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通りすがりのロボットウォッチャー
アンドロイドは女性型がいいよね!

Reported by 米田 裕


 ロボットのなかでも、特に人気の高いのが「アンドロイド」という人間型のものだ。

 ギリシャ語源で「男」をあらわす「andro」と「~のようなもの」である接尾語の「oid」の組み合わせからできている言葉で、アンドロイドというと、男の人造人間ということになる。

 昔は、世の中の作家は、男の方が多かったので、本来なら「gynoid」としなければいけない女性型の人造人間までを含めて「アンドロイド」と呼んできた。もっとも、「女性型」や「女性の」と言葉の頭につけたり、近年はアンドロイドといえば、男女の区別もなくなっているけどね。


創作に登場するのは圧倒的に女性型

 女性であるメアリー・シェリーが創作した人造人間は、『フランケンシュタイン』に登場する「フランケンシュタインの怪物」で男性だが、以降、男性作家は女性のロボットや人造人間を登場させてきた。

 リラダンの小説『未来のイブ』の「ハダリー」、フリッツ・ラングの映画『メトロポリス』の「マリア」などだ。

 そして、1950年代のアメリカSF全盛期。パルプマガジンの表紙は官能的な女性型アンドロイドやら半裸の宇宙服ねーちゃんがあふれていた。

 そんな時代の佳作にロバート・F・ヤングの『九月は三十日あった』という作品がある。中古の女性ロボット教師を買った、「妻子に疲れた中年男性」とロボット教師との会話によるなんとも甘酸っぱいお話だ。

 日本でも手塚治虫氏の『メトロポリス』に登場する「ミッチー」は女性型ロボットだし、『鉄腕アトム』の「アトム」も、元々は女性型ロボットのつもりだったというし。

 その後も女性型アンドロイドはマンガに登場し続け、松本零士氏の『セクサロイド』、石ノ森章太郎氏の『セクサドール』などから、近年の芦奈野ひとし氏の『ヨコハマ買い出し紀行』の「アルファさん」へと綿々と続く人気ぶりだ。

 男性作家たちは女性型アンドロイドに何を求めて作品としたのだろう?

 文芸作品のロボットは、もともと人間の労役を代わりに担うものとして登場してきた。

 現実のロボット開発でも、労働力の代替、人間の運動能力の拡大、人間の行けない場所での作業用に開発されている。

 だが、小説やマンガ作品に登場する女性型アンドロイドはそのような目的のために生まれてきたのではなさそうだ。

 ひとつは、友達として。さらに進めば愛玩物や恋愛の対象として描かれている。けっして家事全般を代替するロボットとしては登場しない。

 女性の側だって、掃除ロボットや家事ロボットなんてのは欲しいと思っているだろうし、介護ロボットも欲しいだろう。しかし、それらの形態は女性型アンドロイドとは限らない。


ロボットにジェンダーの役割?

 女性型アンドロイドに女性の代替をさせるのなら、根源的な部分の可能性も考えないといけない。

 ロングマン現代英英辞典によれば、男性とは「子供を産まない性」であり、女性とは「子供を産む性」であると定義されているそうだ。

 ならば、女性型ロボットというなら「産む機械」としても考えないといかんような気がする。

 ときの厚生労働大臣の「産む機械」発言は、大きな社会問題となっているが、もし女性にとって「子供を産む」ことが大きな負担となっているなら、それに代わるロボットを考えてみることも必要かもしれない。

 現在、体外で受精卵を作ることはできる。あとは、それをどう成長させていくかだが、いまのところ、人間の子宮へ戻すしか方法はない。

 人工子宮も研究されているが、山羊の胎児を3週間育てたのが最長とのことだ。産まれるところまで胎児を成長させるのはまだまだむずかしいのだね。

 「産む機械」となれば、血液の循環、それも人工心肺機能を持ったものが必要とされるだろうし、腎臓の機能を代替する人工透析機能や肝臓機能の代替、また栄養分を補給するなど、多数の内臓の代わりをする機器が必要となる。

 外部から胎児をずっと監視するのも大変だから、胎児を観察し、さまざまに自分の機能を調整する自律的な機構も必要になるだろう。

 そうなると、機械というよりもロボットに近いものとなる。しかし、人間型は無理だろうし、移動の必要もないので、据え置き型の大きめのロボットとなるだろうね。

 こんな「産む機械」としてのロボットが作れるかどうかだが、命を扱うものとなるので、そのハードルはかなり高いだろう。

 ロボカップでは、2050年にロボットのサッカーチームが人間のワールドカップ優勝チームと対戦し勝つことを目標としているが、それよりもむずかしいことになるかもしれない。


未来の女性型アンドロイドの役割を考える

 この「産む機械」は、人類が宇宙へと進出していくときに必要となるだろう。いつかは地球の資源もなくなる。そう遠くない未来に、人類が生存していくには、宇宙へ出て行かなくてはならない日がやってくるかもしれない。

 他の惑星を人間が住めるように改造する、テラフォーミングという技術が考えられているが、これはかなり時間がかかる。100年~1,000年単位で考えるものだ。

 それだけの長い時間、人間は生きてはいられないし、宇宙船の搭載スペースも限りがある。人間の冷凍睡眠はSFではお手軽に登場するが、いまのところ成功してはいないし、人間を運ぶのは重量的にも不利だ。

 冷凍精子と冷凍卵子からの受精卵は現在でも成功しているので、そうした形で人類を運ぶことになるだろうね。

 少ない人間とロボットの労働で、何世代もかけてテラフォーミングをして、人が住めるようになったら、どんどんと子供を「産む機械」で誕生させる。

 これらの子供の育児と教育も、ロボットの手を借りないとできない。

 この先100年で、人間並みの知能を持ち、さらには人類の歴史や文化を継承したロボットができるだろうか? 教育者となるには、文化や、さまざまな作法までも知っている必要がある。

 ロボットには性の区別は必要ないかもしれないが、性差を人間に教えるためには、やはり女性型アンドロイド、男性型アンドロイドといった性ごとの役割は必要となるだろう。

 いつかは、異星での4月の花のにおいに満ちた風のなかで、ワンピース姿の女性型アンドロイド先生が髪をなびかせ、第1世代として誕生した人類の新入生たちを迎える。

 そんな光景を想像すると、やっぱり女性型アンドロイドっていいよなーと思ってしまう。こりゃ作品になるわけだ。


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米田 裕(よねだ ゆたか)
イラストライター。'57年川崎市生。'82年、小松左京総監督映画『さよならジュピター』にかかわったのをきっかけにSFイラストレーターとなる。その後ライター、編集業も兼務し、ROBODEX2000、2002オフィシャルガイドブックにも執筆。現在は専門学校講師も務める。日本SF作家クラブ会員



2007/02/23 00:10

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