クラフトハウス)。見事に軽量級1位で通過 【動画】韓国から参加した機体の中では最も大きかった「Giant Storm Waves」(RobotFactory)。重量級6位通過 【動画】インドから参加した「Acyut」(Team Acyut)。残念ながらスロープを上れなかったが、遠方からの参加ということでデモンストレーションのみを行なった

【動画】キットベース(マノイAT01)で3連続ジャンプができることを見せた「NULL」(RMF-OB)。残念ながら予選敗退 【動画】まさに「抱え込む」大きさの「アリス」(大同工業大学 ロボット工房)。何より驚くのはその足が普通の子供靴ということだ 【動画】リズムに乗っていた「竜鬼II」(AZM LAB)。軽量級予選2位

【動画】身長130cmという大きさで注目を浴びた重量級4位「ALCNON?」(F1プロジェクト with 大産大テクノフリーク部)。ジャンプもOK! 【動画】「ダンス」にみえるステップを見せていた軽量級7位「automo 03(Sandan)」(holypong)

【動画】最も重い期待での参加となった「OmniZero.7」(前田武志)のデモ。重量級2位 【動画】「キングカイザー」(マルファミリー)のデモ。中央のグレートキングカイザーから他の2機に無線で連携の指令が飛ぶという。重量級・予選総合1位

 ROBO-ONEは、各地で行なわれたロボットイベントのうち、申請があった上で条件を満たしたものに「決勝出場権認定大会」というお墨付きを与えており、その大会から予選無しで決勝に進む選手を地区代表として送り込むことができる。今大会では

『夏戦IV in RoboCountryIV』:優勝者「レグホーン」(NAKAYAN)

『第5回わんだーろぼっとか~にばる』:優勝者「ガルー」(くまま)

『姫路ロボ・チャレンジ第6回大会』:優勝者「ヨコヅナグレート不知火2代目」(Dr.GIY)

『第27回ヒューマノイドカップ』:優勝者「スーパーティガー」(ひろのっち)

『ロボプロ競技会 in 私のしごと館Vol.4』:優勝者「rsv3」(吉田ファミリア)

『ツクモロボット運動会 in 秋葉原万世 2008』:優勝者「アリモプレナ」(スミイファミリー)

『RoBo☆CHAMPベイシティ杯』:優勝者「Cavalier」(えまのん)

『第4回ナガレンジャー・ファイティングフェスタ in SUMMER』:優勝者「GAT」(くぼ)

『ロボファイト7』:優勝者「ivre-VIN」(遊)

 という9大会から、9代表が登場した。うち7代表が軽量級、2代表が重量級に入る規格だった。それに予選通過した軽量級9機、重量級14機を加え、翌日の決勝トーナメントには各級16機が進んだ。

 また、今回は珍しいことが起こった。森永英一郎氏は軽量級の「Metallic Fighter」と重量級の「Heavy Metallic Fighter」の2機体を製作して予選に挑んだのだが、「Metallic Fighter」が363点(軽量級2位相当)、「Heavy Metallic Fighter」が303点(重量級8位相当)と、両機ともに予選通過ラインを超えたのである。

 もちろん複数参加そのものは認められており、前大会から2機以上決勝に残る場合には「重量級・軽量級を通じて最も点数の高いロボット1台のみ決勝に進むことができる」と、ルールに追記されている。ただ、今回はこのルールが初めて適用されたケースとなったためか、運用に間違いがあり、点数の低かった「Heavy Metallic Fighter」のほうが予選通過扱いとなっていた。


宇宙大会

 当日はROBO-ONE本大会の予選とは別に、「ROBO-ONE宇宙大会選抜競技」も行なわれた。すでに何度か行なわれているが「ROBO-ONE 宇宙大会」に出場を確定させる「3回連続で着地成功」という参加者は出ていない。今回は

「summit」(robot-factory)
「イナカモノ ユービーゴウ」(龍準)
「ペタピナ」(アジアン ギルド)
「ナガレブルー・コスモ」(フラワー戦隊ナガレンジャー)
「たま3G。」(おっくん。)

 という5機が登場した。その挑戦を高速度撮影した動画で見ていただこう。


【高速度撮影】「summit」の2投目。姿勢変化を検知して足を開くが、着地のショックを吸収できず 【高速度撮影】「イナカモノ ユービーゴウ」3投目。コチラもセンサーそのものは反応するものの、着地まではいたらず 【高速度撮影】ガスを噴射するものの、姿勢制御までは至らなかった「たま3G。」。3投目はリング外に落ちてしまい、大ショック

「たま3G。」のガス噴射機構。利便性や入手性を考えて100円ショップの自転車用緊急空気入れを利用 【高速度撮影】1投目にガスが出ずに失敗してしまった「ペタピナ」の2投目。ガスは出るものの、姿勢は変わらず 【高速度撮影】「ペタピナ」の3投目は機体の回転がガスで止まり、足から着地ができたものの、ショックを吸収できなかった。惜しい

【高速度撮影】今回唯一着地に成功した「ナガレブルー・コスモ」の1投目。ただ、スローで見ると着地前に足が縮んでしまって、側面から着地している 【高速度撮影】着地としては一番きれいな形だった「ナガレブルー・コスモ」の3投目。着地直前に足を縮めて衝撃を吸収しようという意図がよくわかる 「ナガレブルー・コスモ」の着地を成功させた衝撃吸収ジェル

 5機が挑戦し、唯一成功した「ナガレブルー・コスモ」は、前回参加した宇宙大会選抜競技の記事にあったハイスピード動画を分析し、着地の衝撃をなんとか吸収すれば成功が見える、と考え、足裏にFAメカニカル部品として販売されている衝撃吸収ジェルを配置したという。3回目は着地に成功しながら、ヒザのサーボホーンが破損してしまって歩行できずに失敗扱いとなったが、再現性の高い姿勢制御はできたと胸を張った。

 今回の「宇宙大会選抜」では前回までに着地に成功していた参加者が登場しなかったものの、新たな成功者もあらわれ、惜しい投擲も増えてきたように感じられた。次回大会も楽しみである。


URL
  ROBO-ONE
  http://www.robo-one.com/

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( 梓みきお )
2008/10/22 11:10

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