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当日のロボスクエア。「こどもの日」ということもあって、観客は多かった
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5月5日、福岡市早良区百道浜にあるロボスクエアで、第25回ヒューマノイドカップ・バトル大会が開催され、14台の二足歩行ロボットが優勝目指して戦いを繰り広げた。
これまでロボスクエアでは、福岡市最大のお祭りである博多どんたくに合わせて博多リバレイン5階でヒューマノイドカップ・バトル大会を行なうのが恒例となっていたが、ロボスクエアが百道浜に移転した今回は、ロボスクエアで博多どんたくの終わった5月5日に開催された。
今回のヒューマノイドカップには地元九州を中心とした14台が参加し、「九州のロボットによる九州の大会」となっていた。なお、ヒューマノイドカップは規定により3kg以下の機体しか参加できない。
● 新たな競技も導入された予選
まず決勝のトーナメント前に予選が行なわれたわけだが、今回は参加したロボットが14台だったので予選落ちはなく、決勝トーナメントの組み合わせを決めるためのものだった。特に今回の大会では、予選の1位と2位にはシード権が与えられるため、予選から熾烈な戦いが予想された。
そのヒューマノイドカップの予選としては定番のスプリント、それに今回初めて導入されたパフォーマンスでの獲得点数によって予選順位が決定する。
今回のスプリントは5mのパンチカーペットの上を走るもので、前回のヒューマノイドカップから横歩きは禁止となっている。その中で1位をもぎ取ったのは、9秒56と唯一10秒を切ってきたスーパーディガーだった。
1位以下は、2位のHAUSER(10秒73)、3位のドカ1(12秒36)、4位のAutomo03(13秒84)と、第13回ROBO-ONEで決勝トーナメントに進んだ強豪が独占する順当な結果となった。
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スプリント5000のコース。パンチカーペットを敷いてある
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2台ずつ同時に走る
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右は広島県からやってきたダイダロスZ-1型。週刊ROBOZAKを集めて製作したそうだ
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スプリントで2位となったHAUSERと3位のドカ1
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9秒56で駆け抜けたスーパーディガーの走り。右は13秒84で4位のAutomo03
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そして今回初めて行なわれた予選のパフォーマンスは、リングの上で2分以内のパフォーマンスを行ない、審査員のつけた得点の合計によって順位を決めるという内容。審査員2人は20点満点ですべてのロボットについて評価。会場内から選ばれた来館者審査員は素晴らしかったと思うロボットの1位から3位までを決めて投票。特別審査員の得点と来館者審査員の得点の合計で順位が決まった。なお、審査員は京商の岡本正行氏と筆者が務めた。
そしてこのパフォーマンスでも1位を取ったのはスーパーディガーだった。スーパーディガーはお得意の「サッカーボールを投げてスイカ割り」を披露。見事にスイカを割って1位となった。
またパフォーマンスで2位になったのはAutomo03。空手ロボらしく、地元のにわか煎餅を使用した「瓦せんべい割り」を披露した。
パフォーマンスで3位に入ったのは、県立福岡工業1号。アニメのキャラクターになりきったパフォーマンスを展開し、来館者審査員のハートをつかんで3位となった。予選の総合順位は以下の通り。
1位 スーパーディガー(ひろのっち)
2位 Automo03(holypong)
3位 HAUSER(クラフトマン)
4位 ドカ1(カズ)
5位 県立福岡工業1号(福岡工業高校情報工学科)
6位 成龍(湯前裕介)
7位 九共大ーZERO(武田真実)
8位 ロボビーX(深津)
9位 ドカ3(クミ)
10位 Robita602(伊藤慎二)
11位 ダイダロス Z-1型(ぷち)
12位 県立福岡工業2号(福岡工業高校情報工学科)
13位 拓歩(ryota333)
14位 Q(林慎一)
スーパーディガーはスプリント・パフォーマンス共に1位で、文句なしの予選トップ通過となった。この結果、1位のスーパーディガーと2位のAutomo03は1回戦シードとなった。
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踊るドカ3
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音声認識に挑戦したロボビーX
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ストーリー仕立てで来館者審査員の人気を得た県立福岡工業1号のデモ
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第13回ROBO-ONEでは決勝トーナメント行きをつかんだ、九共大ーZEROのロンダート
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車に乗ったドカ1。左のレバーを押すことで、車の前進・停止を操作していた
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予選3位にゃシードがない? でも、そんなの関係ねえ!
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Automo03による瓦せんべい割り。割れた瓦せんべいは、本人たちが控え室で食べていた
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とにかく冴えていたスーパーディガーのスローイン・スイカ割り
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シュートでのスイカ割りも成功して、パフォーマンスでも1位
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● Robovie-Xが善戦した1回戦
決勝のバトルトーナメントは、1試合3分間、有効な攻撃によって相手から3回ダウンを奪うかダウンを奪って10カウント以内に相手が立ち上がれなければ勝ちとなるルールで行なわれた。また、3回スリップで転倒した場合は1ダウンという「3スリップ1ダウン」方式が採用された(ちなみにROBO-ONEは2スリップで1ダウン)。
1回戦で1番の激闘となったのは、第13回ROBO-ONEの決勝トーナメントにも出場した九共大ーZEROと、Robovie-XベースのRobita602の戦いだった。Robita602の伊藤氏は今回が初めての大会参加であり、ROBO-ONEでも戦っている九共大ーZEROが圧倒的に有利と思われた。しかし、九共大ーZEROの殴りつけるようなパンチは強力なものの、歩行から停止する際にスリップしてしまう傾向があったため安定性を欠き、3スリップで1ダウンを献上。
これに対してRobita602は抱きついてから相手を倒すという投げ技で九共大ーZEROから1ダウンを奪い、ダウンカウント2-2まで持ち込み、「もしかして金星か?」という雰囲気が会場に漂ったが、最後は九共大ーZEROが意地を見せ、Robita602をパンチで沈めて1回戦を突破した。
その他にもロボビーXがドカ2から1ダウンを奪い、また県立福岡工業高校同士の戦いとなった1回戦最後の試合でも、Robovie-Xベースの県立福岡工業1号が勝利するなど、Robovie-Xの善戦が目立った。1回戦6試合の結果は次の通り。
ドカ2 3-1 ロボビーX
ドカ1 3-0 拓歩
成龍 3-0 ダイダロスZ-1型
九共大ーZERO 3-2 Robita602
HAUSER 10カウント Q
県立福岡工業1号 2-1 県立福岡工業2号
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バトルトーナメント直前の様子。解説は京商の岡本正行氏
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Robita602を豪快に倒す九共大ーZERO
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うっちゃり気味に九共大ーZEROを投げ倒したRobita602
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しかし、最後は九共大ーZEROが勝負を決めた
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ドカ3から1ダウン取ったロボビーXだったが、試合は3-1でドカ3の勝利
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ドカ1の長いリーチが拓歩に決まる
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成龍はダイダロスZ-1型に3-0で勝利
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QvsHAUSER。Qはこの後、立ち上がれずに10カウント負け
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福岡工業高校情報工学科同士の戦い。試合は右の県立福岡工業高校1号が勝った
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● 夫婦対決も実現した2回戦
2回戦第1試合では、ドカ1vsドカ2というドカファミリー夫婦対決が実現した。基本的に同じ機体なので(製作はドカファミリー父)、試合の最中に同じ動きをすることもあった戦いだったが、やはりROBO-ONEでもバトルを体験しているドカ1のドカファミリー父の方が経験に勝り、3-1で勝利した。その他の試合は次の通り。
Automo03 10カウント 成龍
HAUSER 3-0 九共大ーZERO
スーパーディガー 2-0 県立福岡工業1号
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2回戦第1試合は、ドカファミリーの夫婦対決だった
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シンクロ?
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最後はドカファミリー父の貫録勝ち
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Automo03vs成龍。成龍はこのまま起き上がれなくなって10カウント負け。後で聞いたところによると、左肩のギアの故障とのこと
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豪腕3発で九共大ーZEROを沈めたHAUSER
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スーパーディガーは1ダウン先取した後、受けに回ったようだった。しかし、県立福岡工業高校1号はどうしてもディガーを倒せず、逆に3スリップ1ダウンにより2-0で勝負がついた
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● ロボスクエアならではの特別コラボ
2回戦が終わった後、ロボスクエアによるロボットショーが行なわれた。3台のRB2000が務めるバンド演奏でマノイが歌うというもので、他社製品同士のコラボパフォーマンスとなった。これはロボスクエアならではの試みで、解説を務めていた京商の岡本氏も感心しているようだった。
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夢の(?)RB2000とマノイのコラボ
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RB2000のバックバンドで歌うマノイ
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● 九州の強豪同士の戦い
準決勝は、ドカ1vsAutomo03、スーパーディガーvsHUSERという九州ロボット練習会の強豪同士の対戦となった。
準決勝第1試合はドカ1vsAutomo03。この試合、第13回ROBO-ONEでベスト4になったAutomo03が有利かと思われたが、リーチの長いドカ1はAutomo03をなかなか懐に入れさせない。両者とも手数を出すが、なかなかダウンを奪えず、試合は両者とも1ダウンをめぐる戦いとなった。そんな中でドカ1が横突きでAutomo03から1ダウンを奪った。Automo03はそのままダウンを取り返せず、ダウンカウント1-0でROBO-ONEベスト4のAutomo03が敗れるという波乱が起きた。
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準決勝第1試合、Automo03vsドカ1
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両者とも激しく打ち合った
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唯一のダウンシーン。この1ダウンを守りきり、ドカ1が勝利
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準決勝第2試合は、予選1位のスーパーディガーとHAUSERの戦い。九共大ーZEROを豪腕3発で倒して勢いに乗るHAUSERが、スーパーディガーとどう戦うのか注目されたが、試合ではスーパーディガーのパワーが炸裂。あっという間にパンチ3発でHAUSERを倒してしまった。しかもそのうちの2発はHAUSERをリング外に転落させるほどの威力で、「スーパーディガー強し」を見ている人すべてに印象付けた。
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準決勝第2試合、スーパーディガーvsHAUSER
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ダウンを奪っていくスーパーディガー
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最後はHAUSERをリングアウトに
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準決勝の後には、準決勝に残れなかったロボットがリングに上がってランブルが行なわれた。通信異常でドカ2と成龍がリタイヤする波乱もあって、なんと高校生の操縦する県立福岡工業1号と拓歩が生き残り、ランブルではこの2台が優勝ということになった。
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ランブル
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ランブルで生き残ったのはこの2台
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優勝決定戦の前には、Automo03vsHAUSERによる3位決定戦が行なわれた。HAUSERがダウンを奪って先行したが、2度目にダウンした時の衝撃で動けなくなり、そのまま10カウントを数えられて敗北。3位はAutomo03が獲得した。
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Automo03vsHAUSERの3位決定戦
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ダウンしたHAUSERはこのまま起き上がれず10カウント負け
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● 強さの復活したスーパーディガー
優勝決定戦は、ヒューマノイドカップで何度も優勝しているスーパーディガーと、Automo03を破り初めて優勝決定戦に臨んだドカ1との戦いとなったが、この優勝決定戦でもスーパーディガーの強さが炸裂した。
スーパーディガーは速攻でパンチで2ダウンを奪うと、最後はドカ1の後ろに回りこみディガーアタック(両腕をついての頭突き)で勝利。あっという間に優勝を決めてしまった。その様子は「激勝」という言葉が相応しいぐらいだった。ちなみにスーパーディガーは予選の2種目とも1位、またバトルトーナメントでも1ダウンも奪われていない完全優勝となった。
スーパーディガーのひろのっち氏は、第13回ROBO-ONEではぎりぎりの成績で予選落ちし、前回のヒューマノイドカップ・バトル大会では2回戦でAutomo03に敗れている。それだけに今回の優勝は「本当にうれしいです」と素直に喜びを表していた。今回のヒューマノイドカップ向けて、HAUSERのパンチモーションの研究や足裏の見直しなどひたむきな努力を続け、それが今回の優勝に結び付いたのだ。
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優勝決定戦のスーパーディガーvsドカ1
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速攻でダウンを奪うスーパーディガー
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最後はディガーアタックで優勝を決めた
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福岡市産業拠点推進課の土井裕幹課長から表彰を受けるひろのっち氏
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観客も参加した記念撮影
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1位から3位の記念撮影
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今大会のサプライズはなんといってもドカ1の準優勝だろう。ドカ1のカズ氏はこれまでバトル大会では1勝しかしていない。しかし、最近では九州以外の大会にも出場するなどして経験を積んでいる。その経験が今回の準優勝という形で実を結んだのだろう。ドカファミリーには「九州のロボットファミリー」として、これからも活躍してもらいたいものだ。
■URL
ロボスクエア
http://www.robosquare.org/
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( 大林憲司 )
2008/05/19 19:39
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