H-IIAロケット15号機の打上げが1月23日12時54分に行なわれた。搭載された温室効果ガス観測技術衛星「いぶき」(GOSAT)は所定の軌道に投入され、打上げは成功した。H-IIAロケットの打上げ業務が宇宙航空研究開発機構(JAXA)から三菱重工業(MHI)に移管されてからは、これで3機目。同ロケットとしては9機連続の打上げ成功となり、成功率は93.3%まで向上した(失敗は6号機の1機のみ)。
H-IIAロケット15号機の打上げは、当初は21日に予定されていたが、悪天候により、23日まで延期されていた。23日も現地は時折雨が降る天候で、強い横風が吹いていたが、ロケットの打上げに支障はないと判断され、定刻通りに宇宙へ飛び立っていった。
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【動画】H-IIAロケット15号機の打上げ。強風でカメラがブレまくっている。こんな天気なので、残念ながら10秒くらいでもう雲に入って見えなくなってしまう
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【動画】別のカメラから撮影した様子
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【動画】こちらはワイコンを装着したデジカメの映像。直前になって雨が降り出し、レンズに水滴が付いてしまった。ワイドは晴れるといい画になるのだが……
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【動画】深夜1時からの機体移動。30分くらいかけて、大型ロケット組立棟(VAB)から射点まで移動する。今回は最短230mのところから撮影できた。ここまで近づいて取材が可能になったのは初めて
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移動中のH-IIAロケット。ロケットの発射台の下に移動発射台運搬台車(ドーリー)が見える
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射点へ到達したH-IIAロケット
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打上げ後の記者会見には、野田聖子・宇宙開発担当大臣が同席。昨年、宇宙基本法が制定されたことを受け、「国家戦略の1つとして宇宙開発を伸ばしていく。5月には基本計画をまとめる」とコメント。また“相乗り”衛星についても触れ、「宇宙開発は研究開発のためだけではなく、普通に暮らす1人1人と密接な関係を作るものだ。今回はその第一歩となった」と評価した。
MHIからは、大宮英明社長が出席。同氏は昨年4月の就任であり、社長としてH-IIAロケットの打上げに臨むのはこれが初めてとなるが、成功にまずは安堵の表情を見せた。「先般、韓国から多目的実用衛星KOMPSAT-3の打上げを受注したが、引き続き数多くの商業衛星を受注していきたい。引き合いもたくさんきている。今回の打上げ成功により、さらに受注活動に弾みがつくのではと考えている」(大宮社長)。
種子島での打上げには、空港の滑走路が短くて大型の衛星を空輸できない、漁業協定により打上げ可能な時期が限られる――といった他国に比べて不利な条件が指摘されているが、これについて、JAXAの立川敬二理事長は「制約を解除するためには、打上げ実績を作るしかない。この(協定で決められている)日数では足りない、と言えるように、1カ月に2機打上げたりもした。新しい協定の模索も含めて考えていきたい。滑走路については、延長をお願いしているが、船で運ぶ方法もあるので大きな問題とは思っていない」と述べた。
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野田聖子・宇宙開発担当大臣。現地でロケットの打上げを見るのは初めてだったという
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大宮英明・MHI社長(左)と立川敬二・JAXA理事長(右)
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今回の打上げは、7機もの相乗り衛星を搭載していたのが特徴。このうち6機はJAXAの公募によって選ばれており、今後も年1回くらいは打上げの機会を設ける意向だ。以下は記者会見に出席した各機関の代表によるコメント。発言の順番は、衛星分離の順番通りになっている。
東北大学の吉田和哉教授は「14時32分ころに電波をキャッチした。テレメトリによると衛星は概ね正常」と報告。その上で、「スプライト観測衛星(SPRITE-SAT)」の愛称を「雷神(RISING)」と発表した。「落雷に伴う発光現象“スプライト”を宇宙から観測するのは世界初の試み。観測データを一刻も早くとれるように、運用を進めていきたい」(吉田教授)。
東大阪宇宙開発協同組合の今村博昭理事長は「14時36分から8分間、種子島の増田宇宙通信所で電波を受信した」と報告、「SOHLA-1」を「まいど1号」と正式に命名した。「当初、日本から不況という言葉が消えることを願ってスタートしたが、意に反して未曾有の不況の中での打上げになってしまった。しかしこの打上げを起爆剤として不況という言葉が消えることを願っている」と述べた。
ソランの山本勝令・宇宙システム事業部長は、「残念ながらまだ受信できていない」と報告。同社は衛星「かがやき」の開発を通じて、子供達に宇宙に親しんでもらう活動を続けてきたが、「種子島に子供達の“打上げ隊”が来ており、非常に喜んでいたと聞いている。衛星の開発は難しかったが、子供達のおかげで頑張れた。子供達に感謝を言いたい」(山本事業部長)。
都立産業技術高等専門学校の石川智浩准教授は、「航空高専衛星(KKS-1)」の愛称を「輝汐(KISEKI)」と発表。「中間・期末テストもある中、学生は放課後・土日・祝日・長期休暇の全てを注ぎ込んで開発してきた」と、開発に関わった学生を称えた。同衛星は記者会見後に受信に成功。今後は、地球の撮影、姿勢制御の実験、マイクロスラスタの実験を行なっていくという。
香川大学の能見公博准教授は、香川から電話で参加。大学のイベント会場には大勢の人が詰めかけ、地域全体で打上げを楽しんだようだ。衛星「STARS」の愛称は「KUKAI(空海)」に決定。同衛星は親機・子機から構成されるが、どちらも信号を受信したという。「苦労はたくさんあるが、打上げを見た瞬間にほとんど吹っ飛んで、今は思い出せない」(能見准教授)と喜びを爆発させた。
最も最後に分離したのは、東京大学のリモートセンシング衛星「PRISM」。この衛星も記者会見のときには信号が確認できていなかったが、その後17時42分にビーコンを受信した。衛星の愛称は「ひとみ」。今後は、分解能30mという商業衛星並の画像の取得を目指す。記者会見には佐藤友紀研究員が出席し、興奮気味に打上げを振り返った。
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東北大学の吉田和哉教授
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東大阪宇宙開発協同組合の今村博昭理事長
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ソランの山本勝令・宇宙システム事業部長
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都立産業技術高等専門学校の石川智浩准教授
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東京大学大学院の佐藤友紀研究員
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会見後の集合写真。右端はJAXAの江藤隆夫参事
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■URL
三菱重工業(MHI)
http://www.mhi.co.jp/
宇宙航空研究開発機構(JAXA)
http://www.jaxa.jp/
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( 大塚 実 )
2009/01/29 17:51
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