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アキバロボット運動会2006レポート

~盛りだくさんのロボットに触れ、参加型のイベントで楽しめた3日間

 2006年11月3日~5日の3連休、東京・秋葉原のUDXビル2F“AKIBA SQUARE”にて「アキバロボット運動会2006」が開催された。主催は特定非営利活動法人 産学連携推進機構。協賛はNTT都市開発株式会社、ダイビル株式会社、鹿島建設株式会社、株式会社クロスフィールドマネジメント、九十九電機株式会社 ツクモロボット王国、加賀電子株式会社となっていた。

 昨年同じ秋葉原で開催された「アキバ・ロボット文化祭2005」は、ロボットの体験教育や実演販売をメインに据えたイベントだったが、今回は「ロボットに触れ、楽しむ3日間」と題され、ロボット競技や操縦体験、デモンストレーションなどを通じて実際にロボットと触れ合うことを主眼に据えたものとなっていた。見所満載の3日間だったが、今回はツクモ電気株式会社による「ツクモスタジアム」での日替わりイベントを中心にレポートしよう。


初日はロボットで文字通りの運動会

 3日間の先陣を切ったのは「第1回 ツクモCUP ロボット・アスリート大会」。複数の競技で順位に応じてポイントが獲得できるシステムで、全競技で得たポイントの合計で優勝を争う、というイベントだ。開催されたのは“ロボット徒競争”、“ロボット紅白玉入れ合戦”、“ロボット大玉ころがし”、“ロボット障害物競走”、“ロボット生き残り合戦”の5競技。最大20チームの枠いっぱいまでエントリーがあり、18機が出場した。

 “ロボット徒競争(2mのタイム勝負)”や“ロボット障害物競争(歩きにくい床面などを越えてクリアするまでのタイム勝負)”など、先輩格のイベントであるROBO-ONE Specialをイメージするような競技もあったが、難易度や競技の味付けがROBO-ONE Specialよりは優しくなっているような印象だった。考えてみれば、ロボットで遊んで楽しんでもらおうというのが趣旨なわけで、そういった視点で見ると、ロボットキットに付属するモーションデータでクリアできる5競技は、とてもうまいバランスで作られていたように思える。

 観客もここで初めてロボット競技会を見るような層が多かったのか、徒競走での「横歩きですばやくクリア」や、「前転でボールを蹴る」など、ROBO-ONEで見慣れてしまったようなモーションにもどっと沸く瞬間が何度もあった。

 個人的に興味深かったのは“ロボット大玉ころがし”だ。軽いとはいえ、ほとんどのロボットにとって自分より大きいボール(直径45cm)をコントロールするという、これまでにない課題である。二足歩行ロボットでは軽視されがちな手をうまく使う必要があるのでは、と考えていた通り、上位の機体は「片腕だけ出したまま走る」、「正面にボールを送るために両手を広げてガイドにする」というような工夫をモーションに組み込んでいた。これでボールがフィールドから落ちないように手で止めることまでできればスゴイのだが、それは次回以降への期待としておこう。

 5競技を行なった結果、最終的にゆ氏の「noir」と、九州から参戦した岩淵宏信氏のスーパーディガーが同点となり、急遽格闘による決勝戦を行なうことに。90cm四方の狭いリングで「落ちたら負け」というシンプルなルールだったが、さすがに上位の機体だけに安定度は高く、お互い攻めきれない戦いとなった。しかし最後はリング際で転倒したスーパーディガーをnoirが押し出し、決着をつけた。

 同点ではあったが4競技のうち徒競走以外の3競技でスーパーディガーが1位を取っていたうえ、残りの1競技(生き残り合戦)でもnoirとともに残っており、決戦に勝利したゆ氏自身も「勝ち数で負けてる」とコメント。表彰式では受け取った優勝カップを岩淵氏に譲る一幕もあった。


第10回ROBO-ONE準優勝という実績を誇るゆ氏製作「noir」。予選1番手で登場して、あっという間(5秒28)にゴール 【動画】赤い玉をコントロールしているのがnoir。左手だけ出して歩くことでボールを右に寄せている 【動画】10個の自玉を相手フィールドに押し込んで完全勝利したスーパーディガー

【動画】スポンジで歩きにくくなっている横をすり抜けるために足をクロスして進む繭(Project MAGI) 【動画】ROBO-ONEで言う“ランブル”による決戦。真ん中の円内かフィールドの外に完全に落ちれば失格というルールだった

【動画】急遽行なわれた、格闘による決勝戦 左から2位スーパーディガー(岩淵宏信氏)、noir(ゆ氏)、クロムキッド(くぱぱ氏)。それぞれツクモ電気のショッピングポイントが贈られた

「ROBO & PEACE」ミニライブ
 日替わりのデモンストレーションフィールドでは、開会式にも登場したロボットと人間のコラボレーションバンド「ROBO & PEACE」によるミニライブが行なわれており、注目を集めていた。

 また、この日開催されていた『ハヤカワSFセミナー「SFにおける人間とロボットの愛の歴史」』については別記事にアップされているのでご覧いただきたい。


2日目はガチンコのROBO-ONEバトル

 2日目に開催されたのは、「第1回ツクモ CUP ロボット・バトル大会」。イベントそのものはROBO-ONEやロボファイトのような、二足歩行ロボットによる格闘競技会」なのだが、この大会の優勝者には第11回ROBO-ONE(2007年3月24日~25日開催予定)において秋葉原地区代表として予選免除、つまり決勝トーナメントにいきなり出場が確約される権利がかかっており、その意味でも注目の大会となった。

 当日の予選は2mのダッシュでタイムを争い、上位16機が決勝トーナメントに進む方式。本大会の予選に比べれば格段に易しいもので、26機(エントリーは32機。6機が棄権)が挑戦した。

 じつは筆者個人としてROBO-ONEの決勝トーナメントに直結するだけに好タイムを期待していたのだが、トップタイム(5秒60:ARIUS)が同距離で行なわれた前日の運動会のトップ(5秒28:noir)より遅いという結果になってしまい、正直拍子抜けしてしまった。最近のROBO-ONEでは移動能力が高くなければ勝負にならないのだが、このレベルで決勝トーナメントに直結させてしまって大丈夫なのかと思ってしまったくらいだ。

 しかし、決勝トーナメントが始まるとその心配は吹き飛んだ。さすがに格闘に特化したロボットたちだけに、いざ相手を倒すとなればその能力は明白。特に決勝戦はもはやそれ自体がROBO-ONEの決勝と言ってもいいくらいの緊張感の中で行なわれ、わずかでも隙を見せれば倒されてしまう、居合いのような空気が漂っていた。最終的に勝利したのは第10回ROBO-ONEで準優勝に輝いたゆ氏の「ivre」。ゆ氏は前日の運動会も制しており、ツクモカップ二冠を達成した。

 前日の項でも少し触れたが、全体的に二足歩行ロボット自体をそれほど見慣れていない観客が主だったせいか、ROBO-ONEよりもアットホームな雰囲気の中で行なわれていたのだが、戦いが進み、ROBO-ONEのトップレベルに近いスピードや技術が見えるようになってくるとしだいに熱気を帯び、決勝戦の後には「すごいね」、「かっこいいね」といった感想が大人子供を問わずに漏れていた。

 現在のROBO-ONEは「誰でも参加できるイベントです。初心者でもどうぞ」……とは言えない競技会だが、前日の「運動会」とはまた違った二足歩行ロボットの世界として、これまでROBO-ONEを見たことがない、知らない層にアピールできたという点で大きな意味があったのではないだろうか。


予選1位の走りでゴール後にガッツポーズをとるARIUS(スミイファミリー)。前日の「ROBO-ONE GP in 流山」を終えての転戦 【動画】1回戦ワイルダー01とかじろうの試合

【動画】奇しくも夫婦での対戦となった3位決定戦アリキオン vs アリウス 【動画】決勝戦 旋風丸 vs ivre

京商株式会社の発売するロボットキット「MANOI」のアスリートカップ体験コーナーが設けられ、子供たちが操縦体験を行なっていた 日替わりデモンストレーションフィールドの2日目は、CMでもおなじみのASIMO。デモが始まるずいぶん前からお客さんが席を埋めており、あらためて人気を実感した

待機中、ハンガーにかけられているASIMO。けっこう珍しいショットかも

3日目は二足歩行ロボットでサッカー!

 最終日のイベントは、二足歩行ロボットキットの中でも人気の高い「KHR-1」や「KHR-2HV」を発売している近藤科学株式会社が主催する「第1回 KONDO CUP in アキバロボット運動会」である。同社のロボットキットのほか、全可動軸に同社のサーボモーターを使用している自作ロボットによる3対3のサッカー競技が繰り広げられた。じつはこの競技に筆者が参加してみたので、別レポートをご参照あれ。

 この日はサッカーつながりでロボカップのAIBOリーグに参加している東海大学と玉川大学がデモゲームを行ない、無線でコントロールされるKONDO CUPのロボットとはまた違った、自律動作でボールを捜し、サッカーをするロボットの面白さを紹介していた。


ロボカップのAIBOリーグでおなじみの東海大学と玉川大学によるデモ 【動画】1/100スケールの「νガンダム」にサーボを分解/改造して仕込んだ自作ロボットが特別デモンストレーションを行なっていた。スタイルを崩さずに組み上げた製作者の町 浩輔さんは何と高校生

「体験できる」展示が好評だった3日間

 「アキバロボット運動会2006」の3日間で会場を訪れた人は延べ10,700人(主催者調べ)。主催者側が目標としていた10,000人を見事に達成した。もっとも多かったのは2日目で、一般の人にもよく知られているASIMOのデモと、ホビー二足歩行ロボット競技会の代表格ROBO-ONE関連イベントの相乗効果があったのかもしれない。とにかく3日間、まともに通路が歩けないときもあるほど人が多いイベントだったというのが筆者の感想であり、正直驚いた。

 有料イベント(大人500円、学生は300円)でありながらこれだけの入場者を集めたのだから、やはりロボットに対する注目度は高いのだろう。未就学児や65歳以上のお年寄りが無料であり、会場でも多く見かけたのは事実だが、大多数は有料入場者のように見えた。

 何より、無料で参加できた昨年の「文化祭」の入場者が2日間で3,700人だったことを考えれば、今回の「運動会」は大成功だったといえるのではないだろうか。事前登録が必要なコンテンツが多かった昨年と違い、とりあえず会場に来れば「TVで見た」とか「愛知万博で見た」、「CMで見た」といったロボットを“かぶりつき”で見ることができるし、「学ぶ」というよりは「楽しむ」展示が多かったこともあるだろう。

 日替わりのイベントを中心にお届けした今回のレポートだが、NEDOによる鬼ごっこロボット「ASKA」の体験デモは毎回子供が満面の笑みで追いかけられていたし、バンダイ株式会社の「Net Tansor」の体験コーナーも盛況していた。むしろ「人が群がっていないブースなどなかった」と言い切っていいくらい、入場者が入れ替わり立ち替わりそれぞれのブースでロボット技術を体験し、解説に聞き入っていたのが、今回の「運動会」だった。

 残念なことがあるとすれば、10,000人を目標としていた会場で、ほぼ目論見どおりの入場者だったにもかかわらず、ロボットが人垣で見えないとか、疲れたときの休憩スペースが少ないとか、そもそも通路が狭くてすれ違うのも大変、といったオーバーフロー気味の状況がしばしば発生していたことだ。イベントとして楽しんでもらい、また来たいと思わせるには、そういった面でのケアは重要だと思うので、ぜひ改善をお願いしたい。

 日本を代表する電気の町・そして最近はオタクの町と呼ばれる秋葉原で行なわれたロボットの「運動会」。来年は何が行なわれるのかわからないが、ぜひ今年のような「体験できる」、「参加できる」イベントで、人を惹きつけるロボット技術に触れさせてほしい、そう思った3日間だった。


独立行政法人 産業総合技術研究所の開発した“世界一の癒しロボット”パロもギネス証明書とともに会場で展示。もちろん触ることができるようになっていた 3日間、キットを変えて行なわれていたロボット製作教室 作ったロボットで早速遊んでいる子供も多かった

教室に参加していない子供でもロボットで遊ぶことができるようになっていたEK JAPANブース 鬼ごっこ体験はNEDOブースで行なわれていた。子供たちにとってはちょっと狭すぎたかも。大人もやりたくなります(筆者だけか?)

URL
  アキバロボット運動会2006
  http://www.akibatechnopark.jp/project/robot2006.html
  【2005月11月29日】技術で集客! アキバ・ロボット文化祭2005開催(PC)
  http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2005/1129/robo.htm

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( 梓みきお )
2006/11/07 03:19

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