1月15日、独立行政法人科学技術振興機構(JST)戦略的創造研究推進事業ICORP型研究「計算脳」プロジェクト(研究統括:株式会社国際電気通信基礎技術研究所(ATR)脳情報研究所所長の川人光男氏)は、米国デューク大学教授のミゲール・ニコレリス(Miguel Nicolelis)氏らと共同で、アカゲザルの大脳皮質活動情報から読み取って再構成した関節角度をネットワーク経由で米国~日本間で伝送し、リアルタイムで等身大ヒューマノイド・ロボットに歩行動作をさせることに成功したと発表した。
デューク大学の成果である脳活動からの歩行状態の実時間解読技術と、インターネットを介したロボットの脚部制御技術を組み合わせた。脳と機械を繋ぐ「ブレイン・マシーン・インターフェース(BMI)」技術において画期的な成果であり、脳の計算モデルをロボットに組み込んだ「階層BMI」の口火を切ったものとして注目されるという。
今回、操作される側となったヒューマノイドロボット「CB-i」は2005年からおおよそ2年をかけて米国カーネギーメロン大学ロボティクス研究所と共同で開発したもの。
身長155cm、体重85kg。自由度は51自由度。油圧・空圧・電動を組み合わせた構成になっており、4台のビデオカメラによる視覚、マイクによる聴覚、ジャイロや加速度センサーを使った前庭感覚、力センサーによる力覚などを持つ。各関節は人間並みの稼動角度と柔軟さを持っており、負荷、剛性、角度を独立に制御することができる。制御は外部PCクラスタによる実時間制御で行なっている。人間のような動きを実現できるロボットだという。
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CB-i
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頭部のアップ
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手のひらの構造。空気圧で作動する
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足首
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PCクラスタとは無線で接続されている
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デューク大学ニコレリス研究室のアカゲザルのほうは大脳皮質の第一次運動野と第一次感覚野の境界付近に100本の電極を刺されており、そこからおよそ300個の神経細胞の活動を読み取る。サルをトレッドミル上で歩行させ、その発火パターンから片足の股関節と膝関節の角度位置を読み取り、それをインターネット経由で送って2本の足の動きとすることで、歩いているかのような動作をロボットにさせることに成功した。
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【動画】デューク大学から送られるサルの神経活動をベースにしたシグナルで動くCB-i
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【動画】後ろのモニターに映っているのが送られてきている信号
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サルのほうにはロボットが動作している様子の映像を見せているが、サルがそれを自分で動かしていると思っているかどうかは今後の研究課題の一つだという。
計算脳プロジェクト・ヒューマノイドロボットグループ・グループリーダーのゴードン・チェン(Gordon Cheng)氏のほか、研究員の森本淳氏、玄相昊氏らによれば、今後は単純な運動レベルからより高次な運動機能まで多様な研究を行なっていきたいという。
また、今後の応用としては、ロボットのセンサーデータをサルの脳に直接、電気信号で戻して刺激することで視覚などの感覚刺激を与えたり、下半身麻痺の人のための「外骨格BMI」技術など運動機能再建技術も考えられるという。ロボット単体を使って、運動制御の研究も行なっていくとのことだ。
■URL
JST
http://www.jst.go.jp/
計算脳プロジェクト
http://www.cns.atr.jp/hrcn/ICORP/
( 森山和道 )
2008/01/24 00:04
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