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「最先端ロボットフォーラム」レポート
〜最先端科学と最新のロボット開発の講演


新潟工科大学 講堂
 6月21日(土)に、新潟県柏崎市の新潟工科大学で「最先端ロボットフォーラム」が開催された。宇宙開発など最先端科学と最新のロボット開発の講演をロボットの実演とともに子ども達に紹介し、未来の夢や希望を育むことが目的。 主催は、柏崎市、総務省信越総合通信局、信越情報通信懇談会、情報通信月間推進協議会。


「宇宙開発で活躍するロボット」

吉井正広氏(宇宙航空研究開発機構 研究開発本部未踏技術研究センター ロボティックス研究グループ主任開発員)
 最初に、宇宙航空研究開発機構 研究開発本部未踏技術研究センター ロボティックス研究グループ主任開発員の吉井正広氏が「宇宙開発で活躍するロボット」をテーマに講演を行なった。

 吉井氏が所属する宇宙航空研究開発機構(JAXA:Japan Aerospace Exploration Agency)は、宇宙開発事業団(NASDA)、宇宙科学研究所(ISAS)、航空宇宙技術研究所(NAL)が2003年10月に統合して、「独立行政法人 宇宙航空研究開発機構」として新たに誕生した組織だ。JAXAでは、人工衛星やロケットの開発、地球観察、宇宙ステーション「きぼう」の建設など、幅広い分野で研究開発をしている。吉井氏は、星出宇宙飛行士が使用した有人宇宙活動支援ロボットの開発に携わったという。

 一般的にロボットというと、アニメに出てくるような人型ロボットをイメージするが、宇宙ロボットには、さまざまなタイプがある。

 例えば人工衛星は、地球の周りを周回して仕事をする機械だが、地上から人工衛星の位置を変えたり、画像の撮影を指示してコントロールしたりできる点からロボットの一種だと、吉井氏はいう。

 人工衛星から送られてくるデータは、生活の中の身近なところで活用されている。天気予報に使われる気象衛星のひまわりが有名だが、それ以外にもBS放送やCS放送は通信放送衛星からの電波を受け取って放送されている。また、ほとんどの車に搭載されているカーナビも人工衛星の信号を受け取っている。

 そのほか、災害監視にも地球観測衛星が状況把握などで活躍しているし、月惑星探査衛星などもある。来年の冬には、新たに二酸化炭素の排出量を観測する温室効果ガス観測技術衛星「GOSAT(ゴーサット)」を打ち上げる予定になっている。


通信・放送・測位・技術試験衛星 地球観測・気象衛星。「GOSAT」は来年の冬くらいに打ち上げ予定 陸域観測衛星「だいち」による観測例。岩手・宮城内陸地震翌日の観測画像

「だいち」による中越沖地震に関する解析。色分けして地殻変動を解析し、状況把握に役立つ 月惑星探査・天体観測衛星。「はやぶさ」は一時通信不能になったが、現在、地球へ帰還中

 ほかにも、宇宙ロボットには月や惑星の探査ローバー、スペースシャトルや宇宙ステーションで組み立て作業をするロボットアーム、宇宙飛行士が行なう危険作業を支援したり代行する有人宇宙活動支援ロボットなどがある。


月・惑星探査ロボット。「ミネルバ」は日本で開発された探査ロボットだ 軌道上ロボット

有人宇宙活動支援ロボット。将来的に活用が期待されている 有人宇宙活動支援ロボットの応用

 現在、筑波宇宙センターで研究しているのは、スパイダーマンのように長く伸びる紐を使って移動するロボットだという。ロボットが伸展自由なアームで突起物に紐を掛けて、紐の長さを変えることで本体の位置を変えて移動する方式で、宇宙空間の中だからこそ、こうした動きができる。

 このロボットは宇宙飛行士の活動を支援するために、宇宙飛行士が活動するのと同じ場所で動けるように考えられたという。宇宙飛行士が作業する場所には、かならずハンドレールが取り付けられている。宇宙飛行士は身体が浮遊しないように、このレールを伝わって作業しているわけだが、ロボットも同じインターフェイスを使って移動することを目指して研究している。

 宇宙ステーション「きぼう」では、2008年〜2011年の間に船外実験プラットフォームを使って、いろいろな実験が行なわれる予定になっている。このロボットは第2期の実験に選ばれており、2011年に打ち上げが行なわれる予定。宇宙空間に腕を伸ばし、先端に取り付けたカメラをあらゆる方向に向けてモニターする実験を考えているそうだ。

 吉井氏は「将来的には、月面で人間とロボットが協調して作業ができるようになるだろう。また軌道上でも、ロボットが単独で構造物を組み立てられるようになると考えている」という。


紐を伸ばしてハンドレールに紐をかけて、紐の長さを調節してロボットが移動するスパイダーマンのようなロボット 宇宙飛行士が使うのと同じインターフェイス(ハンドレール)をロボットが使って移動する 【動画】ロボットに作業用のハンドをつければ掃除もできるようになる

ロボットの概要 レールを掴む練習をした後、宇宙空間に腕を伸ばして撮影する予定

 実は、講演が行なわれた前日が宇宙飛行士の募集〆切日で、およそ1,000人の応募があったそうだ。

 今、日本には8人の宇宙飛行士がいる。宇宙飛行士になるために大切なのは健康であること、共同生活や作業をするために協調性・意思を伝えるための伝達力と語学力だという。3次まである選抜試験を乗り越えた後は、プール内で空中にぶら下げられて船外活動の訓練をしたり、陸上でサバイバル訓練も行なう。

 吉井氏は「今日、講演を聴いた子ども達の中からも宇宙飛行士が誕生するかもしれない。私たちが研究しているロボットを使って、君たちが宇宙で活躍したらどんなに素晴らしいことだろうと、ワクワクしている。宇宙飛行士になるのは難しいけれども、挑戦することは大事。宇宙飛行士になれなくても、宇宙に関係する仕事で活躍できるだけでもいいと思う。今後、どんどん宇宙開発は盛んになる。次回、募集がある時にはチャレンジしてほしい」と語りかけた。


「最先端ロボットの秘密にせまる

古田貴之氏(千葉工業大学 未来ロボット技術研究センターfuRo所長)
 次に、千葉工業大学 未来ロボット技術研究センターfuRo所長の古田貴之氏がロボットの実演を交え、今後のロボット開発の動向について軽妙なトークで講演を行なった。

 古田氏は、北野共生システムプロジェクトで「morph3」、日産自動車と共同で「ハルキゲニア01」、ラジコンメーカーの双葉電子工業と共同開発で二足歩行ロボット「G-ROBOTS」の基礎設計、その他いろいろな電機メーカーと一緒にロボット用チップの開発などを手掛けている。


morph3 G-ROBOTS レスキューロボット

 古田氏は「これから5年〜10年後には、皆さんが好む・好まない関わらず、私達が開発したロボット技術と一緒に生活しなければならなくなる」という。そのベースになるロボットして「Halluc II」を紹介し、さまざまな移動形態やモーションを披露した。

 この「Halluc II」は、“未来の車をつくろう”というコンセプトのもとに開発したロボットだ。8本の脚には、それぞれ7個のモーターがついている。移動する場所の条件によって、「ビークル(車両)モード」、「インセクト(昆虫)モード」、「アニマル(動物)モード」の3形態に変形する。例えば、一般の舗装路はビークルモードで走行し、凸凹道では足が出てきてインセクトモードで歩く。インセクトモードは「がに股」になるため、狭い場所はアニマルモードになり、動物のように歩くことができる。

 車は基本的に舗装された道での使用が考えられるが、このようなロボットなら「未舗装の道でも行けるのではないか?」というアイデアが開発のベースとなっているという。今回は、オペレータがPCから「Halluc II」を操縦しているが、前後に搭載したレーザー式センサーで360度を見渡し、周囲にある障害物を認識して半自動操縦でも動く。

 古田研究室では、「Halluc II」に45度の斜面を登坂させたり、屈伸運動を何時間もさせるなど、ハードな耐久試験をしたという。というのも、「Halluc II」は日本科学未来館に展示されており、来場者がロボット用コクピット「Hull(ハル)」から「Halluc II」を操縦できるようになっているからだ。そのため連日の稼働に耐えるように、また一般の人がカンタンに操縦できるよう、予めテストされているのだ。

 現時点では「Halluc II」のように56個もモーターをつけたロボットは、コストが高くつく。実際「Halluc II」の足は、1本が高級国産乗用車1台分くらいするという。だが、これからモーターやセンサー、ロボット用コンピュータは格段に安いものが世の中に出回ると古田氏は断言した。その根拠は「今、僕がメーカーさんと開発中だから」というから楽しみだ。


【動画】ビークル(車両)モード 【動画】インセクト(昆虫)モード アニマル(動物)モード

【動画】ビークルモードで前方の障害物を乗り越えて移動する 【動画】ビークルモードで前足でスポンジを持って移動する 【動画】ビークルモードで重量物を牽引して走行。150kg位まで牽引できるという

【動画】インセクトモードの早歩き 【動画】インセクトモードの早歩きを上から見たところ 【動画】歩行と変形、方向転換モーション

【動画】横歩きや屈伸もできる 【動画】ボディを前に向けたままスラロームで移動する 【動画】車輪の角度を放射状にして、その場で高速回転する。「線香花火」と呼ばれていた。最期に拍手を要求している

 「Halluc II」は、未来の乗用車の技術を開発することだけが目的ではなく、ロボット用の部品テストや、足と車輪を使っていかにロボットをうまく動かすかという制御の研究も兼ねている。

 例えば「Halluc II」には、電動スクーターの500Wモーターを2つ動かすことができる、名刺ぐらいのサイズの回路が搭載されている。これはプロジェクトで開発したもので、市販されている回路の4倍の性能があり、既に大手メーカーで使用されているという。

 古田氏は「こうした技術を使い、これから5年〜10年以内に電動車イスのような役に立つ移動ロボットを開発していく」という。そのためには、ロボットの移動技術だけではなく、街中の環境を整えることも必要となる。

 最近、古田氏が関わったプロジェクトとして、国土交通省が実施した「東京ユビキタス計画・銀座」がある。銀座や浅草の街に小型コンピュータチップを埋め込み、街を賢くしようという試みだ。花壇の中や、地下道の天井に機械が設置されていて、携帯端末を使いカフェやトイレの位置など、周囲の情報をナビゲーションできる。このシステムは全国都道府県に導入される予定になっているという。

 また、古田氏は成田空港で使用されている顔認証技術も開発した。ゲートに向かって歩いてくる不特定多数の人を、リアルタイムで年齢や性別を自動で識別するシステムだ。既に成田空港では、国際指名手配犯を探すために利用されている。

 こうした技術をもっとコンパクト化し、ロボット車イスが完成したあかつきには、車イスに「駅まで行ってね」といえば、街中のナビゲーションシステムを使い、目的地まで自動で連れて行ってくれるようになる。進行方向に歩行者がいたら、子どもや老人を見分けてそれぞれを安全に避けて走行してくれるようになるという。

 もちろん、一人乗りのロボット車イスが完成しても、いきなり運転することは危険だ。その点に関しては、前述の「Hull」がロボット実用化の布石となっているという。今はロボットとコクピットが別々だが、多くの来場者にロボットを操縦してもらいデータを蓄積している段階だ。


経済産業省、ロボット分野導入のシナリオ 街と生活を連動する「東京ユビキタス計画・銀座」 【動画】不特定多数のリアルタイム顔認識実験風景

「Halluc II」を操縦する半自律操縦コクピット「Hull」 「Hull」の操縦桿 全ての技術が統合されて、街をロボット車イスが自由に移動できるようになる

 古田氏は「重要なのは、いくら僕らがHalluc IIのようなロボットを一品もので製作しても、一般の方々に使ってもらわなくては意味がないことだ」という。

 まずは一人乗りのロボット車イスから始まって、近い将来には車も、家もロボットになる。人型ロボットが一般の家庭で動くのはまだまだ先だが、気づいた時にはロボット技術に囲まれて生活しているようになっているかもしれないと古田氏はいう。

 またそうしたロボットを、誰もがカンタンに作れるようにしなければいけない。そのために古田氏は、現在進行中のプロジェクトでロボットの部品を開発しているという。ロボット技術が社会に浸透して、明るい未来を築くロボットが作れればいいと思っているそうだ。

 古田氏は「10年後にはもしかしたら、日曜大工のようにロボットが作れるようになっているかもしれません」といい、今日、講演を聴いた子ども達が10年か15年後に一緒にロボット研究をしてくれることを期待していると語った。


講演後、「Halluc II」を囲んで学生達が熱心に質問をしていた 前面にカメラ、測域センサー、距離センサーが搭載されている バッテリは後ろにおさめられている

上部カバーをとったところ 下から見たところ morph3が「Halluc II」の非常停止ボタンを押している

URL
  総務省信越総合通信局
  http://www.shinetsu-bt.go.jp/
  ニュースリリース
  http://www.shinetsu-bt.go.jp/sbt/hodo/h20/080521-02.html
  新潟工科大学
  http://www.niit.ac.jp/index.html
  千葉工業大学未来ロボット技術研究センター
  http://www.furo.org/
  JAXA|宇宙航空研究開発機構
  http://www.jaxa.jp/

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( 三月兎 )
2008/07/04 00:07

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