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「ROBO-ONEお手伝いロボット決勝戦」開催
~川崎の地下街でロボットが「初めてのおつかい」にチャレンジ


優勝ロボット スミイファミリー製作「アリモプレナ」
 9月6日、川崎駅の地下街アゼリアにて「ROBO-ONEお手伝いロボットプロジェクト」決勝が行なわれた。主催はROBO-ONE委員会、「かわさき・神奈川ロボットビジネス協議会」が共催、川崎アゼリア株式会社が協力している。

 「ROBO-ONEお手伝いロボットプロジェクト」とは二足歩行ロボットによる格闘競技「ROBO-ONE」から派生した新競技。ロボットに何かしら実用的なことをさせることを目指している。8月17日には川崎市産業振興会館にて予選が行なわれたが、決勝戦はオープンスペースの川崎地下街アゼリアにて行なわれた。駅に直結した地下街の広場で行なわれた風変わりなロボット競技に多くの人々が集まった。

 予選通過ロボットは全部で11台だったが、1台が棄権となり、競技に参加したロボットは全部で10台だった。決勝競技は「ファッションショー」と、模擬店での「お買い物」からなる。ファッションショーは実際のファッションショーのようにロボットを着飾っていた参加者もいたが、基本的にはロボット本体のデモンストレーションである。お買い物は、ロボットを無線LANでネットに接続。ロボットに搭載したカメラからの映像を見ながら遠隔操縦し、制限時間10分以内に2つの模擬店でそれぞれ「お買い物」をして帰ってくるというもの。

 二足ロボットが普通の床面、それも屋外の床面を歩くのは、ただそれだけでも難しい。それを趣味で作ったロボットにやらせて、その上、あれこれやらせようというのだから、これは一種の「無茶ぶり」である。だがバンダイの芳賀氏は「少しずつレベルを上げていくのはプロのやり方。でもブレイクスルーのためには思い切ったやり方が必要」とこの競技の意義を語った。

 競技結果は、牛をモチーフにしたロボット「アリモプレナ」で参加したスミイファミリーが優勝、準優勝はロボットフォース製作「ファイブ」、3位はスギウラファミリー製作「Dynamizer」となった。入賞者にはそれぞれ金銀銅のメダルが贈られ、優勝者には実用化奨励金として100万円が贈られた。スミイファミリー製作「アリモプレナ」は予選も1位で通過している。8月末に秋葉原で開かれた「ツクモロボット運動会」のバトルでも優勝しており、連覇となった。


川崎地下街アゼリアに設置されたステージ 選手達の控えブースはステージ横に設置 ステージと地下街の床上で競技演技が行なわれ、多くの人たちが足を止めた

出場した10体 協賛企業のブースも。ロボット教室「Crefus」を運営する(株)ロボット科学教育のブース 近藤科学によるKHRのデモ

「ファッションショー」の部

 午前中に行なわれた「ファッションショー」は、基本的に地下街の床をそのまま使って行なわれた。

 ちーむトコトコ製作「トコトコ丸」はハロウィンの衣装を着て登場。洋服を自分で脱いで、扇子を持って踊った。余談だが、この後「ちーむトコトコ」の網野氏は同じくROBO-ONEで有名なロボット「アフロ」の菅原氏と一緒にエクアドルの日本文化祭に招待されて渡航するそうだ。片道33時間、黄熱病の予防接種が必要で、現地は標高4,000m。そこで「トコトコ丸」と「アフロ」を使って、日本文化をアピールするという。日本文化の一端としてホビーの二足歩行ロボットがわざわざ呼ばれるというのは面白い。


【動画】トコトコ丸の歩行。大型機だが安心感のある動き 【動画】衣装を自分で外す。帽子も自分で脱ぐ予定だったが失敗

【動画】トレードマークの扇子を使って踊る 【動画】地下街の床も難なく歩行

 Team MSS製作「くまたろう」は予選のときよりも足腰を強化。足につけた超音波センサーを誘導ビーコンに使って、後ろにカートを連れて歩き回った。


【動画】くまたろうの後をカートがついてくる 【動画】マスタースレーブで上半身を動かせる マスタースレーブのマスターにもクマ

 CAPプロジェクト製作「Aero-Blue(アエロブルー)」は、VAIOを胸につけたロボット。テーブル上に載せたケーキとクッキーを、遠隔地からロボットを使って、単身赴任中という設定のお父さんに食べさせる、というデモをなんとか時間内に終えた。胸のVAIO上では相手の画像が表示されており、ビデオチャットができる。


【動画】Aero-Blue。クッキーをなんとかケーキの上に載せようとしている 【動画】ケーキをフォークで串刺しにしようと努力中

【動画】なんとか食べさせようとしている 胸のVAIO

 BBこと西村ROBO-ONE実行委員長製作「ARRC-X(アークエックス)」は、奥さんの手作りだというミニスカート他を着用して登場。踊りのような動きを見せた。衣装のほかは特に予選と変わっていないそうだ。


【動画】ARRC-X 【動画】ARRC-Xの踊り 「ARRC-X」は西村輝一ROBO-ONE委員会代表のロボット

【動画】上半身の機能をアピールする「作業用オートモ」
 チーム九州製作「作業用オートモ」は、腰から上をクレーンのように持ち上げて使えるようにしたロボットだが予選ではその構造をうまく発揮できなかったため、腰軸のモーターをダブルサーボにして強化。お腹にはものを入れられるようになった。左手に1,000円、右手に5,000円を入れて買い物するとアピールした。だが結果は……(後述)。

 ドカプロジェクト製作「ドカはるみ」は、54個のモーターを使って滑らかに人間に近いような動きができる、だがロボットらしく動くロボット。ファッションショーを意識したくねくねとしたポーズを取ったり、流行の振り付けをやったり、きれいに動く5本指を使って数を数えることができることを示し、会場を沸かせた。しかし残念ながらこの機能はお買い物では発揮されなかった。


全身に54個のサーボを使った「ドカはるみ」 【動画】ポーズを取る「ドカはるみ」 【動画】流行の「グー」ポーズをする

【動画】「崖の上のポニョ」主題歌の振り付けを踊る。腕がきれいに円を描いている 【動画】指を使って数を数える

 スギウラファミリー製作「Dynamizer」は、これまでのDynamizerのさまざまな活動――芝刈り機をわざわざ人型ロボットに押させたり、魚を焼かせたり、釣りをさせたりといった「まわりくどいことをやっている」様子をビデオで見せながら機能をアピールした。


【動画】Dynamizer。基本機能をアピール 【動画】これまでの活躍の模様を背後のビデオでプレゼン

 ロボットフォース製作「ファイブ」は子供服を着て静歩行でゆっくり歩くロボット。350ccの缶ビール程度のものを運べるようにすることが目標だという。


「ファイブ」。洋服を着こなしている 帽子を取るとマイクが見える。頭部のなかにはネットタンサー 【動画】自己紹介するファイブ

 kupakuma製作「クロムキッド」は、「将来の夢は野球の選手とレーサー」と喋らせて、寸劇のような形で基本機能のデモを行なった。このロボットも子どものような外見のロボットだが、足のサイズは24cmもあるそうだ。


【動画】将来の夢を語る「クロムキッド」 【動画】歩行動作に会場がどよめく 【動画】膝を伸ばした歩行も行なった

【動画】ボール投げ 【動画】ハンドルを回す 【動画】もちろん起きあがりも可能

 スミイファミリー製作「アリモプレナ」は、得意のマスタースレーブ装置のマスター側の電源を入れ忘れるというトラブルもあったが、バンダイの「ネットタンサー」の機能の1つ、記憶させた画像を認識させる「オブジェクト認識」ソフトウェアを使ったデモや、自作のファッションと歌で、安定した機能とエンターテイメント性をアピールした。


サンバカーニバルのような格好で登場した「アリモプレナ」 【動画】着飾った「アリモプレナ」 【動画】マスタースレーブのデモ

【動画】審判が任意の順番で渡す品物を画像認識して食べ物とそうでないものに分ける 【動画】「アリモプレナ」の歌と踊り

「お買い物」の部

模擬店には実際のショップ店員が協力
 模擬店2軒を使った「お買い物」は、川崎アゼリア地下街に実際にある2軒のショップ、婦人衣料品の「リッチスター」と千円ショップ「ミル」の協力によって行なわれた。遠隔操作したロボットを使って、実際の店員さんと何らかのやりとりをして、両方のショップから「買い物」をしなければならない。なお「買い物」には現金のほか、Suica/PASMOの電子マネー機能が使えるとされた。実際の川崎アゼリア地下街でも電子マネーを使うことができる。買ったものの数量や、値切ることに成功したかどうかなどが評価点に加えられる。

 店員さんは、ロボット越しの人間とのやりとりは、もちろん初体験だ。ロボット本体の動きもぎこちないが、模擬店でロボットを迎える人間側の動きも通常の呼び込みとは違ってぎこちなかった。だがぎこちなかったやりとりが急にスムーズに変わる瞬間もあり、ある意味、そこが見るべきポイントの1つともなった。


婦人衣料品「リッチスター」の模擬店の「お買い物」に使われる品々 千円ショップ「ミル」の模擬店。このなかから任意のものを選んで買い物する ドカプロジェクト製作「ドカはるみ」のお買い物風景

 ちーむトコトコ製作「トコトコ丸」は、首にSuica、透明なランドセルを背負って登場。バンダイ「ネットタンサー」のカメラレンズを広角に交換して視野を広く取っている「トコトコ丸」は難なく模擬店のテーブルに接近。キーボードから打ち込んだ言葉を音声合成で出力するかたちで、店員とやりとりした。自分で手を後ろに回してランドセルのフタを開ける様子や、買い物終了後の「ばいばい」には「かわいい」の声が飛んだ。


【動画】「トコトコ丸」の視界。店員にかなり近づいているが視野が広く取れている 【動画】ロボットの声を聞こうとする店員さん 【動画】ランドセルのなかに品物を入れてもらって御礼

【動画】床をとことこと歩くトコトコ丸 【動画】2軒目に到着。カメラを振って品物を選ぶ 【動画】千円ショップに「まけてくれ」と頼む

【動画】Suicaでの決済はあくまで「やったふり」 【動画】買い物が終わって「ばいばい」

 Team MSS製作「くまたろう」は、カートと近藤科学のKHRを改造した「いぬじろう」を従えて登場。「いぬじろう」も自律で超音波センサーの信号を頼りに歩いていくが、途中でどんどん勝手に歩いていってしまい、一時お休みとなった。肝心の「くまたろう」による買い物は、なんとかテーブルまで辿り着いたものの、残念ながら音声出力の声がか細くて、何を言っているのかまったく分からない。それでもなんとか「お買い物」をすませたが、帰りは残り数十センチのところでタイムアップとなってしまった。


【動画】「くまたろう」の後をついていく自律移動カートと「いぬじろう」。ところが「いぬじろう」はどんどん勝手に歩いてしまう 【動画】店員さんとの距離はかなり遠い。「Suica使えますか」と音声出力

 CAPプロジェクト製作「Aero-Blue(アエロブルー)」は、IPアドレスを叩くだけでビデオチャットができる「ちゃるかん」というフリーソフトウェアを使って行なうことを試みた。だが音がハウリングしてしまい、聞き取りが困難だった。だがいったん動き出したあとは、その必死な様子が会場の苦笑を誘って受けはよかった。またカートを使って重量物を運ぶことも試みた。


【動画】Aero-Blue。声がハウリングでまわっている 【動画】なんとかお金を渡そうと試みる

【動画】2軒目にはカートを使って買い物しようとするが、1軒目の方向に行ってしまう 【動画】カートを使ってバッグをお買い物、運搬

 BBこと西村ROBO-ONE実行委員長製作「ARRC-X(アークエックス)」は、よちよちとした歩きながらも買い物を続けたが、最終的に操作ミスで座った状態で終了してしまった。西村氏は「いらいらして面白い」「疲れた」と感想を述べていた。なお西村氏も音声合成を使って発話を行なったが、物品の指定のときは必ず言葉を繰り返すようにしていた。単純だが冗長性を上げるには有効な方法だ。


【動画】おばさんの買い物風の「ARRC-X」 【動画】足踏みで位置を調整中

【動画】店員とやりとりを試みる 【動画】鞄を買って「カバンに入れて下さい」。審判たちは怪訝顔

 チーム九州製作「作業用オートモ」は、最初からややひょこひょことした、後ろバランスの歩き方で登場した。胸に搭載した、カメラを保護する透明部品で視野がだいぶ曇っていたことも災いして苦戦。それでも一軒目で「ねじねじ」を購入することに成功したものの、それを腹部に入れたところ、バランスを完全に失って後ろに何度も転倒。ほとんど歩けなくなってしまった。


【動画】後ろバランス気味の「作業用オートモ」の歩行。足裏が滑ってしまって方向が定まらない 【動画】「作業用オートモ」の視野。見えにくい 上半身がついていかずどうしても後ろに転倒してしまう

 ドカプロジェクト製作「ドカはるみ」は、床に置いた買い物袋を自分自身で取るところからスタート。期待させたが、通信トラブル等で2度のタイムを取りながらの演技となった。また臨機応変に操縦するというよりも全体に作り込み動作が多く、想定シナリオどおりに行かないと困った状況になってしまう。買い物のときには、クレジットカード(という想定のカード)を出して事前に仕込んだ演技動作ながら、紙にペンでサインをするという動作を見せた。


【動画】お買い物袋を持ち上げて歩行 【動画】腕組みして「かわいいものありますか?」買い物袋を落としてしまってサポートが拾う。もちろん減点対象 【動画】止まってしまう

【動画】サインをする。ボードも店員ではなくサポートが渡せないと持てない 【動画】「ハルミ」とサインをして渡す

【動画】ネックレスは首にかけてもらう 「ハルミ」のサイン

 ロボットフォース製作「ファイブ」は、例えていうなら「メモを入れた買い物かごをくわえさせた犬を使った買い物」に一番近い形で買い物を実行した。大音量のスピーカーを使って「あれをしろ、これをしろ」と有無を言わせない調子で絶えず喋り続け、実行したら頭部に付けたボタンを押させるという方式。意外なことだが、ボタンを使ってタスクの終了を確認させた参加者は今回誰もいなかった。ノリの良いやりとりの絶妙さもさることながら、おそらくこれが2位になった最大の理由だろう。


【動画】「ファイブ」の歩行 【動画】「ネックレスを下さい、ネックレスは首にかけてね、それが終わったら青いボタンを押してね」と店員に命令 【動画】2つ目の買い物で値切る。店員はあっさりOKするが音声は無視してボタンによるYes/Noの明示を要求

【動画】2軒目でも同じ調子 【動画】買い物をすませて帰還中 頭部横の青いボタン

 スギウラファミリー製作「Dynamizer」は、酔っぱらいオヤジのように自分のテーマソングを歌いながら歩行。買い物のときに単に買い物するだけではなく「駐車券を下さい」と言って「3,000円からなんです」と断られるというウケを取った。技術的にも安定した歩行に加え、無線LANを2系統取るといった工夫を見せて3位になった。


【動画】少し脱力系の自分のテーマソングを歌いながら歩行する「Dynamizer」 【動画】2軒目に向かう「Dynamizer」 【動画】靴下をつかむが、ぽろっと落としてしまう

【動画】オマケを要求してもう一足ゲット 【動画】「おうちに帰ります」と言って帰ろうとするが靴下を再び落とし、それを踏んで転倒 【動画】審判に助けてもらって帰還。今回の審判は優しい

 kupakuma製作「クロムキッド」は、買い物袋を引きずりながら歩行。大きく頭(カメラ)を振りながらの歩行だったが、なんとか最初の店に辿り着いた。だがいきなり、大物の商品である靴をつかんでしまう。それを買い物袋に入れてもらったまではよかったものの、バランスを崩してしまい転倒。その後、何度も歩行にトライしたがどうしても駄目だった。大きく体を揺らしながらダイナミックに歩くクロムキッドの歩行パターン自体もあだとなった。


【動画】「クロムキッド」の歩行。転倒 【動画】転倒からの起きあがり 【動画】一軒目にたどりつく

【動画】店員さんも少し馴れてきた 【動画】靴をつかんで「これ下さい」。周囲の人間は「あ~、やっちゃったよ」という表情で苦笑 【動画】重量バランスが崩れて歩けなくなってしまう

 スミイファミリー製作「アリモプレナ」は、今回登場したロボットたちのなかでは、ずば抜けて安定していた。それだけではなく、ロボットが自分のアクションやステイタスを、1つ1つ細かに音声で出力して操縦者に伝えていた。さらに周囲の人間に対しても自分が今何をして、次に何をしようとしているのか、文脈情報をちゃんと伝達することで、やりとりには不可欠な「間」を維持していた点が素晴らしい。2軒目ではうっかり買い物した賞品を取らずに帰りかけるというミスを犯しかかったが、店員さんと実況にも助けられ、最終的に3分45秒以上残して余裕のゴールを果たした。決済手段も「現金」と「電子マネー」を使い分けた。

 後ほど話を聞いたところ、首、つまりカメラにパンやチルトの機能を付けたことが操作性を大きく向上させたという。また「アリモプレナ」の場合は、カメラからの映像も思ったほどぶれないのだそうだ。自宅でも完全にロボットからの音声出力がLAN経由以外では伝わらない状態で練習したという。また床が硬いため、足裏には振動を抑えるためのゴムを挟んで安定化を図った。トータルで見て、音声を使ったロボットの開発をこれまでもずっと続けてきた経験の差が大きく出たと言える。


【動画】「アリモプレナ」。地下街の床でもぶれることなくまっすぐ素早く歩行している 【動画】「アリモプレナ」からの視界 【動画】自分の状態を絶えず音声で返す

【動画】商品を探すあいだも「ちょっと待って下さい」と自分が何をしようとしているか周囲に発話で教える 【動画】靴下を選ぶ。その後のやりとりもスムーズに進んでいる 【動画】アクション時の音は周囲の人間に対するウインカー音の役割も果たしていることが分かる

【動画】2軒目。「エコバックを持ってきたので包装はいりません」 アリモプレナ。左はマスタースレーブのマスター 足裏にはゴムを挟んで振動を吸収

入賞者とROBO-ONE委員会代表の西村氏(右端)
 さて、これで第一回お手伝いロボットプロジェクトが終わった。ROBO-ONE委員会代表の西村氏は「実用化を」と語っていたが、現実にはこれだけ通信販売の進んだ時代の延長線上で、遠隔操縦にせよ自律にせよ、ロボットに買い物を頼むようなシーンは考えにくい。だが屋外歩行の能力は必要だし、人間とのやりとり能力を競うロボコンは面白い。

 「ROBO-ONE」自体は既に回数を重ねており、既にそれ自体がイベントとして確立されつつある。そのため始まったばかりの頃のような雰囲気とは、やや違うトーンの異なる熱気漂う大会となっている。だが今回の「お手伝いロボットプロジェクト」競技を観戦していると、なんとなく最初の頃の「ROBO-ONE」を思い出した。

 初期の「ROBO-ONE」大会のようにバッタンバッタンとロボットが倒れていたから、ということもあるのだが、それだけではない。参加者達から新しいものに取り組んでいる楽しさ、その気配のようなものを感じることができたのである。見ているこちらも何となく「ROBO-ONE」本戦とはまた違った楽しさを感じた。いっぽう、ロボット自体は大幅に大型化している。大きなロボットは扱うのも大変だ。サーボモーター数でいえば2~3倍、全体のコストもはるかに高くなっている。一般人の趣味としても、おいそれと手の出せないものになっているのも確かだ。

 次の「ROBO-ONE」はパシフィコ横浜にて行なわれるロボットイベント「ROBO-JAPAN 2008」で開催される「第14回 ROBO-ONE in ROBO_JAPAN」となる。日時は10月11日(土)~12日(日)だ。


入賞者たち
roboone_p1410992.JPG エキシビジジョンマッチ
エキシビジジョンマッチとしてバトルも行なわれた ロボットを動かし始めるとすぐに人だかりができる

URL
  ROBO-ONE
  http://www.robo-one.com/
  ROBO-ONEお手伝いロボットプロジェクト
  http://www.robo-one.com/robo_help/robo_help.html

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( 森山和道 )
2008/09/09 16:59

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