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「第24回ヒューマノイドカップ・バトル大会」レポート
~優勝はYOGOROZA-V


 4月6日、福岡市早良区百道浜のロボスクエアで、第24回ヒューマノイドカップ・バトル大会が開催された。地元九州を中心とした25台の二足歩行ロボットが参加。今回は関東から、Metaric fighter、トコトコ丸、サンダーボルトII、関西からはYOGOROZA-Vが参加した。


予選は3mのスプリント

ロボスクエアのあるTNC放送会館と福岡タワー
 予選は3mのパンチカーペットの上を走るスプリント3000。これに2回チャレンジし、ベストの記録の上位16台が決勝トーナメントに出場できる。今回から横歩きは禁止となり、前歩きか後ろ歩きでチャレンジしなくてはならなくなった。

 1回目のチャレンジではスーパーディガーが6秒68でトップに立ったが、2回目はYOGOROZA-Vが5秒を切る4秒93の好記録で予選1位となった。

 予選を通過した16台は次の通り。

1位 YOGOROZA-V(だうと) 4秒93
2位 スーパーディガー(ひろのっち) 6秒68
3位 サンダーボルトII(shiba) 7秒54
4位 HAUSER(クラフトマン) 7秒61
5位 九共大ーZERO(武田) 7秒99
6位 automo03(holypong) 8秒18
7位 DOKA2(ドカファイターRYO) 8秒40
8位 DOKA1(ドカファイターKAZU) 8秒76
9位 九共大ー疾風(水井雅彦) 9秒10
10位 成龍(湯前裕介) 9秒38
11位 Robobie-XSF(ZENO) 10秒61
12位 DOKA3(ドカファイターATU) 10秒87
13位 トコトコ丸(チームトコトコ) 11秒66
14位 Metaric fighter(森永英一郎) 12秒73
15位 朱鵬(村上) 13秒18
16位 カッチ・デヤンス(かつまろ) 14秒86


スプリント3000のコース スプリント3000のコースはロボスクエアの外に作られた 3台並んでスタートする

右から予選6位のautomo03、11位のRobobie-XSF、14位のMetaric fighter コースを斜めに駆け抜けた予選5位の九共大ーZERO 左から予選3位のサンダーボルトII、予選8位のDOKA1、予選10位の成龍。機体改造中の成龍は小成龍の頭をつけて登場

切れているが一番左が予選1回目は1位となったスーパーディガー。右がYOGOROZA-V、真ん中がトコトコ丸 速過ぎてブレているが、YOGOROZA-Vが4秒93でゴールまで駆け抜けた瞬間 布をかぶった怪しいロボットが……

正体は、ROBO-ONE予選でも話題となったGAT。しかも上半身とハリセンがついてる! GATは24秒19で無事に完走(順位は22位)。一番右が4位のHAUSER。これだけ大きさが違うと別の存在に思える

予選1回戦から注目のカードが登場

 決勝トーナメントは、予選1位と16位、予選2位と15位というように予選でいい記録を出した参加者ほど有利になる組み合わせとなっている。

 試合のルールは3分1ラウンドで、相手の有効な攻撃を受けて倒れた時にダウンとみなし、3ダウン奪われるか10カウント以内に立ち上がれなければ負けとなる。また3回スリップした場合、1ダウンとなる。

 また1回戦のみ、各機体が試合前にパフォーマンスを披露した。

 1回戦で一番の注目カードは、第13回ROBO-ONE重量級1回戦の再現となったHAUSER VS トコトコ丸だろう(ただし、今回は重量級ではなくどちらも3kg以下の機体となっている)。ROBO-ONEの時はHAUSERが勝利したが、その時の勢いのまま、HAUSERがトコトコ丸にパンチ3発を決め、3-0で勝利した。

 1回戦では、サンダーボルトII VS Metaric fighterのROBO-SPOT対決(この2人はヒューマノイドカップ・サッカー大会にROBO-SPOTチームとして参加し優勝したことがある)となった。予選の順位から見るとサンダーボルトIIの方が有利に見えるが、むしろサンダーボルトIIはサッカー用の機体で、必ずしもバトルで有利とはいえない。

 やはり試合は接戦となった。Metaric fighterが両手突きで2ポイントを先取したが、サンダーボルトIIが肘打ちから2ポイントを取り返す。しかし、最後はMetaric fighterの強烈な横突きが炸裂して、Metaric fighterが勝利した。


 他の1回戦の結果は次の通り。

・DOKA1 3-0 九共大ー疾風
・Automo03 3-0 Robobie-XSF
・スーパーディガー 3-0 朱鵬
・成龍 3-2 DOKA2
・九共大ーZERO 3-2 DOKA3
・YOGOROZA-V 3-0 カッチ・デヤンス


試合のリング 当日は日曜ということもあって、結構観客がいた バトル大会の前に行なわれた予選敗退者によるランブル。GATは巨大過ぎて攻撃が全く当たってなかった……ランブル優勝機体はTYRANT

試合前のパフォーマンス。やはりトコトコ丸の舞いは人気があった 磨きのかかってきた、スーパーディガーのスローインによるスイカ割り

サンダーボルトIIはキックを披露 Metaric fighterによる幻のROBO-ONE予選演技が披露された

カッチ・デヤンスは、ラケットに玉を当てて飛ばすデモを披露 YOGOROZA-Vのロンダート

HAUSER VS トコトコ丸 激しくぶつかり合う2台 パンチでトコトコ丸からダウンを奪う

サンダーボルトII VS Metaric fighter。Metaric fighterの横パンチをかわす ダウンを奪うMetaric fighter サンダーボルトIIもヒジ打ちでMetaric fighterを追い込んだが―

九共大ー疾風 VS DOKA1。ROBO-ONEでダイナマイザーからダウンを奪ったDOKA1の実力は伊達ではなかった 機動力でかきまわすRobobie-XSFをautomo03は落ち着いて攻撃 スーパーディガーは、最後は朱鵬をディガーアタック(両手を突いての頭突き)で仕留めた

DOKA2をリングアウトに追いやる成龍。成龍の腕は以前の成龍よりも攻撃力がアップしている DOKA3を倒す九共大ーZERO 最後はカッチ・デヤンスの足を掴んで倒したYOGOROZA-V

2回戦の4試合

 2回戦最初の試合は、最近急に頭角を現してきたHAUSERと、ドカファミリーの中で唯一勝ち残ったDOKA1との戦い。HAUSERはリングアウトで1ダウンを喫したが、強烈な横パンチ3発を決め、3-1で勝利した。

 2回戦第2試合は、第13回ROBO-ONE軽量級4位のAutomo03と、第12回ROBO-ONE軽量級3位のスーパーディガーとの九州練習会最強機体同士の戦いが実現。

 試合開始早々、スーパーディガーがダウンを奪い、スーパーディガー強しを印象付けたが、Automo03が反撃し、続けて3ダウンを奪って試合を決めた。これまでAutomoは公式戦でなかなかスーパーディガーに勝てなかったが、第13回ROBO-ONEの経験が生きたのか、スーパーディガーから初勝利を奪った。

 2回戦第3試合は、成龍とMetaric fighterの九州 VS 関東の戦い。Metaric fighterは強烈な横突きモーションを繰り出すが、うまく外して当てさせない。3スリップによる1ダウンをはさんで、最後は低い位置への横突きを決め、成龍が3-0で勝利した。

 2回戦最後の試合は、関西からやってきたYOGOROZA-Vと九共大ーZEROとの対決。戦いの途中でYOGOROZA-Vの一撃が九共大ーZEROのスイッチに当たってしまったらしく、九共大ーZEROが活動停止。再起動のためのタイムによる1ダウン(タイムは認められているが、代わりに1ダウン取られる)も含めて九共大ーZEROは2ダウンと追い込まれた。それでも九共大ーZEROは殴りつけるようなパンチで1ダウンを奪ったが、最後はリングアウトに追い込まれ、YOGOROZA-Vがベスト4にコマを進めた。


DOKA1 VS HAUSER 1度はリングアウトに追いやられたHAUSER HAUSERが3ダウンを奪って勝利

開始早々、automo03からダウンを奪うスーパーディガー スーパーディガーの攻撃をしのぐautomo03 ついにautomo03がスーパーディガーからヒューマノイドカップ初勝利

成龍 VS Metaric fighter 低い位置へのパンチが冴えて、成龍の勝利

スイッチが切れてしまった九共大ーZERO 九共大ーZEROはYOGOROZA-Vから1ダウンを奪ったが― 最後はYOGOROZA-Vの豪快なリングアウト勝ち

ベスト4の戦い

 準決勝の第1試合は、勢いに乗っているHAUSERとスーパーディガーを倒したautomo03の戦い。この2台は九州でのイベントで何度も戦っているが、とにかく2台ともスピーディーに動き回る。今回も激しく動きまわる試合となったが、勢いに乗るHAUSERがパンチ3発を決め、3-0でautomo03から勝利し、決勝戦に臨むことになった。

 準決勝の残りの試合は、YOGOROZA-Vと成龍の戦い。成龍は必ずしもパワフルな攻撃はしないが、うまく相手の攻撃の間合いを外してなかなか負けない戦い方をする。この試合でもYOGOROZA-Vの攻撃を外し、逆に横パンチからYOGOROZA-Vからダウンを先取した。

 しかし、ここからYOGOROZA-Vが地力を発揮。パンチ、掴み攻撃、両手突きと多彩な攻撃を繰り出し、3-1でYOGOROZA-Vが決勝戦に進んだ。


 決勝戦の前に負けた機体によるランブルと3位決定戦が行なわれた。3位決定戦のautomo03と成龍の決定戦は接戦となり、2-2でダウン数は同じ、スリップの数でかろうじてautomo03が勝利し、第13回ROBO-ONE軽量級4位の面目を保った。


HAUSER VS automo03 HAUSERの猛攻 HAUSERが、ROBO-ONE軽量級ベスト4のautomo03を撃破

最初にダウンを奪ったのは成龍だったが― YOGOROZA-Vの多彩な攻撃が炸裂 YOGOROZA-Vが決勝に進んだ

試合後の記念撮影―ではなくて、決勝トーナメントの敗者によるランブル ランブルでは3台が生き残り、観客の拍手判定でトコトコ丸がランブル勝利

アクシデントの決勝戦

 決勝戦は、関西からやってきたYOGOROZA-Vと地元勢のHAUSER。YOGOROZA-Vが1ダウン先行したところで、HAUSERがYOGOROZA-Vの背中に一撃を見舞って1-1のイーブンに戻した。しかし、この時の一撃でアクシデントが発生。YOGOROZA-Vに一撃を加えた時に、HAUSERの左腕が動かなくなってしまったのだ(後で聞いたところ、通信線の破断とのこと)。この状態でYOGOROZA-Vからダウンを奪われ、起き上がりができないために万事休すと思われたが、わざと転落して(転落による追加ダウンは取られない)このピンチは脱した。そして右腕だけで戦おうとしたが、YOGOROZA-Vは片腕だけで立ち向かえるような相手ではなく、YOGOROZA-Vが即攻でもう一度ダウンを奪って3-1で決着がついた。


 決勝トーナメントの結果は次の通り
・優勝 YOGOROZA-V(だうと)
・2位 HAUSER(クラフトマン)
・3位 automo03(holypong)


3位決定戦のautomo03 VS 成龍 automo03からダウンを奪う成龍 試合はダウンカウント2-2の接戦となった

決勝戦のHAUSER VS YOGOROZA-V HAUSERがYOGOROZA-Vからダウンを奪った一撃。この時の衝撃で、逆の左腕が動かなくなってしまった HAUSERの左腕がこのままの状態で固定してしまった

ダウンを奪われ、万事休すかと思われたが…… リングアウトで何とか逃れる YOGOROZA-Vがダウンを奪い、3-1で優勝を決めた

 YOGOROZA-Vのだうと氏に話をうかがったが、それによるとヒューマノイドカップの直前にサーボーモーターを交換し、今まで使っていたモーションが使えなくなり、急遽新しくモーションを作り直したとのこと。

 予選の1回目で7秒台の記録を出して、決勝トーナメントへの出場がほぼ確実になったので、高速で走れるモーションに変更して2回目では5秒を切るタイムで1位となった。

 またバトル用モーションでも、斜め後ろにいる相手に対して裏拳のようなモーションを組み込んで攻撃に使うなど、一歩進んだ姿勢を見せていた。

 当日のだうと氏は、虫が目に入ってまぶたが腫れており、決してベストな体調ではなかった。それを押して優勝したのは、やはりその積極的な姿勢がものを言ったのだろう。

 だうと氏は2006年3月26日に開催されたロボスクエア初の公募制ヒューマノイドカップ・バトル大会で優勝している。それをきっかけとして九州ロボット練習会が発足した経緯があり、今回のだうと氏の優勝も九州勢にとってはいい刺激になったのではないだろうか。


インタビューに答えるだうと氏 新川館長からトロフィーを受け取るだうと氏 観客も含めての記念撮影
065 大会に参加したロボットたち。GATはトロフィーよりデカいことが判明

大会に参加したロボットたち。GATはトロフィーよりデカいことが判明 トーナメント表

 なお、5年にわたって館長を務めていた新川信一氏が4月9日付けでマリンメッセ福岡に異動となり、この日のヒューマノイドカップ・バトル大会が新川館長にとってのロボスクエア最後のイベントとなった。後任の館長には辻睦雄氏が着任した。


大会終了後、参加者に挨拶をする新川館長 最後に新川館長の記念写真。ロボスクエアでの一番の思い出は「アシモの科学授業を成功させたこと」だそうだ

URL
  ロボスクエア
  http://www.robosquare.org/

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( 大林憲司 )
2008/04/21 00:13

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