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「第27回ヒューマノイドカップ・バトル大会」レポート
~最後のROBO-ONE認定権はスーパーディガーが獲得


ロボスクエアの入っているTNC放送会館
 8月31日に、福岡県福岡市にあるロボスクエアで「第27回ヒューマノイドカップ・バトル大会」が開催され、地元九州エリアを中心とした17台の二足歩行ロボットが優勝を目指して戦いを繰り広げた(九州エリア以外からは中部エリアからまつしろ氏、関東エリアからえまのん氏、道楽、氏の参加があった)。

 今大会は「第14回ROBO-ONE」決勝出場権認定大会となっており、優勝者は第14回ROBO-ONEの決勝トーナメントに予選抜きで参加できる権利が与えられる。なお、5月3日に愛知県名古屋市で開催された「RoBo☆CHAMPベイシティ杯」から始まった第14回ROBO-ONEの決勝出場権認定大会は、これで最後の大会となった。


予選はスーパーディガーがトップ通過

 それでは競技について触れていこう。まず予選で行なわれた「ファイヤーアタック」は、パンチカーペットの上に置かれた3本のペットボトルを倒してスタートラインまで戻ってくるという、タイムを競う競技だ(制限時間は2分以内。もし、時間内に戻って来れなかった場合は倒したペットボトルの数が記録となる)。2回トライすることができ、そのうちのベストタイムが記録となり、記録の順に順位が決まる。

 予選でトップを取ったのは、過去何度もヒューマノイドカップシリーズで優勝しているスーパーディガーだった。予選の結果は次の通り。

1位 スーパーディガー(ひろのっち) 17秒57
2位 紫電(熊井裕一) 21秒17
3位 Automo03(holypong) 23秒15
4位 メカ・シェンロン(湯前裕介) 23秒29
5位 HAUSER(クラフトマン) 25秒06
6位 ZERO(武田真実) 31秒80
7位 Robita602v3(伊藤慎二) 37秒01
8位 ミテイ(えまのん) 49秒15
9位 九産大朱鵬(村上) 57秒31
10位 拓歩(八幡高校科学部・中村亮太) 57秒47
11位 火炎玉(藤渡優也) 1分05秒58
12位 マノイ・マノン(マグネット) 1分09秒48
13位 カッチ・デヤンス(かつまろ) 1分18秒13
14位 で・か~る(道楽、)1分40秒33
15位 Q(林慎一) 2本
16位 ハーデス(まつしろ) タイムアウト記録なし
17位 EON(森一史) 棄権


予選のファイヤーアタックは、ロボスクエアの外にフィールドが作られた 予選は2台同時に行なわれた ペットボトルを倒していく予選3位のAutomo03。ペットボトルには砂が入っていた

ペットボトルを3本倒してスタートラインに戻っていく、予選2位の紫電 2回目に唯一20秒を切る好タイムを出したスーパーディガー

16台による決勝トーナメント

 決勝のバトルトーナメントでは、当初16位と17位が戦う「第0試合」が予定されていたが、17位のEONが不調で棄権となり、16台によるトーナメントとなった。組み合わせは予選1位と予選16位、予選2位と予選15位というように、予選順位のよいものほど1回戦では有利になるようになっていた。

 試合時間は1試合3分で、3ノックダウンか10カウントKOによって勝敗が決するのは、他の二足歩行ロボットバトルと違いはない。ただし、スリップについては3スリップで1ダウンになるなど、ROBO-ONEよりはゆるやかなルールとなっている。また試合終了時にダウン数が同じ場合、スリップの数で勝敗が決定する。それでも決着がつかない場合は、延長戦を行なう。


バトルが行なわれたロボスクエアのリング 夏休み最後のイベントということもあって、家族連れで賑わっていた トーナメント表

ほぼ順当な結果だった1回戦

 1回戦は予選順位が上のロボットほど有利になる組み合わせになっていたため、1試合を除いて予選順位の高いものが順当に勝利した。

 その中で唯一、予選順位の低い機体で勝ち上がったのが拓歩だ。拓歩はKHRベースの機体で、飛び込み攻撃や投げなどの大技で攻めてくるRobita602v3(Robovie-Xの改造機)を相手にうまく位置取りをしながら戦い、3-2で勝利した。

■拓歩 3-2 Robita602v3


Robita602v3(左) vs 拓歩 Robita602v3(奥)の飛び込み技を、拓歩がステップでかわす

 ここで紹介しておかなくてはならないのは、影で偉大な記録(?)を達成した道楽、氏だ。なんと道楽、氏は、この大会に参加することで、RoBo☆CHAMPベイシティ杯から始まったROBO-ONE認定大会にすべてに参加するという偉業を成し遂げた。

 また、8月30日に山形県長井市で開催された「第4回ナガレンジャー・ファイティングフェスタin SUMMER」にも参加しており、そこから夜行バスと飛行機を乗り継いで今大会に参加したそうで、そのバイタリティーには頭が下がる。

 で・か~るは、試合では第13回ROBO-ONE軽量級4位のAutomo03のパンチ3発に沈んだが、急にスリップしたかと思うと、豪快なパンチでAutomo03を吹っ飛ばしたりと、予想のつかない動きを見せ、一部からは「酔拳で・か~る」などと呼ばれていた。

■Automo03 3-1 で・か~る


左がで・か~る。腕がしゃもじになっている Automo03(右)に攻撃を仕掛ける、で・か~る

 その他の試合結果は次の通り。

■ミテイ 2-0 九産大朱鵬
■メカ・シェンロン 3-0 カッチデヤンス
■ZERO 3-0 火炎玉
■紫電 3-0 Q
■HAUSER 3-0 マノイ・マノン
■スーパーディガー 3-0 ハーデス


ミテイ(左) vs 九産大朱鵬 どちらもカラフルで目立つ、カッチデヤンス(左) vs メカ・シェンロン 火炎玉(右)に攻撃するZERO

Q(右)を破った紫電 黒いHAUSER(左)と紅白のマノイ・マノン ダウンを奪うスーパーディガー(左)。ハーデスの外装は、テムザックのKIYOMORIを多少意識したそうだ

白熱した2回戦の試合

 今回のヒューマノイドカップは、偶然にもスーパーディガー・Automo03・HAUSERの「九州三銃士」が同じブロックに入り、参加者から「死のブロック」と呼ばれていた。

 さっそく2回戦でスーパーディガーとHAUSERという、ハードパンチャー同士の戦いが実現。両者とも小細工なしで近づいていき、攻撃有効範囲に入った瞬間にお互いの必殺ブローをぶちかますという、正しく「熱い漢の拳の闘い」が繰り広げられた。どちらも一歩も退かない展開となったが、ポイント2-2から最後にスーパーディガーの放った一発がHAUSERからダウンを奪い、スーパーディガーの勝利となった。

■スーパーディガー 3-2 HAUSER


HAUSER(左) vs スーパーディガー HAUSER(左)の豪拳がダウンを奪う

 別のブロックでは、関東から遠征してきたミテイが台風の目となった。ミテイは「KHR 4th Anniversary」の優勝機体で出場した(ヒューマノイドカップ用の新型機体を製作中だったが間に合わなかったとのこと)。

 1回戦で九産大朱鵬に勝ったミテイは、2回戦でメカ・シェンロンと対決。パワー的にメカ・シェンロンが有利かと思われたが、ミテイは規定ギリギリの大きな足裏を使用しており、そう簡単に倒れない。また、うまく位置取りをしてメカ・シェンロンの攻撃をかわしていく。逆に正面からの攻撃でメカ・シェンロンから1ダウンを奪い、その後メカ・シェンロンはスリップ時に起き上がりができなくなってしまった。その際のタイム申請により2ダウン目を取られ、結局ミテイがそのまま逃げ切って勝利した。

■ミテイ 2-0 メカ・シェンロン

 その他の2回戦の結果は次の通り。

■ZERO 1-1 紫電(スリップ数によりZEROの勝利)
■Automo03 3-1 拓歩


メカ・シェンロン(左) vs ミテイ メカ・シェンロン(手前)は横からの連続突きを得意とする。ミテイは動き回ってメカ・シェンロンにクリーンヒットさせなかった

同じ九州共立大学ロボット工房同士の戦い。左がZEROで右が紫電 さすがにパワーの差はどうしようもなかったAutomo03(左) vs 拓歩

激闘の準決勝

 準決勝の2試合はいずれも激しい戦いとなった。

 準決勝第1試合は、メカ・シェンロンを破ったミテイと九共大同門対決を制したZEROとの戦い。パワーに勝るZEROだったが、ミテイをなかなか捉えられず、逆にZEROの3スリップなどでポイント2-1となりミテイが有利に試合を進めた。このままミテイが勝利かと思われたが、タイムアップ寸前にZEROがミテイからダウンを奪い、ポイント2-2でこの大会唯一となった延長戦へと突入した。

 延長戦はダウン・スリップを問わずポイントを奪われた方が負け(つまり倒れた方が負け)のルールで行なわれた。結局、延長戦ではZEROが場外に転落し、ミテイが決勝戦へと進んだ。

■ミテイ 2-2 ZERO
※延長戦1-0でミテイ


準決勝第1試合、ZERO(左)に攻撃を仕掛けるミテイ ZERO(手前)の攻撃。ZEROは足裏をすでにROBO-ONE仕様にしてきていた ぶれているが、試合終了直前にZEROがダウンを奪ったところ

 HAUSERを倒したスーパーディガーは、九州三銃士の残りの1人・Automo03と戦うことになった。この試合は、パワーと操縦技術の戦いとなった。

 スーパーディガーのパンチを警戒して、Automo03はスーパーディガーの回りを移動しながらチャンスをうかがった。スーパーディガーはAutomo03を捉えようと動くが、Automo03はうまく攻撃をかわす。スーパーディガーは何度もAutomo03をリングの端に追い詰めたが、Automo03は絶妙の操縦技術でそのピンチから脱出した(足裏の一部がリングの外に出ていたほどだった)。

 気がつくと、スリップ数がAutomo03は1で、スーパーディガーは2(普通のスリップと捨て身技が失敗したスリップ)。このまま逃げ切ればスリップ数でAutomo03の勝利が決まる。しかし、タイムアップ寸前についにスーパーディガーのパンチがAutomo03を捉え、Automo03はリング外へと転落。からくもスーパーディガーが勝利し、決勝戦に進んだ。

■スーパーディガー 1-0 Automo03


準決勝第2試合、Automo03(左) vs スーパーディガー 回りこむAutomo03(右)に対して、スーパーディガーは旋回で対抗 攻撃交差

ランブルと3位決定戦

 優勝決定戦の前には、2回のランブルと3位決定戦が行なわれた。ランブルはブロックごとに1回戦・2回戦で敗退した機体が参加して行なわれ、最初のブロックでは紫電が、2番目のブロックではHAUSERが勝利した。

 3位決定戦はAutomo03とZEROの戦い。Automo03にZEROがどう挑むか注目された。しかし、Automo03の操縦者のholypong氏は「ROBO-ONEお手伝いプロジェクト」に参加するロボットの調整のため、ほとんど寝てない状態で(試合後に「スーパーディガーとの戦いが終わった時点で、エネルギーがつきてしまいました」と語っていた)、ZEROがAutomo03を40秒あまりで倒すという一方的な展開となり、3位の座を獲得した。

■ZERO 3-0 Automo03


ランブルその1。優勝したのは左にいる紫電 ランブルその2。中央ではで・か~るが「しゃもじタイフーン」で暴れていた 3位決定戦。ZERO(左)がAutomo03を豪快に投げ飛ばした

優勝と認定権はスーパーディガーの手に

 優勝決定戦は、九州三銃士対決を制したスーパーディガーと、九州勢の強豪を破ったミテイとの戦い。ミテイのえまのん氏はRoBo☆CHAMPベイシティ杯で認定権を獲得しているため、実は優勝決定戦の前にスーパーディガーの認定権獲得が決まっていた。しかし「九州最強ロボット」としてなんとか優勝しておきたいところ。

 試合が始まると、まずスーパーディガーがダウンを奪い先取した(えまのん氏は「他のロボットなら逃げられる自信はあったが、スーパーディガーは無理だった」と試合後に語っていた)。これにより、ミテイはポイントを先取しての先行逃げ切り戦術が使えなくなり、スーパーディガーからダウンを取りに行くしかなくなった。こうなるとパワーの差がもろに出てしまい、スーパーディガーが続けざまにダウンを奪ってみごと優勝を決めた。スーパーディガーは第25回ヒューマノイドカップ・バトル大会に続き、大会連覇を成し遂げた。

■スーパーディガー 3-0 ミテイ


優勝決定戦、ミテイ(左) vs スーパーディガー スーパーディガー(左)の攻撃 試合の決着のついたところ

 連覇という結果から見ればスーパーディガーの優勝は順当に見えるが、九州三銃士との戦いは「誰が勝ってもおかしくはない」ものだった。またZEROが3位に入るなど、九州三銃士に続く九州のロボットも実力をつけてきている。その他にもKHRベースの機体で1回戦を勝利した拓歩など、若いロボットビルダーも育ってきており、九州の二足歩行ホビーロボットの今後に期待が持てる大会だった。


認定証を手にしたひろのっち氏 記念撮影

スーパーディガーと認定証 参加したロボットたち

URL
  ロボスクエア
  http://www.robosquare.org/

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( 大林憲司 )
2008/09/22 20:51

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