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2足歩行ロボットは格闘技大会の夢を見るか?

高橋敏也のロボット・バトル最前線
Reported by 高橋敏也

 -私は戦うロボットが好きだ。正義のため、愛のため、装甲や部品を火花と共に撒き散らしながら、殴り、蹴り、勝利するロボットが好きだ。人間という華奢な生物に成り代わって、敢然として戦うロボットが好きだ-


あともう一歩、決勝進出を逃す!

 身長40cm前後の2足歩行ロボット同士が、リング上で激しいバトルを繰り広げる。あるロボットはリング狭しと駆け回り、またあるロボットは巧みにパンチやキック攻撃を繰り出す。足裏以外、どの部分がリングに接触してもダウンを取られ、1ラウンド3分で勝敗が決まる……。

 アニメじゃない! などと今さら言うつもりはなかったが、あえて言ってみよう。いやいや、これが本当にアニメや小説、マンガの話ではないのである。世の中にはちゃんと、2足歩行ロボットを駆使した格闘技大会があるのだ。そう、人はそれを「ROBO-ONE」と呼ぶ。ちなみに私が決勝戦進出を逃した第9回ROBO-ONEは、2006年3月18日に予選デモンストレーションが、そして同19日に決勝トーナメントが開催された。

 事前審査を通過し、予選デモンストレーションに参加したロボットは83機、このうち決勝トーナメントに参加できるのは32機である。そして私の愛機、「締め切り改」はあと一歩というところ、35位で予選トーナメントを終えた。決勝に進出してもさまざまな理由で辞退するロボットもあるため、場合によっては決勝進出もあるかというところだ。

 思えば私がROBO-ONEに参加し始めたのは第7回からなので、3大会目ということになる。また、ROBO-ONEのエントリークラス、ROBO-ONE J-classも含めると4回目のROBO-ONEチャレンジである。最初はわけもわからずロボットを持ち込んで参加したものだが、なんとか決勝進出を狙えるところまで来た。この間、約2年である。

 2足歩行のロボット、そして2足歩行ロボットたちの格闘技大会。いかにして高橋は2足歩行ロボットにハマり、高橋のロボットは進化、変貌を遂げていったのか? また、個人で楽しめる2足歩行ロボットの今はどうなっているのか? 本連載ではそういったことを、つれづれなるままに綴って行きたい。今回はそのプロローグである。


第9回ROBO-ONEに参加した私の愛機、「締め切り改」。オリジナルの2足歩行ロボットである 別角度から見た「締め切り改」 頭部はサーボモーターなのだが、スタイロフォームを削り、塗装した飾りを被せてある。外装を作成するための練習だったが、気に入ったのでそのままにした

ちなみに普段は「ハンガー」と呼んでいる、スタンドで支えている。PCマニアの人なら分かると思うが、ハンガーは自作PCパーツとして有名な「Lubic」で出来ている。以前は自分で適当な長さのものを組み合わせて自作していたが、最近は「ロボット用」のセットが販売されている 「締め切り改」最大の特徴は、この手の先に取り付けられた盾。某有名PCパーツメーカーにお願いして、作ってもらったオリジナルパーツ。実はこの盾、防御ではなく攻撃に使用するものなのだ 盾は繰り出すことが出来るため、リーチを一気に伸ばすことができるのだ

盾を一杯に伸ばすと、端から端まで93cmぐらいになる この盾をブンブン振り回して攻撃するわけだが、決勝トーナメントに進めなかったため、実戦は経験していない

愛機「締め切り改」は?万円!

 第9回ROBO-ONEに持ち込んだ私の愛機は「締め切り改」という名前である。身長約38cm、体重約2.4kg、アルミフレームと23個のサーボモーターを組み合わせ、リチウムポリマーバッテリを電源に動作する。市販のロボット用コントロールボードを搭載し、無線操縦で動作させることが可能だ。製作にかかったコストは、50~100万円ほどである。

 「ええっ! 2足歩行ロボットって、作るのに100万円もかかるの?」という声が聞こえて来そうだが、怖い話をすると「100万円」など序の口である。ある人に聞いたところ、「下半身だけで400万円以上、でも頭は980円」だという。また、自作パーツがほとんどなので、値段のつけようが無いロボットも多数参加している。


右の2足歩行ロボットは、近藤科学の「KHR-1」というキットを組み立て、オプションパーツを追加したもの。オリジナルの部分は無い。初心者はまず、こうしたキットから入るのがいい。ただし、このままだとROBO-ONEには参加できないのだ(詳細は後日、詳しく) 2足歩行ロボットの格闘技大会だけあって、ROBO-ONEでは「足」に関する基準が細かく定められている。とくに足裏の最大長は重要視され、第9回では「最大長は13cm以下」とされた。足裏が小さくなると、それだけ歩行が難しくなるのである

 一方、安心する話を。市販キットベースということで、オプションを入れても18万円前後というロボットも多数参加しているし、中には自作パーツを除いて3~5万円で出来てしまったロボットというのもある。しかし現実は厳しいもので、戦うロボットとして上位を目指すには、ある程度のコストも必要なのが現実だ。

 また「50~100万円」と幅を持たせたのは、「締め切り改」に至るまで、ステップを踏んで進化しているためなのだ。「締め切り改」の場合は市販キットで2足歩行ロボットとしての形が出来上がり、フレームの一部をオリジナルパーツに変更した。さらにサーボモーターという駆動パーツを全て交換し、その後、やはりオリジナルのパーツを追加した。最初に形にした段階では周辺装置も含めて約50万円ほどだったが、気がつけばプラス50万円ほど使っているという図式なのだ。

 さらに言えば、2足歩行ロボットを作るための機械が必要になったり、パーツを作るのにいろいろ試行錯誤をする場合もある。外部にパーツ作成を頼むとそれなりのコストが必要になるわけだが、失敗すればさらにコストがかかる。ロボット作成のための機械だって、慣れてくればより高性能なものに買い換えることでコストがかかる。

 ここで「なんだ、ラジコンに似ているなあ」と思った人も多いだろう。確かに個人で楽しむ2足歩行ロボットは、ラジコンに似ているのだ。ヘリコプター、飛行機、レースカー、そして2足歩行ロボット。ハマればハマるほど、グレードアップすればするほどコストはかかる。

 そしてやはりラジコンと同様、なるべくコストをかけずに楽しむ、あるいは性能を追求する人々もいる。2足歩行ロボットの場合も、市販のキットを利用すれば、初心者であってもコストとパフォーマンスのバランスを取ることができる(とにかく安く2足歩行ロボットを作ろうと思ったら、そのためのスキルが必要になって来る)。

 どうしてもコストの話は切り離せないのだが、ROBO-ONEに参加して楽しもうというなら、それなりの方法はあるということだ。また、コストをかけずにROBO-ONEで上位を狙うというのも、コンセプトとしては正しいと言えるだろう。


背中に背負っているのはコントロールボード(この写真だとカバーの下になっているので見えないが)である。コントロールボードにサーボモーターを接続して管理し、さまざまな動きをさせる。この部分は伝統に則って「ランドセル」と呼ばれることが多い 別の機体で撮影したコントロールボード。ごちゃごちゃした配線が、サーボモーターから伸びているものだ 片足を上げている状態。重心位置を考えないと、この姿勢で止まることは出来ない。「2足歩行」の「歩行」は、片足を完全に上げながら歩くことを意味する

基本3点セットならぬ、ノートPC、ロボット、そして無線コントローラー。ロボットとPCはUSB経由、あるいはRS-232C経由で接続する。もちろんPCとロボットの連動に関しても、いずれ詳しく解説する 果たしてこの機械は何なのか? 正解は「安定化電源装置」という。ROBO-ONE参加者御用達の機械だが、いったい何に使うのか? どういった働きをするのか? 乞うご期待!

疑問符だらけとなった皆様へ

 さて、ここまで読んでも分かるのは「2足歩行ロボットの格闘技大会、ROBO-ONEというのがある」、「高橋は“締め切り改”というロボットでROBO-ONEに参戦した」、「“締め切り改”は意外と高価だ」といったことぐらいである。

 ちなみに締め切りシリーズというネーミングは、いったいどこから来たのか? 天から降ってきたとか、夢の中で死んだ祖母が教えてくれた……などということはない。まさに参加申請の締め切り間際になって、「もー、これでいいや!」と決めてしまったのである。

 そのプロセスはこうだ。「強そうな名前がいいなあ-時間が無いぞ-私はライターだなあ-時間がないぞ-自分にとって強そうな、怖そうなものはなんだろう?-もう申請しないと間に合わないぞ-そうだ、締め切りが一番怖い!-なんだそりゃ?-よし、私のロボットは“締め切り”シリーズにしよう」。なんとまあ、適当というか、意味不明というか。

 ここまで読むと「“締め切り改”というネーミングの由来」は分かってもらえただろう。だが、2足歩行ロボットに興味を持ったばかりという人には「サーボモーターって何だ?」、「そもそもロボットの2足歩行ってどうなっている?」、「市販のキットとか、オリジナルパーツって何だ?」とか、山のような疑問が湧いてきたかも知れない。

 正直な話、この原稿を書いている私自身、あれも説明したい、これも説明したいで大混乱である。しかし、ご安心ください(“紅の豚”で空賊に襲われたクルーザーのアナウンス風に読むと楽しい)!

 このままで終わるはずがないのである。次回より2足歩行ロボット本体に関して、そしてROBO-ONEに参加できる2足歩行ロボットとはどういったものかを紹介して行きたい。

 願わくば本稿をお読みいただいたあなたと、ROBO-ONEのリングでお会いできることを願いつつ。

-第10回ROBO-ONEまで、あと3カ月弱-



2006/06/26 00:00

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