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スペースシャトル・ディスカバリー打上げ成功
~日本の有人宇宙施設「きぼう」がいよいよ本格稼働へ


 5月31日午後5時2分(米国東部夏時間)、米国フロリダ州のNASAケネディ宇宙センターからスペースシャトル・ディスカバリーが打上げられた。日本の有人宇宙施設「きぼう」の主要モジュールとなる船内実験室を運ぶのが目的で、宇宙航空研究開発機構(JAXA)の星出彰彦宇宙飛行士がミッション・スペシャリストとして搭乗している。


ケネディ宇宙センターから打上げられたスペースシャトル・ディスカバリー(写真提供:NASA/Fletch Hildreth) 「きぼう」の中核となる船内実験室(写真提供:JAXA)。直径4.4mの円筒形で、ISSでも最大の与圧モジュールとなる 「きぼう」の完成イメージ(写真提供:JAXA)。奥の与圧部と手前の曝露部でそれぞれ実験をすることができる

 星出宇宙飛行士は1968年・東京都生まれの39歳。1992年に宇宙開発事業団(NASDA、現JAXA)に入社。H-IIロケットなどの開発業務、宇宙飛行士の技術支援業務などを経てから、1999年2月に古川聡・山崎直子両氏とともにJAXAの宇宙飛行士候補者に選抜された。星出宇宙飛行士は今回が初フライトとなる。

 今回のミッション番号は「STS-124」で、スペースシャトルによる国際宇宙ステーション(ISS)の組み立てとしては26回目のフライトとなる。目的は、日本の有人宇宙施設「きぼう」の構成要素である船内実験室とロボットアームを運び、ISSに設置すること。すでに船内保管室は土井隆雄宇宙飛行士のSTS-123で打上げられており、これでようやく実験を行なう環境が整うことになる。

 「きぼう」には3便目の組み立てフライト(2009年に実施予定)で船外実験プラットフォームと船外パレットが追加されるが、今回完成する与圧部のみで8月頃から実験を開始する予定だという。実験ラックの2台(SAIBOラックとRYUTAIラック)は船内保管室とともにすでに打上げられており、これをミッション中に船内実験室に移動・設置する。


SAIBOラックでは細胞培養装置を使って、宇宙環境による影響などを調べる RYUTAIラックでは結晶の生成に関する研究などを行なう。船内実験室にはこのような実験ラックを最大10個まで搭載可能

 今回の打上げは定刻通りに行なわれており、今後の主なスケジュールは以下のようになる予定だ(全て日本時間)。主なイベントについては、インターネットでの中継も行なわれる。早朝の放送が多いが、頑張って早起きしてみるのもいいだろう。

・6月3日 ディスカバリーがISSとドッキング
・6月4日 船内実験室のISSへの取り付け
・6月5日 船内実験室への入室
・6月7日 船内保管室の船内実験室への移設
・6月11日 ディスカバリーがISSから分離
・6月15日 地上へ帰還

 今回の打上げでは、直前にISSのトイレが故障したため、急遽シャトルに交換用部品が搭載されるというハプニングはあったが、スケジュールに大きな影響はない見込み。重量を合わせるために、「きぼう」の組み立てで使用するトルクレンチなどが下ろされたが、ISS内にある同じレンチがまだ有効期限内で使えるので、ミッションには特に支障がないそうだ。

 打上げ成功を受けて開催された記者会見で、立川敬二 JAXA理事長は「打上げの成功を大変嬉しく思っている。今回のミッションは“きぼう”組み立ての2回目。星出宇宙飛行士が取り付けや起動の作業を行なうことになっているが、訓練の成果を発揮して、所定の任務を果たすものと期待している」とコメント。「船内実験室がISSに取り付けられると、参加国の実験棟が揃う。この実験棟を活用して、国民生活に役立つ新たな知見・科学的成果の創出をしていきたい」と述べた。

 「きぼう」の3便目のフライトとなる「STS-127」は今年度内の実施を予定しており、それで曝露部も含めた施設が全て完成する。3便目の組み立てについては、その前フライトの「STS-119」でISSに長期滞在している若田光一宇宙飛行士が行なう予定だ。

 「きぼう」の完成により、日本人のISS滞在の機会は増えるだろう。今後は野口聡一宇宙飛行士が第20次長期滞在搭乗員として2009年後半から2010年前半まで6カ月程度滞在する予定となっているほか、ISSに搭乗するための新しい宇宙飛行士の募集もJAXAはすでに開始している(締切は6月20日までで3名以内の採用予定)。

 日本はこれから、日本人宇宙飛行士がISSに長期滞在し、種子島からはH-IIB/HTVで物資を補給するという、本格的な有人宇宙活動の時代を迎えることになる。ISSについては先行きの不透明さが懸念され、年間400億円という「きぼう」の運用コストもJAXAに重くのしかかることになるが、宇宙に有人活動の拠点を持つことはJAXA・日本の“悲願”であっただけに、それは素直に喜びたい。できた以上は、精一杯活用して成果を得られるよう期待したい。


URL
  宇宙航空研究開発機構(JAXA)
  http://www.jaxa.jp/

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( 大塚 実 )
2008/06/03 14:03

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