10月8日、大阪のロボットベンチャー・ヴイストン株式会社は、同社が運営するロボットプロダクション「ROBO-PRO」に新加入する大型二足歩行ロボット2台の発表会を行なった。「ROBO-PRO」とはロボットによるステージショーやプロモーション、イベントなどを行なうロボット専門プロダクション。
2台のロボットの名前は「OmniZero.7(オムニゼロ・ポイント・セブン)」と「ALCNON?(アルクノン?)」。どちらもヴイストン社と日本遠隔制御株式会社が部品購入や製作機材の提供を行なって開発されたロボットだが、ヴイストン製のロボットという位置づけではない。なお2体のロボットは今週末に「ROBO JAPAN」内で行なわれる二足歩行ロボットの格闘大会「第14回 ROBO-ONE」に出場を予定している。
アメフト選手のような真っ赤なボディの「OmniZero.7(オムニゼロ・ポイント・セブン)」は身長1m、体重18kg。21自由度。製作者はヴイストンの開発責任者であり、同時にROBO-ONE常連のロボットビルダーでもある前田武志氏。ごつい上半身は転倒ショックを吸収するようになっている。
手先のグリップが特徴的な「ALCNON?(アルクノン?)」は身長1.3m、体重16kg。自由度は22。製作者は「F1-Project with 大阪産業大学テクノフリーク部」。ヴイストンの技術者有志ほかによるロボット開発プロジェクト「F1-Project」と「大阪産業大学テクノフリーク部」との合同チームだ。名前は、足がほぼ成人男性と同じくらいの長さのため「本当に歩くの?」という声が仲間内からもあったことから付けられたという。
|
|
OmniZero.7
|
首の後ろにはデモ用のモード切り替えスイッチなどを搭載
|
|
|
|
ALCNON?。足の長さは大人とほぼ同じくらい
|
背面
|
バッテリは首の後ろ
|
|
|
|
股間部分を後ろから
|
特徴のある腕
|
【動画】手先の動作機構
|
|
ヴイストン代表取締役 大和信夫氏
|
発表会見ではまずヴイストン代表取締役の大和信夫氏から経緯が説明された。ヴイストンは2007年度に大阪市・ロボットラボラトリーによる「大阪発! 次世代ロボット実用化研究開発助成事業」の採択を受け、ディスプレイ・キャラクターロボットプラットホームとしての実用化を可能にする大型ロボットの開発に取り組んできた。大型ロボットは見栄えがするしシンボリックな存在として利用しやすい。しかしながら開発にはそれだけの手間がかかる。それをニーズに迅速に対応できるよう短期間・低コストで実現するためのプラットフォームロボットである。
今年5月には身長130cmの「Vstone Tichno(ヴイストン ティクノ)」を開発。そして「Vstone Tichno」をベースに自律型サッカーロボットへカスタマイズして開発した「Vstone TichnoR」は、7月に行なわれたロボカップ蘇州世界大会にて「ベストヒューマノイド賞」を受賞した。
今回は、ロボットに対して情熱を持って製作している人たちを応援する形で、2者のロボット製作に対して物資での協力を行なった。モーターや部材、CPUボードの購入のほか、ヴイストン社内にあるABS材料の加工機械やバキュームフォームを行なう機械などを、業務時間外に2者に開放し、使用を許可した。理由は、「個人のやる気はすごい」、そして「バトルはもっとも過酷な実証実験フィールド」と考えており、それを支援するためだという。
エンターテイメントを志向しているとはいえ、まがりなりにも「バトル」するロボットを直接作っていくことは企業にとってはイメージ的にリスキーだ。だがロボット開発という目でみると、バトルには大いに意義があると大和氏は語る。
「ロボット同士がぶつかる、倒れる。人とのコンタクトがあることが前提のロボットでも、その実証実験は案外行なわれていない。バトルロボットはもっとも過酷な実証実験になる」。大和氏によれば、ROBO-ONEのような格闘バトルには、ロボカップ以上に厳しい側面があるという。また、企業の中だけで開発を続けているとアイデアや発想が固定化してしまう場合もある。そこで発想が柔軟でやる気のあるロボットファンたちの製作を企業として手伝い、運用したデータをフィードバックしていきたい、と考えたのだという。もちろんロボット製作者にとってROBO-ONEのような大きな競技会の存在はモチベーション維持にも繋がる。今後も場合によってアマチュアのロボットビルダーと協力していくことはありえるという。
|
日本遠隔制御 代表取締役 久山昇二氏
|
今回のロボットの関節には、「Vstone Tichno」にも使われているトルク100kg・cm、300kg・cmクラスの強力なサーボモーターが使われている。モーターのギヤボックスの提供という形で協力している日本遠隔制御 代表取締役の久山昇二氏も「いろんな形で過酷なテストをしていただいて、最終的に我々の商品にフィードバックされることを期待している。実際にどうなるのかは分からないが、いろんな形でサーボモータに反映させていけると思っている」と語った。
会見では2台のロボットの簡単なデモンストレーションと紹介のあと、エキシビジョンとしてのバトルも行なわれた。小型機のような素早い動きはなかったが、大型機同士があたる様子は大型ならではの魅力があった。
|
|
|
【動画】今度はALCNON?の連打でOmniZeroが倒れる
|
【動画】最終的にはOmniZero.7が2ダウンを奪って勝利
|
勝利のガッツポーズをするOmniZero.7
|
繰り返しになるが、両者は今週末にパシフィコ横浜で行なわれる「ROBO-ONE」に出場予定だ。これから両者は予選演技を仕込み、バトルモーションに磨きをかけることになる。果たしてROBO-ONEのリングは重量20kg近いロボットの重さを支えることができるのだろうか。
■URL
ROBO-PRO
http://www.robo-pro.net/
ヴイストン
http://www.vstone.co.jp/
日本遠隔制御
http://www.jrpropo.co.jp/
ROBO-ONE
http://www.robo-one.com/
■ 関連記事
・ ヴイストン、トルク327kg・cmのハイエンドサーボ「VS-SV3300」を発売(2008/07/10)
・ ヴイストン、「Vstone Tichno」を開発 ~身長130cmのプラットフォームロボット(2008/06/02)
・ ヴイストン、高出力サーボに対応したCPUボード「VS-RC003HV」を発売 ~ロボット用大口径全方位カメラも(2007/07/11)
( 森山和道 )
2008/10/09 00:37
- ページの先頭へ-
|