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ノモケンの「素組でロボット」
バンダイ 1/72スケール「VF-25F メサイアバルキリー アルト機」(その1)

飛行機からロボットへ。時空を超える変形ギミックを体験する
Reported by 野本憲一

 このコーナーは「ロボットのプラモデル」を組み立てて、その姿やギミックを中心に紹介していく。作り方は、塗装などをせず、あえてキットのまま組み立てていく“素組(すぐみ)”に限定。ここでは模型としての仕上がりを高めるよりも、キットを手早く楽しむことを優先させるのだ。

 最近のキットは、成型色(パーツの素材色)だけでもかなり色分けされていて、無塗装でも見栄えのする姿に仕上がるものも多い。また、塗装の剥がれを気にせずに動かして遊ぶこともできるのもメリットだ。購入した模型を貯め込まずドンドン組むためにも、レッツ素組!




 「リアルな戦闘機がロボットに変形する!」。1982年に放送されたTVアニメ「超時空要塞マクロス」に登場した主人公メカ「VF-1バルキリー」以来、「変形」メカニズムはアニメロボットに欠かせないギミックとして取り入れられてきた。

 プラモデルやトイなどで、そうした変形を再現する場合、以前は形状の整合性や強度の点など、ある程度妥協する部分もあったのだが、近年はCGによる検証や、精度の高い設計、生産が可能になり、その再現度も飛躍的に向上している。

 今回は連載第1回目として、バンダイホビー事業部より発売中のプラモデル、マクロスシリーズ最新作「マクロスF(フロンティア)」の主役機「VF-25F メサイアバルキリー」で、その最新“変形”ギミックを体験してみよう。


バンダイ 1/72スケール「VF-25F メサイアバルキリー アルト機」。マクロスF(フロンティア)の主役メカ。3形態の完全変形を再現したプラモデル。価格は4,725円 パーツは13枚(A~M、各1枚)のランナー枠で構成。材質はポリスチレンとABS。組み立ては接着剤の要らない、はめ込み式スナップフィットモデル。機体マーキングはシールとデカールが付属し、どちらかを選べる

変形する3形態

 バルキリーといえば、ファイター、ガウォーク、バトロイドへの変形無くしては語れない。このキットではそれらを違和感なく再現することに成功している。まずはその3形態をご紹介しよう。


ファイター
実際の戦闘機のテイストが盛り込まれた飛行形態(ファイター)。変形機構を内包しつつ、航空機らしさが優先されている
ガウォーク
ファイターから手、足を展開した「ガウォーク」形態。単にファイターから人型への変形中というわけではなく、この形態になるためのギミックも必要になる
バトロイド
変形後の人型(バトロイド)形態。細身だが破綻のないロボット形態となっている。この形態で手足も可動し、ポーズも自由にとれる

組み立ては「ファイター」から

 組み立ての前に、キットの特徴や注意点など。このキットではファイター形態を基本に組み立てを行なう。


パーツのアップ1
キットの各パーツにはパネルラインや内部メカなど繊細なモールドが施されている
パーツのアップ2
平面部だけでなく、ランナー枠に対して“縦”の面にも積極的に彫刻を施している
パイロット
パイロットの上半身は一体成形で再現されている。周囲の枠(ランナー)の太さが約3mmなので、その小ささ、繊細さが分かるだろう

説明書1
組み立て説明書の最初には、必要な用具、説明図の読み取り方、パーツの切り離し方が書かれている
説明書2
組み立てはファイター形態ですすめていくことになる。図をよく見て、パーツの向きを間違えないように。また、“ふきだし”になっているところから先に組み立てていく
使った道具
組み立てに用意した道具。左から模型用ニッパー、デザインナイフ。ピンセット、紙ヤスリ(1000番)。模型店に行けば一通り購入できる

パーツ切断1
部品の切り出しでは、ゲート(部品とワクをつないでいる部分)をキッチリと切り取る。模型用ニッパーは切り口が平らになるので、部品に当てながら切れる
パーツ切断2
ゲートの出っ張りが無くなったパーツ。はめ合わせや可動の邪魔にならないように、各パーツのゲートを仕上げていく
ゲート処理
パーツの曲面に付くゲートは、周囲の面に合わせて、紙ヤスリなど少しずつ削るといい

機首~コクピット

 ファイターで機首となる部分は、先端、側面、下面のそれぞれに分割され変形ギミックが入る。パーツ数もかなり多い。それでいて完成後はノーズからの綺麗な面で1つに繋がるところも見所。


機首先端パーツ
始めに作るのは機首先端。外装は上下と後面。その中にジョイントアームが入る。アームの前側軸部は、スライドするようになっているのがポイント
機首先端完成
機首先端が組み上がったところ。後ろに突き出たアームで、後部と接続すると共に、変形時に機首の“折り曲げ”が可能になる

前脚カバー
これは前脚(前輪)を収納する部分のパーツ。細長い中央のパーツがカバーとして開く
前脚カバー組み上げ
前脚収納部を組み上げたところ。写真左が前側で、そこに機首先端のアームを取り付けることになる
機首フレームパーツ
機首(ファイター形態のコクピット周辺)のフレームとなるパーツ。いくつもの関節が繋がる形になる。写真右が先端側

機首フレームの組み上げ
機首フレームの組み立て中。最後に左右から挟み込むパーツの中に、2重関節が内包される
機首フレーム完成
機首フレームの完成状態。前側(写真右)のブロックとそれ以降が独立して上下にスイングする。下にピンの2本出たパーツに注目
機首フレーム+下面パーツ
機首フレームに機首下面となるパーツを取り付ける。下に2本ピンの出たパーツを上下から挟むように囲む

機首フレーム+下面パーツ2
下面パーツを取り付けたところ、上側に半円に突き出た部分が、円弧のスライド溝に掛かっている。これにそって、フレームの先端ブロックと、下面部分が上下スイングする
機首フレーム+腰ブロック1
機首フレームの後端に、バトロイド形態での“腰ブロック”を取り付ける。フレーム後端の軸をグレーのパーツのスライド溝で受ける
機首フレーム+腰ブロック2
腰ブロックとなる組み上げたところ。上面の半楕円状のパーツは、前方の軸だけで支持されているので、この段階では上下にパタパタと動く

腰ブロックカバー、股関節
腰ブロックに上下に外装をはめ込む。その際、下側には“四角い枠”状のパーツを挟み込む。これが股関節軸となる重要なパーツ
股関節パーツ
腰ブロックを下から覗いた状態。股関節パーツはグレーのパーツに枠の一部を咥えるように取り付ける。バトロイド形態では、ここを軸として股関節が前にスイングする
股関節パーツ後端
股関節パーツを後ろから見たところ。ファイター形態では、このように腰ブロックの曲面部にピタリと合う

腰ブロック上面+シール
腰ブロックの上面パーツは塗り分けのためのシールを貼る。側面を白いシールで囲む様になる
腰ブロック完成
機首フレームから腰ブロックまでが完成した状態
前脚~腰ブロック
先に作った前脚収納部を機首フレーム先端に取り付ける。これで機首の下側になる部分が完成。写真の様に下側に折れ曲がるギミックが入る

コクピット
コクピット内部パーツ。ここはパイロット上半身以外は一体成型なので簡単
コクピット+機首フレーム
前脚収納部を左右から挟むように側面の黒いパーツを取り付ける。この際、コクピットパーツも一緒に挟み込む。前脚部からここまでが機首の上半分の“芯”になる
機首外装パーツ
機首の上面、下面、前側断面にそれぞれ外装を取り付ける

機首外装取り付け
外装を取り付けた機首部分。ようやく航空機の機首らしくなってきた。色分けに合わせたパーツ分割で、組むだけでシャープに仕上がる
機首先端取り付け
先に組んだ機首先端を取り付ける

機首完成
キャノピー(コクピットのガラス)まで取り付けて、機首全体と腰ブロックまでが完成
腰ブロック
腰ブロックはファイター形態では機首から繋がるラインに収まるが、ヒンジ部で後ろに引き出すことで、このように折れ曲がる

頭部

 頭は特に難しいところはないが、意外にパーツ数が多い。


頭部全パーツ
頭部の全パーツ。ポリキャップを中心に各パーツを重ね合わせる。複雑な形状と色分けを再現するためにこれだけのパーツがある
カメラ部シール
頭部の“目”となるカメラ部分に貼るシール。曲面に馴染みやすいように切り込みが入っている
頭部組み上がり
完成した頭部。左右のレーザー機銃は取り付けがボールジョイントなので、向きが自由に変えられる

腕部

 腕はファイター形態では機体下面に収納される。そこから迫り出すためのギミックが複雑なところ。


腕パーツ
腕を構成するパーツ。前腕、上腕ともグレーの内部パーツがあり、ヒジの2重関節で繋がる
腕パーツ組み立て
前腕は白い外装で上下に挟み、上腕部はグレー外装にフレームを通す形になる
ヒジ曲げ
ヒジの2重関節はここまで曲げることができる。上腕の断面の穴には、肩ブロックからの軸を取り付ける

肩ブロックパーツ
肩ブロックを構成するパーツ。写真中央のパーツの上腕側に繋がり、左の軸パーツの「C」部分をこの中にはめ込む
肩内部
肩ブロックの内部はこのように組み上がる、右に伸びる軸は機体(ボディ)側に繋がる
肩カバー
肩関節を外装で囲む。このカバー部分も丸い軸で独立して稼働する

肩基部ブロックパーツ
これは腕の肩ブロックが付く肩基部のブロックを構成するパーツ。腕の変形、移動をさせるための重要なところ
肩基部ブロック組
白とグレーの関節パーツはこのように組んで、グレーパーツの上に、左の外装パーツを被せる
肩基部完成
左の白い軸は機体(ボディ)側に、右のグレーの穴に肩ブロックの軸を差し込む。中央の回転軸が腕全体の移動に活躍する部分

腕と肩基部
ここまで組んだ腕パーツ。さらに袖口に外装パーツを取り付け、上腕側に、肩ブロック、さらに肩基部を接続する
腕を接続した状態
腕の各パーツを接続した状態。ようやくロボットらしい部品が登場した

腕カバー面
肩ブロックと前腕の外装はこのようにギザギザをピタリと合わせることができる。ファイター形態で腕を収納するときにはこの状態にする
ここまで組んだパーツ
ここまで組み上げたパーツ群。飛行機の機首と、ロボットの頭、腕。これらの接続はまだ先

脚部

 ファイター形態では推進器、ガウォーク、バトロイド形態では脚部になる。


足首全パーツ
脚部は足首の組み立てから。写真右側がすね側になる方向で並べている。足首関節から先はツマ先とカカト側に2分割される。中央のL字パーツがそれらの取り付け軸。その右のパーツでL字パーツを受け、足首の左右、前後スイングを可能にする
足首関節
足首関節部の構成。上はスネ内部入り、足首を収納する際のスライドギミックのガイドになる

つま先、取り付け前
足首関節部分の前後に蛇腹状パーツを付けたところ。ツマ先、カカトはそれぞれ内壁パーツを取り付けて、このあと、関節部にはめ込む。白いカバーパーツはさらにその上に被せ、これもフリーで動く
足首完成
足首部分の完成。左は先端を開いて脚として使う場合。右はファイターでの“ノズル”状態。この状態でも上下に向きが変えられるベクタードノズルになっている

モモ側パーツ群
脚部の“モモ”を構成するパーツ。モモはガウォーク形態に使う「ヒザとは逆の関節」が収納されているので、内部フレームは関節が幾重にも連なっている
モモフレームを組み中
モモ内部のフレーム。一番左が股関節軸を受ける部分。そこから後ろに繋がる部分はガウォーク用の関節で、バトロイド形態のヒザの動きは右端の2重関節が受け持つ

モモ外装一部
モモフレームを組んで、外装パーツを一部付けたところ。ファイター形態ではこのように関節を折りたたんで短くなる
モモ、ガウォーク形態
ガウォーク形態では折りたたんだ関節をのばして、モモ半分がこのように下がっていく。モモ下半分の外装は関節をつなぐアームに固定されている
モモ完成
完成したモモ。ファイター形態ではエアインテイクになるところだ。右下に突き出た「C」部分に、このあとヒザカバーが付く

スネ構成全パーツ
既に組んだ、モモと足首をつなぐようにスネの組み立てに入る。スネパーツには折りたたみ式の尾翼も付く
足首とスネフレーム
足首側のスライド溝をフレームに取り付けたところ。フレーム内部に溝に入れるピンやガイドとなる板があるのが分かる
フレーム+レバー
反対面のフレームにはレバー状のパーツを取り付ける。これは足首スライドのストッパーとして機能する。伸ばした足が自重で縮んだりしないためだ

スネフレーム組み上がり
スネフレームが組み上がったところ。尾翼は折りたたみ用ヒンジで、フレームに固定される
スネ側面、後面外装
スネの後面、側面の外装を取り付ける。側面は上端にヒンジがあり、上に開くようになる
スネ前外装
スネの前側外装の取り付け。中央にはファイター形態で主脚を取り付ける部分がある。この脚カバーは「開、閉」の2パーツが付属。ここでは“閉”を選択。右側のパーツはヒザカバー

脚部完成
脚部が完成したところ。各外装が密着するように関節を動かし、足首も折りたたみ、収納したファイター形態
足ギミック
ガウォーク、バトロイド形態へ脚部を変形させてみる。まずはスネ横の外装を開く
レバーを起こす
次にフレーム横のレバーを起こす。写真はピンセットでつまんでいるが、指でもできる。これで足首が伸ばせるようになる

足首のばす
スネから足首を下に引き出す
尾翼を折りたたむ
尾翼を後ろ側に折りたたむ。このとき起こしたレバーも倒すことで、足のスライドが伸びた状態で固定される
カバーを閉じる
スネ横のカバーを閉じる。このあと、ツマ先、カカトを外側に開く

バトロイド状態の脚
人型(バトロイド形態)になった脚。ヒザや足首関節もかなり曲がる
ガウォーク形態の脚
ガウォーク形態では、ヒザが逆に曲がる“鳥脚”になる。モモ内部のフレームを引き出して曲げている。関節の軸位置、伸ばせるところを把握していないと扱いにくい
ここまで組み上げたパーツ
これにまでに完成したパーツ。内包されたパーツやギミックが多く、組み上げるとすっきりとしたまとまりになる

 今回はここまでとする。まだ飛行機にも人型にも見えてこない。次回、この続きを完成させる。

(C)2007 ビックウエスト/マクロス製作委員会・MBS


URL
  バンダイ マクロスフロンティア 1/72プラモデルシリーズ
  http://macrossf-plamodel.net




野本憲一(のもと けんいち)
職業:プロモデラー。1967年新潟市生まれ。プラモデルやトイ、ガレージキット等の原型製作に携わると共に、模型専門誌ライターとしても活動すること20余年。著書に模型製作テクニックをまとめた「NOMOKEN(野本憲一モデリング研究所)」(ホビージャパン)がある。



2009/03/04 13:05

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