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通りすがりのロボットウォッチャー 今わたしの欲しいロボは
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Reported by
米田 裕
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20世紀末、2足歩行の実現からロボットブーム(?)となったためか、ロボットには自律した動きが求められている。
今では、10万円レベルで全高が30cmクラスの小型ロボットでも2足歩行をする。欲しいと思う気持ちも多少はあるが、手に入れてどうしようと考えると1分ほどで気持ちはしぼんでいく。
それなりの金額をかけるわけだが、実用というわけでもなく、趣味にしてものめりこんでいく自信がない。
ビンボーおぢさんとしては、何かを手に入れるには何かをあきらめないといけない。そろそろ地デジの液晶テレビも欲しいとこだし、録りためたビデオテープもデジタル化したいのでブルーレイレコーダーも欲しいところだ。
どちらもだいたい小型ロボットと同程度の金額だ。どちらかしか手に入らない。どぎゃんするばい。
誰もがこんな調子かどうかはわからないが、ロボットがビジネスとして立ち上がらず、2足歩行ロボットを使ったキラーアプリもないという。
世界中、どこの国でもうまくいってないそうだ。
そーいや、子供のころに読んでいたマンガに出てくるロボットは、なぜか最初からそこに居たし、天才的な科学者が1人で作ってたよなぁ。
ロボットが現れて、そこにいる状態から物語は始まっていたのだね。だから、人間といっしょに居ても、家に居候していても、呼ぶと飛んできても、何もおかしくはない。
ところが現実には、ロボットを作るということは、商品であるため、売って利益をあげるということなのだが、どんなロボットを作っていいのかわからないのが現在の状況だという。
それなりの機能を持たせれば、価格もとてつもなく高価になるので売れないし、その機能が欲しくなるものかもよーわからんというとこなのだろう。
こーなりゃ、ロボットを作る側の発想では売れるモノはできないから、使う側で作ってもらえるよう、組み立てブロック方式のモジュールを作るべしという考えに動いているとのことだ。
● 今欲しいロボット的なものは
さて、自分で欲しいロボットというと、今のところ動く身体はいらない。記憶、記録、検索、思考の補助となるパーソナルアシスタントとなるものが欲しい。
日常連れて歩くのに、大きな身体はいらない。子供ほどの大きさのロボットを連れて歩けば邪魔になるだけだし、全高30cmほどの小型ロボットでも持ち運ぶのは面倒だ。
できればメガネや腕時計のように、身体に付けて持ち運ぶのに気にならない大きさのものがいい。
肩に乗るぐらいか、携帯音楽プレーヤーのヘッドホンぐらいでないと気楽には持ち運べないだろう。
目と耳と知能を持ち、個体としての記憶と記録のためのストレージと、いつでもどこでもネットワークにつながる機能は必要だ。あとはディスプレイか画像の投影装置といったものがいるだろうか。
このロボットがどのようなものか、説明をしてもピンとこないかもしれないので、小説風に書いてみよう。
● パーソナルアシスタントロボとの日々
ワイ氏はいつものように駅へと向かっていた。少し小走りだ。
片耳にはやや大振りなヘッドホンのような物が掛けられている。
「定刻より2分遅れて家を出ました。少し急いでください」とその物からの声がする。パーソナルアシスタントロボのPRAのものだ。
「わかった」とワイ氏は答える。
しばらく歩いていると、「北武線が人身事故で止まりました。復旧の予定は1時間後です」とPRAからの通知があった。
「迂回して行けるか?」とワイ氏は訊く。
「10メートル先のバス停にあと2分弱でバスがきます。それに乗って6駅目の新小杉駅入口で降りてください。新南宿ラインに乗れます」
ワイ氏はバスを降りて駅の改札へ向かう途中で、猫を見かけた。とても可愛いので、姪に見せたら喜ぶことだろう。あわててワイ氏は「記録」とPRAに命令をする。
「記録しました。位置情報と日時も記録しました」
ワイ氏は改札を通過した。バス料金や駅の改札ではPRAと端末との通信で料金が支払われるので、そのまま通過できる。
ホームへ上がるエレベーターを使おうと待っているとPRAから警告音が鳴った。「警告、警告、あと10秒でやや強い地震がきます。警告、警告、あと10秒でやや強い地震がきます」。
エレベーターは使わずに、その場で身構えた。やがて地面がうねるように揺れた。カタカタと物が触れたり、サッシのきしむ音がする。揺れは1分ほどでおさまった。物の破壊や落下など、まわりには目立った被害はない。
「地震情報です。今の地震の震源は相模湾沖、震源の深さは10km、マグニチュードは速報値で6.2です。津波警報が出ています」、つづけて「現在地の震度は5弱です」とPRAの声がする。
ワイ氏はあきらめたように「会社へメール。遅れる」と命令し、改札から外へ出た。
街中は地震直後ということもあり、ざわついている。公園を見つけ、ベンチへと腰をおろした。
「テレビ」と声を出すと、目の前に小型のディスプレイが出てきて、番組を映し出した。各地の様子を映す地震情報が流れている。
「さて、どうしたものかな」とワイ氏はつぶやき、「PRA、メールチェック」と命令をした。
「メールは7通です。そのうちDMが4通、会社からの返事も来ていますが?」
「読み上げ」
PRAは会社からの返事を読み上げた。午後からの開発会議には絶対出席とのことだった。
ワイ氏は公園のベンチで、プレゼン用のデータを確認しようとPRAに指示をした。「プレゼン番号N-0926をディスプレイに」。
瞬時に画像が映し出される。しばらく手直し部分がないか確認をしていると、PRAが「推定では現在地は約30分後に雷雨となります」と言う。
「PRA、電車は動いているか? それと近所に喫茶店はあるか?」
「電車は点検終了後、あと1時間20分後に動き始める予定です。近所の喫茶店は3軒見つかりました」
「それぞれの喫茶店の雰囲気と、口コミ評判は?」
目の前のディスプレイにそれぞれの喫茶店の店内の写真、メニューや価格、口コミの評判が映し出される。
どこも仕事に集中するにはイマイチな雰囲気だ。
「半径1Km以内に図書館はあるか?」
「あります」
「そこへ移動するので、ナビを頼む」
「まず、滑り台の後側の道を左へ進んでください……」
ワイ氏はナビの声に従って歩き始めた。「次の路地を右へ曲がって、1つ目の交差点を左へ……」
初めての土地でも、PRAのナビで無事に図書館へと着いた。内部は静かで、空調もほどよく効いている。ワイ氏は雨をしのいでいる間に仕事にかかることにした。
「キーボード」、と声を出すと途端に机の上にPRAから入力用キーボードが投影された。それを使ってプレゼン用資料の手直しをする。
外では雷の音が鳴り響いている。
「この雨は約30分後には止みます。電車はその15分後には動き始めます」とPRAが言うので、ワイ氏は「それじゃ、雨が止んだら知らせてくれ。駅へ向かう」と答え、作業に没頭した。
● ケータイ+ネット+秘書
とまぁ、これ以上書くと普段よりずーっと時間がかかってしまうので、これぐらいにしておこう。
現在、人がケータイを使ってカチカチとせわしなく電車内でやっているようなことを代行してくれて、さらにはネットにいつもつながっているから、緊急の情報やら、その場で必要な情報がいつでも取り出せるアシスタントロボということになる。
情報の検索については下手な人もいるので、キーワードや目的から探したり、その場の状況から類推して探してくれる知能があることが望ましい。
それと、いっしょに生活をしていると持ち主の癖を記憶し、何がいる情報で、何がいらない情報かも分類をしてくれる。
日常生活で必要なデータ交換はすべて自動的にやってくれる。ここまでくれば電車賃やバス代や飲食などの料金の支払いは現金というよりデータのやりとりとなっているので、それもまかせてしまう。
超高速なデータ通信網とつながっていて、記録すべき情報はネット上のストレージに保存したり、翻訳だの映像処理だのと重たい処理はネット上の処理能力の大きなコンピューターにまかせて、結果だけを端末へと落としてくる。
それ以外にも、電車で降りる駅を指示しておくと、もし寝てしまっていても起こしてくれたりする。
そして、家へ帰ってきたあとには、パソコンと連動する。PRAをクレードルに置くとバーチャルキャラクター化して、パソコン内へと移動する。
1日のメモや、忘れてはいけない用件はデータ化し、予定表にして覚えてくれる。
そして、翌日にはクレードルにある端末をはずして、身体に着けて外出する。
このロボットは、誰にでも使い道がある。たとえば主婦だって、これを着けていることで、冷蔵庫の中身をいっしょに見て、献立を考えてくれたり、買い物時には、どこのスーパーが安いか? 平均価格とかの情報を与えてくれる。
自分の頭脳の補助であり、能力を拡張してくれる機器といった生活アシスタントロボが、本体価格10万円ほどで、月々の通信費が5,000円以内の定額制なら欲しいものだ。
● 将来は身体の補助ロボットが欲しい
以上は、現在欲しいロボットであるが、この先年老いていくと、やはり身体の動きを補助してくれるロボットが欲しくなるんだろうな。
階段を上ることはつらくなるし、家の中でもしゃがむ動作はギックリ腰になりやすいし、重たい物を持って1km以上歩くこともしんどくなりそうだ。
あと20年も経てば、僕は70歳代になる。そのときに身体を補助するマッスルスーツでもパワードスーツでも、アシストスーツでも、なんでもいいから商品化されているといいね。
そうした動作の補助ロボットは、現在の電動4輪車よりも安くなっているといいなぁ。
年寄りは物忘れも激しいから、PRAとアシストスーツのコンビ化は必須となるだろう。こうしたものは国が補助して貸し出してくれてもいいのではないか?
2030年頃のこととなるから、国のロボット戦略とも合致すると思うがなぁ。
でも、「使える」年寄りが増えてしまうと、ロボットは進歩しないか?(笑)
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米田 裕(よねだ ゆたか)
イラストライター。'57年川崎市生。'82年、小松左京総監督映画『さよならジュピター』にかかわったのをきっかけにSFイラストレーターとなる。その後ライター、編集業も兼務し、ROBODEX2000、2002オフィシャルガイドブックにも執筆。現在は専門学校講師も務める。日本SF作家クラブ会員
2008/08/29 00:50
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