宇宙探査や宇宙開発の現状を紹介する「宙博(ソラハク)2009」開催

~月面探査ローバーのデモも


 12月3日~6日の日程で、東京国際フォーラムで世界天文年公認イベントの一つとして「宙博(ソラハク)2009」が開催された。主催は「宙博実行委員会」。会場内は「宇宙・天文フィールド」「環境・エネルギーフィールド」「レクチャー・ワークショップ」、ワークショップ&キッズプログラム「サイエンス縁日」の4つのゾーンに分けられており、専門家たちによるレクチャーも行なわれていたが、この記事では会場の展示をレポートする。

 会場では月・惑星探査用に研究開発されているローバーも展示・デモされていたほか、三菱重工業のコミュニケーションロボット「wakamaru」も来場者たちに愛嬌を振りまいていた。最終日である日曜日には当日券(大人1,500円、中学生、高校生1,000円)が売り切れるほどの人気だった。

宇宙・天文フィールド

 まず会場入り口をくぐると、JAXA(宇宙航空研究開発機構)による活動が模型とパネルで紹介されていた。今年9月に打ち上げ成功した「H-IIBロケット」、宇宙ステーション補給機「HTV」、「国際宇宙ステーション(ISS)」、その一部である日本実験棟「きぼう」、温室効果ガス観測技術衛星「いぶき」、そして現在開発中の再使用型ロケット「RVT」などである。

 「いぶき」は約100分で地球を一周しているが、何日かの周期ごとに同一地点の上空を、同一時間帯に通過する「太陽周期準回帰軌道」で地球を周回する衛星。同一条件で同一地点を観測するためだ。現在は3日ごとに同じ地点の上空を通過している。

H-IIBロケットの模型温室効果ガス観測技術衛星「いぶき」宇宙ステーション補給機「HTV」の1/10模型
国際宇宙ステーション(ISS)の模型ISSの一部、日本モジュール「きぼう」再使用ロケット実験機(RVT)の1/3模型

 その奥のブースでは、東京大学数物連携宇宙研究機構(IPMU)による、重力レンズ効果や、それを使ったダークマター観測研究の現在、国際共同プロジェクト「スローンデジタルスカイサーベイ」の成果紹介されていた。また、カリフォルニア工科大などが進めており、国立天文台らが現在参画を計画している直径30mの超大型望遠鏡計画(TMT)や、「すばる」望遠鏡の成果も紹介されていた。超大型の望遠鏡を作ることで、さらに遠方の銀河を観測し、また惑星形成の様子を可視光で観測することを目指す。

【動画】重力レンズ効果を説明するデモ【動画】IPMUによるクリスタル。計算機シミュレーションで作られた2億光年くらいの宇宙がこのなかに収まっている口径の直径30mの次世代超大型望遠鏡。
2018年完成を目指すすばる望遠鏡の1/100模型

 続けて、高エネルギー加速器研究機構(KEK)が、ノーベル物理学賞を受賞した小林・益川理論への貢献をノーベル賞メダルのレプリカなどでアピール。特に機械工学センター超伝導低温工学センターが開発したビームライン用超伝導複合磁場磁石や、超伝導加速空洞の実物とその解説が、解説員の方が熱心で丁寧だったこともあり、非常に面白く興味深かった。そのほか、ベル測定器の模型や宇宙線を見るためのスペースチャンバーなどが展示されていた。

 国立天文台が開発した立体ムービーで観測とシミュレーションが明らかにした宇宙の姿を見る事ができるソフト、インタラクティブ4次元デジタル宇宙ビューワー「4D2U」は、行列、立ち見ができる人気だった。

J-PARCニュートリノビームライン用超伝導複合磁場磁石。中央の線材が偏って見える理由は、右図を参照して頂きたい電子を加速するための超伝導加速空洞。節のくびれた部分で電子が加速を受けるように設計されている
小林誠氏が受賞したノーベル物理学賞のメダル(複製)も展示されていたクオークの六元模型を提唱した論文。当時、小林氏は28歳、益川氏は33歳
【動画】超伝導実験のデモンストレーション。子供達にバカウケだった。
「Micro6-02」

 月・惑星探査ロボットのデモブースでは、中央大学、明治大学、JAXA(宇宙科学部門)らによる月・惑星探査ローバ試験機「Micro6」と「Micro6-02」、東北大学大学院工学研究科による「El-Dorado-II」、JAXAの等方脚配置型の多脚型ロボット、M6 Rover、大阪大学大学院機械工学専攻による円形断面クローラ「Omni-Crawler」、中央大学のミミズ型地中探査ロボット「アースオーガ」などがデモを交えて紹介されていた。

 また小惑星探査機「はやぶさ」の模型、はやぶさに搭載された「ミネルバ」のエンジニアリングモデルも展示されていた。「ミネルバ」は直径120mm、高さ100mm。重量600g。カメラ×3、温度センサを搭載し、重力の小さい小惑星表面をホップ移動して探査するロボットで、小惑星「イトカワ」の詳細な観測を行なう予定だった。

 このほか、キッズコーナーでは星座早見盤や望遠鏡を組み立てるコーナーのほか、宇宙服を着用して記念撮影できるコーナーなどが設置されていた。

【動画】東北大学「El-Dorado-II」のデモ。ロッカーリンクサスペンションと三次元距離センサーを使った地図作製機能などが特徴
【動画】「Micro6-02」のデモ。遠隔操作中先端のアーム。より小型軽量化を目指しているという「Micro6」
大阪大学による「Omni-Crawler」【動画】横方向への移動も可能な円形断面クローラを採用【動画】ジグザグ移動も可能
【動画】蠕動移動する中央大学のミミズ型ロボット「アースオーガ」将来は先端にドリルをつけて穴を掘り、掘った土を後ろに送りながら地中を探査JAXAが開発中の等方脚配置型の多脚型ロボット。転倒という概念がないロボット
「はやぶさ」の模型「ミネルバ」のエンジニアリングモデル。「ミネルバ」のスケルトンモデル。内部のモーターが見える。その反力で機体姿勢を変える
星座早見盤や望遠鏡を組み立てるコーナー星座早見盤の見本会場内で行なわれていた講演も大人気

環境・エネルギーフィールド

環境・エネルギーフィールド

 「環境・エネルギーフィールド」では、京都大学ほかが研究開発を行なっている宇宙で太陽光発電を行なって電力をマイクロ波あるいはレーザーに変換して地上に送る発電システム「宇宙太陽光利用システム(SPSS)」の紹介のほか、南米チリのアタカマ砂漠に大口径赤外線望遠鏡を設置する「SolarTAO」プロジェクトが、太陽光発電と観測天文学の融合して紹介されていた。同プロジェクトでは、サンペドロアタカマ市工学に太陽光発電施設を設置し、望遠鏡と地元へと送電している。

 会場では現地ドキュメンタリーや成果の紹介などが、ミニ講演や、三心一括型高温超伝導ケーブルや、富士電機の薄型の太陽光パネルを使って行われていた。ブースでは三菱重工業のwakamaruも2体出展されており、子供達をお迎え。来場者にかわいがられていた。

アタカマ砂漠で進行中のSolar TAOプロジェクト三心一括型高温超電動ケーブルフィルム型太陽電池。重量は1kg/平方メートルで世界最軽量
三菱重工業の「wakamaru(ワカマル)」も子供達の相手をしていた【動画】無線電力伝送のデモ

 これ以外に、株式会社ユビテックの環境ソリューション「BE GREEN」、株式会社ガリバーインターナショナルの次世代中古車プロジェクトの展示(中古電気自動車テスラ・ロードスター)の展示のほか、慶応義塾大学清水研究室と株式会社SIM-Driveによる最高時速370km出る8輪電気自動車「Eliica」が出展されていた。特にスーパーカーを目指して開発された「Eliica」は「車を見て初めてかっこいいと思った」と言っている来場者もいるなど、大人気だった。

8輪電気自動車「Eliica」正面から「Eliica」の仕様
8輪の電気自動車。プラットフォームに駆動部、制御部がおさまっている

オフィシャルショップではバンダイ「サターンロケット」も

オフィシャルショップ

 オフィシャルショップでは、「宙博」オリジナルグッズのほか、バンダイから2010年3月に発売される予定の「大人の超合金」シリーズ第一弾、「アポロ11号&サターンV(ファイブ)型ロケット」(全高およそ760mm)も出展されて予約受付されており、注目を集めていた。

 このロケットの模型にはケネディ宇宙センターと同じように横置きできる台座なども付く。細部まで作り込まれており、大人の鑑賞に十分耐える出来である。16ページの解説書も付くという。いっぽう、1/144スケールなので「ガンプラ」と並べてみるといったような、変則的な遊びもできそうだ。

バンダイで現在予約受付中の「アポロ11号&サターンV型ロケット」全高およそ76cm1/144スケール
細部まで作り込まれている「大人の超合金」第一弾このほか会場内には記念撮影コーナーも


(森山和道)

2009/12/8 00:00