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ロボット・アナリストの視点
ロボット関連・支援産業を創る(上)

Reported by 五内川拡史

 民生用ロボット事業における企業や製品・サービスのポジションを整理していると、a)どんな最終市場をターゲットにするか、b)ロボットのバリューチェーンのどこを支援するか、という2つの軸を設定できることに気がつく。

 前者は一般消費者向けのエンターテイメントから、レスキュー、受付案内、清掃、警備、搬送、農業や建設、極限作業まで市場の横の広がりを対象とする。

 後者は、生産、販売、サービス、メンテナンスなど垂直方向の広がりを対象とする。

 今、民生用ロボット産業は、何とかロボットを買ってもらおうとロボット自体を一所懸命作っているが、消費者や顧客はそれをどう使うかに関心があるわけで、そのためにはロボット単体のみならず、それを取り巻くサービス環境を並行して整備していかなければならない。

 つまり、必要なのはロボットを支える関連・支援業務である。

 しかしながら、今のところ、これらの関連・支援業務が未分化で、そのためロボット・メーカー自身が開発・生産からサービスをある程度内包しないと、消費者に一貫したサービスを届けることができない。

 これでは経営資源が分散されてしまうし、規模の効果も働きにくい。

 そこで今後は、あるロボット支援業務に特化した専門会社がでてきてもいいところだ。

 そこで、以下に、どのようなロボット支援業務がありそうか、その可能性をいくつか列挙してみよう。


(1)部品開発・生産

 ロボット・メーカーはロボットの基本設計、システム化を担当するが、全ての部品を自社で開発、製造するのは非現実的だ。部品は専門メーカーによって開発、供給される可能性が高い。ロボットは部品点数でいえば、自動車ほどではないがオートバイ並みは必要となると思われる。異なる機種やブランドに共通部品を使ってもらえば、経済的な規模の効果も発揮できる。

 Intelがパソコンで心臓部のCPUを握った事例もある。ときに優れた共通部品を開発した企業は、完成品メーカーを凌駕することもある。

 例えば、二足歩行ロボットの代表的なボトルネックの1つは関節だ。高トルク、高スピード、軽量、頑健なアクチュエーターへの開発要請は常に大きいと思われる。

(2)生産・組立、アウトソーシング

 ロボットの生産、すなわち加工や組立を行なうアウトソーシング・ビジネスが期待できる。現時点でも、規模や採算はともかく、商用に投入されたロボットは多かれ少なかれ、こうした生産アウトソーシングを活用している。

 ただし、ロボットは前例・経験が乏しい製品だけに、パソコンの組立のようにはいかない。各種部品の摺り合わや効率的な組立方法の発見を含め、生産面でのノウハウはこれから磨いていかなければならない。こうした組立経験を積んだ企業が、アウトソーシング会社として優位性を持つ可能性も十分ある。

 ちなみに米国iRobotは、清掃ロボット「ルンバ」を中国の工場に委託して生産している。これは製品が、きわめて簡素に設計されていることを意味している。設計とマーケティングの付加価値が大きく、構造を簡素化した場合は、このような国際的アウトソーシングも可能となろう。


(3)ソフトウェア開発

 PCとのアナロジーでいうと、最終的にハードは汎用量産品となるので、ソフトウェアが価値を持つという意見は根強くある。今のところロボット黎明期では、使用目的や方法、トータル・システム自体が付加価値の源泉となっており、ソフト単体が差別化要因というところまではいっていないように思われる。これも、ロボットの発展段階によって異なってくるのではないか。

 いずれにせよ、ソフトウェアのエンジニアは慢性的に不足気味で、ロボットに精通している人となると、希少性は高い。

(4)コンテンツ開発

 ロボットにどのような挙動、動作意図をもたせるか、というアイデア開発があってよい。

 愛・地球博では、吉本興業の協力で、三菱重工業のwakamaruとATR研究所のRobovieにロボット漫才をさせるという試みがあった。ロボットなら、スキャンダル無し、欠勤無し、文句も言わない、という利点がある。

 今後は、ロボットをインターフェイスとして活用することが多くなるだろう。Web情報をダウンロードして活用したり、現実世界でのさまざまな動き(モーション)を流し込むなど、コンテンツホルダーのアイデアを広く募集することも重要だ。

(5)システム・インテグレーション

 法人向けにはインテグレーション・サービスが必要だろう。

 もともと法人顧客はロボットを使うことを目的としているわけではない。何らかの問題を解決するために、ロボットが有効なら使ってみよう、というだけだ。また、問題解決のために、複数のロボット・メーカーの製品を組み合わせ、システム化するニーズもあると思われる。

 そのため、顧客の立場にたって、製品・技術を取りまとめるインテグレーターの活躍余地が出てくる。コンピューターの世界と同じくSI事業が成立しよう。


(6)小売り(店舗運営、ネット販売)

 ロボットをどのように販売、マーケティングすれば良いかは、まだまだ分かっていない。従来型の家電やパソコンを売るような方法が有効かどうか、きわめて不明確である。前例の無いカテゴリー製品であり、その効用や顧客への訴求方法が未知数であるためだ。

 既存の小売店でロボットを売る場合、売り場がどこになるのかは要注意だ。旧来のカテゴリーで言えば、玩具なのか、家電なのか、あるいは掃除機の隣なのか、あるいはDIYコーナーがいいのか、コンセプトをしっかり作っておく必要がある。売上が伸びず迷いが生じると、メインの売り場を抑えることも大変になってくる。

 キット型のロボット販売の専門店としては、九十九電機の例がある。秋葉原にある同社のツクモロボット王国は、この分野のパイオニアである。2000年に前身の専門店舗をオープンして以来、ブランド確立に成功した。調達ルートも拡充し、さまざまな部品や工作キット、書籍まで数万点の商材を揃えている。ネット販売との併用も含めたクリック・アンド・モルタルのビジネス・モデルである。





五内川拡史
(株)ユニファイ・リサーチ代表取締役社長。野村総合研究所、野村證券を経て現職。製造業、IT産業におけるリサーチ、戦略立案、新事業立上げ支援など経営コンサルティング業務を行なう。経済産業省ロボット政策研究会委員(05)、東京大学産学連携本部共同研究員(03~現)、同先端科学技術研究センター産学官連携研究員(05)。



2007/05/22 00:10

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