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通りすがりのロボットウォッチャー
未来にゃロボットも腹が減る?

Reported by 米田 裕


 前回、ロボットの声についての考察を書いたところ、読者の方より、合成音声についての情報が送られてきた。

 生の音声に近いのは、やはり、楽器のサンプラーと同じで、人間の声を区切ってサンプリングし、それを組み合わせる方式らしい。

 それらがどれぐらいの大きさの機械、どれぐらいの性能のコンピュータで実現されているかわからないので、すぐさまロボットに応用できるのかは全く不明だ。

 また、「マジンガーZ」以降のロボットアニメ世代は、ロボットは喋らないのが当たり前との意見もいただいた。

 でも、現実世界にロボットが入り込んできたときに、黙って近寄ってくるものって怖くはないだろうか? 人の社会の中でロボットが働くのなら、コミュニケーションは重要になる。やはり声でコミュニケーションをとるのが普通だろう。

 それと、記事中のコミュニケーションロボットはなぜ「大阪弁」もどきで喋るのかという質問もあった。

 惜しくも亡くなってしまったが、関西の作家、中島らも氏によれば、大阪弁は角のとれたすりきれた言葉であるという。他人との間に緊張を起こさないために、角を丸くしてきた言葉なので、通常会話でもさらっと意味もなく聞き流し、話した形だけ残る便利な言葉とのことだ。

 だからロボットも、まわりとの摩擦を少なく、人間と話すときには大阪弁がよかろうという考えで書いた。

 言葉として、嫌いな人間もいるかと思うが、大阪のお笑い芸人が全国的に受け入れられているのは、すりきれた言葉を使っているからだろう。

 だからロボットもすりきれた言葉を使うのがいいかもしれない。もっとも、学習能力を持ち、自分のいる地域やまわりの人間との会話から、最適な方言を使うというのがベストかもしれないが。


ロボットの動力源は何?

 さて、今回の本題に入ろう。今回は未来へ向けてロボットの動力はどーするのかというお話である。

 ロボットの現状を見てもらえばわかるが、未来へ希望を託して開発されている。50年~100年後には人間のパートナーになるという長期の未来を見据えている。

 それと反して、地球上の化石燃料は未来には枯渇してしまう。300年後にはなくなるとも言われている。

 そうでなくても、CO2排出量規制をするとなると、2050年にはエネルギー使用状況を今の50%以下に抑えるという厳しいものになる。こうした時代に、ロボットの動力となるのは何だろうか。

 もちろん、現在では電力が主流だ。二次電池を持ち、充電を繰り返しながら動いている。この状態は、将来も続くのだろうか?

 さてここで、過去からのアニメやマンガのロボットの動力は何だったのか、おさらいしてみよう。

 古いとこからいけば、まずは「鉄腕アトム」だが、なんと原子力で動いているのだった。

 1960年代の子供は、アトムのおかげで「エネルギー」というドイツ語を知っていた。アニメの力はバカにはできないのだ。

 アトムのエネルギーは、お尻からホースで入れていたから、核分裂物質を含む液体ということになる。それがエネルギーだったのだ。

 体内に原子炉を持っているロボットは、他にも「エイトマン」や「ジャイアントロボ」(アニメ版の設定?)があった。

 今になれば、原子力で動くロボットが、街中に居ることはちょっと怖いし、敵と戦っている最中に放射能漏れでも起こしたらどうするのだと考えられるが、当時は何も知らないので、原子力かっちょえーなどと能天気に見ていられた。今なら環境保護団体はアレルギー反応を起こしそうだね。


 当時は原子力が未来の象徴だったのだが、「鉄人28号」や「ロボタン」などは動力がわからない。いったい何で動いていたのだ? さらに「ロボタン」は「スーパー磁力」などという、何でも吸いつけてしまう磁力(?)を持っていた。

 全ての原子を引きつけてしまう能力があるとしたら、それにどれだけのエネルギーが必要なのだろう? そして、そのエネルギーをまかなえる動力は何か想像もつかない。

 やがて、1970年代になると、ロボットの動力や性能にも理屈が必要となった。

 「マジンガーZ」は、身体が未知の超合金Zだし、光子力エネルギーが動力源だ。ただし、ジャポニウムという鉱物から抽出でき、液体で存在するという全くの架空の産物である。

 同じ70年代の『がんばれ!!ロボコン』のロボコンの動力源はガソリンで、排気量はわからないが四気筒エンジンで100馬力を出していた。これはまー、リアルにわかりやすい。

 そしてリアル路線へと進むと「ガンダム」となる。ガンダムの動力は明らかにされてないと思うが、マニアの間では、核融合炉(熱核反応炉)を搭載していることになっている(「ガンダム・センチュリー」の解説が最初か?)。

 すでに化石燃料は枯渇している未来という設定だ。

 核融合炉を搭載しているといっても、取り出せるのは熱だ。体内に発電機構を持ち、電力化して、それでアクチュエータを動かしているのだろう。

 高圧の蒸気を発生させ、その圧力で各部を動かしているという理屈でもいいんだけど、アニメの作品世界内でロボットを動かすにも、いろいろな理屈が必要になってしまったのだね。

 こうなると、現代物理学や量子論や量子力学を知らないと作品が作りづらくなり、あまりの面倒さに、反動で「精神力」で動くロボットなんてのも出てきた。

 オーラの力だの、宇宙意思だのといった、「気合だ、気合だ、気合だ、気合だー!」の世界だ。

 気合で動けばエネルギーはいらないか? それとも精神世界からやってくるのか(笑)。

 真空にもエネルギーがあると、現代物理学はやっかいなことも言っているけど。


化石燃料に頼らない電力を作るには

 結局、マンガやアニメのロボットは、すぐ目の前にある実現してない新技術か、未知の力で動いているようだ。

 現在の現実にあるロボットは、電力によるアクチュエータの可動、もしくは空気圧、油圧で動いている。

 中には、「援竜」のようにディーゼルエンジンで発電し、エンジン出力そのものをキャタピラや油圧部の駆動に使って動いているものもあるが、これは特殊なものだろう。大部分は電力を動力源としてモータやアクチュエータで動かしていると思う。

 この電力は、二次エネルギーである。水力発電では、水の位置エネルギーによって発電機を回すことで電力へと変換するし、火力発電では、化石燃料を燃やした熱で蒸気を作り発電機を回す。原子力でも、結局は熱なので、この二つは熱エネルギーを電力へと変換していることになる。

 現時点では、水力発電と原子力発電の割合は低く、化石燃料による火力発電がいちばん多い。そうして作られた電力を、二次電池へと充電してロボットの動力源としている。

 人類の未来への存続時間を延ばす、持続可能社会へ移行するには、化石燃料の使用を減らしていく必要がある。まだ石油はあるからという理屈ではなく、すぐにでも使用量の制限をかけていくべきだという。


 こうなると、未来の発電をどうしていくかだ。将来的な天候不順や、日本の地形を考えると、大規模なダムによる水力発電は望めない。となると原子力だが、ウランも埋蔵量に先が見えてきているし、原子力発電所はとにかく嫌われる。

 核融合は、この先100年でもできるかどうかだろう。そして、核融合反応の種類によっては放射能の問題もつきまとう。

 太陽光発電は、各家庭ごとに発電し、その場で使っていくのが効率がいい。しかし、太陽電池が安くならない限り普及はしない。現在のシリコン型とは違う安価な太陽電池の製品化にかかっているだろう。

 燃料電池は、水の電気分解の逆、水素と酸素の化学反応から電気を取り出そうというものだ。これも家庭において発電した電気と熱を使うものとなる。

 現在は小型プラントほどある燃料電池自体が小型化されて安くなることと、水素を製造するのにも別のエネルギーが必要となるので、そこらへんをどうするかだ。

 ロボット自体に燃料電池を積めるのかどうか、燃料電池は、効率を求めると高温で運用する物が多い。摂氏200度ぐらいから600度で運用するもの、1,000度で運用するものがある。そんな温度になるものはロボットには搭載できない。

 メタノールを使った燃料電池が現在もモバイル機器用に開発されているが、メタノールには発火や爆発の危険性があるし、揮発性も高いので、換気が悪ければ中毒の可能性もある。もちろん飲めば死亡する。体重60kgの人なら25g程度のメタノールで死んでしまうという。

 日本でも第二次世界大戦後、酒がないので、飲用できるエチルアルコールにメチルアルコール(メタノール)をまぜて増量したため、死者や失明者が出た。バクダンという酒だ。

 メタノールを使う燃料電池は、密閉パック化や、販売、回収方法も考えて安全には気をつけていかないと製品化はむずかしいかもしれない。でもまー、解決できない問題ではないだろう。


ロボットも食べる?

 燃料電池の時代もあっていいが、究極的には、100年後あたりのロボットは、自分の体内でエネルギーを生産し、それを使って動くようになってもらいたいものだ。

 外部の工場で作ったエネルギーを消費する形式では、ロボットの未来も短いものになってしまうだろう。

 体内でエネルギーを生産するお手本は、やはり動物だ。

 人間などの動物はアデノシン三リン酸(ATP)を使って筋肉を動かしている。食い物の成分は腸から吸収され、体内の血液に乗って移動、細胞内のミトコンドリアが酵素を使ってATPを作り、アクチン・ミオシンによる筋収縮で動くことができる。

 未来のロボットもこうした仕組みで動けないものだろうか。ロボット専用の食べ物や飲料を動力源として、それからATPを作り、筋収縮によって動く。

 工業エネルギーを使って燃料を作らなくていいように、発酵技術を使うといい。そうだ、酒を作り、それを動力源にするといいのだ。

 1日の終わりに、ロボットと酒を飲んだり、酒場へ女性型アンドロイドと出かけ、燃料補給をする。そんな未来にはならないかね。ロボットは酔っ払わないので、連れて帰ってもらえそうだし(笑)。

 もちろん、ロボットが人間の食糧となるものを動力源とする場合には、世界人口が今よりも少なくなっているというシナリオが必要だと思う。

 人とロボットで、食い物の奪い合いはしたくないしね。


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米田 裕(よねだ ゆたか)
イラストライター。'57年川崎市生。'82年、小松左京総監督映画『さよならジュピター』にかかわったのをきっかけにSFイラストレーターとなる。その後ライター、編集業も兼務し、ROBODEX2000、2002オフィシャルガイドブックにも執筆。現在は専門学校講師も務める。日本SF作家クラブ会員



2007/05/25 00:11

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