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ロボット・アナリストの視点 ロボット流通のケース・スタディ(1) ~株式会社イデアインターナショナル
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Reported by
五内川拡史
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筆者も含めて、ロボット産業に近いところにいると、どうしても、まずロボットありきの発想になってしまいがちだ。しかしながら、事業化の視点から言えば、世の中がこちらをどう見ているのか、ということの方が、より重要と思われる。
中でも、小売店や代理店は、メーカーと顧客の橋渡しをする部分で、決定的な役割を果たす。いくらインターネットで直販・中抜きの時代といわれても、やはり流通業者の力無くして、多くの製品・サービスが日の目を見ることはないのである。
そこで、ロボット製品を扱う流通業者の戦略、視点からロボットを考えてみたい。
今回は、ケース・スタディとして、株式会社イデアインターナショナルを取り上げる。
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ZMPのスピーカーロボット「miuro(ミューロ)」
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同社は、時計・文具・家電・雑貨等ライフスタイル商品の企画・開発会社である。1995年の創業以来、その高いデザイン性を武器に、成熟分野の中でも成長を続けてきた。近年はメーカー機能に加え、直営のショップを展開するなど流通事業にも進出している。
とりわけ自社の店舗は、表参道ヒルズ、東京ミッドタウン(六本木)、新丸ビル、名古屋のミッドランドスクエアなど、話題の再開発スポットに立て続けに出店しており、注目される。
現在同社は、これらの店舗において、ZMP社のオーディオ・プレーヤー型ロボット「miuro」を取り扱っている。どのような視点から、ロボット製品を扱うことになったのか、同社の橋本雅治社長に話を聞いた。
Q:創業からの経緯を教えてください。
A:1995年、新規参入の時計メーカーとして起業した。時計は成熟市場だったが、デザイン性からまだまだ新しい価値を生み出す余地が大きいと感じ、新規参入した。その後は、インテリアを含むライフスタイル市場へと展開し、今では、デザイン製品の創出メーカーへと変貌している。当社の製品にはロングセラーも多く、たくさんのインテリア店や雑貨店にも卸しているので、どこかで製品を見たという人は多いのではないか。(筆者自身、木製の板に時刻が映る時計など、あちこちの雑貨店で何度も目にしている)
Q:メーカーと小売り店舗運営を兼ねる事業形態ですが、その狙いは?
A:直営店舗の経営は、単純に小売業に展開するということではなく、実験的な商品を店頭に並べるのが狙いだ。店舗があると、新しい物を、自分たちのリスクで思い切って並べることができる。また、メーカーの代理店として、他社に売り場を提供する機能もある。自社製品だけをクローズドに扱うのではなく、同業他社製品でも、スタイルに面白いものがあれば、積極的に並べていく。今では、商業施設のデベロッパーからもユニークなお店と認めてもらえるようになった。それが、話題の再開発地域への出店に結びついた。
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家電を中心に取り扱う店舗「イデアデジタルコード」
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Q:店舗もいろいろなコンセプトを揃えていますね。
A:小売り店舗としては四つの業態を揃えている。
フレイムス(Frames)は、自社製品にとらわれず、雑貨のセレクト商品を扱う。
セブンスセンス(Seventh Sense)は、雑貨の中でも自社商品中心の品揃え。
アグロナチュラ(Agronatura)は化粧品。
イデアデジタルコード(Digital Code)は家電を中心に揃えている。
売り場は、おもしろさを追求して作っている。とにかく楽しく作ることが大事と考える。
デザイン性の高い製品が多いこともあって、売り場自体に妙な小細工はせず、シンプルな構成・陳列・配色を取っている。これは製品自体をよく見て欲しい、と考えているから。
Q:どんなお客様が多いですか?
A:例えば、東京ミッドタウン内の家電を中心としたデジタルコードには、ファミリーやカップル、学生、外国人などさまざまなお客様が訪れる。今のところは観光客も多いが、ビジネスマンが電卓を買っていく、といったビジネス需要もある。また、ギフト需要も多く、季節ごとのイベントにあわせた商品が売れている。
Q:家電を扱う際のコンセプトは?
A:家電量販店とは違うモデルを追求している。量販店は、コモディティを安く大量に売るので、次から次へと値段が崩れていく。これに対して、当社の店舗では、デザイン性が高いオンリーワン製品を売っていく。小物の家電は季節にあわせて入れ替えが必要だが、ある程度の大きさの製品は、古びないロングセラーにしていきたい。
デザイン性ということで言えば、以前、外国家電が評判を取った時期がある。しかし、使い勝手や価格、メンテナンス体制には難があったようだ。
当社は国内メーカーとして、デザインに加え、満足できる実用性、リーズナブルな価格、メンテナンス体制の整備という条件をクリアできたと思う。
Q:miuroを取り扱うことにした理由は?
A:見ていて動きがあり、面白い。当社の店舗の楽しさというコンセプトにあっている。正直、売れるか売れないかを判断する前に、セレクト製品として面白いと思ったので、展示した。自分の売り場なので、チャレンジができたということだ。
miuroの場合、集客に効果がある。動きと音で、商品自体にディスプレー効果がある。陳列方法だが、店舗の入り口など目立つ場所で、実際にダンスをさせることが有効だ。動く物はアイキャッチに最適なので、通りかかった顧客が必ず足を止める。音質もケンウッドの協力で、満足行く水準に仕上がっている。
現状は、コンスタントに販売があり、当初想像したより売れている。
こうしたデザイン家電は、長く売っていきたい。当社の商品構成の中では価格帯が高いところに位置するので、売上への寄与も期待できる。
インタビューを終えて感じたことは、ロボット製品といえども、顧客と接する流通業界から見れば、一商材にすぎないということだ。顧客の財布の紐を緩める競争という意味では、ロボットは、家電やインテリア、雑貨、その他さまざまな商品とも競合している。今回の場合、イデアインターナショナル社とmiuroは、デザイン性や楽しさというキーワードで共通点があり、コンセプトも合致したということだろう。
その意味で今後は、いかにもロボットらしい形の製品だけでなく、既存製品にロボット技術を組込んだ商品も、もっと開発される余地があるのではないか。それにより、メーカーと流通の接点が更に広がるものと思われる。
■ 関連記事
・ ロボット・アナリストの視点 ロボット関連・支援産業を創る(下)(2007/05/28)
五内川拡史
(株)ユニファイ・リサーチ代表取締役社長。野村総合研究所、野村證券を経て現職。製造業、IT産業におけるリサーチ、戦略立案、新事業立上げ支援など経営コンサルティング業務を行なう。経済産業省ロボット政策研究会委員(05)、東京大学産学連携本部共同研究員(03~現)、同先端科学技術研究センター産学官連携研究員(05)。
2007/06/21 00:11
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