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産総研ベンチャーほか4社が共同で「HRP-2チョロメテ」を開発

~HRP-2がデスクトップサイズに

 5月25日、産業技術総合研究所(産総研)は、産総研認定ベンチャー2社と、そのほか2社に技術移転することで、小型ヒューマノイロボット「HRP-2m Choromet」愛称:チョロメテを開発したと発表した。

 産総研認定ベンチャーとはゼネラルロボティクス株式会社と株式会社ムービングアイの2社。他2社は、有限会社ピルクス・ロボティクスと、株式会社大日本技研。複数の会社が産総研の技術を共同で事業化したもので、産総研が「イノベーションハブ」としての機能を果たした例だという。

 チョロメテは高さ35cm、重量1.5kg。20自由度の小型ヒューマノイド。足の付け根に3軸力センサー、胴体部分に加速度ジャイロを搭載している。


「HRP-2m Choromet」愛称:チョロメテ HRP-2よりもずんぐりしているが、ふくらはぎなどが膨らんだことでよりアニメのロボットっぽくなった チョロメテ背面

 産総研が旧・電総研時代に開発し、現在では開発者の石綿陽一氏がムービングアイで商品化している実時間Linux「ART Linux」が動作する名刺大のコントローラー(SH4 240MHz)を搭載し、その上で同じく産総研が開発しゼネラルロボティクスが事業化しているヒューマノイドロボット基盤ソフトウェア「OpenHRP」が動作する。

 OpenHRPは動力学シミュレータ、センサシミュレータなどのシミュレータ部と、動作パターンジェネレーター、コントローラ部から構成されるソフトウェア開発基盤。CORBAを用いた分散オブジェクトシステムとして構成されている。シミュレータ部分は非商用ならば無償で公開されている。

 コントローラー内部はさらに歩行パターン生成や、センサフィードバックによって動作を安定させる機能などが、「プラグイン」と呼ばれる機能モジュールに分割されて実装されている。各機能モジュールは、OSによって動的にリンクされる。相互機能呼び出しも可能なので、ユーザーはCやC++で作成したプラグインから、別のユーザーが開発したプラグイン機能などを直接利用することができる。制御ソフトウェア全体をコンパイルする必要がないので開発を効率的に行なえる。


55mm×95mmの小型省電力コントローラー「HRP-3P-CN」。もともとはHRP-3Pnの分散型ロボットコントローラーとして開発されたもの(PC Watch記事12を参照)
 今回チョロメテに搭載されているコントローラーは、標準のものに加え、日本遠隔制御とピルクスが共同開発した小型のサーボモータや、センサ類を実際に制御するためにシリアルインターフェイスを追加したもの。その上で、ゼネラルロボティクスがOpenHRPの一部の機能を搭載し、二足歩行や起きあがりの動作を実現することに成功した。

 ZMP規範による動作パターン生成やセンサフィードバックを使ったリアルタイム制御により、従来のホビーロボットより小さな足底で歩行することができる。

 直接教示やGUIを使ってモーションを作成することの多いホビー用ロボットよりも、ロボットの運動生成・制御のソフトウェア研究・教育に向いているという。また、4,000万円するHRP-2に比べて安価なロボットを開発することで、ARTLinuxやOpenHRPのユーザー拡大も目指す。

 ハードウェアとしても、ヒューマノイドロボットの動作パターンの有効性を検証する上で、ちょうど良い精度を持っているという。設計者はリンク機構の設計を得意とするピルクス・ロボティクスの佐藤仁氏。佐藤氏はROBO-ONEやレゴマインドストームの世界ではJin Sato氏として知られている。


ART-Linux事業を行なっている(株)ムービングアイ 代表取締役 石綿陽一氏 (有)ピルクス・ロボティクス CEO 岡田昇一氏

OpenHRPの事業化を手がけているゼネラルロボティクス社 代表取締役 川田忠裕氏(左)と技術営業課 小神野東賢(おかの・とうけん)氏。川田氏は川田工業社長でもある 佐藤仁氏

 外装を担当したのは、近藤科学の「KHR-1」にもオプション外装を提供している大日本技研の田中誠二氏。HRP-2プロメテの外装デザインを担当した出淵裕氏の監修を受けている。可動範囲を狭めず、安全性を実現することを目指しているという。


外装担当の(株)大日本技研 田中誠二氏 デザイナー 出淵裕氏 出淵裕氏によるイメージ画。「完成予想図」として描かれたものだという

肩には、出淵裕氏のデザインの特徴である「ブチ穴」がある 本体側面にもブチ穴が滑り止め代わりに開けられている

外装なしモデルのデモの様子
 記者会見当日の外装は原型で、製品版よりも重たいということで、デモのときもあまり動かなかった。動作デモは主として外装なしのモデルで行なわれた。同じ動作パターンジェネレーターを使っているため、動きがHRP-2に似ているところが面白い。

 発売は秋頃の予定で、価格は50万円以上になる見込み。現時点でまだ開発中であり、ハードウェアの仕様や、販売チャネルその他もフィックスされていない。今後は、チョロメテ用の動力学シミュレータや教育用コンテンツの開発も行っていく予定だという。

【動画】デモ。外装付きのチョロメテは簡単な動きのみ 【動画】歩行動作から仰向け 【動画】うつぶせから起きあがり
【動画】体操動作 【動画】2足歩行シミュレーションの様子


URL
  産総研
  http://www.aist.go.jp/index_j.html
  ニュースリリース
  http://www.aist.go.jp/aist_j/press_release/pr2006/pr20060526/pr20060526.html
  ゼネラルロボティクス
  http://www.generalrobotix.com/
  ムービングアイ
  http://www.movingeye.co.jp/
  ピルクス・ロボティクス
  http://www.pirkus-robotics.com/
  大日本技研
  http://www.poseidon.co.jp/
  【2006年1月31日】【森山】HRP-2、生活支援のための自律能力を向上(PC)
  http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2006/0131/kyokai42.htm
  【2004年6月16日】産総研、Ethernet上での実時間通信をART-Linuxで実現(PC)
  http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2004/0616/rlinux.htm


( 森山和道 )
2006/05/29 00:05

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