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通りすがりのロボットウォッチャー
脳とロボットを直接つなぐBMI
[00:10]

通りすがりのロボットウォッチャー
脳とロボットを直接つなぐBMI

Reported by 米田 裕


 駅のホームで電車を待っていると、線路脇で側溝を設置していく工事をしているのが見えた。

 小型のユンボと作業員が4人ほど、電車が近づくと旗をふりまわし、ホイッスルを鳴らす監視員が1人ついている。

 見ていると、コンクリートのU字型側溝ブロックをユンボのショベルの先端のツメに引っかけて運ぶのだが、それ専属の作業員がいる。

 U字型側溝は、ブロックひとつで約30kgほどあるらしい。それを人間が運ぶのは大変なので、ユンボを使うのだろう。

 しかし、2つのU字型側溝にロープをかけて固定し、さらにショベルのツメに引っかけられるようにロープを結んで、それをユンボのショベルのツメに引っかけるところまでを1人の作業員がやらないと、ユンボは側溝のブロックを持ち上げて運べない。

 キャタピラ移動するが、地面の凸凹や速度の変化でぶら下がった側溝ブロックは上下左右、前後に揺れている。

 すぐ近くでは2人の作業員が地面の溝に側溝を設置しているし、時間がくると電車が走るため、作業は中断する。

 側溝を運んだ後も、ユンボは線路脇の狭い場所で回転して戻ってくる。このときにはショベルアームをいっぱいに縮めているが、それでも作業員に当たるのではないかとヒヤヒヤとして見ていた。

 ユンボのようにショベルだけでなく、物をつかんで運べるアームのある建設機械があるともう少し効率よく仕事ができるのではないかと思っても無理はない。

 次の電車まで10分以上もあったので、じっくりと見ていたが、ユンボは数本のレバーを動かして作業するようだ。

 運転席がどうなっているのかわからないが、アームの動きとレバーの動きは別々に見える。これは熟練した操作がいるなぁと見ていた。


ロボットを直感的に操縦するには

 それでは、ロボットの建設機械が登場した世の中だとすると、その操縦方法はどうするのだろう?

 レバーを動かすよりも、もっと直感的な操作方法が必要になるかもしれない。

 現在、ロボット建設機械に近いのはテムザックのレスキューロボットT-53援竜だ。2本の腕を持ち、物をはさむ手を持っている。サイズ的にも小型のユンボ並だ。

 操縦席はどうなっているのかと見ると、ジョイスティックが左右に1つずつ、計2つと、スイッチ類が並んでいる。

 ジョイスティックにはボタンが7つ? ほどあり、それぞれを押すことで腕の動かす部分を決めるとのことだ。

 ゲーム機のコントローラーといった感じだろうか? ジョイスティックは前後左右に動き、それとボタンの組み合わせで腕を動かし、物をつかむ手を動かす。

 なんとなく直接的ではない。こうした方式は僕がいちばん弱いゲームコントローラー式だ。

 僕がテレビゲーム機に挫折した原因は、そのコントローラーにある。あの小さなコントローラーに、ボタンがいくつあるのだ? 初期のものでは4つほどだったが、それがいつの間にかボタンが増えていき、側面にまでボタンがついた。

 ボタンの組み合わせで動かす操作もあり、早い操作が必要とされるアクションゲーム類では「どわー! てゃー! ぐわー!」などとしどろもどろの状態になり、すぐに終わってしまうのだ。

 だからゲームはやらないようになってしまった。

 個人的な感想だが、自分の手の延長として考えられないインターフェイスって、やはり使いづらいのではないだろうか?

 T-53援竜は離れた場所からの遠隔操縦もできるが、その装置を見ると、ますますゲーム機のコントローラーのようだ。

 慣れた人か、そうした適性のある人でないと、操縦はむずかしそうに思えてしまう。


ロボットに乗って動かす場合には

 ならばと、物語やアニメの世界でのロボットの操縦を考えると、最近では、やっぱり内部に搭乗するタイプが多いか。

 コクピットのようになっていて、座って操縦する描写も多いと思うが、ボタンを押したり、レバーを前後に動かしたりと、実際のとこはどうやって動かしているのかは深く考えてはいけないという感じだ。

 中に人間が立っている空間があり、その中の人間の動きとロボットが同じように動くなんてのもあったと思うが、これは現実的には無理かもしれない。

 巨大ロボット内部に、人の立って動ける空間があるということ自体、かなり広めの空間が必要だと思う、畳2畳分で高さは2m40cmぐらいないと、自由には動けないのと違うだろうか?

 しかも、ロボットは人と同じように動くのである。上下左右へと揺れ動く空間の中で、さらに身体を動かすとなれば、よほどバランス感覚がよくても、転倒してしまうだろう。

 コクピット自体が、ロボットの動きに関わらず一定の位置を保ち続けるようにするには、免震構造といった装置が大がかりになりそうで、かなり巨大な空間が必要となる。そうなるとより巨大なロボットとなるが、現実的には難しい。


速い移動速度のロボットに搭乗は無理?

 宇宙空間でなら、ロボット自体の重量は考えなくてもいいかもしれないが、加速減速によって発生する重力は別だ。

 何トンもの腕を動かして、止める時にはそこにかかるG分の重量を受け止めることになる。駆動装置への負荷も大きなものとなるだろう。

 内部に人間が乗っている場合、宇宙空間を飛び回り、急激な方向転換などをすると、人間にかかるGフォースも半端なものではない

 地上を高速で走るF1マシンでさえ、カープや加速、減速で、運転者にかかるGは4G~5Gにもなることがあるという。そのために、身体はシートベルトで車体にぴったりとくくりつけている。

 普通の自動車のシートベルトとは違い、F1マシンでは、人と車体を一体化させるためにギュウギュウに締め付けているのだ。

 動かせるのは両腕と、足先ぐらい。脚もコクピット内の詰め物で固定しておかないと、カーブでの横Gがかかると、脚がコクピット内で暴れてあちこちへぶつかり、打撲してしまう。

 地上最速の乗り物でもこれだけすごいが、空を飛ぶ戦闘機となると、もっとGがかかる。機体の運用としては8G~9Gまで耐える設計だそうだが、人間はそこまでのGがかかると失神してしまう。

 パイロットは、だいたい7G~8Gに耐えられるように訓練しているとのことだ。この場合でも、身体はシートにきっちりと固定され、血液がGによって身体の一部に偏らないように外部から圧力をかけて締め付ける耐Gスーツを着用する。

 こんなことだから、宇宙空間で自在に飛び回るロボットのパイロットは、コクピットのシートにきっちりと固定されていないとあぶない。そして、高いGに耐えないといけない。

 とはいっても、人間には耐えられる限界のGがある。急旋回や反転などの無理な動きは物語の世界での演出だと思っていた方がよさそうだ。


身体を動かさずに操縦するにはBMIか

 動くロボットに乗って操縦するなら、身体はシートに固定して、動かないのがいちばんということになる。

 急激な方向転換や加速、減速をするのなら腕を動かすにも腕力が必要になる。なるべく身体の動かす部分を少なくした操縦機器が必要となってくるだろう。

 となれば、頭で考えただけで動くのがいちばんいいことになるが、精神感応で動かすとなれば魔法の話となんらかわりがない。

 そこで、現在「ブレイン・マシン・インターフェイス(BMI)」という脳と情報機械を直接つなぐ研究がされているが、こうした技術は、未来のロボット操縦装置にも応用されていくのだろう。

 BMIでは、脳や脊椎から電気信号を取り出し、それを解析して機器を動かしたり、目や四肢などの欠損してしまった身体の替わりを機械的につくって、それを脳に認識させることを目的としている。

 そのために、脳へ直接電極をつけたり、脊椎へ電極をつけたりと、見た目には痛そうなデバイスも多い。

 今のところ、簡単に身体に着るように装着してインターフェイスを作り出すという状態ではなさそうだ。

 たとえばロボットアニメで、内側に針のような電極のついた全身スーツを着て、頭部には電極が数百本ついたヘルメットを被るなんて描写があったらすごくいやだ。

 これじゃ、拷問具である「鉄の処女」に入れられるのとかわりがない。知らない人のために書いておくが、「鉄の処女」は、中世ヨーロッパで拷問や処刑に使われたとされる器具のことで、木製か金属製の大きな女性の形となっている。

 内側に長い釘が突き出ていて、入口の扉の裏側にも釘がついている。中に人間を入れて、扉を閉めると身体に釘が刺さるという代物だ。

 話を聞くだけで「痛い」と思わせる。なので、実際に使用するよりは「鉄の処女」を見せて「ほれー、中へ入れるでぇ、洗いざらい話せば入れへんけどなぁ~」と脅しに使ったのではないかという説もある。

 そんなイメージをBMI機器に持ってしまう。生体である身体に電極をつける。それも位置がずれないように固定するとなると、体内に埋め込むか、針のようなものを刺すかだろう。


 僕は身体検査のときに心臓関係でひっかかることが多くて、心電図を何度も取られている。

 心電図を取るときには、電流の検知をしやすくするためか、肌にゲル状の液体を塗られ、吸盤のように内部の空気を抜いて身体に密着させる電極を付けられる。吸盤でつける電極がかなり痛いのだ。取った後は、赤く内出血しているように後がつく。

 両足首にもクリップの電極を付けられる。身体中に電線のついた状態を見ると、なんとも自分が物になったような寂しさを感じる。

 これをさらに強力に固定して、動作の途中でもずれない、取れないようにするには、針を刺すだけでは無理そうだ。

 体内に電極をインプラントしてしまい、そこから外部へと信号を取り出すとか、さらにすすめば埋め込まれた電極によって脳や神経の電流パターンを直接集め、体内にチップ化されたマイクロコンピューターを埋め込み、それを使って体内で信号処理をして、有意な信号のみデジタル化してアウトプットするという形になるかもしれない。

 いちどデジタル処理された信号なら、それをワイヤレスで送信しても劣化もない。となると、遠隔地のロボットも操作できるようになるだろう。しかも、体内のプロセッサーと電極を介して、ロボットからのフィードバックが自分に戻ってくるようにもできる。

 こうなればロボットに搭乗することもいらなくなるので、宇宙空間での高機動ロボット操縦の苦痛もなくなると思う。Gに関するフィードバックはカットするか、数分の一に弱めてしまえばいいのだ。

 操縦型ロボットにおいて、人間側の現実感と操縦の一体感を求めていくと、人間側の改造も必要になっていくのだろう。

 宇宙開発用のロボットや、惑星探査用のロボット、極限状態で細密な作業が求められるロボットにはこうしたシステムが取り入れられそうだ。

 そして、インターフェイスとして、中間処理をするマイクロコンピューターの進歩も必要だが、生体から信号を取り出す元、電極の部分を考えると、BMIってやっぱり痛そうなイメージだなぁ。

 土木工事のおっちゃんたちは、使うだろうか?


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米田 裕(よねだ ゆたか)
イラストライター。'57年川崎市生。'82年、小松左京総監督映画『さよならジュピター』にかかわったのをきっかけにSFイラストレーターとなる。その後ライター、編集業も兼務し、ROBODEX2000、2002オフィシャルガイドブックにも執筆。現在は専門学校講師も務める。日本SF作家クラブ会員



2009/02/27 00:10

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