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電通大アイデアコンテストでROBO-ONE常連「レトロ」が最優秀賞に

~独力でのロボット製作、発展性が評価
Reported by 森山和道

杉浦裕太氏と「レトロ」
 電気通信大学の「産学官等連携推進本部ベンチャー創出支援部門(SVBL)第10回学生アイディアコンテストが6月7日に開催され、最優秀賞に、同大電子工学科2年生の杉浦裕太氏の「ヒューマノイドロボット型疑似体験ロボットの開発」が選ばれた。

 同コンテストは、特にロボットを対象としたものではない。そんな中、大学4年生や修士課程の学生たちをおさえて、杉浦氏のロボットが賞を獲得した理由は何か。電子工学科教授でSVBL所長を務める野崎眞次氏と杉浦氏自身に話を聞いた。

 杉浦氏が提案したのは「レトロ」という自作の小型二足歩行ロボットを使った「ロボットを使った疑似体験」。レトロは、身長35cm、重量2.2kg。自由度は21。バッテリはリチウムポリマー(2,100mA、7.4V)。アクチュエータは近藤科学製のサーボモータ「2350ICS」(トルク22kg/cm)。マイコンも近藤科学製モーションプロセッサーを使用している。

 ボディの素材はアルミで、剛性を高めるために裏側にはFRPが張られている。2軸加速度センサー、2軸ジャイロセンサー、方位センサーを搭載し、30cm/秒の速度で歩行できる。人工芝の上も歩くことができるという。また、発話機能(伝助音声ユニット)を持っている。

 外見は、子どもから大人まで親しみやすい形として、ブリキのおもちゃのようなスタイルを選んだ。自作二足歩行ロボットによる格闘大会「ROBO-ONE」好きの人ならば、見覚えがあるはずだ。


レトロ。名前どおりのレトロな外観 側面 背面

操縦機。ゲーム機のコントローラーを改造したもの Bluetoothを搭載している ROBO-ONEでも活躍している

【動画】歩行の様子 【動画】動作デモ 【動画】習字をさせる

 杉浦氏は現在高校2年生の弟である杉浦真武氏と協力してこのロボットを作成し「学生アイディアコンテスト」でデモを行なった。ロボットが得た情報を人間にフィードバックさせることで、あたかも操縦者がそれを体験したかのように感じさせることを目指したい、とプレゼンし、動作の例として歩行や旋回、起きあがり、前転後転などの基本動作のほか、習字を行なってみせ、そのほか、ロボットにスキーや、釣りをやらせた動画を見せた。

 現時点ではロボットが得た情報を人間にフィードバックさせることはできないが、今後、ロボットにカメラやマイクをつけ、操縦者に力をフィードバックさせたいと述べた。


【動画】ダイナマイザーとともにつりをするレトロ。どちらも見事に魚を釣り上げた(撮影:スギウラブラザーズ) 【動画1】【動画2】スキーをする様子(撮影:スギウラブラザーズ)

 野崎教授らは、まだ大学2年生で機械系の研究室に所属しているわけでもない杉浦兄弟が、独力でロボットを開発したことと、まだまだフレキシビリティに富んでいることの発展性を認め、これに最優秀賞を与えたのだという。


電気通信大学教授・ベンチャー創出支援部門長 工学博士 野崎眞次氏 最優秀賞を受賞した杉浦裕太氏

 電通大の産学官等連携推進本部ベンチャー創出支援部門は、学生のベンチャーマインド育成と、短期間でのベンチャー創出と育成を目的とした部門。これまでに誕生した電通大発のベンチャー会社である株式会社アプライド・マイクロシステムや株式会社ナノテコの支援も目的としている。

 なお、アプライド・マイクロシステム電通大・青山尚之教授の研究成果をもとに2005年1月に起業された会社。3cm角程度で10nm以下の分解能で動作可能な超小型ロボットを使った企画・開発・製造販売を目的としている。

 野崎教授は、今後、ベンチャーキャピタル(VC)などが注目している起業コンテストなどに出場して欲しいと考えている。そうすれば、彼のロボットに投資したいと考えるVCが出てくるかもしれないからだ。VCが考える用途や市場性は、当事者の考える市場性や方向性と必ずしも一致しないこともあるが、それでも構わないという。

 いっぽう杉浦氏は必ずしもベンチャー企業を起こすことを目指しているわけではなく、「正直言って、現時点ではそこまで考えていない」そうだ。では、なぜ今回のコンテストに出場したのだろうか。理由は、大学で好きなロボットの開発を続けるためだという。

 ロボット作りを家でやるには、資金的なものと技術的なものに限界を感じた。「大学でロボットをやっていくにはどうすればいいか」と、最近、企業に就職してロボット研究に従事しているある知人に相談したところ「まずは教授と仲良くしろ」と言われたのだそうだ。教授と仲良くなるには、ロボットを持っていきなり研究室を訪ねていくのも悪くない。しかし、ちょうど学生アイディアコンテストがあることを知っていた。そこで「まずは目立つことが重要かもしれない」と考えて、応募したのだという。


 もともと、子どもの頃から、ものづくりが好きだったそうだ。小学生の頃には、ミニ四駆や、飛行機のラジコンにはまった。特に「操縦」が好きだったという。ただし、操縦と言っても、ゲームにははまらなかった。あくまで操作の対象は実物でないと面白くない、と思っていた。

 そしてROBO-ONEに出場していた父親の影響も受けて、ベストテクノロジーが主催したロボットキットの講習会に参加し、歩行させることに成功した。その後、大学受験を経たあとに、近藤科学製二足歩行ロボットキットの「KHR-1」を購入して組み立てたが「自分でも作れるのでは」と思い、ロボット自作に至った。

 今でも操縦が好きだという。もちろん、ロボットには自律機能が重要だ。しかし、機械を自在に動かす楽しみも捨てがたい――。むしろ勝手に動いていると「パッとしない」と感じてしまう杉浦氏は、自律だけがロボットの可能性ではないかもしれないと考えている。

 とは言っても、例えば歩行動作1つにしても、全てのアクチュエーターを人間が操作するような形式はナンセンスだ。時間遅れの問題もある。操縦といってもかなりの制御は自律でロボット自らが行うことになる。また、生活に溶け込んで役に立つ機械ならば自律のほうがいいように思う、とも言う。

 しかし、「ロボットは人間ができることをしなくてもいいんじゃないか。むしろ、人間ができることは人間がやればいいと思う」と考えているそうだ。むしろ自分がやりたくてもある行動ができないときに、疑似体験するためのデバイスとして、ロボットが使えるのではないかという。自分自身を投射する存在としてのロボットに、杉浦氏は可能性を見出している。

 操縦とは、機械と人を繋ぐインターフェイスそのものだ。人間がロボットを操縦することで擬似的に体験しているかのように感じるには、どうあるべきか――。課題は多い。

 今回はヒューマノイドロボットをいろいろ動かして経験させる、というデモだった。将来的には、人間ができることはなんでもできるようなロボットを作りたい、と語る。だが、人間型だけにこだわるつもりは全くないそうだ。さまざまなロボット技術を開発していきたいという。

 「人間にできることをやらせても仕方ない。だから今は人間ができることはなんでもやらせないといけないと思います。夢は相当大きいですよ」


URL
  電気通信大学
  http://www.uec.ac.jp/
  SVBL
  http://www.svbl.uec.ac.jp/
  スギウラブラザーズ
  http://blogs.yahoo.co.jp/sugiura0827/


2006/07/24 00:55

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