ノモケンの「素組でロボット」
コトブキヤ「1/100 MBV-04-G テムジン(Ver.1P)」(その1)

3DCGからリアル3Dへ。CGモデリングが活かされたコトブキヤの“バーチャロン”シリーズ

Reported by 野本憲一

 このコーナーは「ロボットのプラモデル」を組み立てて、その姿やギミックを中心に紹介していく。作り方は、塗装などをせず、あえてキットのまま組み立てていく“素組(すぐみ)”に限定。ここでは模型としての仕上がりを高めるよりも、キットを手早く楽しむことを優先させるのだ。

 最近のキットは、成型色(パーツの素材色)だけでもかなり色分けされていて、無塗装でも見栄えのする姿に仕上がるものも多い。また、塗装の剥がれを気にせずに動かして遊ぶこともできるのもメリットだ。購入した模型を貯め込まずドンドン組むためにも、レッツ素組!


 今回紹介するアイテムはロボット対戦アクションゲーム「電脳戦機バーチャロン」に登場するバーチャロイド「テムジン」。

 「電脳戦機バーチャロン」は1995年にアーケードゲームとして登場し、その後、家庭用ゲーム機やPC版などさまざまなプラットフォームに展開、最近ではXbox Live Arcade用として「電脳戦機バーチャロン オラトリオ・タングラム ver.5.66」が配信されるなど、現在も続く人気シリーズとなっている。

 バーチャロンに登場するロボット“バーチャロイド”は、これまでに数社からプラモデルが発売されている。アニメや漫画原作ではない“ゲーム発”のキャラクターロボットとしては異例の存在といえるだろう。

 コトブキヤでは昨年より「コトブキヤ・バーチャロンプラモデル シリーズ」を発売開始。開発にあたっては、セガの協力の元、ゲームのパブリシティ向けに作られたハイエンドCGのモデリングデータを使い、原型を製作するという方法を採用。それにより全体のプロポーションから細部の形状まで、CGのイメージを崩すことなく立体化している。もちろん今時のキャラクタープラモデルとして、さまざまなポーズに対応する可動ギミックや、同社プラモデルの特徴でもある「色毎のパーツ分割」も盛り込まれている。

 なお、同社の「電脳戦機バーチャロン」プラモデルシリーズ 公式サイトでは、バーチャロンシリーズキットの開発裏話を随時更新中だ。興味の有る方はぜひ一読をオススメする。

パッケージ
コトブキヤ 1/100 「MBV-04-G テムジン(Ver.1P)」。初期の「電脳戦機バーチャロン」に登場する代表的なバーチャロイド。価格は5,040円
パーツ群
色毎にパーツ分割されているため、ランナー数は23枚と多い。主な材質はスチロール樹脂。関節部などはABSやポリエチレンが使われている。組み立ては接着剤の要らない、はめ込み式スナップフィットモデル。マーキング用のデカールも付属している
パーツのアップ
腕、足パーツの例。色分けの中が抜けたような複雑なパーツ形状となっている
パーツのアップ2
機体表面の「凹」状のモールドがバーチャロイドの特長でもある。凹みの具合をしっかり再現するため、横方向へ金型を分割している部分もある
完成後全身
ハイエンドCGモデルが活かされた外観は個々のイメージや解釈を飛び超えている。素組でもこれだけの色分けがなされる点と合わせて完成度は高い
完成後背面
背中に搭載される「Vコンバータ」は、ゲーム機「セガサターン」がデザインモチーフ

頭部

 説明書の流れとは違うが、頭部から組み立ての様子を紹介していこう。

頭部全パーツ
色分けと共に、細部の形状まで再現するために多くの部品で構成されている
頭部組み立て
グレーの部品を左右合わせ、周囲にパーツを被せるように組み立てる。右側のパーツは首関節の受けで、下側からはめ込む部分
頭部組み立て2
同じ状態を下側から。頭部内に首関節受けをはめ込み、あとで、右側の首パーツを取り付ける
頭部組み立て3
頭部本体は周囲に外装で覆うようにパーツを取り付けていく。多面体の部分も“辺”で分割され、合わせ目が目立たないようになっている
頭部完成
首パーツまで取り付けて完成した頭部。側面のスリットから内部色が覗くなど、細部の再現も十分
クリアーパーツの注意
各部のクリアー部品の取り付けはピンなどではなく、外側形状での勘合になる。ゲート跡を綺麗に仕上げておく

胸~腹ブロック

 胴体は、胸、腹、腰の3ブロックに分かれ、関節でつながれる。その胸ブロックから。

胸上面パーツ
胸の上面を構成するパーツ。グレーのパーツは内側で肩関節を受ける
胸上面完成
左右のクリアーパーツは一段奥まったところにはめる。向きに注意してしっかりと押し込んでおく
胸上面裏
裏面から見たところ。グレーの部品には楕円のミゾがある。ここで肩関節がスライドする
肩関節パーツ
胸内部に入る肩関節パーツ。4点の部品で構成され、上下振り軸は2重になっている
肩関節完成
組み上げた肩関節。上下にある小さい軸が、胸側のスライドミゾに収まる
胸下部1
胸部下部は大きく前後分割。間に肩関節受けや胴体軸受けを挟む
胸下部2
さらに前面の外装、襟元のパーツを取り付ける
胸下部完成
完成した胸下部
肩関節取り付け
肩関節を下部のミゾにはめ込んだあと、胸上面パーツを被せる
胸部完成
完成した胸部。肩関節は通常は内側に収納し、ポーズに応じて横に引き出し可動範囲を広げられる
【動画】関節を引き出すことで、肩の振り幅が広がる

腹部

 外観上は胸から一連の構造に見えるが、分割することで前後屈伸やひねりなどの可動範囲を広げている。

腹部パーツ
左右の貼り合わせで、ボールジョイントになっている方が上側。前、左右に外装を取り付ける
胸、腹取り付け
完成した腹部を胸部の裏面に取り付ける
胸~腹 完成
胸、腹までが完成。角が面取りされた多面体となっている外観上の特長がよくでている。腹部は奥まって入るので、完成した姿は一体感がある
胸~腹 後面
背面のミゾは「Vコンバータ」取り付け用

腰ブロック

 もともと股関節の可動範囲は広いデザインだが、さらに自由度を増すために、外周も分割、可動化されている。

腰部全パーツ
グレーの部品が股関節で、外周部品を支えるフレーム状になる。その外周部品は、裏面パーツもあり、“肉抜き”状態にならないように配慮されている
腰前パーツ
フンドシ部分と、前側アーマーとなる部分
腰前側組み立て
左右のモモ上に被る部分は、内側にボールジョイントで取り付けられる。グレーの軸受け部品がポリパーツ
腰前側組み立て2
裏面にはめ込んで、腰前部品の完成。股関節への取り付けに「凸」型の穴がある
腰前部品完成
組み上がった腰前部品
股関節部品
腰の上面と腰関節になる部品。中央の丸は腹部品の軸受け。股関節は左右のボール軸を「+」状部品でつなぐ
股関節組み立て
股ブロック内に収められた「+」部品は上下にスライドする。これも脚部の可動範囲を広げるためだ
股関節完成
上面プレートを取り付けて、股関節の完成。左右のボールはにはボックス型パーツが付く
腰側面ボックス
腰の側面に付くパーツ。裏面にボールの受けがある
腰後面部品
腰の後面になる部品。左右に回り込んだ「凹」状モールドを再現するため、上下に分割されている
腰後面完成
フィン状部品を左右の凹みに取り付ける
腰各パーツ
ここまでに組み上げた腰ブロック各パーツ。中央の部品にそれぞれをはめ合わせる
腰ブロック完成
完成した腰ブロック
股関節位置「上」
股関節のボールの位置に注目。これが標準で「上」になった状態
股関節位置「下」
股関節を下にスライド下状態。この方がモモを前後に振ったり、角度を付けやすくなる
【動画】股関節の移動。左右は繋がっていて一度にスライドする

 細身の形状の中に、色分けの分割や関節などを巧みに盛り込んでいる。手首以外は左右対称。

肩アーマー全部品
肩に被さるアーマー状パーツ。端の黄色い部分も開くギミックがある
肩アーマー先端
黄色の部品の裏には2重関節のリンク状パーツが付く
肩アーマー各面
肩の前後、上のパネルはそれぞれ内側パーツが重なる。上面の裏にはボールの軸受け、前後面の裏には前の写真のリンクが付く軸がある
肩アーマー組み立て
上面と端のパーツを、前後面のパネルで挟むように組んでいく
肩アーマー完成
完成した肩アーマー。クリアーパーツは黒いパネル面にはめ込む
肩アーマー先端可動
端の黄色い部分はこのように上側にまで開く。上腕を横に振り上げるときにも干渉しなくなる
上腕全パーツ
腕上端の肩関節と、それに連なる上腕の部品
上腕組み立て
肩関節、上腕の黒い部分をはめ合わせた状態。あとは同軸状に差し込んでいく
上腕完成
完成した上腕。先端のボールは肩アーマーに取り付け、横の穴は胸ブロックからの軸を受ける
前腕全パーツ
前腕は手首関節からヒジ関節までがひとつのまとまりになる
前腕組み立て1
黒いブロックは手首関節の軸受けを入れて挟み込み。それをさらに前腕側面部品で挟み込む
前腕組み立て2
これで黒く抜けた部分の色分けも手軽に仕上がる。右はヒジ関節部品。ヒジ側の空間にあとで入れる
前腕組み立て3
ヒジの四角錐パーツ。上下に重ねた裏にポリ部品の軸を取り付ける
前腕組み立て4
その軸を四角錐ごと前腕に取り付けることで、ヒジ関節を構築する
前腕組み立て5
実際にはグレーの関節部品を入れてから、左右から軸を差し込むように組み立てる
前腕完成
ヒジ関節の「H」断面の部分を上腕に差し込んで接続する
腕、各ブロック
組み上がった肩アーマー、上腕、前腕。それぞれの取り付け軸を差し込んでつなげる
肩~前腕、接続
肩から前腕までの完成。前腕は合わせ目が真ん中にある
手首パーツ
手首は平手、握り手(各左右)、銃の握り手が(右のみ)となる。写真はいずれも右手の部品。組み間違えの無いようダボの形はそれぞれ変えられている
手首完成1
指関節や手のひらなど、彫りの深いモールドが施されている。腕への取り付けはボールジョイント
手首完成2
手の甲側から。甲のパーツは外観は同じだが、手のひら側のパーツは別部品になっている
腕完成
手首までを取り付けて完成した腕
組み上げたパーツ群
ここまでにに組み上げた各ブロック。関節部を差し込んで上半身が完成する
腕可動1
ヒジ関節は一軸だが、これだけ深く曲がる
腕可動2
肩関節を引き出し、肩アーマーの先端を開くことで、腕を振り上げるようなポーズも自然に決まる

 今回はここまで。次回は、足、背面、武装を組み立て完成させる。さらにちょっとしたディテールアップも行なってみる。

(C)SEGA CHARACTER DESIGN:KATOKI HAJIME


野本憲一(のもと けんいち)
職業:プロモデラー。1967年新潟市生まれ。プラモデルやトイ、ガレージキット等の原型製作に携わると共に、模型専門誌ライターとしても活動すること20余年。著書に模型製作テクニックをまとめた「NOMOKEN(野本憲一モデリング研究所)」(ホビージャパン)がある。




2009/6/25 15:00