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通りすがりのロボットウォッチャー
ホビーロボットに揺れ動くオヤジ心

Reported by 米田 裕


 出た出た出たぞ、ついに出た! 何が出たって? タカラトミーのi-SOBOTがついに発売となったのだ。

 昨年から、出るぞ出るぞといわれながら、たび重なる発売延期に、いったいいつ発売されるのかと期待を持ちつつ、緊張感は持続しない法則にのっとり、その発売日のチェックを忘れていた。

 10月の下旬、突然i-SOBOT発売の報をきいたときにはすでに遅く、どこでも売り切れとなっていた。

 そして、本誌での緊急レポートを見ると、欲しい! 欲しい! 欲しいぞー! と頭の中は沸騰状態となった。

 その場にあればすぐに買っていただろう。しかし、どこにもない。再入荷は11月下旬ということだった。

 そして、11月下旬の今頃になって再入荷したようだが、またしてもどこも売り切れ状態となっていた。予約をしておかないと買えないものらしい。

 さて、発売から1カ月以上が経ち、沸騰していた頭の中も少しはぬるま湯程度になってきた。

 それまではホビーロボットといえど、10万円ほどはしていたものだが、17の自由度を持ち、体内にジヤイロセンサーを持つことによってバランスをとって歩くことができ、片足でだってバランスをとって立てる本格的なロボットが、なんとわずか3万円で手に入るのはすごい。

 ホビーロボットの価格破壊! いや、我々庶民にもロボット所持の夢を与えてくれた。これはたいへん素晴らしい。開発した方々には敬意を表したい。


ロボットは必要なものなのか?

 すごい! これは欲しいと思う反面、自分の年齢から見ると、時間が経つにつれ、買うのをどうしようかという気持ちも強くなってきている。

 もし、自分が20~30代なら、間違いなく買っている製品だと思うが、平均寿命を半分以上生きてしまったとなると、なんとも踏ん切りがつかなくなってくる。

 今の気分はi-SOBOTを買って手元に置いておきたいという気持ちがある反面、1998年のサッカーフランスワールドカップのときに、岡田監督が三浦カズ選手を代表からはずし、「どのように使っていいのかわからない」というようなことを言っていたが(と記憶している)、まさにそうした心境といっていい。

 買って遊んで、楽しいのはわかっている。しかし、2週間後、まだ電源を入れているかというとわからない。すでに棚にしまってあるかもしれない。

 そう考えるといきなり気持ちが萎えてしまうのだ。

 この感覚は、ロボットがこの先どの時点で家庭に受け入れられるかという問題にも深く関わっていると思える。

 つまり、金を払って購入するわけだが、その金額とロボットのできること、やらせたいこととの兼ね合いのバランスが、購入を決断させるかどうかの基準となるということだ。

 逆にいえば、ロボットは何ができるのか? 何をしてくれるのかが、その金額に見合うのかということでもある。

 家庭で買うものとして、自動車は高いものだ。家はもっと高いが、生活をする場という基本的なものだから、当たり前のものとして受け入れている。

 自動車は、移動手段でもあり、趣味のものでもあるが、それほど金額に違和感を持たないものだろう。

 ロボットは、今のままのものでは売りようもないし、買ってもどーするのよというものだ。

 数々の技術的ブレイクスルーと、知能の問題がクリアされないと、家庭には入ってこないだろう。


ロボットが家庭に入るには

 たとえば、介護、介助をしてくれるロボットといっても、それが量産できても1,000万円クラスになるという。

 その介助は、今のとこ病院やバリアフリーの建物でしか有効ではないと思えるし、状況判断ができる知能が数年のうちに完成するかという疑問もある。

 日本の社会は高齢者が増え、核家族化、少子化など、老後に不安をいだかせる材料にはことかかない。

 その解決策としてロボットがあるといわれているが、どこまで近い将来に使えるロボットが出てくるのだろうか?

 一人暮らしの不安は、やはり病気だ。突然倒れたり、何かの病気で意識を失ったときに、それに気づいて対処してくれるロボットは可能なんだろうか? 可能だと信じたい気持ちだが、解決しなければならない問題の多さに腕組みをしてうなってしまう。

 いま、身体が柔らかく、人間を持ち上げるだけの力を持ったロボットができつつある。だが、安定した体勢をつくるためか、足は車輪であったりする。

 平らな床や、ベッドの上から持ち上げるのはそれでいいだろう。しかし、家の中で、条件のいい場所で倒れるとは限らない。狭い場所、階段など不安定な場所、風呂といった水のある場所、どこで倒れるかわからないし、さまざまな条件の場所があるのが家の中だ。

 先日、サッカー日本代表監督のイビチャ・オシムさんが脳梗塞で倒れたとのニュースがあったが、第一報では、階段で倒れたとあった。

 階段という場所で人を持ち上げるのは並大抵のことではない。オシムさんの場合でも、救急隊員7人がかりだったと報じられた。

 オシムさんは身体も大きく、身長は190cmもあり、体重も90Kgだったという。これだけの体格の人が、自分の力で動けないとなると、持ち上げるのは大変なことなのだ。

 人間の身体の異常に気づき、すぐさま救急施設へ連絡し、搬送がしやすいように人を移動させてくれるロボットはいまのところない。この先10年で生まれてくるだろうか。


時間が解決してくれるのではない

 人間は時間が問題を解決してくれると思うが、実際には時間以外の要素も必要だ。

 今から約40年前には、21世紀初頭には宇宙への旅行が一般的になっていると考えられていたし、自動車はロボット化され、交通事故も激減しているなどと言われていた。

 実際にはそんなことはなく、経済情勢や政治的判断といった要素で未来への進行は遅くなっているようにも思える。

 やみくもに40年後、50年後にはすごいことができていると思わないのがいいのかもしれない。

 それでも、日々技術はジリジリと進んでいる。今の携帯電話を50年前の人が見たら驚くのではないだろうか。

 電話は50年前にもあったが、今のように各家庭にはなかった。地域の有力者の家や商店にあり、地域のものだった。

 それが各家庭に1台の電話の時代を経て、個人が1台の電話を持つ時代となった。

 昔は好きな女の子ができても、彼女に電話で話をするためには、家族との会話が必要だった。いきなり父親が出てくると、どぎまぎしてしまう。そのプレッシャーで電話をかけるのもためらわれたものだが、いまやメールアドレスさえ聞ければ苦労もない。

 それだけ楽チンになるためには、インフラの整備や技術の進歩が必要だったわけで、50年前でも無線を使った電話は想像できただろうけど、そのための投入金額の多さや、端末1台の値段が驚異的になり、当時は実現できなかったのだろう。

 やはり、技術が進歩すれば、安く一般的に普及するものが生まれる。


ロボットを飛躍的に進歩させる技術は今どこにある?

 20世紀末、突然、安定した2足歩行のロボットが登場してきたように、技術は密かにあちこちで醸されているのかもしれない。

 それらが花開くまでには、熟成の時間が必要なのだ。そして、現れるときには突然に同時多発で急激にというパターンなのかもしれない。

 50年後、家庭内にロボットがいてほしいと思うが、自分の寿命は50年分もない。そのときのロボットはどんなものなのだろうか?

 機械の姿ではない気もする。そして、何をしてくれるのか? 知りたい気もするが、その時代にはたどりつけないのだ。

 21世紀も残り90余年。20世紀初頭に人類は初めて空を飛んだわけだが、その世紀の終盤、1970年にはボーイング747、ジャンボジェット機が空を飛んでいる。ライト兄弟の飛行機からは想像できないものだったろう。

 1世紀、100年のうちに進む技術は、今を基準に考えていると想像できない。たぶん限界を知らない子供たちの想像の方が当たると思う。

 ロボットウォッチャーとしては、今だけを見ていたくはない。100年、1,000年の単位で見ていたいけど、自分の肉体はそのころまで存在はしない。

 ロボットが人と共存して生きていく時代はどうなるのか? そんなことを強く考えさせてくれたi-SOBOTだが、買おうかどうしようかと思うと、心は大きく揺れ動きっぱなしだ。

 昨日、新宿のデパートや電気量販店を見て回ったけど、どこにも売ってなかったのよなー。

 欲しいけど手に入らないからあきらめちゃう存在って、ニキビが吹き出る青春時代のガールフレンドみたいなものか?

 オヤジになっても揺れ動く心を思い出させてくれるなんて、i-SOBOTって憎い奴だなぁ。


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米田 裕(よねだ ゆたか)
イラストライター。'57年川崎市生。'82年、小松左京総監督映画『さよならジュピター』にかかわったのをきっかけにSFイラストレーターとなる。その後ライター、編集業も兼務し、ROBODEX2000、2002オフィシャルガイドブックにも執筆。現在は専門学校講師も務める。日本SF作家クラブ会員



2007/11/30 00:02

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