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通りすがりのロボットウォッチャー ロボットってどう操縦するの?
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Reported by
米田 裕
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クルマは最終的には“ロボット化”すると、世界的な自動車メーカーであるトヨタは言っている。
現在、世界中に自動車がどれぐらいあるのかわからないが、社団法人日本自動車工業会によれば、2005年末で世界全体のクルマの保有台数は約8億9,682万台だという。
少なくとも、これぐらいの数はロボットができるということか。現在の世界総人口は約66億人ぐらいといわれているから、8人に対して1台のロボット、もといクルマということになりますな。
これだけクルマが普及をした理由のひとつに、その操縦方法が世界共通である部分があると思う。
アクセルでエンジンの回転を上げ、ブレーキで停止、クラッチでエンジンからの動力伝達を遮断し、その間にギアを変え、ハンドル操作で左右へ曲がる。これらは世界共通なのだ。
なんともすごいことかもしれない。パソコンの操作方法もOSごとに違うし、電気製品はメーカーごとに微妙に操作が違う。メーカーの違う製品を買うと、最初はまごつくというのに、クルマはどこの国へ行っても同じ操作で乗れるのだ。
もっとも、方向指示器とワイパーのレバーの関係は、右側ハンドルと左側ハンドル車で違う。角を曲がろうとしてワイパーを動かしてしまうことは、外国へ行って運転したことがある人なら、一度はやっていることだろう(もしくは左ハンドル車に乗ったときにもあるね)。
それでも、基本的な部分では操作方法は変わらない。これが自動車が全世界へ普及していった理由のひとつであるといえそうだ。
さてロボットだが、その知能は身体の動きのようにはなかなか進歩をしない。それなら、移動手段や人のアシスタントとして動かす操縦型にするのが普及の早道だと思うが、その場合に全世界共通型の操縦方法はできるのだろうか?
● 遠隔操縦は目視範囲内で
ロボットの操縦といえば、外部からリモコンを使うタイプと、ロボットそのものに乗り込んで行なうタイプが、物語の世界では2大巨頭といえる。
「鉄人28号」では、正体不明のリモコンが使われていた。アンテナ兼レバーと、3つのダイヤルのついた箱だが、いったいどのように鉄人を動かしていたのかはわからない。
なんともアナログで、リモコンが他人に奪われてしまえば、その人間の操作で鉄人は動いてしまう。使用者の認証もない、そのうえ、アンテナを手で握っているのだから電磁波的にもかなりあぶないリモコン装置だ。
その後の「ジャイアント・ロボ」では、腕時計型の操作装置となり、音声で動かしていた。これなら、当人の声紋を登録するなどして、他人には使えなくすることもできそうだ。
こうした外部からのリモコン操作では、あまりに遠くからの操縦は無理で、ロボットを目視できる場所からの操作となるだろう。
ロボットからのフィードバック機構もないようなので、直接見ながら操作するしかないのだ。
たとえ、ロボットの見ているものが操縦者に伝えられ、ロボットにかかる負荷などのフィードバックがあったとしても、あまりに遠隔地にあるロボットのリアルタイム操作はむずかしい。
操縦に電波を使う場合、光の速さは有限だから、距離が遠くなるほど時間がかかるようになる。また、リモコン装置から強力な電波を出すと、操縦者に電磁波障害が起きるので、いったんどこかで受信して、それを増幅したり、リレー式に伝達する方法となるだろうね。
今でも、衛星によるテレビ中継や、インターネットを使ってのテレビ電話では時間差がある。電波の有限の速さと、途中の機器を経由することで、データの伝達に時間がかかってしまうためだ。
こうした状態が、リアルタイム操作が必要なロボットの操縦のときに起きると、うまく動かすことがむずかしくなる。
テレイグジスタンスといって、遠隔地に自分が行って体験することをロボットを使って代わりにさせようとするアイデアがあるけど、リアルタイム動作では、人とロボットの動作の時間差が気になるかもしれない。フィードバックもあるとすると、一定時間のずれは違和感を生むだろう。
● ロボットの操縦装置に必要なのは
遠隔操作型ロボットに対して、操縦者自身がロボットに乗り込んで操縦するタイプは、操縦とロボットの動作とのズレが少ないかほとんどないだろう。
「マジンガーZ」から始まる搭乗型巨大ロボは人気があり、現在もアニメでは定番といえる。頭部や腹部に操縦者が乗り込み、ロボットを動かすというものだ。
その操縦席も、外部が直接見えるものと、モニターによって外部を見るものがある。
人が乗って操縦するということで、自動車や建設用重機などの操作をイメージさせるが、実際のところ、どのような操縦機構なのかはわからない場合が多い。
なんとなく、レバーやジョイスティックを動かしたり、ボタンを押したりしているがどうなっているのやら。
なかには、他の乗り物から変形する物もある。飛行機から変形する場合、飛行機としての操縦もあるし、ロボットになったときの操縦もある。両方を共通の操縦装置で動かせるものなんだろうか?
まぁ、そういうものだと思うしかないんだけど、現実に操縦型ロボットを考えると、そこにはバーチャル・リアリティ(VR)技術は必要だろうなぁ。
搭乗型にしろ遠隔操縦型にしろ、モニターの映像だけでは伝わらない部分が多い。たとえば、物を持ったときの硬さや重み、そうしたものが人間側にフィードバックされないと無理に動かしてロボットを壊すことになりかねない。
アラームや警報ランプで視聴覚的に知らせるよりも、その人間の実感として伝えるにはVR技術が適していると思える。
それでも、ロボットが立っていても操縦者は座っている描写が多い。これだと、身体のそれぞれの部分へのフィードバックがきちんと伝わるのだろうか?
じつは僕はテレビゲームが苦手だ。あの小さなコントローラーで、全身の動きを指示するのが難しいからだ。
僕らの子供の時代には、テレビゲームはなかった。ゲームといえば、実際に球を転がし、フラッパーで球をはじき返すピンボールや、棒に付いた模型の自動車をコースに沿って走らせるドライブゲームなど、実際の身体の動きと連動していた。
ゲーム機自体が離れた町へ行かないとないので、普段は近所の公園で野球だの、コマ回しだのといった、実際に身体を使う遊びをしていた。
家庭にあるゲームといえば、野球盤ぐらいなもので、あとは双六を自分たちで作って遊んでいたぐらいか。
こんな遊びに慣れていたので、テレビゲーム時代となると、コントローラーのボタンの押し方やカーソルキーの使い方で技を繰り出すゲームは苦手となった。
今の子供たちは、生まれたときからテレビゲームがあるので、指先の動きと画面内の全身の動きが感覚的にわかるのだろうか。
しかし、Wiiのコントローラーのように、また身体を使うようにもなってきている。人間の動きのコントロールには、人間の動きをそのまま検出するコントローラーが自然だということか。
となると、ロボットを動かすにも、レバーやハンドル、ボタンだけという操作方法はないように思える。そして、操縦席に座ったままの方がロボット内部に居る場合には都合がいい。
● 人間の身体の延長としてのロボット操縦
現在、筋電位をコンピューターで解析し、ロボットハンドを動かすことが行なわれている。
こうした技術は使えないだろうか。
全身に筋電位を検出するセンサーをつけたスーツを着て、座ったままでも、身体を動かすつもりでロボットを操縦する。
こうした考えを進めると、脳からの信号を検出すれば、それだけで全身が動かせることになる。
今年1月24日配信の本誌で、アメリカからサルの脳信号をインターネットで送り、日本にあるロボットを動かしたというニュースがあったが、そうした操縦方法はどうなのだろう。
独立行政法人科学技術振興機構(JST)戦略的創造研究推進事業ICORP型研究「計算脳」プロジェクトによる実験だったが、サルにもフィードバックとしてロボットの映像を見せているが、自分が動かしていることを理解しているかは不明とあった。
サルと人間との間でコミュニケーションがとれないのだから仕方がない。実験になぜ人間を使わないのかと思ったが、大脳皮質へ100本の電極を刺したとあったので、そりゃ人間ではまずいわなぁ。
しかし、人間が活動するときには、必ず脳内でニューロンの発火(スパイク)が起きているから、それを頭蓋外部から検出できるようになれば、動きを再現できるんと違うかなぁ。
普遍的なロボットの操縦方法がどうなるのかわからない。メーカーや国の枠を超えて世界共通の物ができるのか、それぞれのメーカーに託されるのかは不明だ。
自動車の操縦方法が世界共通であるように、いずれは統一化は図らないと普及にも影響は出るだろう。
クルマは最終的にロボット化するといっても、搭乗者との関係は残るし、万が一、事故を起こせばその責任の所在を問われる。完全にクルマに自律させることはできないだろう。
となると、やはり操縦方法の問題はついてまわるだろうね。その進む道はやっぱりはるか未来へと続く遠い道だ。
まぁ、クルマは遠くへ行くための手段だから、ゆっくりでも前へ進んでもらいたいものだが。
■ 関連記事
・ 通りすがりのロボットウォッチャー 空の彼方にいるロボット(2008/01/25)
・ クルマは最終的にロボット化する ~トヨタ技監・渡邉浩之氏によるロボットビジネス推進協議会特別講演レポート(2008/02/21)
・ サルの大脳活動の信号でロボットを動かす ~JSTとデューク大学が共同実験(2008/01/24)
米田 裕(よねだ ゆたか)
イラストライター。'57年川崎市生。'82年、小松左京総監督映画『さよならジュピター』にかかわったのをきっかけにSFイラストレーターとなる。その後ライター、編集業も兼務し、ROBODEX2000、2002オフィシャルガイドブックにも執筆。現在は専門学校講師も務める。日本SF作家クラブ会員
2008/02/29 00:07
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