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KHR-1オンリーの競技会「KHR-1セカンドアニバーサリー」レポート

Reported by 白根雅彦

 6月10日と11日の2日間、東京・浅草で、二足歩行ロボットキット「KHR-1」による競技会「KHR-1セカンドアニバーサリー」が開催された。「マイホームもマイカーもあまり欲しくないけど、オレ独自の必殺技を組み込んだマイロボットは欲しい」と思っている同志諸君のためにレポートをお届けする。

 KHR-1セカンドアニバーサリーは、二足歩行ロボットの組み立てキット「KHR-1」の発売2周年を記念した、KHR-1専門の競技会イベント。KHR-1の製造元である近藤科学が主催する。個人や学生団体が参加し、2m走行による予選と、格闘競技トーナメントによる本選が行なわれる。

 参加機体のレギュレーションはズバリ、KHR-1を使うこと。オプションパーツの追加などもある程度は認められているが、純正パーツ以外は認められない。競技参加者全員が、ほぼ同じ性能のハードウェアを使うという、ユニークなイベントだ。

 KHR-1とは、フレームや制御用のマイコン、プログラム、モーターなどがセットになった二足歩行ロボットの自作キット。126,000円にて一般販売されている。6月2日には改良された後継機種「KHR-2HV」が発売されているが、今回の競技に参加できるのはKHR-1のみとなっている。KHR-1の詳細については、PC Watchの石井英男氏によるレビュー記事などを参照されたい。

 同じロボットキットを使うので、参加者のロボットに大きな性能差は現れにくい。しかし、だからといって戦力が完全に同じになるわけではない。KHR-1は初心者でも組み立てられるが、そこから実戦に投入するには、バランスの取れた歩行動作など、さまざまなモーションのプログラミングが必要だ。また、必要に応じてオプションを追加したり、倒れないように正確に調整するテクニックも重要だ。機械加工などの専門技術は要らないが、歩行ロボットを扱う技術は必要になる。もちろん、KHR-1を操縦する操縦者の腕前も要素の一つだ。これらの要素が、競技参加者の成績の差にあらわれてくる。

 KHR-1セカンドアニバーサリーには、ROBO-ONEのように、専門分野にも精通した熟練ホビイストたちが作った、グレイトなロボットは登場しない。しかし、同じ基本性能のキットロボット同士の戦いというものは、「僕がいちばんKHR-1をうまく使えるんだっ」と機動戦士ガンダムの台詞をアムロの声で引用したくなるような、ロボットを扱う腕前を競うイベントなのである。

※掲載されている動画ファイルはすべてMPEG-4 AVC/H.264です。再生には最新版のQuickTimeなどが必要です。


参加ロボットの集合写真。外装がさまざまだが、すべてKHR-1である 会場となった浅草のロックス3 スーパーマルチコート。屋根はあるが壁は金網で、雨が降るとかなり湿気る

予選の2m走に見るKHR-1の歩行ロボットとしてのキホン

 初日に行なわれた予選は、2mの距離を走るタイムで競われる。この予選の上位16台のロボットが、2日目の格闘トーナメントによる本選に参加できる。2m走は2台のロボットが同時に走行する。第1トライと第2トライが行なわれ、希望者は第3トライも走ることができる。

 2台のロボットが同時に走行するが、互いの走行の邪魔はできない。互いのコースに入ることはできるが、相手の走行を妨害した場合は失格となる。また、走行前にはオリジナルのポーズを決める必要があり、それは「コンクルードエレガンス」として別途採点の対象となる。しかし採点されるのは第1トライのポーズのみで、第2トライ以降はどんなポーズでもよい。

 予選には36台のロボットが参加したが、そのうち26台が完走。本選突破ラインは25秒(実際には本選欠場者が出たため、27秒が突破ライン)で、1位のロボットはなんと6秒20という成績だった。

 この大会では全員が同じロボット、KHR-1を使っているため、モーションの作りや機械の調整、操縦者の腕前が、ロボットの性能差となってくる。2m走行競技というのは、この微妙な差がわかりやすくあらわれていて面白い。


【動画】勝野宏史氏と「ワイルダー01」
 まずはオーソドックスな走行の例として、勝野宏史氏の「ワイルダー01」の第2トライを紹介しよう。ちなみに「ワイルダー01」の記録は19秒27。予選では9位である。

 「ワイルダー01」は外見上、ほとんど改造のないKHR-1だ。オプション品の足の裏パーツ、ラージソールも追加してある。外見からはわかりにくいが、体が前後しつつも倒れていないので、ジャイロセンサーも搭載しているのかもしれない。

 「ワイルダー01」の走行を見ているとわかるのだが、KHR-1はまっすぐに歩行できない。この理由の一つは、足の裏の滑りやすさだ。KHR-1は標準キットだと、脚にヨー方向の旋回軸、つまり垂直軸に対する回転がない。これがどういうことかわからない人は、とりあえず椅子から立ち上がって1周、方向転換して欲しい。職場や家庭でこの記事を読んでいる人は、周囲の人に「オイ、あいついきなり立ち上がって回りだしたぞ」と心配されないように注意しよう。さて、多くの人は、足首と脚の付け根をひねりながら足踏みすることで、方向転換したはずだ。このように、通常、二足歩行で体の向きを変えるには、脚に旋回軸が必須となる。

 しかし、KHR-1の標準キットには脚の旋回軸がない。ではどのようにして方向転換するかというと、これは「ワイルダー01」の歩行ムービーを見てもらえればわかるが、両足を接地した状態で足の裏をスライドさせ、両足のスライドの差から旋回している。そのために、KHR-1の足の裏は、あえて滑りやすく作られている。足の裏が滑りやすいため、普通に歩いていても、両足の摩擦力の差やフィールドの凹凸、微妙な傾き、右足と左足のモーションの差などにより、左右の足の滑り方に差ができて、まっすぐ歩けないわけだ。

 ちなみにKHR-1には旋回軸を追加するオプションも販売されている。初期に販売された足首旋回パーツは今大会レギュレーションでは利用不可となっていたが、後期に発売された脚付け根の旋回パーツは、一部のロボットが利用していた。しかし、大会レギュレーションによると、足の裏は正規パーツによる改造しか許されていないため、旋回軸をつけているロボットも、極端に接地性能のよい足の裏は使っていない。そのため、脚を滑らせるような歩行が多かった。

【お詫びと訂正】初出時、勝野氏の名前を誤って掲載しておりました。お詫びとともに訂正させていただきます。


【動画】ヨゴ3の第2トライ。手前は松っちゃん一家の「松っちゃん」
 続いては第17走の當田秀稔氏の「ヨゴ3」による第2トライを紹介しよう。

 「ヨゴ3」は通常の前歩きでもっとも速い11秒03を記録したロボットだ。足を滑らせながらバタバタと走るのだが、これがけっこう速い上に、走りながら方向の微調整ができるようになっている。「まっすぐ走る」と「ちょっと右に曲がりつつ走る」、「ちょっと左に曲がりつつ走る」というモーションをロボットにプログラミングし、使い分けているのだ。

 ほかの多くのロボットの場合、方向転換は立ち止まって行なっている。これが大きなタイムロスになっている。しかし「ヨゴ3」は歩きながら方向を転換することで、立ち止まることなく、コースアウトを避けつつ最短距離の走行が可能になっているのだ。KHR-1では足が滑るため、まっすぐ走るのが難しい。そこを、素早く微調整しやすくすることでフォローしようという発想だ。


【動画】「ダイナマイザーJr」(奥)と高田和俊氏の「KZR-choco」(手前)
 6秒20という記録で見事、予選1位となったスギウラシスターズの「ダイナマイザーJr」による第3トライも紹介しよう。スギウラファミリーは「Dynamizer」というロボットでROBO-ONE入賞経験もある強豪チーム。今回はその子どもたちのスギウラシスターズとしての参加だ。競技会常連チームだけに、「ダイナマイザーJr」はかわいらしいカッパの外見とは裏腹に、安定性、モーションの良さともに完成度が高いロボットとなっている。しかし操縦者は女の子で、「ダイナマイザーJr」を抱きかかえる姿はカッパさん人形で遊んでいるように見えなくもない。

 「ダイナマイザーJr」は第1と第2トライは普通に前向きで歩いていた。しかし途中、体が横に向いてしまうと、横歩きを駆使して好タイムを記録していた。そして第3トライでは、完全に横向きからスタートして全行程を横歩きで走破し、6秒20という「そりゃ赤くて角が生えてるだろ」としか思えない記録で1位となった。

 KHR-1の横歩きは、モーションの作りによっては通常歩行よりも速い。馬など四足歩行動物のように「後足代わりの右足で蹴り出し、前足代わりの左足を遠くに投げ出す」というような動作で、チャッチャカと歩けるようだ。しかも動きを速くして、前方向に慣性力がかかっても、前方向に倒れる心配は少ない。KHR-1で速く歩行するのであれば、横歩きを採用するのは必然とも言える。

  今大会では第11走の道楽(亀田謙一)氏の「か~る」が第1トライで横歩きを行ない、好タイムを記録していた。その影響か、第2トライ以降は横歩き作戦に変更し、好成績を収めるロボットが続出した。横歩きモーションができるかどうかも、高順位に入れるかどうかの分かれ目になったようだ。とはいえ、横歩きでトップクラスに入ったロボットは、いずれも前歩きでも十分な成績をおさめている、完成度の高いロボットがほとんどであった。


【動画】奥が「か~る」で手前は上條賢郎氏の「DRM-MkII」
 道楽(亀田謙一)氏の「か~る」の第2トライも紹介しよう。「か~る」は今大会では少数派の、脚に旋回軸オプションを追加しているロボットだ。スタート時のポージングで、足がハの字状になっているのがわかる。走行中の方向転換動作も、ノーマルのKHR-1とは少し異なるのがおわかりいただけるだろうか。ちなみに「か~る」、第3トライでは走り出すまで時間のかかるスタートポーズをシンプルなものに変えることで、9秒93のタイムを出して2位となっている。


【動画】オーソドックスな人型ロボットである「R-Blue」
 本大会出場ロボットではないが、参考までにデモンストレーションに登場したROBO-ONE出場ロボットの歩行も紹介しよう。ムービーに映っている白と黒のロボットは、ROBO-ONE常連の吉村浩一氏の「R-Blue」だ。吉村氏はKHR-1と後継機種のKHR-2HVの設計を担当している、ホビーロボット界屈指の人型ロボットデザイナーでもある。わかりにくく言えば(言うな)、ワンオフで作られたリファレンスモデルの「R-Blue」がガンダムであり、そのノウハウを元に作られた量産機のKHR-1がジム、というわけだ。

 ムービーにある「R-Blue」の歩行に注目してもらいたい。足がほとんど滑ることなく歩いている。これは旋回軸による方向転回を念頭に置き、足の裏を滑りにくくしている上に、足の裏によけいな摩擦がかからないよう、素早いモーションや不安定なモーションを避けている結果だろう。「R-Blue」はKHR-1と比較すれば、価格も製作の手間も桁違いのロボットと思われるが、こうした細かな動きにも基本性能の差が感じられる。とはいえKHR-1やKHR-2HVでも、旋回軸を追加し、足の裏を改造し、そしてモーションを徹底的に作り込めば、「R-Blue」に近い動きはできるのかもしれない。


ロボットごとに異なるさまざまなコントロール方法

 KHR-1にはモータを制御するコンピュータが搭載されている。自律で動くこともできるが、試合では基本的に、操縦者が有線もしくは無線で「前に進め」、「マッスルパンチ」などのコマンドを送り、それによってKHR-1に搭載されたコンピュータが各関節のモータを動かすようになっている。

 この大会の参加者は全員、KHR-1という同じロボットを使っている。しかし、KHR-1にどうやってコマンドを送っているかというと、そこは参加者ごとに異なっていて面白い。予選参加者の中から、いくつかのコントローラーを抜粋して紹介しよう。


第4走の「BLACK TIGER」(左)と「PORYTECHNIC」(右)。いずれも専用の無線コントローラーを使っている
 比較的多いのが、近藤科学などがオプション品として販売している、無線コントローラーを使うことだ。ラジコンのプロポのスティック部分にボタンを付けたような形状をしている。ボタンを押すと、それぞれのボタンに割り当てられた動作を行なう、というシンプルな操縦形式だ。

 専用コントローラーを使うメリットは、立ったまま操縦できること。とくに格闘試合では両者が入り乱れることが多く、ロボットが見やすい位置に操縦者が移動できることは重要となる。また、試合中はロボットと同じ向きに向かないと、うまくコントロールできない操縦者もいたりして面白い。


第1走の「PAVANE」(左)と「SS-1」(右)。対照的なコントローラーを使っているのが面白い
 専用の無線コントローラーに次いでよく使われるのは、ノートパソコンによるコントロールだ。例として第1走、SLAN氏の「PAVANE」と芝原 俊司氏の「SS-1」を紹介しよう。この両者は対照的な無線コントロールを採用していて面白い。

 PAVANEはノートパソコンからの信号を無線化するユニットを使っている。これは近藤科学がKHR-1のオプション品として販売しているものだろう。ラジコンと同じ電波を使うので、到達距離などの性能もこうした競技会に向いている。ノートパソコンにはゲームコントローラーをつないでいて、立ち上がってのコントロールも可能になっている。ノートパソコン側も、移動しやすいようにプラスチックのケースに入れているのが、賢いオクサマ的発想ですばらしい。こうした工夫をしないと、入退場の際に何かをなくしたり、コードを断線したりすることがママあるのだ。

 一方の「SS-1」はちょっと珍しく、パソコンを介さずにゲーム機用のコントローラーを使っている。見たところ、コントローラ・受信機ともに、ロジクール製のプレイステーション2用コントローラーだと思われる。筆者も愛用しているが、電波は10mほど届き、レスポンスもよいなど、ゲームコントローラーとしては使いやすい製品だ。しかし、今大会ではうまくコントロールができなかったようで、「SS-1」は、第2トライでは有線コントロールに切り替えて走行していた。やはり屋内向けに調整されたゲームコントローラーは、屋外に近い環境となる会場では、うまく動作しないこともあるのだろう。


「thinkmover2005」の操縦スタイル。腰に装着しているのがパソコン本体。ゲームコントローラー用アダプターも使っている
 パソコンを使った一風変わったコントロール方法としては、瀬角 明氏の「thinkmover2005」も紹介したい。「thinkmover2005」はパソコンからの有線コントロール方式を採用しているのだが、そのコントローラーには米Xybernautのウェアラブルコンピューターを使っていて、さらにヘッドマウントディスプレイでパソコンの画面を見ながら操縦している。これならばノートパソコンを使うのと違って、机や地面にパソコン本体を置く必要がなく、それでいてロボットとパソコン画面を同時に見ることができる。そして何より重要だと思われるのが、むやみやたらとカッコイイことだろう(と感じるのは筆者だけか?)。


僕がいちばんKHR-1をうまく使えるんだっ!

 さて、ここから2日目に行なわれた本選を紹介する。本選は1対1の格闘形式の試合で、予選上位16台のロボットによるトーナメントで行なわれる。

 格闘のルールはROBO-ONEにほぼ準じている。3分1ラウンドで行なわれ、先に3ダウンを奪った方の勝ち。ダウン後、10カウント以内に立ち上がれないとKO負けとなる。自ら転ぶことはスリップとしてダウンにはカウントされないが、ボディーアタックなど、倒れかかる攻撃は「捨て身攻撃」と判定され、1試合に5回以上捨て身攻撃を行なうとイエローカードで、2枚たまると失格になる。

 こちらも全試合を紹介するのは大変なので、何試合かを抜粋して紹介する。


【動画】黒いロボットが「ヨゴ3」で、白いなんか見たことあるようなロボットが「NABEDAM」
 まずは第1回戦の第4試合、渡邊 敦氏の「NABEDAM」と當田秀稔氏の「ヨゴ3」の試合だ。いずれも機動力と安定感のあるロボット。とくに「ヨゴ3」はチョコチョコした歩行で、予選を3位で通過している。

 試合は、「ヨゴ3」が機動力で「NABEDAM」を翻弄し、「NABEDAM」がよく動く「ヨゴ3」にうまく当てるようにパンチ、キック、捨て身攻撃とさまざまな攻撃を繰り出す。「NABEDAM」は操縦者の腕前がいいのか運がいいのか、2回もパンチを「ヨゴ3」の肩に引っかけ、引き倒すことに成功しているのが必見だ。


【動画】白いどこかで見たデザインのロボットが「オタスケ・ジャパン」で、黒いロボットが「ISU」
 続いては、第1回戦の第5試合、ウエダッチ氏の「オタスケ・ジャパン」とISU氏の「ISU」による一戦だ。「オタスケ・ジャパン」は絶妙な攻撃位置からパンチを当ててくる強豪機。対する「ISU」は、前回大会で予選落ちし、格闘試合は今回が初めてという初心者ロボットだ。

 操縦の腕前にも差があるようで、試合早々に「オタスケ・ジャパン」は絶妙なタイミングのパンチを繰り出し、ダウンを奪う。しかし「ISU」はその後も攻撃を避けつつ果敢に反撃し、頭突きによりダウンを奪い返しもする。最終的にはダウン数による判定で「ISU」は負けてしまうが、試合初体験でありながらここまで敢闘したというのがすばらしい。「ISU」のモーションも多彩かつ安定性が高く、今後が楽しみなロボットである。


【動画】外見がほぼノーマルのKHR-1が「祭り」で、紫のマントを羽織った青いロボットが「青KING」
 続いては、第1回戦の第7試合、引間 奈緒子氏の「祭り」とナベケン 宮川到氏の「青KING」を紹介しよう。「祭り」は本選でも少ない、脚に旋回軸を搭載したロボットだ。両者、機動力に優れるロボットではないが、試合では、体を投げ出す捨て身攻撃の応酬となっている。

 試合を見るとわかるのだが、はっきりいって旋回軸搭載による性能差は少ない。旋回時の動作が異なるくらいで、旋回軸の有無は、本大会の格闘には大きく影響していないことがわかる。


【動画】オーバーオールを着たカッパさんロボットが「ダイナマイザーJr」で、白いプラレスっぽいロボットが「オタスケ・ジャパン」
 最後に決勝戦のスギウラシスターズの「ダイナマイザーJr」とウエダッチ氏の「オタスケ・ジャパン」の一戦を紹介しよう。

 両者、決勝まで残っただけに軽快な機動力と安定性を持つ完成度の高いロボットだ。機動力では予選1位の「ダイナマイザーJr」に分がありそうだが、「オタスケ・ジャパン」は位置を取るのがうまく、絶妙な位置からきれいなフォームのパンチを放ってくる。対する「ダイナマイザーJr」は、積極的に捨て身攻撃を仕掛けてくる。

 試合は3分では決着がつかず、延長に持ち込まれた。延長では、「オタスケ・ジャパン」がうまく「ダイナマイザーJr」の後ろを取ると、絶妙のタイミングでパンチを当ててダウンを奪い、勝利した。

 このクラスの完成度になると、操縦者の腕が重要になってくる。ムービーには「ダイナマイザーJr」の操縦者の女の子が映っているが、それを見て「なぜ大人に操縦させない、子どもがロボット操縦するなど10年早いわっ」と思う人もいるかもしれない。しかし、ロボットの操縦の腕に年齢は関係ない。むしろ若い方が操縦がうまい傾向があるようで、家族でロボット競技会に出場するチームで、子どもに操縦させるチームは多かったりする。アニメやマンガでやたらと少年がロボットを操縦するのは、あながち間違いではないのかもしれない。


東西の有名ホビーロボットが登場するエキシビジョンも開催

 今大会では、東日本と西日本を代表する10台のホビーロボットが対決する「東西ロボット大戦」というエキシビジョンマッチも開催された。東日本チーム「ロボマスターズ」はROBO-ONEを中心に活躍するロボットたち。対する西日本チームは大阪で開催されている「ロボファイト」などで活躍するロボットたちだ。

 このエキシビションマッチは、ロボファイトを主催するロボットフォースがセッティングしたもので、ルールもロボファイトにほぼ準拠している。試合形式は2台がタッグを組み、同時に4台がリングにあがるという形式。

 はっきりいって、レフェリーも全ロボットを見ることはできず、何がなんだかわからない状態。レフェリーが見ていないところで凶器の栓抜きを取り出しても大丈夫そうな、勝敗よりも見た目重視の、プロレスのような試合だ。


URL
  ロボットフォース
  http://www.robot-force.jp/

【動画】黒い機体が西日本の「振武II」で赤い機体が西日本の「KING KIZER」。銀色の機体が東日本の「RETRO」で青い機体が東日本の「Dynamizer」。説明するだけでわけがわからなくなる
 ここでは、見応えがあった1試合を抜粋して紹介しよう。第6回戦では西日本はMARU FAMILY氏の「KING KIZER」と中川電機氏の「振武II」の主将タッグと、東日本はスギウラブラザーズの「RETRO」とスギウラファミリーの「Dynamizer」の副将タッグの対決となった。

 西日本の主将チームは、ROBO-ONE入賞経験はまだないものの、機動力、安定性に優れた強豪ロボット。とくに赤いロボット「KING KIZER」はハードウェア性能も高いが、多数の試合をこなしてきたためか、操縦者の腕前もよい。ちなみにムービーの背景に映っている、サムライブルーのシャツを来た男の子が「KING KIZER」の操縦者。隣でセコンドのごとく指示を送っているのがお父さん。MARU FAMILYも家族参加チームだが、操縦は息子担当になっている。

 対する東日本タッグも家族チーム。青い「Dynamizer」は父担当、銀色の「RETRO」は息子担当、そして今大会の本選で2位に入賞した「ダイナマイザーJr」は娘担当のようだ。

 全ロボット、機動力が高く、戦いはダイナミックなものになった。いきなり「Dynamizer」と「振武II」が捨て身攻撃をかけたのをはじめとして、大技の応酬となる。これらのロボットは、KHR-1に比べると、サーボのパワー(と値段)が違うため、ハードウェア面で大きな違いがあるわけだが、それとともにモーションの豊富さや操縦者の熟練度合いなど、ソフト面も本選出場ロボットより上をいっている印象だ。

 今回はタッグマッチでの対戦となったが、こうした有名ロボットを招いてのマッチメークは非常に見応えがある。スポーツスタイルのトーナメントだけでなく、このようなプロレス的な試合も、イベントならではの見物といえるだろう。


ロボットホビー初心者に最適なイベント

【動画】休憩時間などに行なわれた、新製品KHR-2HVのデモンストレーション。観覧者だけでなく、競技会出場者(つまり前機種所有者)へのアピールも狙っていそうだ
 KHR-1セカンドアニバーサリーは、草野球などと同じで、観戦して楽しむというより、参加して楽しむイベントという印象を受けた。ROBO-ONEなど見ているだけでも楽しめる競技会に比べると、はっきり言ってKHR-1セカンドアニバーサリーはレベルが低い。しかし同時に、参加者の敷居も低い。初心者にとって参加しやすく、現にKHR-1を買って半年も経っていないような人も多数参加している。この記事では比較的完成度高いロボットばかりを紹介しているが、当然、そうでない初心者的なロボットも多数出場していた。

 こうした参加しやすい競技会は、ロボットホビーの初心者にとって貴重だ。KHR-1のようなロボットキットは、組み立てることは簡単だが、完成度を高めるには機械部分とモーションの調整を繰り返すしかない。正直、根気のいる作業だと思う。しかしほかにKHR-1を作っている仲間がいて、情報交換や試合ができるとなると、ロボットを作るモチベーションが得られる。そうしたモチベーションを得る場所して、KHR-1セカンドアニバーサリーのようなイベントは重要だ。

 6月2日に、KHR-1より安く性能もアップした後継機種KHR-2HVが発売されたばかりで、ロボットホビーはゆっくりとだが、より始めやすくなっている。今後もKHR-1セカンドアニバーサリーのような初心者でも参加しやすい競技会が継続的に開催され、ロボットホビーがさらに盛り上がっていくことに期待したい。


URL
  近藤科学
  http://kondo-robot.com/
  【2004年12月24日】夢の二足歩行ロボットキット「KHR-1」徹底レビュー(第1回)
  http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2004/1224/digital011.htm

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ロボットキット「KHR-2HV」最速レビュー(2006/05/30)


2006/06/14 15:17

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