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ノモケンの「素組でロボット」
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石井英男のロボットキットレビュー
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通りすがりのロボットウォッチャー
脳とロボットを直接つなぐBMI
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新しいロボット・サービスを模索する「メカ屋」集団~株式会社イクシスリサーチ

ロボット業界キーマンインタビュー【ベンチャー社長編】
Reported by 森山和道

株式会社イクシスリサーチ 代表取締役 山崎文敬
 株式会社イクシスリサーチの山崎文敬代表取締役は「現在のロボットは技術志向が強すぎる」と語る。「そろそろロボットを使うサービスあるいはコンテンツが出てきてもいいんじゃないか。現在はロボットのサービスの善し悪しを判断する基準もない」。

 イクシスリサーチは主にロボットの受託開発を業務としている。メーカーの研究開発用途のロボットや、教育用や医療用などさまざまなロボット技術の研究開発を行なっている。

 その一方、山崎氏らは「ロボLDK」のような試みを通してロボットを使うサービスを模索・提案している。昨年はKHR-1を改造して踊りを踊る人型ロボットキット「和ボット」を開発した。本職の伝統芸能、日本舞踊や狂言の先生たち、それも人間国宝や重要無形文化財の人たちに振り付けをしてもらった。

 もともと展示会でデモをやっていたときにNPOの人と知り合ったことがきっかけで始まったそうだ。最初は、17個の自由度しかないロボットでどのように踊りを再現すればいいのか悩んだという。何しろ、動きの保存どころか似た動きすらできないのだ。

 だが何度も実際に劇場に足を運んで文楽そのほかを鑑賞しているうちに、あることに気づいた。伝統芸能を鑑賞する人たちは、同じ演目を何度も見に来る。ある演目の登場人物を、ある役者がどのように演じるかに興味を持って足を運ぶのだ。

 「この人ならどう演じるかを見に来ているんです。つまり、動き自体は重要じゃない」。動きを完全にコピーすることが重要ではなく、伝えたい感情を、その人なりにどのように演じるかが重要なのだ。そこで振り付けの人には17個の関節しかないロボットならではの動きを振り付けてもらうことにしたのだという。

 現在はイベントなどでも人気だ。同社の強みは、参加型のコンテンツをいろいろ持っているところ。たとえばKHR-1とダンスゲームの組み合わせや、ロボットと人間の対戦ゲームなどを行なうと、子ども達が寄ってくるのである。


日本舞踊を踊れる「和ボット」(右)。左にあるのは原型となったKHR-1 手前はヒューマノイドロボット「iHs04」。奥の2体は小型ヒューマノイドロボット「iHs02」

 もっとも、メインの業務はやはり大手の企業等からの受託開発だ。詳細は契約上明らかにできないが、幅広くさまざまなロボットの開発を行なっているそうだ。新聞テレビなどで各大学の研究開発として発表されたロボットのなかには、実際には同社が開発したモノもある。そのほか、ロボット教室なども行なっている。年商は昨年は1億2,000万円。社員数は8名。設立したのは'98年だ。


 山崎氏は'94年に早稲田大学に入学し、人工心臓の研究を行ないながら、ずっと「早稲田マイクロマウスクラブ」に在籍し、マイクロマウスをやっていた。いっぽう、大学3年のときにロボカップが始まり、小型リーグに参加することになった。

 ロボットを作っていると、金がかかる。ロボカップに行くにしてもみんな自腹だった。ロボットを作り続けるための金が欲しいなと思ういっぽうで、実際に作ったロボットを研究用に売ってくれという話も来るようになった。大学が個人とやりとりするのは色々と難しい。ロボカップで知り合った北野宏明氏のアドバイスもあり、'98年6月、修士1年のときに会社を作ることになった。実は「インテリジェント・エックスシステム」を縮めて作った「イクシス(iXs)リサーチ」という社名も北野氏がつけたものだという。

 山崎氏は、'99年11月から2001年11月まで、科学技術振興事業団北野共生システムプロジェクトでヒューマノイドロボット「PINO」の開発に携わることになる。当時のPINOはろくに歩かなかったのだが、2002年には、GA(遺伝的アルゴリズム)を使って歩かせることに成功した。

 だが、PINOを初めとしたロボットで商売するのは大変だろうなと思っていた。「僕自身はエンジニアなんで、どうやってあれで儲けるのかは分からなかった」と当時を振り返る。

 同時に、2000年4月からは大阪大学でヒューマノイドの歩行研究で博士課程へ進み、2004年3月まで特任研究員を務めた。その間に、山崎氏は「雑魚」というロボットでROBO-ONEにも出場している。KHR-1にも、コントローラー関連で立ち上げのときに少し関わった。

 同社は、これからも技術をメインにし、受託開発を行なっていくつもりだ。「うち自身が大量に販売する商品はないんです。ただ、RTをロボット以外のところに供給するために、コントローラーやマニピュレーターなどを提供するのが我々の仕事かなと思っています」。

 そのとき、ハードだけではなく、同時にコンテンツがあると顧客もロボット技術活用の方法が分かりやすい。「ロボットの動かし方だけ教えて終わりというのは、作った我々からするともったいないんです。使ってもらうためのコンテンツシステムが必要だと思っています」。

 また、ロボット技術は、顧客によっては実際のロボット技術とイメージが解離していることも多いという。「お客さんはまるで人造人間を発注したかのようなイメージで考えていることもあるんだけど、実際はそんなことはできない。そのためにもサポートするためのコンテンツが必要だと思うんです」。


社内の様子 2階には開発用部材がズラリ

 将来のロボット技術に対しても山崎氏の見方はなかなか厳しい。「例えば階段を上ることができるのは確かにすごい。けれど、正直、使い道がない。その他の機能にしても、コンピュータに置き換えられるものばかりです。やはり動きを活かしたものが必要だと思います。我々としては、さっさとコンテンツ、アプリケーションを出して『これなら使える』と言ってもらうことが重要だと思います」。

 そのために「ちょっと意表をついたものを今年あるいは来年くらいに出すつもり」だと山崎氏は笑う。どんなものなのかは教えてくれなかったが、二足歩行ロボットではなさそうだ。二足歩行させると、結局、仕事に使えるのは上半身だけしかないという状況になる。アクチュエーターの多くが無駄になってしまう。二足歩行の研究開発も手がけている山崎氏だが、「二足歩行はやればやるほど必要ないと思います」と語る。

 ロボットビジネスの市場が立ち上がるまでにはまだ時間がかかる。「それまでうちらは100万円、200万円のビジネスを育てていって5億、10億にという形で、派手じゃないけどきっちりやっていこうかなと思ってます」。

 そのためにも現在、技術職や営業職を募集中だ。事業拡大を目指している。社員の多くは25、26歳くらいのいわゆる「メカ屋」だ。エンジニアたちの集団として、頼れる存在になっていく――。そんな未来を目指しているのかもしれない。


URL
  イクシスリサーチ
  http://www.ixs.co.jp/
  【2005年9月5日】「ロボLDK~ロボットのいるくらしコンテスト~」開催(PC)
  http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2005/0905/robo.htm


2006/06/01 00:04

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