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クルマは最終的にロボット化する
~トヨタ技監・渡邉浩之氏によるロボットビジネス推進協議会特別講演レポート


トヨタ自動車株式会社 技監 渡邉浩之氏
 2月20日、「ロボットビジネス推進協議会」が設立一周年を迎え、港区の機械振興会館で行なわれた総会終了後にトヨタ自動車株式会社 技監の渡邉浩之氏が特別講演を行なった。演題は「持続可能なモビリティ社会の実現に向けて」。

 「車も最終的にロボット化する」。渡邉氏はまず最初にこのように講演の概略を述べた。

 車は、社会に大きな恩恵をもたらしたが、マイナス面もある。たとえば環境に対しては負荷を与えている。二酸化炭素排出量のうち運輸セクターは23%を占める。また原油の可能採掘量のピークは20~30年後で、2026年~2047年からは、落ちていく可能性があると予想されている。しかもその予想は早まっているという。

 社会的にも交通事故、渋滞、モビリティ地域格差といった問題がある。車の渋滞はCO2、NOxなど排出ガスの相対的増大ももたらし環境問題にも繋がる。環境負荷を減らすためにも都市の渋滞を解消する必要がある。また、いわゆるBRICs各国では急激な勢いで車の保有台数が伸びている。


CO2削減は大きな課題 石油の将来 BRICsでの保有台数は上昇中

 車のエネルギーパスを見ると、石油など一次エネルギーを燃料製造技術で燃料に変え、燃料をエンジンのようなパワープラントを通じて駆動パワーとするという経路をたどる。このエネルギー効率を良くするため、車は改良を続けてきた。

 プリウスのようなハイブリッド車両はその代表例である。車の平均CO2排出量が140g/kmであるのに対し、プリウスは104g/kmを達成している。また加速性能も向上している。組み合わせはどうあれ適切なときに適切なパワープラントを使う「ハイブリッド」は究極のエンジンだと考えられる。

 エネルギーの多様化、化石燃料からの脱却を狙うのが「プラグイン・ハイブリッド」である。家庭用コンセントで充電できる車だ。25km走行してそのうち13kmを電池で走る車ができたとすえば、ユーザーメリットもあり、コストが8%下がる。深夜電力を使うと41%も下がるという。発電システムによって減少率は異なるが、CO2排出も下がる。

 燃料製造工程でも技術改良は進んでいる。できるだけ水素リッチな形にするための脱カーボン化とCO2固定技術(CCS:Carbon Capture and Storage)だ。水素製造時に二酸化炭素を固定することで、さらに二酸化炭素排出を減らすことができる。

 バイオ燃料はもっと糖化とアルコール化の効率を上昇させる必要がある。現状利用可能なバイオマス資源から変換される液化燃料と、伐採可能な森林の量を足しても、世界の自動車消費エネルギーの20%程度にしかならない。また森林伐採をこれ以上進めることは環境保護の観点からも望ましくはない。将来的にはバイオ燃料自体に分子的なサインを入れることで適正な材料から作られたのかどうか、トレーサビリティを実現する必要等もあると考えられているという。

 つまるところ将来の自動車エネルギーはどうなるのか。電気、バイオ、化石燃料のトライアングルの中で、車はやがて電動ハイブリッド化するというのが渡邉技監の考えだ。将来的には駆動パワーを小さくしても移動できる輸送手段を考える必要がある。大きなエンジンを動かして効率を良くしても本来的な効率の良さとはかけはなれているからだ。

 おおざっぱにいって、今後の輸送性能はエネルギー消費率と平均車速からなる性能係数で見ると7倍にする必要がある。そのためには車の改良だけではなく、多様な交通手段の最適かつ快適な組み合わせの検討、インフラ改善による交通流の円滑化、単位エネルギー消費量の提言が必要だ。トヨタでは社員に協力を呼びかけてTDM(交通需要マネジメント)の実験を行なっている。

 理想の車とは、「西遊記」の「キン斗雲(きんとうん)」のように、呼べば現われ、必要なくなったらどこかに行くようなものだという。このようなモビリティを実現するためには単なるイノベーションだけでは無理だ。総合的にさまざまな施策が必要になる。


燃費と加速性能を実現したハイブリッド車 究極のエコカーはハイブリッド プラグイン・ハイブリッド車のメリット

モビリティの性能評価 新しい交通社会の実現のためには多様な交通手段やインフラとの協調が必要 サステナブル・モビリティを目指すと車は電動ハイブリッド化する

 たとえばトヨタでは「統合安全コンセプト」を掲げ、すべての運転ステージで安全を確保することを目指している。外界カメラ、ミリ波レーダー、ドライバーモニターカメラなどを使ってプリクラッシュセーフティ技術がいまあるが、それにさらに加えて車車間通信や路車間通信で伝えたり、歩行者と通信するといったユビキタス技術と組み合わせた「インフラ協調システム技術」が実現すれば、より安全な車ができる。

 将来の車は「無駄な動きをしない、オートモーティブからロボモーティブへ、ロボット化していく」という。現在の車は車道しか走れないが、車は、人間が行けるところにはどこにでも行ける技術へと変わっていく。パートナーロボット研究は、その一環だ。

 トヨタが発表した倒立2輪移動ロボット「モビロ」は、段差や坂道であっても搭乗した人間は姿勢を保ったまま移動できる。またシートを前後に動かして段差衝撃を吸収することもできる。そのほか、リアルタイム経路生成による自律移動機能も研究されている。「ロビーナ」や病院での介護犬ロボットに対して応用されている。

 また他の例として渡邉技監は、昨年の東京モーターショーでデモされた「Personal Mover」の動画を示した。「Personal Mover」は立ち乗り型の2輪モビリティで、セグウェイのように体重移動によってコントロールするデバイス。「現状では10kgくらいあるが、最終的にはハンドバックに入るくらいのものにしたい」という。「もっと魅力のある車を作らなくてはいけない。こういう移動体があたらしい商品になるかも」と考えているそうだ。


プリクラッシュ・セーフティとインフラ協調技術 自動車からロボット化した「自働車」へ 行きたいところにはどこでも行けるモビリティの実現へ

「モビロ」はスイングアーム・スライドシートを使って常にシートをフラットにできる 斜めになっている坂道でもシートはフラットのまま スライドシートで外力をある程度吸収できる

トヨタ会館で働く「ロビーナ」による地図の自動作成 持ち運べる新しいモビリティ「Personal Mover」 【動画】東京モーターショーでの「Personal Mover」のデモの様子

 では、これで車の持続可能性が確保できたか? そうでもない、という。移動体はもっとわくわくする空間であるべきだし、乗りたくなる車があるべきだと考えているという。そのためにどうすればいいか。トヨタでは人間の五感、生体内の変化を研究しているそうだ。生体内の変化といっても化学的・物理的な変化に還元できる。それが十分に解明できれば、楽しくなる車を作ることが可能だと考えられるからだ。

 最終目標は「人の生活を豊かにすること」だという。トランスポーターとしては多様化、それにインフラを含めた各種技術との融合が求められる。その技術融合の核になるのが、IT、ITS、そしてRTだという。

 渡邉技監は安全技術についても触れた。産業用ロボットには個別機械安全規格があるが、人と接するパートナーロボットにはあたらしい規格が必要であり、それには産官学の協力が必要になる。また「産産連携」によるバリューチェーン創出も必要となるだろうと述べた。

 最後に「1トンもある車に人間が一人乗って動かすのは旧石器時代。これからはもっと簡便な乗り物が必要になるのではないか」とまとめた。


わくわくして乗りたくなる車を目指す 人の五感そのほか生体の研究を行なっている

技術の将来図 ロボットビジネス創出のためには産業と産業の連携も重要

URL
  トヨタ
  http://www.toyota.co.jp/

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( 森山和道 )
2008/02/21 16:06

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