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「ロケット観光」のススメ
~種子島でH-IIAの打上げを見るには

Reported by 大塚 実

これは13号機の打上げ
 「ロケットの打上げを一度は現地で見てみたい」と思っている人は多いだろう。しかし、なかなか気軽に行けないのも事実。遠いから? 休みがないから? お金がかかるから?

 日本では、鹿児島県の種子島でH-IIAロケットの打上げが行なわれている。これが当たり前に思われるかもしれないが、世界的に見れば、国内で打上げを見ることができる国の方が少ないのだ。あなたラッキーですよ! 島なので船か飛行機には乗る必要はあるが、パスポートは不要。休みやお金は……まぁ何とかして欲しい。

 本レポートでは、種子島でロケットの打上げを見るために役立つ情報を紹介したい。参考にしてもらえればと思う。


打上げを見る場所はコチラ

 ロケットが打上げられるのは、宇宙航空研究開発機構(JAXA)の種子島宇宙センターだ。種子島は南北に細長い形をしており、その南側の端っこにある。


JAXA・種子島宇宙センターの入り口 「世界一美しい」とも称される射場だ

□JAXA 種子島宇宙センター
http://www.jaxa.jp/visit/tanegashima/index_j.html

 打上げ時には、種子島宇宙センターの射点から3km以上離れたところから見ることになる。近ければ近いほど迫力はあるのだが、安全のため、それ以上近づくことはできないのだ(これは取材陣も同じで、プレス用の展望台も3km以上ある)。打上げ当日は、種子島宇宙センターへの入場も規制される。

 ではどこから見るの? ということだが、JAXAは打上げ見学に適した場所として、「宇宙ヶ丘公園」「前之峯グランド」「長谷展望公園」の3カ所を紹介している。このほかに隠れスポットなども存在するのだが、まずはこの公式ポイントで雰囲気を楽しむのがオススメだ。会場には中継用のTVも用意され、ロケットや衛星の解説もここで聞くことができる。

□種子島宇宙センター 展望所マップ
http://www.jaxa.jp/visit/tanegashima/viewing_map_j.html

 上記3カ所のうち、もっとも町中から近いのは前之峯グランドだが、ここからはあまり射点が良く見えないので、そのほかの2カ所を紹介したい。

 “メイン会場”と言えるのが長谷展望公園。非常に広く、かなり大勢の人がきても余裕だ。しかも前に向かってゆるやかに傾斜しているのがいい。ただし、ここからだと大型ロケット組立棟(VAB)に隠れてしまい、半分くらいロケットが見えないのは惜しい点。少しでも良く見えるように、左側に陣取るのがポイントだ。


これが長谷展望公園。向こう側に少し傾斜しており、その奥には射場が見える 長谷展望公園の左側からだとブースタが隠れる程度だが…… 右側からだとロケット本体も隠れてしまう。場所によってこれだけ違う

 しかし、VABで隠れているのはH-II時代から使っている第1射点の方で、新型のH-IIBロケットで使用される第2射点であれば、ジャマもなく見ることができる。H-IIBロケットを見るのであれば覚えておこう。


右にも同じように紅白の鉄塔がある。これが第2射点 長谷展望公園の案内図。非常に広い

 もう1カ所の宇宙ヶ丘公園からは、ロケット下部が少し山に隠れてしまうが、それ以外は良く見える。キャンプ場もあるので、テント持参ならこちらもいい。ただし、スペースはあまり広くないので、出遅れてしまうとベストポジションを確保できない恐れもある。移動の足がないなど、特別な理由がなければ特にこちらを選ぶ必要はない。


宇宙ヶ丘公園には展望台もある。ここから見えればベスト 右側に射場がある。なので芝生の上あたりで見る感じになる 手前の山で、ブースタのあたりが見えない。それ以外の見通しはいい

□長谷展望公園(Googleマップ)
http://maps.google.com/?ie=UTF8&ll=30.438231,130.927656&spn=0.006827,0.010589&t=h&z=17

□宇宙ヶ丘公園(Googleマップ)
http://maps.google.com/?ie=UTF8&t=h&ll=30.398151,130.902711&spn=0.006829,0.010589&z=17


延期も踏まえたスケジュールを

 さて、普通の観光ガイドであればここらで種子島への行き方などを説明するところだが、ちょっと待って欲しい。ロケットの打上げは、「延期が当たり前」である。数日前になって延期が発表されるのは良くあること。いかに柔軟に対応できるか、スケジューリングがロケット観光のキモなのである。

 以下の表を見て欲しい。これは、10号機以降で実際にあったスケジュール変更をまとめたものである。見事に全機延期になっている。


10号機以降の延期状況をまとめた表。打上げ予定日が発表された日と、延期が決まった日も一緒に記入している。水色は天候による延期、黄色はロケットや衛星などの不具合による延期、緑色が実際に打上げられた日だ

 目立つのは天候による延期だ。じつは、機体の不具合よりも、天候の延期の方が見る側にとっては厄介。というのは、機体の不具合であれば早く見つかることもあり、こちらも予約の変更やキャンセルがしやすい。もし種子島に着いてから不具合が出た場合も、普通は長めの延期になるのでキッパリ諦めやすい。しかし天候であれば、2日前や前日、場合によっては当日になってから延期になることがある。ズルズルと延期になると精神的なダメージも大きい。

□種子島宇宙センター 気象情報
http://space.jaxa.jp/tnsc/tn-weather/

 ちょっと話が逸れたが、こういった“実績”から考えて、最低でも2日間は延期になっても大丈夫なように、スケジュールを組むのが望ましいことが分かるだろう。また、12号機、13号機、15号機を見ると、天候を理由に2日前に延期を決めているケースが多い。筆者もこれで何度か痛い目にあっているのだが、出発が前々日の午後か前日であれば、延期にあわせて予約をスライドできる可能性がある。あまり早く出発するのも避けておきたい。

 しかし12号機のような場合は、それでも難しい。途中でかなり長い延期が入っているが、これは当日、推進剤を注入してから中止が決まったケースだ。極低温の推進剤を一旦抜き取って検査していたため、中5日が必要となっていたので、こうなったらもう諦めるしかない。ただ、現在は同様のケースでも中2日で済むということなので(検査を省略するらしい)、まだ希望はあるかもしれないが。

 基本的に、ロケットの打上げは延期になるもの、と考えて欲しい。なので飛行機などは変更のきく正規料金が望ましい。安いチケットにするのであれば、滞在期間を長めに設定しておきたい。一番やってはいけないのは、変更のきかない安いチケットで、ギリギリの日程を組むこと。休暇がどうしても取れないのであれば仕方ないが、これはなるべく避けたい。ついでに種子島観光もするつもりで、最低2日間は余裕を持とう。


島へのアクセス

 種子島への移動手段で、速いのは飛行機になる。原稿執筆時点(2009年2月)で、種子島には鹿児島から3便、大阪・伊丹から1便(どちらも日本エアコミューター)が毎日出ている。ただし小型機のため、打上げ前日~当日の便はすぐに満席になってしまう場合が多い。乗れればラッキーだが、あまり当てにはしない方がいい(行きは良くても、帰りの便が全て満席だったり……)。

□日本エアコミューター
http://www.jac.co.jp/

 確実なのは船になる。鹿児島からは、コスモラインと鹿児島商船がそれぞれ「ロケット」と「トッピー」という高速船を運航しており、便数も多い。鹿児島空港からは高速バスで市内まで移動して、さらに港まで行くのがちょっと面倒ではあるが、値段的にはこちらの方が安上がりとなる。またコスモラインではフェリー「プリンセスわかさ」も利用できる。


コスモラインの「ロケット」 鹿児島商船の「トッピー」 南埠頭にある高速船乗り場

□コスモライン「ロケット」「プリンセスわかさ」
http://www.cosmoline.jp/

□鹿児島商船「トッピー」
http://www.toppy.jp/

□鹿児島空港ビルディング(高速バス)
http://www.koj-ab.co.jp/


 ただし、高速船もそれほどキャパシティが大きい乗り物ではないので、打上げに近い便になると満席になる可能性もある。ある程度計画が固まったら、予約しておくのが無難だろう。


島内の宿泊・移動の足は?

 種子島には1市2町があり、北から西之表市、中種子町、南種子町となっている。高速船やフェリーが到着するのは西之表市で、空港があるのは中種子町だ。

□西之表市
http://www.city.nishinoomote.kagoshima.jp/

□中種子町
http://town.nakatane.kagoshima.jp/

□南種子町
http://www14.synapse.ne.jp/minamita/

 宇宙センターがあるのは南種子町なので、ここに宿泊できれば楽なのだが、打上げに関わるスタッフも大勢来島するので、満室の場合が多い。野営が苦にならなければ、前述のように、宇宙ヶ丘公園に泊まることにしてもいい。また西之表市まで来れば、直前でも空いている部屋があるだろう。


南種子町。24時間営業のコンビニもある 西之表市。大きなスーパーやベスト電器も

 と、少し前までは、南種子町に泊まるのは難しい、というのが常識だったのだが、打上げ業務が三菱重工業(MHI)に移管されてからは、作業員の数も減ってきている(15号機ではJAXA側/MHI側あわせて500名弱だった)。その分、宿に空きが出る可能性もあるわけで、努力してみる価値はあるだろう。実際、筆者は今回、打上げ前日の22日には、南種子町のホテルに宿泊することができた。

□種子島観光協会
http://tanekan.jp/

 移動については、やはりレンタカーはあったほうが便利だ。南種子町までバスも出ているが、そこからが不便。運転に自信がない人や料金をシェアして安くしたい人などは、SNSサイトmixiの「ロケット打ち上げ大好き!」コミュニティなどで、同行者を募るという手もアリだ。


 種子島宇宙センターでは、無料で施設案内ツアーに参加することができる。さすがに打上げ当日にはやっていないが(そもそも一般人は宇宙センターに入れなくなる)、基本的には前日や翌日にも開催されている。ツアーでないと行けないところもあるので、打上げが延期になってしまったときなどは、ぜひ利用してみよう。

□施設案内ツアー(要予約)
http://www.jaxa.jp/visit/tanegashima/tour_j.html

 見学のコースは、(1)大型ロケット発射場、(2)大崎第一事務所、(3)総合指令棟、となるが、ロケットがあるときは射場に近づけなくなるので、(1)がロケットの丘展望所に変更となる。今回は15号機の打上げ前に取材したため、もちろん変更コースの方になった。

 宇宙科学技術館で集合のあと、一行はバスで施設内を移動。ツアーには専任のガイドさんが同行しており、宇宙センターやロケットに関するさまざまな豆知識を紹介してくれる。かなり詳しく勉強しているようで、参加者からの細かい質問にも答えていた。所要時間は約1時間15分で、1日3回運行している。


集合場所の宇宙科学技術館。宇宙センターに入ってすぐのところにある このようなパンフレットをもらった。無料なのに嬉しい ロケットの丘展望所。この場所はツアーでなくても来ることができる

ツアーの目玉は大崎第一事務所に保存されているH-IIロケット7号機の実機 同じくH-IIロケット7号機 展示物へ触れることはできないが、間近で見ることができる

本物のロケットエンジンもドーンと展示。写真はH-IIAロケット第1段エンジンとして使われたLE-7エンジン メカ好きにはたまらないだろう ノズルの中

これはフェアリング。重ねて置かれていた フェアリングの内側も見ることができる ロケットに使用されている断熱材のサンプル

ツアーの最後は総合指令棟。TV中継でもよく映ることがある ちなみに、プレスセンターとなっているのはこの竹崎展望台だ 宇宙センターには、H-IIロケットの実物大模型も展示されている

ぜひ「ナマ」で見よう!

筆者の取材風景。ビデオ1台とカメラ2台を使っている。まぁ仕事なので仕方ないが、撮影に忙しいと感動しているヒマがない。観光で見るのであれば、こんなことをしてはいけない……
 最後になってしまったが、打上げを見るにあたって、一番重要なことを言い忘れていたことに気がついた。それは「自分の目で見ること」。せっかくナマで見れるのに、ファインダー越しに見てどうするの、というのが筆者の主張だ。それではテレビで見るのとあまり変わらない。あの迫力は、ぜひ自分の目で見て体験して欲しい。

 といっても、滅多に見られないのだから、という気持ちも分かる。そういうときは、ビデオを回しっぱなしにするとか、カメラを連写モードにしてシャッターを押しっぱなしにするとか、いずれにしても「見ること」に集中して欲しい。きっと感動すると思う。

 さて、次の打上げだが、今のところH-IIBロケットの試験機になりそうだ(2009年9月の予定)。H-IIBは現在開発中の大型ロケットで、宇宙ステーション補給機(HTV)を搭載するために、日本としては過去最高の打上げ能力を持つ機体となる。第1段エンジンのLE-7Aは2基にクラスタ化、固体ロケットブースタ(SRB-A)も4本になっており、打上げは迫力がありそうだ。

□JAXA 打上げ予定
http://www.jaxa.jp/projects/in_progress_j.html

 ただし、この打上げの見学は、ちょっと勧めづらい。面白いのは確実なのだが、一般的に初号機には不具合も多い。どのくらい延期があるものか、見当も付かない。まぁ一発で上がってしまう可能性もあるが、ハイリスク・ハイリターンといったところだ。

 無難なのはすでに15機の実績があり、こなれてきたH-IIAロケットだろう。確実に見たいのであれば、2010年の打上げが予定されている金星探査機「PLANET-C」あたりを狙いたいところだ。その前に情報収集衛星の打上げがあるかも、という話もあるのだが、これはセキュリティとかで、見学者には極めて不親切。情報もあまり出てこないので、初心者はスルーした方がいい。


余談

 ところで、今は種子島でしか衛星を打上げていないのだが、以前は同じ鹿児島県の内之浦からもロケットが飛び立っていたことをご存じだろうか。内之浦宇宙空間観測所があり、2006年9月までは、ここでM-Vロケットが打上げられていた。残念ながらこれはコストを理由に廃止されてしまったが、現在、JAXAは次期固体ロケット(“イプシロン”と呼ばれている)を開発中。内之浦の射場を利用する予定になっているので、こちらの運用が始まったら別途またガイド記事などを書きたいと思う。

□JAXA 内之浦宇宙空間観測所
http://www.jaxa.jp/visit/uchinoura/index_j.html


URL
  JAXA
  http://www.jaxa.jp/

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2009/02/18 00:20

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