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通りすがりのロボットウォッチャー
デザインと行動の落差

Reported by 米田 裕


 なんたって日本人はロボットマンガやアニメを見て育ってきたので、ロボットの見た目にはうるさいのと違うだろうか。

 ロボットを一目見ただけで、主役メカ、脇役メカ、敵メカという認識をしてしまう審美眼を持っているといえる。これはもう、DNAに刷り込まれているといってもいい。ロボットマンガで育った第一世代には、すでに孫がいるという時代だしね。


主役ロボットは唯一無二の存在

 ロボットマンガやアニメの主役ロボットは、一目見ただけで他とは違う形をしている。そのうえで、カッコよかったり、色が違っていたり、特殊能力があったりする。

 その存在は唯一無二といえる。他に同じものはないのが主役ロボットの特徴だ。そして、そのことが「正義の味方」の象徴ともいえるわけだ。

 創世記のロボットアニメでは、そうした主役ロボットがどうしてできたのかには、それほどの説明がいらなかった。

「天才的な博士が1人で作った」
「日本軍の秘密兵器だった」
「NASAが極秘に開発した」

 という理由で納得していたのだ。こうした理屈は'70年代前半までは疑いを持たれることもなかった。

 だが、新幹線の登場から始まる高度成長期、ハイテクメカは身近になった。そうした工業製品である自動車や飛行機に実際に乗ったり触れたりできるようになると、主役ロボットといえども、工業的に作れるなら、同じ物を他でも作れるじゃんということに、テレビの前のガキ、いやお子様は気づきだす。そこで、

「ムー大陸の守護神である」
「宇宙人の残していった謎のロボット」
「前文明の遺物である」

 といったように、人間以外が作ったものという設定が必要となった。

 こうして主役ロボットは、「他には真似のできない」存在でありつづけた。


量産型ロボットの登場

 それまでは、1台の主役ロボットが悪の組織と戦うという構図だったが、'70年代も時期が進むと、2台で戦ったり、3台というように、敵と戦うロボットの数は増えていった。

 敵が数百台でせめてくるのを、1台でなんとかしてしまうのは、ちょいとリアリティがないんと違うかと、ますますテレビの前のお子様は余計な知恵を持つようになったためだ。

 そして、やっぱり『機動戦士ガンダム』が大きな転換点かもしれない。「ガンダム」、「ガンキャノン」、「ガンタンク」の3台で、「ザク」の大群と戦うのはきびしーっということで、ガンダムの量産タイプ、「ジム」が登場する。

 モビルスーツという、ロボットというよりは乗り物に近い感覚なので、大量生産により同じ性能のものがたくさんある状態となった。

 しかし、まだ主役メカは試作品など特殊であることを守っていたが、後年の『太陽の牙ダグラム』('81年)の「コンバットアーマー」、『超時空要塞マクロス』('82年)の「バルキリー」など、同じタイプのロボットメカが多数登場するリアル路線もその道を築きつつあった。

 リアル路線をつきすすめた『装甲騎兵ボトムズ』('83年)では「アーマードトルーパー」という2足歩行ロボット型兵器となり、味方も敵も、同じコンセプトの形状のものが戦うようになった。

 操縦にはミッションディスクが必要で、コンピュータはプログラムで動くことを知っていたパソコン第一世代にもアピールしたに違いない。

 こうなると、主役メカも敵メカも脇役メカもない。メインは「スコープドッグ」だが、これには派生形がいろいろとあるし、敵も基本的には同じ「アーマードトルーパー」で戦うことになった。そのかわり、登場人物にあわせたカスタマイズモデルが多数登場する。

 これは、フォーミュラ1(F1)マシンが、チームごとにカラーリングが違っていたり、ノーズやウィングのわずかな形の違いで区別するのと同じ感覚だ。

 となると、ストーリーはメカの活躍よりも人間ドラマ中心へと移っていくのは必然といえるわな。


よりリアルで身近に

 このリアル路線はさらに進み『機動警察パトレイバー』('89年)の登場となる。

 2~6足歩行の建設作業用機械が普及し、それを使った犯罪も多発となると、現在ならショベルカーでATMを根こそぎかっぱらっていくようなものだろう。

 その対策用にパトカーの代わりとして登場したのが「98式AV」という2足歩行機械だった。

 ここで、リアルに言うなら、ショベルカーとパトカーの戦いという身近なとこまでロボットアニメは現実に近づいてしまったのである。

 光線兵器もない。空も飛べない。遠くへの移動には輸送車に載せるなど、正義の主役メカとしては、ほとんど特徴のないものとなった。

 唯一、他のレイバーと違うのはデザイン的にカッコいいという部分だ。のちに「イングラム」と名前がつけられ、それが警察署に何台か配備されているという世界となった。


98式AVイングラムが現実世界に?

 パトレイバーのメカデザインを担当したのは、「ブっちゃん」こと出渕裕氏である。'70年代後半からアニメや東映特撮物のメカデザインなどをてがけ、『ラーゼフォン』('02年)では監督も努めたが、とうとう現実世界のロボットもデザインしてしまった。

 経済産業省が音頭をとったHRP(Humanoid Robotics Project)のうち、NEDOからMSTCへ委託され、川田工業、産業技術総合研究所、安川電機、清水建設との共同研究により開発された2足歩行ロボットのHRP-2 Promet(プロメテ)を、ブっちゃんがデザインしたのだ。

 HRP-2の開発研究者のなかに熱心なパトレイバーファンがいたためとされているが、ブっちゃんのデザインも98式AVを彷彿とさせる。

 3つのカメラを配置したにもかかわらず小さく見えるようにデザインされた頭部と、そこについている羽耳? とか、あちこちに出渕デザインのエッセンスがあふれている。

 そして、現物のロボットとなったHRP-2は、アニメ世界のデザインを苦労して現実に合うようにすりあわせた力作といえるだろう。

 現実では重量配分や脚や腕の長さの制限もあり、アニメのカッコよさを追求したプロポーションは実現しなかったが、かなりがんばったといえる。

 その後、産総研ベンチャーによって開発された、小型化したHRP-2mチョロメテなら、重量問題も少なく、カバーとなる外側の成形で、よりアニメ風なシルエットを持つデザインとなった。


容姿にふさわしい振る舞いがある?

 さて、ブロメテに話を戻そう。アニメの世界では、そこらへんにあるパトカーと変わらないという汎用的デザインのレイバーを生み出したわけだが、そのテイストを持ったまま、現実世界にロボットが登場すると、その存在はユニークなものとなった。

 目立つし、無個性なロボットの容姿とは違ったものとなった。

 当初の発表時に歩いたりしているだけなら、「なるほど、そうきたか」と興味深く見ていたが、HRPには研究目的がある。

 産総研と東京大学生産技術研究所との合同研究で「会津磐梯山」を踊ったり、先日公開された東京大学工学部の「21世紀COE情報科学技術戦略コア 実世界情報システムプロジェクト最終成果デモンストレーション」(長い!)でのHRP-2はどうも雰囲気が違う。

 テレビのニュースで放映されたHRP-2の画面を前に、『太陽にほえろ』のジーパン刑事こと松田優作が殉職するシーンで、腹から手を離し、手のひらを見ながら叫ぶ「なんじゃこりゃあ!」の気分となった。

 カッコいい系のキャラだと思っていたら、「ガルちゃん」ノリのキャラだったのねと気づかされた。「ガルちゃん」とは、同じく出渕氏がデザインした、SF作家の火浦功氏の作品『未来放浪ガルディーン』に登場するロボット「ガルディーン」の愛称だ。

 「パトレイバー」とほぼ同時期にデザインされた「ガルディーン」は、「98式AV」によく似ている。違う点といえば、よりアニメ風なボリューム感にあふれているという部分だ。あきらかに主役をはれるメカデザインである。

 だが、その性格は「スチャラカ」系でしょーもないことばかり話すし、お笑い担当ともいえるロボットだ。

 プロメテが防水手袋をして洗い物をしたり、お茶を湯のみで出すのに会話をしていたりするが、どう見てもお笑い系かと思ってしまった。そのうえ、エプロンまでしているのかおまいは! と3回ぐらい画面に突っ込みを入れてしまった。

 これがASIMOだったら違和感もなかったかもしれない。ただプロメテは、現実世界のロボットとしてはユニークすぎた。その形態はアニメで植えつけられた価値基準からは主役メカに分類される。

 主役にはふさわしい行動がある。アニメなら主役クラスが、エプロンをして手袋してお茶くみだ。あまりに所帯じみた姿に、故桂枝雀師匠が言うところの「緊張の緩和」がされて「笑い」という感情を引きだしたのだ。

 このようなこともあり、研究用のロボットは、あえて没個性とするのがいいのかもしれない。ただ、野暮ったくはしてもらいたくないけど。





米田 裕(よねだ ゆたか)
イラストライター。'57年川崎市生。'82年、小松左京総監督映画『さよならジュピター』にかかわったのをきっかけにSFイラストレーターとなる。その後ライター、編集業も兼務し、ROBODEX2000、2002オフィシャルガイドブックにも執筆。現在は専門学校講師も務める。日本SF作家クラブ会員



2007/01/26 00:02

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