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ロボット組立編

芝浦工大「大人のためのロボットセミナー」レポート(3)
Reported by 井上猛雄

 芝浦工業大学の生涯学習センターにて開催された「大人のためのロボットセミナー」。第2回目のセミナーでは、ロボット本体の組み立て実習が行なわれた。今回のレポートは、ロボットの機構部を中心に紹介する。

 「SPIDER」は、8脚で平滑歩行する多種目競技用ロボットキットである。本体は約82×107×43mm(幅×奥行き×高さ、タイヤ部分を含む)と小型で、歩幅が12mm強、上下運動は0.64mmと小さく、滑らかに歩行するように設計されている。キットの内容は、ワンチップマイコンボード用の電子部品のほか、ロボットを構成する各種パーツ、歩行用ギアボックス、リモコンボックス、組立説明書などで構成される【写真1】。

 今回のセミナーでは、ワンチップマイコンボードを搭載した自律歩行ロボットを組み立てるため、リモコンボックスはロボットの動作チェック用としてのみ利用する(プレイバック制御用の電子回路と組み合わせれば、あらかじめ動作を記憶させて、シーケンス的な制御も可能だ)。

 まず始めに、リモコンから組み立てる。これは、タミヤから発売されている4チャンネルのリモコンボックス(「楽しい工作シリーズNO.106」)だ。DCモータをマニュアルでオン/オフさせるために用いる。

 2つの制御スティックがあり、モータを正逆転することができる。組み立ての詳細については割愛するが、完成すると【写真2】のようになる。今回のセミナーでは自宅でコントロールボックスを製作し、セミナー参加時に、リモコンが正常動作するか、専用冶具で検査した。


【写真1】キットの内容。プリント基板、電子部品、ロボットの要素部品、歩行用ギアボックス、リモコン、組立説明書などがセットになっている 【写真2】完成したリモコンに検査冶具を接続し、正常に動作するか検査しているところ。検査冶具はセミナーで用意されていたものを使用

 次に歩行用のツインモータギアボックスの組み立てに入る。これも前述のリモコン同様、タミヤの市販品(「楽しい工作シリーズNO.97」)を使う【写真3】。ロボットの脚を駆動する際に、モータの回転を減速させて、必要なトルクを得るために用いる。

 このギアボックスは組み立て方法により、3通りのタイプを選択できる。ギア比58:1で出力シャフト位置が上にある「Aタイプ」、同様のギア比で出力シャフト位置が下にある「Bタイプ」、さらにギア比が203:1と低速な「Cタイプ」である。ギア比が大きくなれば速度は遅くなるが、トルクは大きく回転力も大きくなる。今回はギア比58:1のAタイプで組み立てているが、ロボットの脚まわりを駆動するためのトルクは十分にある【写真4】。


【写真3】歩行用のツインモータギアボックス。タミヤの「楽しい工作シリーズNO.97」を使用。ロボット以外のメカ部品としても応用がきく 【写真4】ツインモータギアボックスの組み立て。説明書のイラストが少しわかりづらかった。ギア比を58:1(モータが58回転するとギアの出力軸が1回転する)にして組み立てる

いよいよロボット本体メカ部分の組み立て!

 さて、これらの前準備ができたら、いよいよロボット本体機構部の製作にとりかかる。SPIDERロボットの脚は、左右の内側と外側にあり、それぞれ2本ずつ合計8本の脚で構成されている。モータと連結されたギアボックスの出力軸のパワーが、クランクによって脚に伝達され、テコの原理を利用したリンク機構で駆動する仕組みになっている。【写真5】に部品全体の構成を示す。

 部品の数は非常にたくさんあるので、組み立て時に部品を失くさないように注意する。ネジはM3で統一されているが、長さが微妙に異なるので、アイスボックスなどに同じ部品を集めておくと便利だ【写真6】。


【写真5】ロボットの構成部品。いろいろな種類の部品があるため、組み立ては思った以上に時間がかかり大変だった 【写真6】すぐに組み立てたいという気持ちを抑えながら、部品を分類してから作業にとりかかる。アイスボックはセミナーで用意されていたものを利用。このような細かい配慮がうれしい

 組み立ての順番は、外側クランク部→内側クランク部→支点フォロア部、次に前後の脚パーツ→左右前後の脚パーツ部の組み立て→シャーシの組み立て→シャーシへの内側外側の脚組み付け(左右)→ギアボックスの取り付け→モータの取り付け→ワンチップマイコンボードの搭載という流れになる。

 各パーツは同じ部品で構成される場合も多いが、左右で向きが異なるため、組み立て時に同じ向きにしないようにする。

 それでは、各パーツを詳しく見ていこう。


1.外側クランク部

 外側クランクは同じものを2つ作る。ナットの締め付けには、キットに付属する専用冶具を用いる。要素部品は以下のとおり。
・M3ナット×1
・M3ワッシャ×1
・M3ネジ-10mm×1
・ホーン×1
・イモネジ×1


【写真7】外側クランクの部品。イモネジは微小なので失くさないようにする 【写真8】外側クランクの完成。このクランクはモータからの回転をリンクに伝達するために用いる

2.内側クランク部

 外側クランクと同様にして、2つクランクを作る。外側クランクと異なるのは、ネジの長さが12mmであること、ワッシャを2枚入れる点である。要素部品は以下のとおり。

・M3ナット×1
・M3ワッシャ×2
・M3ネジ-12mm
・ホーン×1
・イモネジ×1


3.支点フォロア部

 支点フォロアは左右前後の脚を支えるパーツとなるもの。同じものを8つ作る。要素部品は以下のとおり。

・支点連棒(短)
・M3ナット×1
・M3ネジ-8mm×1


【写真9】支点フォロアの部品。支点フォロアは左右前後の脚を支えるパーツだ 【写真10】支点フォロア部の完成。合計8個分つくる。ネジが駆動時に緩まないように、ナットの締め付けを固くする

4.前脚パーツ

 前脚パーツは、ネジの向きだけを左右対象にして(タイヤの向きは同じ)、左右2つずつ合計4個作る。要素部品は以下のとおり。

・M3ナット×3
・M3ネジ-8mm×2
・M3ネジ-6mm×1
・前脚×1
・前脚ゴム×1


【写真11】前脚パーツの部品。長さの異なるネジが2つあるので注意する 【写真12】前脚パーツの完成。左右のネジの方向が異なる。ナットの締め付けはできるだけ固くする(前脚のゴムが回らないようにする)

5.後脚パーツ

 ネジの向きだけを左右対象に(ローラの向きは同じ)、2つずつ合計4個作る。ローラーシャフトの圧入には金槌などを利用して軽く押し込む。要素部品は以下のとおり。

・M3ナット×2
・M3ネジ-8mm×2
・後脚ローラーシャフト×1
・後脚×1
・後脚ローラ×1


【写真13】後脚パーツの部品。後脚のほうがローラーが小さい。左右のネジの方向が異なるので注意 【写真14】ローラーにシャフトを圧入する。金槌などを利用して軽く叩きながら少しずつ挿入する。あらかじめ挿入部にはグリスを塗っておく

【写真15】後脚パーツの完成。ローラーがスムーズに回るかどうかチェックする

 これらの基本パーツを作ったら、次に各パーツを組み合わせて脚部を組み立てていく。


6.内/外側の左/右前脚部の組み立て

 ここで注意する点は、ネジの締め付けにM3ナイロン低ナットを利用していること。このナットは、ネジの谷部にナイロンが付いており、緩み止めになる。支点の連結部は、ネジは固く締め付けず、少し隙間が空く程度に締め付けることがポイント。

 脚の取り付けは、内側と外側で方向が異なるので注意する。また、右側と左側で主連棒と支点棒の方向が異なる。要素部品は以下のとおり。

・M3ナイロン低ナット×3
・主連棒
・支点連棒(長)
・支点フォロアー×1(3.でつくったもの)
・前脚パーツ×1(4.でつくったもの)


【写真16】前脚部の組み立てパーツ。M3ナイロン低ナットを利用している点に注目。支点フォロアーとの前脚パーツは、先につくっておいたもの 【写真17】前脚部の完成。写真は左外側の前脚部分。支点の連結部になるため、ネジはナイロンナットで少し隙間が空く程度に締め付ける。また支点となる部分にはグリスを塗っておく

7.内/外側の左/右後脚部の組み立て

 組み立て方は前脚部と同様。内/外側、左/右に気をつけて組み立てる。ここでもM3ナイロン低ナットを使用する。要素部品は以下のとおり。

・M3ナイロン低ナット×3
・主連棒
・支点連棒(長)
・支点フォロアー×1(3.でつくったもの)
・後脚パーツ×1(4.でつくったもの)


【写真18】後脚部の組み立てパーツ。支点部分なので、ここでもM3ナイロン低ナットを使用 【写真19】後脚部の完成。写真は左外側の後脚部分。前脚部と同様に、ネジの締め付けは軽く、支点部にはグリスを塗っておく

【写真20】ナットでネジを締め付ける際には、専用の冶具を利用する。右側の十文字の工具がそれだ

【写真21】脚パーツの組み立てチェックを行なう。それぞれ方向が異なるので、正確に組み立てられているか調べる
8.脚パーツの組み立てチェック

 左側の外側/内側部における前/後脚部、右側の外側/内側部における前/後脚部、すべてを組み立てたら、方向が間違っていないがチェックする。すべてOKなら、これらをシャーシに組み付けて本体を完成させていく。


9.シャーシの部分組み立て

 シャーシ部分を組み立てる。シャーシにはギアボックス、脚、リンク棒などが取り付けられるので、組み立てには十分注意する。

 まず保護シートを取り、バリ、ゲートがあればヤスリやサンドペーパーでキレイに前処理を施しておく。支点となるシャフトを左右前後4カ所に取り付けていく。この際、シャフトの長さが異なるので注意。連結シャフトにグリスを塗ることも忘れないようにする。次に内側と外側のクランクも取り付ける。内側と外側のクランクは180度回転対称になるように取り付ける。要素部品(片側)は以下のとおり。

・シャーシ(本体)
・M3ナット×4
・支点シャフトカラー(長)×2
・支点シャフト(長)×2
・支点シャフトカラー(短)×2
・支点シャフト(短)×2
・連結シャフト×2
・外側クランク×1
・内側クランク×1


【写真22】シャーシの組み立てパーツの一部。片側の後部(写真下)支点シャフト部と、内側/外側のクランク(写真上) 【写真23】シャーシに支点シャフトを組み付けたところ(右側後部)。カラーでシャフトを補強している。上と下でシャフトの長さが異なるので注意する。また支点シャフトは内側と外側で同じ長さになるように6角ナットで固定する

【写真24】外側/内側クランクのパーツ。これをシャーシ側面の中央部の穴に取り付ける。クランクはギア出力軸と直結する重要な部分だ 【写真25】外側クランクの取り付け。イモネジを6角レンチで回しながら、シャフトの切り欠き部で固定する。内側クランクも同様に取り付けるが、この際、外側クランクと180度対称になるように取り付ける。これは、内側の脚と外側の脚を交互に動かす機構であるためだ

【写真26】シャーシの部分組み立てが完成。ここでクランク部が軽く回るかチェックしておく。クランクの取り付けに隙間がないように気をつける

10.シャーシへの脚組み付け

 シャーシの左/右、内側/外側に、先ほど組み立てた前脚と後脚を組み付けていく。【写真27】は左外側の脚の組み付けをしているところ。取り付けが終わったら、外側のクランクを手で回して、スムーズに脚が動くか確認する。確認できたら、左側の内側の脚も組み付ける。同様に右側の脚も組み付ける。要素部品(片側)は以下のとおり。

・シャーシ(本体)×1
・M3ナイロン低ナット×5
・ホーン×1
・前脚(6.で組み立てたもの)
・後脚(7.で組み立てたもの)


【写真27】シャーシ本体の外側に前脚/後脚を組み付けていく。M3ナイロン低ナットを組み付けに使っている点に注目 【写真28】同様にして、シャーシ本体の内側にも、前脚/後脚を組み付けていく。この時点で内側と外側の脚がスムーズに動くか確認しておく

【写真29】脚の組み付けが終了。徐々にメカニカルになってきた。内側と外側のクランクの取り付け位置が対称になっており、それに連動して交互に内側と外側の脚が動く点がポイント

【写真30】ギアボックスの取り付けたところ。あらかじめギアボックスのモータを外しておく。ギアボックスとシャーシを取り付ける。カラーを介して、ギアの出力軸とクランク部の高さを調整
11.ギアボックスの取り付け

 シャーシへ脚を取り付けられたら、前準備の段階で用意しておいたタミヤ製のツインギアボックスをシャーシの裏面にカラーを介してネジ止めし、ギアの出力軸と内側の脚を連結する。要素部品は以下のとおり。

・脚部を取り付けたシャーシ×1
・ツインギアボックス×1
・ギアボックス用カラー×2
・M3十字穴付なべ小ネジ×2
・M3六角両面取り低ナット×2


12.モータの取り付け

 ギアボックスにモータを取り付ける。連結部の動きを調べるために、モータとリモコンを一時的に結線して、動作をチェックする。リモコンで脚を動かしてみて、もし脚がスムーズに動かない場合には、機構部が滑らかに動くように、パーツの位置をずらしたり、あるいはネジの締め付けを調整したり、細かいアジャストメントをしていく。完成したロボット脚部の動画を下記に掲載する。

 次回は、自律型走行用のプログラムの焼付けと、セミナー参加者による競技会の模様をレポートする。


【写真31】ギアが付いたら、モータを取り付けて、リモコンと結線。いよいよ機構部の動作チェックに入る 【動画】リモコンを使って機構部の動作チェックをする。モータを正転/逆転で回してみる。もしスムーズに回らないようならば、メカの微調整をする

URL
  芝浦工業大学
  http://www.shibaura-it.ac.jp/

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2006/07/31 14:55

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