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ロボカップジャパンオープン2008沼津レポート
~ロボカップジュニア編


 静岡県沼津市にて、5月3日~5日の3日間に渡り「ロボカップジャパンオープン2008沼津」が開催された。主催はロボカップジャパンオープン2008沼津開催委員会、共催は社団法人 日本ロボット学会、社団法人 人工知能学会、社団法人 計測自動制御学会システムインテグレーション部門。メイン会場はキラメッセぬまづ、サブ会場の沼津市体育館でロボカップジュニアと今年から新たに始まった@ホームリーグが行なわれた。本稿では、ロボカップジュニアのレポートをお送りする。


ロボカップジュニアリーグとは

 ロボカップは、人間社会に役立つロボット技術を育成するために「2050年までに、人間のサッカー世界チャンピオンチームに勝つロボットチームを作る」という一般にもわかりやすく夢のある目標を掲げている国際プロジェクトだ。

 現在大学など研究機関が中心となっているが、次世代の技術者を育てるために小学生~高校生を対象とした「ロボカップジュニアリーグ」を実施している。

 ロボカップジュニアは単なるロボット競技会ではなく、競技を目指してロボットを製作する中で科学技術を学び、国際協調を含むコミュニケーションを体験する総合学習が目的だ。そのため、会場ではペーパープレゼンが評価対象になったり、他チームと協力して競技を行なう「マルチチーム」方式が採用されている。

 競技はサッカーチャレンジ、レスキューチャレンジ、ダンスチャレンジの3種目がある。いずれも出場するロボットは、センサ等で動作する自律型だ。会場に設けられた整備ブースには、保護者も立ち入ることができず、ロボットの故障やプログラム修正も全て子ども達自身が対処している。部門に関しては小学生~中2までが参加するプライマリ、中3~高校生までのセカンダリに別れている。

 今大会には、中国からの招待チームと各ノード大会(地区予選)を勝ち抜いた国内チーム、計121チームが参加した。ジャパンオープンで優秀な成績を残したジュニアチームは、例年7月に開催される世界大会への出場権が与えられる。今年の世界大会は、中国・蘇州で開催されることが決まっている。


サッカーチャレンジ レスキューチャレンジ ダンスチャレンジ

「サッカーチャレンジ」は東海代表がダブル優勝

 参加者の一番多い競技が、サッカーチャレンジである。赤外線を発光するボールを追いかけて、ロボットが2対2でサッカーゲームを行なう。フィールドは白~黒のグラデーションになっていて、ロボットは地磁気センサやカラーセンサなどを使い、ゴールの方向を認識してゲームを行なう。

 今回そのサッカーチャレンジにはプライマリ部門に45チーム、セカンダリ部門に20チームが参加した。4日に予選リーグを行ない、プライマリ12チーム、セカンダリ8チームが決勝トーナメントへの切符を手にした。

 プライマリの決勝戦は、「サファイア・ウエポン(九州)」と「チーム高浜Jr.(東海)」の対戦となった。前半は「サファイア・ウエポン」がリードして終了。後半に入り「チーム高浜Jr.」が果敢に攻め込むものの、なかなか突破口が見つからない状態が続いた。

 しかし「チーム高浜Jr.」のロボットも、パワーでは「サファイア・ウエポン」に負けていない。コーナーでボールを挟んで膠着状態になる場面が何度も見られたが、途中「サファイア・ウエポン」のロボット「ペリドット」のモーターが負荷に耐えられず燃えてしまい、リタイヤしてしまうアクシデントが発生した。

 試合は「サファイア・ウエポン」リードのまま再開。このチャンスに「チーム高浜Jr.」が一気に攻め立てるかと思われたが、逆にオウンゴールを重ねてしまうなど、なかなか追いつくことができずに苦戦した。途中、「チーム高浜Jr.」の1台がコンデンサが外れるトラブルに見舞われてしまったが、一旦フィールド外に出てICを外し、コンデンサ周辺のプログラムが走らないようにして試合に復帰することができた。その結果、「チーム高浜Jr.」が試合終了間際に得点を決め、10-9で見事に優勝を決めた。

 一方、セカンダリ部門で決勝戦まで勝ち上がったのは、予選2位の「Team Asagi(北陸)」と、予選4位の「チーム高浜(東海)」だった。「チーム高浜」は準決勝で予選1位の「F・S・Robots(九州)」に10-2と圧勝して、勢いをつけていた。そして決勝戦でも15-1と圧倒的な強さで優勝を決めた。

 会場となった沼津市立体育館は、外光を取り入れるために天井に四角い明かり取りの窓があったのだが、赤外線センサで自律して動くロボットにとっては、かなり厳しい状況だった。そのため「チーム高浜」は5日の決勝トーナメントでは、ボールを検知する赤外線センサを下向きにつけて、なるべく外光の影響を受けないように工夫したという。

 この「チーム高浜」は、昨年アトランタで開催されたロボカップジュニアのプライマリに出場し、見事優勝したチームだ。だが世界大会予選では、中国チームにパワーで負けてしまったという。これを受け、今年は3輪から6輪にパワーアップして大会に臨んだ。また、2台のロボットを同じ構成にし、メンテナンス性を向上させていた点にも注目したい。

 なお、チーム高浜のサイトには、今大会のプレゼン資料他、さまざまなデータが公開されている。ロボカップジュニアに出場する選手達のレベルの高さを垣間見ることができる。


【動画】プライマリ決勝前半戦。チーム高浜Jr.(東海)vsサファイア・ウエポン(九州)。チェックのロボットがサファイア・ウエポン 【動画】決勝後半戦。試合終了間際に逆転し、チーム高浜Jr.が1点差で優勝した 【動画】3位決定戦。信長(東海)vsかもっこKMTM(九州)。奥の円中型のロボットがかもっこKMTM、9-1で3位入賞した。

【動画】セカンダリ決勝前半戦。チーム高浜(東海)vsTeam Asagi(北陸)。手前の青いロボットと奥の赤いロボットがチーム高浜 【動画】決勝後半戦。パワーとスピードで上回るチーム高浜が勝利を手にした 【動画】3位決定戦。MicroWave(北陸)vsF・S・Robots(九州)。白いロボットがMicroWave(北陸)。試合は7-10でF・S・Robotsが勝った

難易度がアップした「レスキューチャレンジ」

 レスキューチャレンジは4つの部屋をロボットが自走し、被災者発見や障害物回避などのミッションをクリアしながらゴールを目指す競技だ。成績はタイムよりもミッションクリア毎に得られるポイントが優先される。今回はプライマリに20チーム、セカンダリに12チームが参加した。

 レスキューチャレンジのルールは、毎年改定され難易度がアップする。1月に国際大会ルールが公開されるため、翻訳して全国各地のノード大会主催者に通達するのは2月になる。そのため2月~3月にかけて実施されるノード大会は、前年度ルールで開催するのが通例となっている。それに準じてジャパンオープンでは、2008レスキュールールで実施された。

 ジュニアレスキューは、基本的にはロボットがラインをトレースして進むのだが、今大会では大きなルール変更が3点あった。1つ目は、ラインのギャップ(切れ目)が昨年度の20cmから30cmに広がったことである。ロボットのサイズは全長22cm以下と規定されているため、これまではロボットの前後にセンサを搭載していればギャップを発見できたのだが、今大会からはプログラムのロジックに工夫が必要となる。また、ラインはカーブだけでなく、クランクや鋭角なコーナーもあるためトレースの難易度が上がったのだ。

 2つ目は、スロープにラインがなくなったこと。そして3つ目は最終の部屋に、直径3mm以下の棒が飛散していることだ。この棒があるために、ロボットは走行中にスリップして方向が変わり位置制御が困難になる。しかも、被災者マーカーの上にも棒があり、被災者発見が難しくなっている。

 ジャパンオープンでは、2台のロボットが協力してミッションを完遂するマルチチームで競技を実施した。例えば一方のロボットが、被災者の発見が不得手だとすると、もう1台がフォローするなどの作戦を事前練るという具合。障害物回避やギャップの認識、坂道クリアなどの課題は累積得点になるが、被災者発見については1体の被災者につき1度の発見がマルチのポイントとなる。個人成績は、それぞれがポイントとなり順位が決まる。また予選の個人成績に応じて、決勝のマルチチームの組み合わせが決定する。


 さて、今回プライマリ部門で優勝したのは、「ステッピー7(関西)」だった。関西ノード大会から1カ月程の期間で、今大会のルールに対応すべくロボットを新規設計したという。

 ラインがなくなったスロープをクリアするために、車体のサイドにタイヤをつけて壁に沿って走行するようにした。最後の部屋に散っている棒の対策は、ロボットの周囲に刷毛(はけ)をつけて掃除しながら移動するようにし、センサーの誤動作を防いだ。

 初日の予選では、カーブ直後にあるギャップに苦戦したという。カーブに沿ってライントレースをした後は、車体がラインに対して斜めになっているため、そのまま直進するとコースに戻ることができないのだ。そこで決勝では、カーブ後はロボットの軌道が緩く円弧を描くようにプログラムを修正し、ラインを発見できるようにしたという。

 セカンダリ部門は、予選1位の「LINK(関東)」が決勝でも順調にミッションをクリアして優勝した。「LINK」はMINDSTORMS NXTベースで製作しているのだが、付属のライトセンサは赤色LEDのため、ライン上にある被災者発見が難しいことから、青色LEDに変更しているそうだ。

 ロボットに傾斜センサを取り付け、スロープに進入してからはライントレースではなく、自律で被災者を探索するプログラムに切り替えている。被災者の上に棒があってもセンサが誤動作することなく検知できるが、タイヤがスリップして方向を見失うのを防ぐためロボットの後部を壁につけて、壁と水平に走行するようにしたという。


プライマリ部門優勝の「ステッピー7(関西)」。車体周りに取り付けられている棒除けの刷毛(はけ)は、ロボットの走行を妨げない硬さを選んでいる 【動画】「ステッピー7(関西)」。スロープは、車体の横につけた車輪を使い壁に沿って登っている 【動画】セカンダリ部門優勝の「LINK(関東)」。最後の部屋では、ロボットの後部を壁につけて姿勢制御を行なっている

見ていて楽しい「ダンスチャレンジ」

 ダンスチャレンジは、6×3.6mのステージで人とロボットが音楽に合わせて踊る競技だ。挨拶から始まり、ロボットと小道具のセッティング、2分間のダンスをして終わりの礼までを持ち時間の5分で行なう。演技後に審査員から、ロボットの自律性や構造、ダンスの演出に関して質問があり、質疑応答の内容も含めて評価対象となる。ロボットのプログラムや演技の創造性だけではなく、プレゼンテーション能力も問われる競技なのだ。今回はプライマリ部門に16チーム、セカンダリ部門に8チームが参加した。

 そしてプライマリ部門で優勝した「祭りボーイズ(東海)」はソーラン節に合わせて2台のロボットが御神輿を担ぐという演技を披露した。また準優勝の「ハミガキ娘(九州)」は、人とロボットが「ハミガキしようよ大作戦」を全国展開しているというストーリーで演技を行なった。予選では、赤ちゃんロボットが倒れたシーンが演技に見えなかったということで、手足をバタバタする演出を取り入れたという。

 セカンダリ部門で優勝したのは、昨年度のアトランタ世界大会でも優勝している「スイング!(関西)」。今年は楽しく歌って踊ることをテーマに、女の子ロボット“アンディ”と一緒にトランペットを吹いた。関西ノード大会から大きく変更したのは、アンディの行動範囲を広げてダンスをダイナミックにしたこと。背景も、夜になるとLEDが月や星の形に光ったり、花が閉じたりするなどみごとな演出だった。

 準優勝は、「DREAMER(九州)」。車輪型ロボットと四足歩行のロボットの機構が異なるロボットを製作した。車輪型ロボットは距離センサーで、人の位置を感知して動くため、まるで競技車と呼吸を合わせて動いているかのようだった。


プライマリ優勝「祭りボーイズ(東海)」のペーパープレゼン。競技とは別にプレゼンも審査対象となっている 準優勝の「ハミガキ娘(九州)」。各ロボットの演技内容や機構を丁寧に説明している プライマリ部門の入賞者達

セカンダリ優勝の「スイング!(関西)」。地区予選よりも女の子ロボットの移動範囲が広くなり、楽しいステージに仕上がっていた 準優勝の「DREAMER(九州)」。競技者のつま先をロボットが距離センサーで感知しダンスをしていた セカンダリ部門の入賞者達

ロボカップジュニアの教育的効果

 ロボカップに出場している選手達も、指導者の下ロボットを製作している。だが、その過程で得た技術や知識を自分の言葉で人に説明することが要求されるため、誰に質問してもちゃんと答えが返ってくるのだ。世界大会では予選リーグで優秀な成績を出しても、審査員の技術的な質問に参加者が答えられなければ、決勝進出が認められないこともあると聞いた。

 一方、ロボカップジュニアは単にロボットの優劣を競うだけではなく、競技者同士の交流にも重点が置かれている。そのためにサッカー競技やレスキュー競技は、マルチチームの成績も評価の対象となっており、技術交流が盛んに行なわれている。優秀なロボットの製作者は、いつも人に囲まれてロボットの説明をしている状態だ。

 今大会の会場は、外光の影響を受けて厳しい状況だったにもかかわらず、筆者がコメントを求めた選手達は「みんな同じ条件ですから」と言って、自分達が悪条件の中でどのようにセンサを調整したのかを教えてくれた。

 また、表彰式が終わった後、世界大会出場権から漏れてポロポロと泣いていた選手が、しばらくしてから入賞チームのところに行き「おめでとう。世界大会、頑張ってね」と激励している姿を見かけた。ロボカップジュニアが目指す「科学技術を学び、コミュニケーションを体験する総合学習」は、子ども達にしっかりと伝わっているのだということを肌で感じる瞬間だった。

 大会の結果、世界大会出場権は下記の17チームが獲得した。

【サッカーチャレンジ】
・プライマリ
優勝   チーム高浜Jr.(東海)
準優勝 サファイア・ウェポン(九州)
3位   かもっこKMTM(九州)

・セカンダリ
優勝   チーム高浜(東海)
準優勝 Team Asagi(北信越)
3位   F・S・Robots(九州)

【レスキューチャレンジ】
・プライマリ
優勝   ステッピー 7(関西)
準優勝 M&Y(関東)
3位   救鼠GO秒(関東)

・セカンダリ
優勝   LINK(関東)
準優勝 EMERGENCY!!(東海)
3位   M-4(関東)

【ダンスチャレンジ】
・プライマリ
優勝   祭りボーイズ(東海)
準優勝 ハミガキ娘(九州)

・セカンダリ
優勝   スイング!(関西)
準優勝 DREAMER (九州)
3位   Robotmate(関西)


URL
  ロボカップジュニアジャパン公式サイト
  http://www.robocupjunior.jp/top/
  ロボカップジャパンオープン2008
  http://robocup-numazu.com/

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( 三月兎 )
2008/06/06 17:41

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