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戦歴1年半で勝率9割「マルファミリー」の秘密を探る

〜キングカイザーの生みの親・丸 直樹氏インタビュー
Reported by 森山和道

丸 直樹氏
 勝率9割2分4厘、通算成績73勝6敗。ホビーストによる二足歩行ロボット競技大会「ROBO-ONE」第10回大会で優勝した「マルファミリー」の成績である。活動期間は約1年5カ月間。突然現れて勝ちまくった、そんな印象さえある。だが、強い人には、やはりそれだけの理由があった。

 「マルファミリー」は、ロボットの設計製作を担当するお父さんの丸 直樹さんと、操縦を担当する健太君(小5)、龍馬君(小2)の息子さん二人、合計3人からなるファミリーチームである。

 丸さんの本業は鋳造の技術者だ。業務用の生産設備の設計やメンテナンス、シミュレーションを行なっている。バルブ関係などの水回りや、建築関係の仕事が多いという。

 生産ラインのモニタリングシステムなどのソフトウェアも自分で書く。だからリアルタイム制御が必要なソフトウェアエンジニアリングの知識は活かされている。また、もともと電気出身なので、FAや電気関連の知識もある。

 ただ、板金加工と鋳造加工は畑が全然違うし、機械部品を作っているわけではないので、ロボットには「全く関係ない」そうだ。アルミの板金加工もROBO-ONEに出るようになって初めてやった。もっとも「バキュームフォームを行なうときの型作りと抜きは普段の仕事と同じなので得意」と笑う。

 丸さん個人は、機械系にはクルマ好きが多く、ソフトウェアエンジニアリング系の人にはロボット好きが多いと感じているそうだ。確かにROBO-ONE参加者にもソフトウェアエンジニアリング系の人は多い。なお、丸さん自身は4人家族なのに今もツーシーターのオープンカーに乗っている。お子さんたちにもオープンカーは非常に好評らしい。

 ロボットトイはもともと好きで、タカラやトミーのロボット系おもちゃはいろいろ買っていたそうだ。だが、熱烈なロボットアニメファンだったわけではなく、ロボット名は「スーパーロボット大戦」を見て覚えたそうだ。

 最初のきっかけは、偶然、大阪での「ロボゴング」開催を知ったことだった。ロボゴングは近藤科学株式会社製2足歩行ロボットキット「KHR-1」対象にした競技練習会だ。エルエルパレスのロボットフォース事業部によって開催され、第一回は2005年4月3日に大阪産業創造館で行なわれた。

 当時の様子の詳細は石井英男氏の記事をご覧いただきたい。


 ロボゴングのウェブサイトは初心者にも分かりやすく丁寧に作られていた。滋賀に住む丸さんにとって大阪は少し遠かったが、見に行きたいと考えた。

 それと前後して、たまたまテレビで放送終了間際だった日本テレビの「ワールドレコーズ」を見た(2005年3月13日に放送終了)。当時「ワールドレコーズ」には「ロボットバトル世界一決定戦」というコーナーがあり、ROBO-ONEの上位ロボットたちのバトルが放送されていた。だがそのときはROBO-ONEに出ることはまったく考えなかった。「世界が違う人たちだと思ってました。ロボット一体に数百万円かかっているというし。これは見る世界なのかな、と」。

 だが、ロボゴングを見に行くと「テレビとは全然違う世界」が展開していた。初めて実物を見たKHR-1は、「ファイト!」の声がかかったあと、ロボット同士がリングの端と端から出会うまでに2分くらいかかるんじゃないかと思うようなスピードで、のろのろと動いていた。外装をつけているロボットもほとんどおらず、どちらが青コーナーか赤コーナーかもよく分からなかった。だが「これなら仲間に入れるかなと思った」。早速、「KHR-1」も購入した。

 ロボットそのものもは好きだったが、それまでの自作ロボットには、あまり興味がなかった。「自分のなかではロボット=ヒューマノイドだったから」だ。それがロボゴングで、初めて身近に感じられた。これなら競技にも参加できる。家で一人で動かしていても、すぐにつまらなくなるのは目に見えていたからだ。

 そこでまずは外装作りから始まった。子どもたちは「ガンダムがいい」と言った。でもガンダムは殴り合わないなとおもっていたが、「Gガンダム」がある。そして、たまたまシャイニングガンダムのプラモが家にあった。こうして「シャイニングG」が誕生した。KHR-1の組み立てそのものは一日で終わってしまう。その後、1カ月間ひたすら外装作りに没頭。

 そして5月、大阪での「ロボファイト」に出場する。最初からパンチやキックで倒すのは無理だと考えていたため、モーションは基本的に移動系重視で、攻撃技は飛び込みパンチのみ。競技会出場前日もデカールを張りに専念していたそうだが、見事に優勝を果たす。

 次は7月に東京で開催された「KHR-1ファーストアニバーサリー」に出場した。このときには自作のマスタースレーブシステムで操縦を行なった。元々モデルとしたシャイニングガンダムが操縦者のモーションをトレースして動くような仕組みになっていたからだ。


KHR-1ファーストアニバーサリー出場当時の様子 見事優勝を飾ったロボット「シャイニングG」

 だが丸さんは開発を始めた当時は「マスタースレーブ」という名前も知らなかったという。システム名にも「モビルトレースシステム」と名づけてソフトウェアを書いていた。ROBO-ONEのテクニカルカンファレンスで初めて、光子力研九所チームの「マジンガア」がマスタースレーブを使っていることを知り、オリジナリティを出そうとひずみゲージを使うなどして出場した。

 そして、ファーストアニバーサリーでも優勝した。「そこからですかね。急にかわり始めた。自分が、というか、周りから急に(笑)」。この後にROBO-ONEJクラス、そして後にはROBO-ONE本戦に出場するのだが、「でないとまずいのかな」という感じだった、という。まだまだROBO-ONEは遠い世界だと思っていたのだ。

 ファーストアニバーサリーの1カ月後に行なわれた、ROBO-ONE「Jクラス」には操縦者としてお子さんの健太君がデビューした。結果は3位。こうなると、次は「ROBO-ONE」出場しかない。周囲もそれを望んでいた。


「キングカイザー」誕生

 そしてROBO-ONEに出るためのマシンとして「キングカイザー」の製作が始まる。デザインはいわゆるスーパーロボット系にした。子ども達が喜ぶからだ。基本的に要求仕様はすべて子ども達から出ている。「クライアントは子ども達」なのだ。

 もっとも、デザイン上のこだわりは丸さん本人にも強い。赤いボディがキングカイザーの特徴だが、もしアルミ板金のまま塗装する暇がなかったら棄権するという。また、第10回ROBO-ONEでは「カイザーブレード」と呼ぶ折り畳み式の腕先パーツをつけて登場したが、以前は大きなナックルをつけていた。「やはり拳がないと気持ちが入らない」と笑う。

 そもそも、カイザーブレードをつけた理由も、これがないと頭部パーツをつけたまま前転できないからだったそうだ。オリジナルデザインの頭部には、別に何の機能もないのだが、やはり頭なしで出ることは考えられないそうだ。

 性能仕様の目標を決める上では、もちろん、ROBO-ONE上位陣からの影響も大きかった。2005年8月に幕張で開催されたキャラホビショーのバンプレストブースで、デモを行なった際、杉浦さんの「ダイナマイザー」と初めて手合わせをした。そのとき、あまりのすごさに驚愕した。「ここまで差があるのかと思いました。こっちはまるで止まっているかのような感じで、あっという間に回り込まれてしまう」。この機体では勝てない、と本当に思ったそうだ。「話にならない」と。どんなに重いパンチを持っていても、あたらなければどうということはない。足の速いマシンが勝つ――。そう感じた。


キングカイザー キングカイザーの側面。腕先からヒジにかけて伸びているのがカイザーブレード

キングカイザーの頭部。前転動作時などにはじゃまになるが、頭部が無いスタイルは考えられないという 丸氏製作のオリジナル壁紙をご提供いただいた。同氏こだわりのナックルを強調したデザインだが、現在のキングカイザーではやむを得ず取り外しているという

【動画】キングカイザーの軽快な動作。後半はペットボトルを殴り倒すデモ 【動画】第10回ROBO-ONEの規定演技でもあったジャンプ

 そこでスピードはダイナマイザーを目指した。「ダイナマイザーのように速く、マジンガアのように強く」が目標だったという。軸構成は最初はKHR-1の設計者でもある吉村さんのR-Blueシリーズを参考にした。徹底的にビデオを使って研究した。足を鍛えるためにバトルのかたわら「ロボプロ」主催のアスリート競技にも出場した。とにかく徹底的に速く歩かせることに集中した。

 キングカイザーの足運びは逆運動学を使っているわけではなく、4つのモーションの繰り返しからなっている。最初は歩幅を広くすることを目指した。だが自分の足裏以上に歩幅を伸ばすと不安定になることが分かってからは、サイクルを速くすることに力を注いだ。最初はサーボが指定した角度についてこないことがあることに気づかず、かなり苦労したそうだ。現在は、サーボのパワーが上がってきたこともあり、足を高く引き上げて歩行するようにしている。

 話を聞いていると、まるで短距離走選手のトレーニングのようだ。人間の短距離選手も足上げして腹筋を鍛えないと足がついてこないし、レースに出なければ強くならない。丸さんは3カ月間ひたすら足を速くすることに努力し、ようやく「ダイナマイザーの後ろ姿が見えるようになった」という。


これまで獲得したトロフィーの数々
 速度を十分向上させたあとの「キングカイザー」は、ほとんど負け知らずだ。第10回予選では高さ6cmの連続ジャンプ、12cmの高さからのしなやかな着地を見せた。

 第10回大会での動きを見ると、横方向への移動はまるで床を滑るように動いている。もともとはジャンプしながら移動すれば速く動けるのではないかと考えたのだという。しかし完全にジャンプしてしまうと空中で姿勢が不安定になり、ちょっとしたことで転倒してしまう。そこで、上には跳ばず、高さゼロで水平にジャンプさせる移動方式をとった。

 いまやその動きは、丸さん曰く「速すぎて僕だとリングアウトしちゃう」ほどだ。コントローラーでコマンドを送ったあと、実際に動くまでには若干のタイムラグがある。だから先読みして動かさないといけないのだ。「ニュータイプ専用機になっちゃってるんですよ」と笑う。

 そう、「キングカイザー」の強さは、もう1つある。操縦しているお子さん2人の腕だ。もともとは丸さんが操縦していた。だが途中からお子さんが操縦するようになった。しばらくは、横で丸さんがセコンドとして付き、声で指令を出してそのとおりに動かすというやり方をとっていた。しかしあるとき、声を出す前にロボットが動いていることに気づいた。そのとき、もう俺は操縦では負けた、と思ったという。


 ROBO-ONEではしばしば、操縦者がロボットの向きに合わせて体の向きをくるくる変えながら操縦している風景を見る。ロボットの座標と操縦者の視点からの座標を合わせやすくするためのちょっとした工夫だが、今やROBO-ONE上位は、そんなことをしていたらあっという間に負けてしまうレベルに達している。相手のロボットと自分のロボットの間合いを読み、特性を読んだ上で操縦する必要があるのだ。

 そして、どうやらロボット操縦の適応性や柔軟性は子どものほうが圧倒的に高いらしい。ROBO-ONE上位で操縦者が子ども同士の組がぶつかることが多く、しかもそういうケースは、試合にも駆け引きがあり、見応えがある。マルファミリーの2人の操縦者は間違いなくROBO-ONEのなかでもトップクラスの操縦スキルを持っている。

 「不思議なことに、子供たちも実戦で強くなるんですよ」という。昔はスパーリングをやらせても、弟の龍馬君は兄の健太君になかなか勝てなかったそうだ。ところが、Jクラスに出て5試合をこなして帰ってきたら「急にお兄ちゃんと互角になっていた」のだという。

 理由は定かではないが、たぶん、こういうことだ。「ずっと同じ相手とやっていても、だめなんです。実戦だと、いろんな人、いろんなロボットがいるでしょう。それで強くなるんですよ」。間合いも特性も分からないロボットと向き合う。その経験を通じて、止まっていたスキルがいきなり上昇するらしい。

 丸さんは「モチベーションの源は子供たちなんですよ。僕が独身で1人でやっていたら、こうはならなかったかもしれない」と語る。「自分がクライアントだから、このくらいでいいかと思ってオーケーを出してしまう。でもクライアントは子ども達だから、決してオーケーは出ないんです」。


勝てる人と勝てない人の差は「マネージメント」にある

手前のロボットは前代のキングカイザー
 だが、それだけで「勝てる」わけではない。丸さんたちは、ほとんど負けていない。理由はどこにあるのだろうか。

 「僕は、技術力とかモチベーションがどうのこうのではなくて、それ以前のマネージメントが違うんじゃないかと思うんですよ」という。

 ロボット対戦におけるマネージメントとは、どういうことだろうか。たとえば丸さんは、はじめて試合に出たとき、このように計算した。32台トーナメントなので、最高で5試合やることになる。だからバッテリは5個必要だ。そこで実際にバッテリを5個持っていった。

 ところが、現場に行ったらバッテリを1個か2個しかもっておらず、バッテリ切れで負けちゃう人が続出。中には高価なサーボを使っていた人もいた。そのサーボ1個でバッテリ5個買えるのに、と思ったという。

 「優勝するなんて思ってません、ってみんな言うんですけど、バッテリを持ってないと、思う思わない以前に物理的にできないんですよ。しかもそういうことが、Jクラスに出ても続いた。これはマネージメントが違うんじゃないかと。たとえばそういうことなんです」

 同様の準備は、予備パーツに関してもいえる。丸さんは壊れる可能性のある部品は事前に必ず予備パーツを用意している。

 「勝負で負けるのはいいんですが、マシントラブルで負けるのはエンジニアとして恥ずかしいことだと思っているんです。マシントラブルの相手は自分じゃないですか。相手に負ける前に自分にすでに負けているわけです。だから二重にも三重にもフェールセーフをかけています。機体の最高性能を上げるよりも、ちゃんと戦い抜ける機体を作ることが重要です」

 壊れやすいかどうかはもちろん事前のスパーリングで見つける。丸さんらは、通常の試合が3分間のところ、6分間でタイムをとり、6分×5ラウンドを全力でやっているという。理由はこうだ。「通常、機械のマージンテストは150%負荷でやるじゃないですか。僕はそれを200%負荷でやるんです。耐えられたら大丈夫だと。何かトラブルがあったり壊れたりするとダメだと判断する」。


頻繁に交換する可能性がある腕先にはメンテナンス性を考慮して、磁石に付くニッケルメッキのネジを使用している
 機体の構成にもマネージメントは活かされている。たとえば、ナットを使うとメンテナンスに時間がかかる。だからナットは絶対に使わない。交換用予備パーツの準備はもちろんだが、それだけではない。「キングカイザー」の機体のネジには剛性を考えてステンレス製のネジを使っているが、ステンレスは磁石につかないのでメンテナンス時の作業性に劣る。そこで、試合中にすぐに交換する必要がある腕先には、磁石につくニッケルメッキのネジを使っている。

 「そういうところに気を払うかどうかで決まってくるんじゃないかと思うんです」。強さとはそういうことなのだ。

 ただ、ROBO-ONEを始めとしたロボットホビーは、試合の形式をとってはいるものの、あくまで趣味である。実際に、勝つことが目的ではない人もいる。丸さんも、「マネージメントは人それぞれの問題」だと語る。センサーや、より良いモーターを買ったりして、高機能を目指す、そういう方向性も大いにありだという。

 丸さんも勝ちにひたすらこだわっているわけではない。この秋から地方で行なわれる二足歩行ロボット大会の一部に、ROBO-ONE決勝出場権が認められるようになった。優勝者は、ROBO-ONEで予選をパスして決勝に進出できる。だが丸さんは、出場権が認められているトーナメント大会には出ない、と決めている。

 「それはポリシーです。勝つ自信があるとか、チャンピオンのプライドだとか、そんな偉そうな理由では無いんです。主催者側は色々なロボットに出てもらいたいだろうけれど、頑張って出場している側からすれば、いきなりチャンピオンロボットが来たとなったら、それはないよと思っちゃうと思うんですよね」。だからエキシビジョン以外では出ない。美意識だ。


 これまでは、操縦者の技量と、機動力、攻撃力を重視した設計方針をとっていた。相手がどんなパンチを持っていようが、当たらなければ大丈夫だという考え方だ。

 だがつい先日、ROBO-ONE GP戦で、ペンギン型ロボット「ぺんと」の長い腕によるパンチを食らって敗戦した。いままでパンチを食らうことがなかっただけに、これにショックを受けた。そこで現在は防御にも力を入れていこうと考えているという。具体的には、攻撃を食らっても踏ん張ったり、それに応じた姿勢を取れる姿勢制御技術の開発だ。

 姿勢を建て直すための基礎技術として、ジャイロ、加速度センサー、地磁気センサーを組み合わせて、ヨー、ロール、ピッチ各軸の絶対値を検出するデモを見せてくれた。この3つを出せれば新しいところに行けると思う、という。実際にはさらに衝撃センサーなどと組み合わせて、殴られたときに逆方向の足を蹴ってバランスをとるといったことも可能になるかもしれない。

 現状では外部のパソコンに繋いで処理をやらせている。ROBO-ONEのロボットも、そろそろもう1つ、大きなブレイクスルーが必要だし、それに向かって参加者たちも動き始めている。現状のような動きではなく、全体の運動モーメントを考慮に入れた、より賢く、生き物っぽい動きをホビーロボットが見せてくれる日もそう遠くないかもしれない。

 いずれにせよ、ロボットの動きも速くなってきているので、将来的には、ロボットの自律性を上げていく必要がある。バトル競技においては、ロボットが操縦者の動きを先読みするようにして、「オールドタイプでもニュータイプに負けない操縦ができるように」していきたいと笑う。

 「あとは宇宙ですね。宇宙大会です」。丸さんは60気圧の小さなCO2のボンベにレギュレーターと電磁弁、そしてノズルにはプラモのバーニアを流用したスラスターを自作した。噴射はタイマーコントロールで制御し、パッパッパッパッと吹けるようにした。「ROBO-ONEスペシャル」のアスレチック競技「イーグル」で使うつもりだったが、手に仕込んだベアリングの調子が悪くてやめてしまったという。「でも推進力が出るんですよ」と熱く語る。

 ROBO-ONE宇宙大会にも出る気満々だ。「宇宙はもう1つの夢なんですよ。『新婚旅行は月!』って言ってたくらいですから。間に合わなかったけど」。ROBO-ONEには丸さんを始め、さまざまな専門技術を持っている人が大勢参加しているが、アマチュアだけではなかなか難しいだろうことは容易に予想できる。だが、丸さんは熱い。「音を聞いたらね、燃えますよ。自分で作ってみてね、こんなに燃えるとは思わなかった。バシュッ! バシュッ!という音を聞いてると、できる気がしてくるんですよ」。

 我々が取材している数時間、隣のリビングでは名パイロットであるお子さん2人、龍馬君はずっと「マインドストームNXT」をプログラミングし、お兄さんの健太君は「週刊マイロボット」を組み立てていた。完成したロボットの動きは我々にも見せてくれた。本当にロボットが好きなようだ。ロボットライターとしては気になる点なので、学校に他にロボットを作っている子がいるかどうかも聞いてみたが、他にはいない、とのことだった。


「マルファミリー」のメンバー。左が健太君、右が龍馬君。2人ともロボットの操縦は大人顔負けだ 健太君は取材中、黙々とロボットの組み立てに勤しんでいた

 もともと、牛乳パック工作など、何かを作るのが好きなお子さんなのだそうだ。奥さんから見ると、「また何かやってるなあと思っていたら、いつのまにか増えているなという感じ」で、いまのロボットも、あくまで「子どもの工作」の延長なのだという。

 もちろん、ロボットだけにはまっているわけではない。ロボットと同じくらい好きなのがサッカーだという。ただロボットをさわるようになってから、なぜボールが特定の方向に飛ぶのかとか、自分の体がどんなふうに動くのかといったことを、いろいろ考えているらしいという。

 やはりロボットはさまざまな力が問われるし養成される総合教材なのだな――。そんなことを、しみじみ感じた。


URL
  マルファミリー
  http://www.ne.jp/asahi/robot/kingkizer/

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2006/12/07 00:03

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