● 今回の変更点 ~「決勝出場権」認定、ルール変更、そして有料化
本戦の模様をお伝えする前に「第11回ROBO-ONE」の概要を、もう一度振り返っておこう。
本戦でバトルを行なったのは、予選で選ばれた上位27台+決勝出場権を持つ5台、合計32台。今回から「軽量級」「重量級」というランク分けが行なわれた。あらかじめ規定があるわけではなく、単純に本戦に出場することになったロボットの重量で軽量と重量の間で線引きして、各々に16台を割り振ったものだ。今回は大きなロボットが少なかったこともあり、軽量級と重量級の差はそれほど大きくはなかった。
本戦は軽量級の第1試合が行なわれたあと、重量級の第1試合が行なわれ、その後順次、軽量級と重量級がかわるがわるバトルする、という形式で行なわれた。軽量級、重量級それぞれで決勝戦と3位決定戦を行ない、優勝と準優勝、3位を決める。その後、軽量級と重量級それぞれの優勝ロボットが闘って、総合優勝が決められた。
今回から試合運びをスピーディにし、より納得感のあるものにするために、ルール変更が行なわれた。二足歩行ロボットによる大会である「ROBO-ONE」特有の不本意な歩行中の転倒「スリップダウン」は、これまで混乱の元だった。今大会からスリップダウンは2回で1ダウンとなった。現在のROBO-ONEでは、試合中のロボットは動き続けなければならない。そのため簡単に言えば、こけやすいロボットは負けることになった。
そして飛び込みジャンプなど「捨て身技」が1試合につき1回切りしか使えなくなったいっぽう、攻撃のときは足以外の一点が接地してもかまわなくなった。これらの変更によって全体として観客にも分かりやすい試合運びができるようになった。
要するにスリップダウン6回すれば負けてしまうわけで、今回は試合があっという間に終わってしまうケースもあったが(たとえば「マジンガアVSぺんと」戦)、それはロボット技術が向上すれば解消されるだろう。
なお、今回初めて行なわれた「認定大会」制度が導入された理由の1つには、事前にROBO-ONE決勝出場権を賞品として出す大会が増えれば、ROBO-ONEそのものへのエントリー台数が減るのではないかというROBO-ONE委員会側の思惑があったようだが、その思惑は見事に外れた。
なお第11回ROBO-ONE出場権認定大会は下記の5つだった。
・ロボファイト4
・姫路ロボ・チャレンジ
・第一回ツクモCUPロボットバトル大会
・わんだほー ろぼっと か~にばる
・ヒューマノイドカップ ロボットスプリント&ロボットバトル大会
上記の本誌イベントレポートを改めてご覧頂きたい。ROBO-ONE終了後に改めて見てみると、また違った視点で読めると思う。
最後に1つ。観客の立場で見ると、今回の「ROBO-ONE」が前回までの大会との最も大きな違いは、入場料金2,000円の有料イベントになったことだ。しかし、特に大きく変わった点は何もなく、逆に、一部メディアと観客がもめる場面があった。
今回は初めての会場だったことに加え、最大のエントリー人数、さらにシステムトラブルなどもありスタッフたちもバックヤードでかけずり回っていたようだが、今後も有料イベントとして運営し、参加者と顔なじみが多いイベントから脱却することを狙うのであれば、運営側は観客に対してそれなりの配慮をしなければならないだろう。
● 本戦編
さて肝心の本戦である。ROBO-ONEは半年に一度行なわれる。参加者達は半年あるいはそれ以上の年月と、自腹を切って、予選での2分間のデモンストレーションに挑む。それに通過して初めて本戦トーナメントに挑戦できるのである。それも、運が悪ければ1分以内で終わってしまうかもしれない。だから選手たちは皆、真剣である。
こうして最終的に勝ち残ったのが軽量級「クロムキッド」(製作者:KUPAKUMAさん)、重量級「ヨコヅナグレート不知火2代目」(製作者:Dr.GIYさん)である。総合優勝は「ヨコヅナグレート不知火2代目」。
的確な操縦でヒットアンドアウェイを主体とする軽量級、パワーと速度で相手を吹っ飛ばす重量級、それぞれの王道のような戦い方の両者がぶつかった総合優勝決定戦については既に速報版でお伝えしたとおりだが、まずはこの2体のバトルスタイルを紹介する。
● 軽量級優勝、総合2位「クロムキッド」
軽量級優勝、総合2位となった「クロムキッド」はロボットサッカーで機体と操縦技術を練り上げてきたロボットである。近藤科学による練習場所「ROBOSPOT」常連だという。
特徴は素早い動きと、ミスの少ない操縦テクニックである。現在のROBO-ONEの闘いは相撲に似ているところがあり、ロボットの距離感・間合いをおさえることが重要だ。クロムキッドはその間合いのとり方と操縦が非常にうまい。
ROBO-ONEのロボットビルダーのなかにはロボット製作に手一杯で操縦練習が不足している人が少なくない。そんななか、自分自身の機体と相手の機体の間合いを読んだ、無駄のない動きが光った。ロボットそのものの性能もさることながら、練習量の多さとそれを支える情熱が、勝利を呼び込んだのだろう。
やや決定力に欠ける弱みを感じさせながらも、試合中にもどんどん試合馴れしていった様子で、見事軽量級優勝となった。
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サッカーで鍛えられた機動性を持つ「クロムキッド」
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クロムキッド製作者のKUPAKUMAさん
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KUPAKUMAは、夫婦お二人のチーム名
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【動画】第一回戦。的確に攻撃を避け、攻撃を決めるクロムキッド。相手はTeamLilacさん「L7A1」
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【動画】第2回戦。相手はだうとさんの「YOGOROZA-V」。相手がスリップしまくって勝利
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【動画】軽量級準決勝。相手はマルファミリー「キングカイザー」。より的確な間合いで攻撃を放ち勝利。今回キングカイザー側は2連覇のプレッシャーに焦っていた感もある
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【動画】軽量級決勝戦。相手は「Taekwon-V」。強敵にも焦らず勝利をおさめる
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● ヨコヅナ相撲を展開して総合優勝「ヨコヅナグレート不知火2代目」
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ROBO-ONE常連のDr.GIYさん。ROBO-ONE本戦での優勝は初
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総合優勝した「ヨコヅナグレート不知火2代目」は、非常にロボットらしい姿のロボットだ。非常にパワフルで素早く、ダイナミックなパンチが持ち味。これまでも立ち技を中心とした闘い方を貫いてきたが、今回は相手機体を押し出す「電車道」は全く使わず、ひたすら立ち技だけで闘った。ボクサーのように猛ラッシュのパンチをひたすら繰り出すファイトスタイルは、会場の子どもたちからも人気があった。
重量級決勝戦は前回準優勝の遊さん製作「Ivre(イーヴ)」との対戦となり、これまた注目のカードだった。最初は低い姿勢から長い腕を振り回して攻撃するIvreにダウンを取られるも、最後は逆により安定感にまさった「不知火」が見事にヨコヅナ相撲を展開。勝利をおさめた。まさに決勝戦らしい、見応えある闘いだった。
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【動画1】【動画2】第一試合。ヨコヅナグレート不知火2代目VSトコトコ丸。不知火のパンチに吹っ飛ばされる「トコトコ丸」
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【動画】「トコトコ丸」は背面へ飛び込み攻撃をかけるが「不知火」に逆に跳ね返される
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【動画】第2試合。相手はなぐさん「AerobattlerPENTO」。ぺんとのパンチも見かけによらず強力なのだが、不知火のパンチがカウンター気味に決まり、ぺんとはリングから側転しながら落下。
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【動画】重量級準決勝。Toin Phoenix「プティ」は腕を振り回して攻撃するも、不知火は的確に攻撃を繰り出す。相手のマシン不調もあって圧勝。
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【動画】重量級決勝戦。Ivreにはやはり最初は苦戦
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【動画】歩行中、完全にIvreの間合いでの直撃を受けるも、それを跳ね返す「不知火」。パワーに会場も大きくどよめいた。逆にIvreは焦ったか、リング際で激しくアクションしてしまいリングアウト。
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重量級決勝戦直前。製作者Dr.GIYさん(背中)はロボットと同じポーズで仁王立ち。気合いが背中からも感じられる
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その他の試合をいくつか、動画主体で紹介する。まずヨコヅナグレート不知火と闘って破れた遊さん製作「Ivre」から。機体を刷新した「ivre」の特徴は真鍮製の重たいボディと、しかしながら素早い動き。そしてカニのように先端にはさみをつけた長い両腕である。
Ivreはその腕を振り回し、にゅっと掴みながらロボットを引き倒すことを狙った。なかには実際、配線ケーブルを抜かれてしまったロボットまで登場した。うっかり人間が手を出しても指を持って行かれそうな雰囲気を持ったバトル特化型ロボットである。Ivreの動きをご覧頂きたい。
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強力な腕を備えた「Ivre」
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試合前に「Ivre」を調整中の遊さん
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【動画】驚きのバランス復元力を実演。相手は「ツクモロボット王国」店長の荒井氏
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【動画】Ivre VS スギウラファミリー「ダイナマイザー」戦。ROBO-ONE常連「ダイナマイザー」も機体を刷新したがIvreに破れた
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【動画】Ivre VS. KAZZさん「KZR-5」。最後はIvreが無線ケーブルを引っこ抜いてしまって勝利。これからは配線処理も重要になりそう
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前回、見事な操縦と素早い動きで勝利を決めたマルファミリー製作「キングカイザー」および「キングカイザーJr.」は、共に軽量級トーナメントに出場。だが、キングカイザーは準決勝で「クロムキッド」に破れ2連覇はならなかった。その後、弟のryu君(小学校2年生)が操縦する「キングカイザーJr.」も、準決勝で韓国の強豪「Taekwon-V」に破れてしまい、3位決定戦は兄弟対決となってしまった。
「2連覇してみんなに自慢したい」と語っていた操縦のKen君(小学5年生)だが、逆に自分で自分にプレッシャーをかけてしまったのかもしれない。
また、丸さんによれば、今回のキングカイザーには2種類の自律攻撃モードが搭載されていた。敵が近くに来たら攻撃する「フルオートモード」、もう1つはパイロットが攻撃のタイミングを指示して方向と距離だけを自律で行なう「バトルアシストモード」の2つだ。完成度はまだ十分ではなく現在、練り込んでいる途上だという。
ところが今回のクロムキッド戦ではフルオートモードをオンにしたまま試合に入ってしまったため、操縦者が十分な間合いを待っている間に、機体が勝手に攻撃してしまうという事態が発生した。そのため、キングカイザーが焦っているかのように見えてしまったのだという。丸さんによれば「技術担当の私のミス。パイロットはいたって冷静でした」とのことだ。
いずれにしても、ロボットともどもまだまだ成長の余地が大きいので、次はもっと強くなって再挑戦してくれるだろう。
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【動画】マスタースレーブで大同工業大学ロボット研究同好会の「RL03 Indra」をダウンさせる「キングカイザー」
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【動画】似た攻撃を繰り出しあう「キングカイザーJr.」と「ナガレブラック」。
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【動画】兄弟対決となった3位決定戦。アンテナが立っているほうが「キングカイザーJr.」。
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そのほかの試合も新ルールによるスピーディな展開で、テンポ良く進み、春の会場は熱狂した。いくつかを動画で紹介する。
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【動画】相手を掴んで引きずり倒して投げをうつ「OmniZero.4」。相手のボディを実際に振り回していることが分かる。
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【動画】同じく「KZR5」を引き倒すシーン
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【動画】いっぽう「KZR5」は側面からの突きを主体としたバトル型ロボット。「Stormwaves2007」に連続で突きを入れて倒す場面
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【動画】マスタースレーブ主体で闘おうとした「マジンガア」だが、「ぺんと」の踏み込みパンチの直撃を顔面にくらって転倒
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【動画】「ナガレブラック」VS「ARUMO-SiR」。フラワー戦隊ナガレンジャーは前回の長井大会から大きく成長した。
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【動画】「Taekwon-V」に対して一度きりしか使えない回転技を使って勝負をかけたが跳ね返される「スーパーディガー」。十分な運動エネルギーを載せた攻撃でないと上位陣のロボットは倒せない
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【動画】側面攻撃のあと、すかさず後ろへ攻撃して相手を倒す「アリキオン」。どんな方向にも攻撃を出せるようにすることも重要。
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【動画】「ICARUS1」の横への突きでリングアウトする「九共大-疾風」。リングアウトは選手にとっては不幸だが会場は盛り上がる
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● ROBO-ONE宇宙大会のアピールも
試合の合間には、2010年開催を目指す「ROBO-ONE宇宙大会」のアピール・デモンストレーションも行なわれた。ROBO-ONE宇宙大会では「ROBO-ONE衛星」から大きさ10cm角に収納された4体のロボットが射出され、その後展開、チェーンデスマッチを行なうことになっている。
会場では、モックアップが太陽電池パネルを模したパネルを広げ、ホイールを回して旋回、ぶら下げられた2体のロボットが闘いの模擬を行なった。
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【動画】内蔵されたリアクションホイールを回転させて旋回する「ROBO-ONE衛星」の模型
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【動画】宇宙大会でのバトルを模擬した様子。ロボットの手と手は糸で繋がれている
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【動画】右のロボットは「on PC」で準優勝したロボットの実機。格納姿勢を取れる
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【動画】西村委員長が製作した大型ロボットも紹介された
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衛星に搭載するロボットアームなどの研究開発用プラットフォームとする予定だという
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「宇宙大会」への情熱を語る西村輝一ROBO-ONE実行委員長。参加者たちからは「ビッグボス」と呼ばれて慕われている
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次回のROBO-ONEは秋、地方での開催となる予定だ。
■URL
ROBO-ONE
http://www.robo-one.com/
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・ 「第11回ROBO-ONE IN 後楽園ホール」開催(2007/03/26)
( 森山和道 )
2007/03/29 02:31
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