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宇宙ステーション補給機「HTV」が再突入、ミッション完了

〜虎野プロマネは「エクストラサクセスも」と自信


 宇宙航空研究開発機構(JAXA)の無人宇宙輸送船「HTV」が11月2日早朝、地球大気圏への再突入を実施し、ミッションを終えた。H-IIBロケット試験機による打上げから約50日。その間に開催された記者会見の内容なども踏まえ、これまでの流れをまとめてみたい。

 HTV(H-II Transfer Vehicle)技術実証機の打上げは、9月11日、種子島宇宙センターにて行なわれた。打上げに関しては、過去記事の方を参照していただきたい。

打上げ〜キャプチャ

ISSに接近中の宇宙ステーション補給機「HTV」(提供:NASA)

 最初の山場となるのは、国際宇宙ステーション(ISS)の直下10mに付け、ロボットアームによってキャッチ(キャプチャ)されるところだ。

 HTVは打上げ後、ISSを追いかける形で近づきながら、徐々に飛行高度を上げ、9月17日22:59にISS後方5kmの地点に到着。ここから一旦下に潜り込んで、下方より徐々に接近する運用方法をとる。下から近づくのは、何かトラブルがあって接近を中止せざるを得ない事態になっても、安全にHTVを前方に離脱させることができるからだ。

 下方500mから高度を上げ、300m(ホールドポイント)、30m(パーキングポイント)では一旦停止。その都度、正常に動作しているかどうか確認しながら、慎重に接近した。最終的に下方10mの位置で相対停止したのは9月18日4:27。同日4:51にロボットアームによるキャプチャに成功、7:27にISSの共通結合機構(CBM)への取り付けが完了した。これは予定よりも早いペースだった。

 ここまで、大きなトラブルは全くなかったが、小さな不具合はいくつか報告されている。

 まず米国製のSIGIというGPS受信機では、受信する衛星の数が減っていくという問題が出た。ソフトのバグであることが分かり、リセットしながらの運用でカバーした。また日本独自のPROX(近傍通信システム)で電波リンクが確保できたときに、最初、地上からのコマンドを受け付けてくれなかった。これは暗号化キーの間違いが原因だった。

 また、ISSへの接近時にはスラスタを噴射するが、バルブ部分の温度が許容値ギリギリになったため、一時冗長系に切り替えることで主系の温度を下げた。ただし、これは接近を中断して戻るという技術実証試験を1回行い、通常よりもスラスタを酷使したことが原因であるとのことで、次回以降の運用機では特に問題となることはない見通しだ。

係留中

 HTV技術実証機には、与圧部に3.6トン、非与圧部に0.9トンの物資を搭載した。能力的には、それぞれ4.5トン、1.5トンを搭載することができる設計だが、実証機ということで通常よりもバッテリと推進剤を多く搭載しており、その分、荷物は減っている。

 9月19日3:23に与圧部のハッチが開けられ、同日3:25にISSのクルーが入室した。クルーの手により、与圧部の奥に日の丸が掲げられたが、これはサプライズだったようで、佐々木宏ファンクションマネージャも「知らなかった」とのこと。搬出の作業は、与圧部が9月22日より、非与圧部が9月23日より開始された。

ISSクルーによる寄せ書き。与圧室の奥に書かれたもののようだ

 与圧部の搬出は10月20日に完了。その後、ISSから出た廃棄物を搬入して、10月30日2:32にハッチが閉じられた。当初の予定では、30日間程度の係留期間となるはずだったが、廃棄物の搭載が増えた(200kgほど増加)こともあり、2週間ほど延びた。今後は半年間程度、プログレスやATVの離脱がないため、可能な限りHTVを使って破棄したい、という判断だったようだ。

 今回のHTVは“技術実証機”であるのだが、ほぼ運用機のように期待・信頼されていることを示すエピソードとも言えるだろう。ISSクルーからも高く評価されており、山中浩二フライトディレクタのところには、HTVにみんなで寄せ書きした写真がメールで送られてきたそうだ。

リリース〜再突入

 廃棄物を搭載したHTV技術実証機は、10月31日0:02にISSから分離。ロボットアームにてISS直下12mの地点に運ばれ、同日2:32にリリースされた。当初、これは1:05頃を予定していたが、離脱直後にデブリと衝突する恐れがあったため、遅らせた。

 2回の相対離脱マヌーバにより、ISSの下方5kmの軌道に投入。今度はISSを置いていく形でHTVが先行していく。

 そして11月1日夜からの3回の軌道離脱マヌーバにより高度を下げ、11月2日6:26頃、ニュージーランド上空120kmにおいて大気圏に再突入した。地上からは観測していないので断定はできないが、燃え残った金属片などは予め設定した南太平洋の落下区域に落ちたものと推定される。ちなみに、テレメータは高度116kmあたりでブラックアウトし、それ以降のデータはない。

 このマヌーバの前後に、3件の技術実証も行なわれた。ISSへの結合が順調に行なわれたため、利用されることがなかった非常時用の機能なのだが、技術実証機ということで、最後にこれらの機能も確認された。与圧部内の圧力が高くなったときに空気を抜くベント機能、曝露パレットを固定する機能、HTVの把持部分(FRGF)を分離する機能で、すべて正常に作動することが確認された。

総評

記者会見に出席する虎野吉彦HTVプロジェクトマネージャ(左)と山中浩二フライトディレクタ(右)。JAXA筑波宇宙センターからの中継映像より

 細かいトラブルはあったにしても、順調に、ほぼパーフェクトにミッションを完了できたことは、今後のISSの運用を考える上で、非常に大きな意味を持つ。約束している年1回の運用機による物資の運搬が、計算できるようになるからだ。

 今回のHTVのミッションでは、ミニマムサクセス、フルサクセス、エクストラサクセスの評価条件を事前に定義していたが、再突入の成功後、記者会見に臨んだ虎野吉彦プロジェクトマネージャは、「フルサクセス(=再突入まで)はオーケー。エクストラサクセスにも踏み込んでいると思う」と総括した。

 ちなみに、エクストラサクセスの条件は、6トン以上の荷物を運べることの実証だという。じつは、HTVの運用が順調だったことと、H-IIBによる軌道投入が極めて正確だったことにより、今回搭載した推進剤やバッテリには、かなり余裕があった(もともと多めに搭載していたが、それを差し引いても)。詳しくは今後の解析を待つ必要があるが、これらを減らして、荷物を増やせる可能性はある。

 今回の技術実証機では大きなトラブルが出なかったので、来年度以降の運用機でも大幅な設計変更は行なわれない見通しだが、マイナーな改修としては、「熱解析よりは実運用の方が良かったので、ヒーターを減らせるかもしれない。それに前述のスラスタ温度の問題は、推進系のシステム設計の変更が必要かもしれない」(虎野プロマネ)とのこと。

 また会見に同席した山中フライトディレクタは、個人的な意見と前置きしながら、「実験の成果物などを持ち帰る能力は持ちたい。いきなりHTVサイズは無理だが、カプセル等での回収は可能ではないか」と発言。「初めての再突入でも狙った場所にドンピシャで落とすことができた。今日は回収の良いデモンストレーションになったのではないか」とアピールした。



(大塚 実)

2009/11/2 19:32

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