―ここだけの話。ロボット王国が3階に入っているツクモパソコン本店、その前でたむろしているハトたちは、みな肥えている。なぜなら彼らは、ドネルケバブサンドのおこぼれをたらふく食っているからだ。フランスの知人が「美味しそう」と言ったのは、ドネルケバブサンドのことか、それともハトことだったのか?―
● 2足歩行ロボットはサーボに始まり、サーボに終わる
キュウリや茄子で馬のようなものを作るのは、お盆に戻ってきた祖先の霊が乗るためだという。若くして逝った親戚の子がロボット好きだったので、「お盆の間、玄関にロボットを置いてはどうか?」と提案し、親族一同から大顰蹙を買ったのは私です。すいません。でも彼は喜んでくれると思うぞ、たぶん。本当にロボットが大好きだったから(涙)。
さて、それはそれとして一身上の都合にて、更新が遅れに遅れたことを平にお詫びします。今後はしっかりネジを巻いて、第10回ROBO-ONEに突き進んでいこうと思います。ちなみに第10回ROBO-ONEに向けて、機体の方の準備も着々と進んでいる。私の愛機「締め切り」シリーズの最後を飾る「締め切りF(ファイナル)」は、著名なロボットビルダーの手を借りて、着々と改造が進んでいる。より高い戦闘力を確保しつつある。これに関しては完成し次第、報告する予定だ。
それはそれとして、2足歩行ロボットの基本である。前回いろいろと書いてしまい、逆に「2足歩行ロボットとはどんなものなのか?」が、かなりぼやけてしまった。そこで今回は2足歩行ロボットにとって重要なパーツ、サーボモーターを見てみよう。
現在、ROBO-ONEに参加しているほとんどの2足歩行ロボットは、サーボモーターで動き、そして歩いているのである。よって「2足歩行ロボットはサーボに始まり、サーボに終わる」と言っても過言ではないのだ。
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近藤科学のサーボモーター各種。左2つはスタンダードモデル、中央2つはハイエンドモデル、そして一番右は4000番台の新シリーズモデル
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同社の2足歩行ロボットキットに採用されているサーボモーター。KRS-786ICSはKHR-1に、KRS-788HVはKHR-2HVに採用された。ちなみに「HV」は「High Voltage」の略称で、HVシリーズでは使用する電圧を高めて、パワーアップなどが図られている
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● サーボモーターの仕組み
そもそもサーボモーターとは、いったい何なのか? 簡単に言ってしまうと「角度を指定して駆動させられるモーター」が、サーボモーターである。2足歩行ロボットが登場する以前から、サーボモーターは主にラジコンの世界で活用されてきた。
例えばラジコンカーは、乗用車と同様に前輪を左右に振って進路を変更する。この時、前輪を左右に振る駆動力となっているのが、サーボモーターなのである。ほかにもラジコン飛行機で方向舵をコントロールしたり、ラジコンシップで舵を切るのもサーボモーターの役割である。
2足歩行ロボットはそんなサーボモーターの動き、駆動を利用して歩き、ダンスをし、戦うのだ。では具体的に、サーボモーターの中身はどうなっているのか? サーボモーターを分解すると、ケース、ギア、モーター、ボリューム、そして基板などで構成されていることが分かる。モーターは外部から電源を得て駆動し、ほかに信号線があって、外部のコントロール基板と通信を行ない、任意の角度にモーターを回転させる。
気になるのは「ボリューム」の存在だが、これは実際に回転する出力軸の位置を知り、フィードバックするためのものだ。この機能が無いと、いったいどこまで回転したかを、コントロール基板は知ることができない。一方、ギアはというとモーターの回転をトルク重視で出力するか、スピード重視で出力するかを決める重要な存在となっている。
サーボモーターを製造、販売しているメーカーは国内外に複数存在する。また、サーボモーター自体にも各種モデルがあって、外形寸法が規格化されているということもない。グレードもメーカーごとに数種類用意され、基本的に高価なものはパワフル(高トルクだったり、ハイスピードだったり)である。なお、コントロール方法はほとんどのサーボモーターがパルス方式を採用しているが、中にはシリアル通信方式を採用しているものもある。
このように一口にサーボモーターといっても、タイプやグレードが細かく別れている。比較的安価なものは、内蔵されているギアが樹脂製で、高価なものは金属製といった違いもある。また、樹脂製のギアをオプション販売されている金属製のものに交換したり、ギア比を変えてトルク重視のサーボモーターにカスタマイズするといったことも行なわれている。
サーボモーターは2足歩行ロボットの要、しかも奥が深いので、いずれまた話題にしたいと思う。
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底面のカバーを取り外した状態。小さな基板が入っている。この基板がメインのコントロール基板と通信し、サーボモーターを任意の角度に駆動させる
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駆動軸側のカバーを取り外すと、ギアが見える
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サーボモーターはモーターの回転がそのまま駆動力になるのではなく、ギアを介して駆動軸を回転させる。そして駆動軸は、ボリュームと連動している
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サーボモーターを分解した状態。この状態で、ようやくモーター本体が姿を見せる
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サーボモーターを分解した状態。この状態で、ようやくモーター本体が姿を見せる
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● サーボモーターは筋肉であり、骨である
サーボモーターは、指定した角度に回転する軸を持つモーター。そして当然、その回転が2足歩行ロボットの駆動力となる。サーボモーターに任意のブラケット(金具)を取り付け、それを組み合わせて行く。ロボットの部位によってはフレームを用意し、そこに複数のサーボモーターを組み込む。
例えばロボットの胴体部分には、腕全体を動かす(回転させる)サーボモーター、足全体を動かす(回転させる)させるサーボモーターを組み込んでおく。そしてそのサーボモーターに、ブラケットを介して腕や足を接続するのだ。もちろん腕や足も、サーボモーターやブラケット、フレームなどで構成されている。
人間の身体は骨格で支えられていて、筋肉を伸び縮みさせて動いている。人間の身体の駆動力は筋肉な訳だが、2足歩行ロボットの場合はサーボモーターが駆動力というわけだ。さらにサーボモーターは、ブラケットやフレームと組み合わされて、骨格としても機能している。だからこそ現在の2足歩行ロボットは、「サーボモーターの固まり」などと言われることがあるのだ。
もちろんサーボモーター以外の駆動力を使ったロボットも存在する。油圧や空気圧を使ったものもあるし、サーボモーターに取り付けたブラケットを動かすのではなく、ベルトとギアを組み合わせて駆動させる場合もある。将来的には熱で伸び縮みする形状記憶合金を、駆動力に使用したロボットも登場するだろう。
しかし、現時点において手軽に楽しめる本格的な2足歩行ロボットは、「サーボモーターで作る」のがベストチョイスなのだ。別の言い方をすれば「うまくサーボモーターを組み合わせれば、いい2足歩行ロボットが出来上がる」ということなのだ。
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サーボモーターを2足歩行ロボットで使用する場合、まず駆動軸とその反対側に「ホーン」と呼ばれるパーツを取り付ける(これはあくまで一例、実際にはさまざまな使い方がある)
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ホーンに対してブラケットを取り付ける。ブラケットは市販もされているが、自作するロボットビルダーも多い
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サーボモーターが回転すると、ブラケットもそれに合わせて回転する
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このように置くと分かりやすい。サーボモーターが回転すると、二の腕から先が動くことになる。このようにサーボモーターとその他のパーツを組み合わせることで、2足歩行ロボットが出来上がる
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● 足の裏、ゲット!
ロボットのパーツを「見に行く」ということは、すなわち「何かが欲しい、買いたい」ということである。実はこれ、自作PCの状況とよく似ている。見るだけと思ってショップへ行って、ついつい何かしら買ってしまう。もちろん年がら年中、高価なパーツを買ってはいられないので、電動ファンやCPUクーラーなんかを買ったりするわけだが。
そんなわけで買ってしまったのが「KHR用バスタブソール」である。要するこれ、バスタブ(かなり底の浅い風呂だが)のような形をしたソール、すなわち足の裏である。KHR-1とKHR-2HVで共用でき、固定用のネジが付属した樹脂製のパーツだ。
2足歩行ロボットにとっても、ROBO-ONEのチャレンジャーにとっても、足の裏は大変重要な部位である。足裏の滑りやすさを少し変化させるだけで、モーションがまったく違ってくるからだ。また、ROBO-ONEでは足の長さと足裏のサイズを細かく規定している。通常、足裏の面積が小さくなると、歩行などが困難になるからだ。
通常、2足歩行ロボットの足裏は、アルミ板で作られている。アルミ板ということで滑りやすいのだが、逆にその滑りやすさを応用してモーションを組み立てたりもしているのだ。だが、アルミ板そのままだと、床面へのぶつかりが固くなるというのも事実。固い床面に固いアルミ板をぶつけるような状態になる。そこで足裏にクッション材を貼ったり、衝撃吸収材を貼ったりする工夫も見られる。
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ノーマルなKHR-1の足裏。基本的にはフラットなアルミ板である。面積が大きければ大きいほど、ロボットの直立時には安定感が増す。しかし、素早いモーションなどでは、大きな足裏がデメリットになることも。また、ROBO-ONEなり、ROBO-ONE J-classにチャレンジするなら、足裏のサイズは厳密に定められている
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「KHR用バスタブソール」、私は税込み2,100円で購入した。オリジナル状態のKHR-1、そしてKHR-2HVに対応している。近藤科学純正オプションパーツである
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パッケージには樹脂製の足裏2枚と、固定用のネジが含まれている。まあ、靴と一緒で1枚だあっても困ってしまうのだが
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バスタブソールはポンと取り付け可能なオプションである。最大長は約11センチなので、足の長さが規格内ならこのままROBO-ONEに出場できる
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足裏の素材、そして形状が変化するので、多少なりともモーションに影響が出るはずだ。デザイン的には足裏のボリュームが増し、格好が良くなる……と、私は思う
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このバスタブソールも、そうした工夫の一つと考えていいだろう。樹脂製の足裏は、適度な摩擦抵抗と、ある程度のクッション性を持っている。また、エッジに適度な曲面がつくので、モーションを作りやすくなる可能性もある。そして何より、アルミ板1枚の足裏だとボリューム感に欠けるのだが、このバスタブソールの装着で足先のデザイン性は大きく向上する。
ドレスアップにもいいし、機能性の向上にもいい。こうしたオプションパーツを組み込むのも、2足歩行ロボットの楽しみ方の一つである。
-第10回ROBO-ONEまで、あと1カ月弱-
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2006/08/28 14:57
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