二足歩行ロボットは、基本的に人体と似たような構造をしている。腕があり、脚があり、胴体、そして頭がある。人体の関節にあたる部分がサーボモーターだと思えばいいのだが、実はここに大きな問題がある。そう、人間の関節は回転したり曲がったり、多様な方向に動くが、サーボモーターの場合は一定方向にしか動かないのである。この点がのちのち、ロボットの動きをオリジナルで作成する時に、難しい点となってくる。
それでも二足歩行ロボットは、人間によく似ている。人体で言うところの太腿や太腿、太腿が、ちゃんとKHR-2HVにも存在する。いや、別に私が太腿にこだわっている訳では無い。我が愛する友人が太腿フェチで「KHR-2HVにも太腿がちゃんとあるじゃないか!」と、大喜びしているのである。
そうですか、KHR-2HVの太腿ですか。不肖・高橋、世の中にこれほど色気のない太腿も珍しいと思いつつ、KHR-2HVの「太腿部分」を見ていたのだが、いかがなものか。ちなみにKHR-2HVの太腿部分は、別名「ブラケットBユニット」である……。
ところがさすが、我が友。どう転んでも、KHR-2HVの太腿に色気は無いという話をしていたら、きっちり断言してくれた。
「太腿と思えば、それがロボットでも“ときめく”もんだ」
立派、ご立派です。あなたのその想像力には、感動すら憶えます。ちなみに友人曰く、「カミサンも娘も私の言うことを聞いてくれないが、KHR-2HVは何でも言うことを聞いてくれるから可愛い」のだそうだ。何かこう、君の家庭には根本的な問題があるように思えるのだが、どうしたもんだろう? まあ、愛機となったKHR-2HVと幸せに暮らしてください。
● そろそろサーボモーターにマーキングした方がいいかも
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前回の作業で、ここまで組み上がったKHR-2HV。こうして並べると、ロボットらしく見える
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さて、今回もKHR-2HVの組み立てである。サーボモーターとフレームが組み合わされて、かなりロボットのパーツらしくなってきたのが前回。この調子でいけば、すぐにでも組み上がるのでは……と思ってはいけない。作業自体が難しくなるということは無いのだが、これから作業はどんどん「面倒」になるのである。また、PCとコントロールボードを接続して行なう作業も出てくる。もっとも「面倒」なだけなのだから、時間をかけてじっくり取り組めばいいだけの話である。
ちなみにここで、組み立て時のネジの扱いに関して、もう一度復習しておこう。
●締めすぎは禁物、とくにサーボモーターのケースビス
●全てのネジを軽く締めてから、最後に対角線を意識しながら締めこむ
●マニュアルと見比べて、ネジを間違えないようにする
KHR-2HVを組み立てるには、大量のネジを扱わなくてはならない。最初は慎重にネジを扱っていても、だんだん作業が雑になるのが人間の困ったところである。ネジの締め具合1つで、KHR-2HVの仕上がりに違いが出るのもまた事実。最後まで気を抜かないで、ネジを締め続けよう。
それともう1つ、今回は組み立て作業が本格的に進むので、そろそろ「サーボモーターのナンバリング」をしておいた方がいいかも知れない。サーボモーターはコントロールボードの任意の「チャンネル」へ接続し、動作を制御する。例えばKHR-2HVの頭になるサーボモーターは「CH1」、すなわち「チャンネル1」へ接続するのである。このチャンネルを分かりやすくするため、KHR-2HVにはサーボモーターから伸びるケーブル、すなわちサーボリード用のシールと、サーボモーター自体に貼るシールが用意されている。これをサーボモーターとそのケーブルに貼っておけば、間違いなどを防ぐことができるという訳だ。
もちろんマニュアルと見比べながら、間違えないように作業すればシールは不要である。シールを貼る、貼らないは個人の自由だが、後で剥がすこともできるのだから、間違いを防ぐ意味でも貼ることをお奨めしたい。
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付属するサーボモーター用、そしてサーボリード用のシール。切り込みは無いので、カッターなどを使い、カットする必要がある
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頭部用のサーボモーターは「CH1」、すなわちチャンネル1になる。このように目立たないところに貼っておけば、間違いを防ぐことができる
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サーボリードにもシールを貼っておけば接続時に、いちいちリードをたどってサーボモーターを確認せずに済む。サーボモーターのチャンネルはマニュアルの一覧などで確認できる
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● ジャイロセンサーの取り付け
前回、組み立て作業はフロントフレームまで進んだ。そして「マニュアルとは違う作業を入れる」と書いたのだが、それは「ジャイロセンサーの組み込み」である。ジャイロセンサーはKHR-2HVのパッケージには含まれていない、オプションパーツである。しかし本連載で取り上げている「Robot Watch スペシャルセット」には、ジャイロセンサー2つと、加速度センサー1つ、計3つのセンサーが含まれているのだ。
そしてジャイロセンサーは、KHR-2HVのボディの中に組み込んでしまう。このためフロントフレームの組み立ててで、通常のマニュアルに沿った作業を止めた訳だ。では、ジャイロセンサーの組み込みに関するマニュアルは、どこにあるのだろうか? 必要になるのは「RCB-3J操作説明書上級編」で、これはメーカーである近藤科学のWebサイトからダウンロードすることができる。「RCB-3J 操作説明書・上級編 KHR2HVSP1.EXE」を任意の場所にダウンロードし、実行して生成される「KHR-2HV SP1」フォルダの中に、上級編マニュアルのPDFファイルが含まれている。
この上級編マニュアルに、ジャイロセンサーの取り付け方法と設定方法が記載されている。ジャイロセンサーとは何か? どのような効果があるのか? 詳細に関しては設定する際に解説するので、今はとにかくジャイロセンサーを取り付けて欲しい。取り付け方向を間違えないように、強力タイプの両面テープなどを使って固定すればいい。
なお、ジャイロセンサーにはボディ前後の傾きを感知する「ピッチ用」、ボディ左右の傾きを感知する「ロール用」がある。ピッチ用はコントロールボードのアナログ入力ポート「AD1」に接続し、ロール用は「AD2」に接続する。ボディに内蔵されてしまうと、判別が難しくなるので、ジャイロセンサーから伸びるケーブルのコネクタに、目印を書いておくといいだろう。
ジャイロセンサーを組み込んだら、サーボリードの取り回しに注意しながら、ボディユニットを組み立てる。さらにコントロールユニットも組み立て、次の作業に進む。
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上級編マニュアルを近藤科学のサイトから入手し、ジャイロセンサー2つをボディに組み込む
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2つ使用するのは「前後の傾き=ピッチ」、「左右の傾き=ロール」を検知するため。センサー自体はまったく同じものだ
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ジャイロセンサーの固定には、強力タイプの両面テープを使用する。後から動いてしまうと、正確な傾き検知が出来なくなるので注意
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股下パーツ(ボディフレームL)に固定されているのが、ロール用のセンサー。アナログポート「AD2」に接続する。ボディ内部がピッチ用、「AD1」に接続する。向きが重要なので間違えないように
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組み込んでしまうと判別が難しくなるため、ジャイロセンサーから伸びるケーブルのコネクタに、マークなどを書き込んでおくといい
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ジャイロセンサーを固定する際には、斜めにならないよう注意したい。垂直、水平を意識して固定する
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ジャイロセンサーを固定したら、あとは通常のマニュアルに従って、配線に注意しながらボディユニットを組み上げる
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ボディユニットが組み上がったら、次はコントロールユニットの組み立てだ。コントロールボードのピンを曲げないように、さらに精密電子機器ということもあり、静電気にも注意したい
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まあ、コントロールユニット自体はネジ留めと、ケーブルを接続するだけなので簡単
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● サーボモーターの原点出しは、重要な作業
コントロールユニットを組み立てたということは、何かしらその出番があるんじゃないか……。そう思ったあなたは勘が鋭い。この先、組み立てを進めるためには「サーボモーターの原点設定(原点出し)」をしなくてはならない。そしてこの作業を行なうのに、コントロールボードが必要になってくるのだ。
ではサーボモーターの原点設定とは何か? そもそもサーボモーターは、軸をコントロールしながら回転させるパーツである。例えばコントロールボードはサーボモーターに「100、右に回転せよ」と指令を送る。ちなみにここで言う「100」は角度でも、割合でもない。任意の数値だと考えて欲しい。指令を受けたサーボモーターは「右に100」回転する訳だが、問題は「その時の基準はどこにあるか?」ということだ。そう、原点を設定しないと、スタート地点が分からないのである。
原点出しをするには、コントロールボードとサーボモーターを接続しなくてはならない。さらにコントロールボードにはバッテリ、そしてPCを接続する。コントロールボードとPCの接続には、付属のシリアルUSBアダプタとシリアル延長ケーブルを使用する。まずはPCのUSBポートにシリアルUSBアダプタを接続し、付属のメディアからドライバソフトをセットアップする。さらに付属メディアからモーション作成ソフトウェア「Heart To Heart3」をPCの任意の場所にコピーし(「KHR-2HV」というフォルダを丸ごとコピーすればいい)、Heart To Heart3を起動する。
この時、重要なのがセットアップして利用できる状態になったシリアルUSBアダプタが、「何番のCOMポートを使用しているか?」だ。使用しているCOMポートの番号は、「デバイスマネージャ」で調べることができる。起動したHeart To Heart3でこのCOMポートを指定し、さらに「SYNC(シンクロスイッチ)」にチェックを入れる。このスイッチをチェックすると、Heart To Heart3の操作でリアルタイムにサーボモーターを動作させることができる。
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PCとKHR-2HVのコントロールボード、RCB-3Jを接続するため、シリアルUSBアダプタとシリアル延長ケーブルを用意する
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アダプタと延長ケーブルを接続する。コネクタの刺さる向きは決まっているので、無理をしないように注意
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付属のメディアをPCの光学ドライブにセットする。シリアルUSBアダプタのドライバソフトをセットアップするためだ
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付属メディアの内容。「Adobe」はAcrobatReaderなどが含まれているものなので、必要なければコピーしなくていい。重要なのは「KHR-2HV」と「USB」。「USB」の中にシリアルUSBアダプタのドライバソフトが入っている
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シリアルUSBアダプタをPCのUSBポートに接続する。すると「新しいハードウェアの検索ウィザード」が立ち上がる
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シリアルUSBアダプタを接続し、それが初回の場合はウィザードが起動する
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「特定の場所」からインストールするので、「一覧……」を選んで次に進む
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「USB」フォルダ内の「KO_Driver」フォルダを選択し、次へ進む
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ハードウェアインストールでは警告メッセージが表示される。そのまま続行する。これでドライバのインストールは完了だが、同じ内容の作業をもう1度繰り返す
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システムのプロパティから「デバイスマネージャ」を起動、「ポート(COMとLPT)」を開き、COMポートの番号を調べる。画面のサンプルでは「COM4」となっているのが分かる
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付属メディアの「KHR-2HV」フォルダを丸ごとPCにコピーし、「Software」フォルダを開く。すると「HTHJ」という、Heart To Heart3のアイコンが見つかる。これをダブルクリックして起動
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デバイスマネージャで調べたCOMポートの番号を設定する
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さらにCOMポート設定の左にある「SYNC」をチェックする。これでソフト側の準備は出来た
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コントロールボード、コントロールユニットの方は、あらかじめ充電してあったバッテリを接続する。電源スイッチは切った状態にしておき、ボードの「高速シリアルポート」に、シリアルUSBアダプタから伸びるケーブルを接続する。なお、ボードの電源がオンになっていると、緑色のLEDが光っているので容易に判別できる。また、ケーブルを高速シリアルポートに接続する際には「黒いライン」が、ボードの外側に向かうようにする。高速シリアルポートは、ほかのポートと同じ形状なので、場所を間違えないように十分注意して欲しい。
あとは原点を設定したサーボモーターを、コントロールボードの「CH1」、すなわちチャンネル1に接続する。この際、やはりサーボリードは黒いラインが外側に向くよう接続する。これを間違えるとケーブルが焼けたり、最悪の場合は基板が破損してしまうので十分注意する。
サーボモーターを接続したら、コントロールボードの電源を入れ、さらにPC上のHeart To Heart3を操作する。「ポジション設定」の「POS」ボタンを選んで、データシート上でクリック、表示された「POS1」をダブルクリックする。表示されたウィンドウのCH1を、「SERVO」に設定する。するとサーボモーターの軸が少し回転したり、あるいはサーボモーターから「チリチリ」という動作している音が聞こえるはずだ(音はしない場合もある。原点が最初からほぼ出ている場合は、動きもしないし、音もほとんど聞こえない)。
ここで試しに、CH1のスライドバーを左右に動かしてみよう。するとサーボモーターの軸が、バーの移動に合わせて回転するはずだ。この動きを元に、ロボットが動作するのである。もちろんここでは原点を設定するので、スライドバーを中立、バーの左に表示されている数値が「0」になるようにする。その状態でサーボホーン(円盤状のパーツ)や、アッパーアームを取り付ける。取り付ける際には出来る限り、サーボモーターとの平行を出す(ネジの締め付けなどは後で行なう)。原点の設定が終わったら、コントロールボードの電源を切って、サーボモーターを取り外す。
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バッテリをスイッチ経由で接続、さらにシリアルUSBアダプタから伸びるケーブルをコントロールボードの「高速シリアルポート」へ接続する
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黒いラインがコントロールボードの外側に向くよう接続する。これはほかのケーブルの場合も同じである
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サーボモーターをコントロールボードのCH1に接続する。写真では分かりやすいように、サーボモーターにアッパーアームを取り付けてある
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サーボモーターのケーブルは、黒いラインが外に向くよう接続する
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「POS」ボタンを選択し、ウィンドウ下部の白い部分でクリックする。すると「POS1」というアイコンが表示される
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「POS1」をダブルクリックし、CH1のバー部分を右クリックして、表示されたメニューから「SERVO」を選択する
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CH1がスライドバーになった途端、コントロールボードの電源が入っていれば、CH1に接続されたサーボモーターが反応するはずだ(反応しない場合は「SYNC」のチェック、そしてコントロールボードの電源を確認する)
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スライドバーを「0」にして、原点を出してからアッパーアームやサーボホーンを取り付ける。微妙にずれてしまう場合もあるが、気にする必要はない。微妙なズレは、後から設定で修正できるからだ
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試しにスライドバーを移動させてみる。その移動に合わせて、サーボモーターの軸が回転するはずだ
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このサーボモーターの動きが、フレームを動かし、ロボットの動作になるのである
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● せっせ、せっせと原点設定
ここからはそれぞれのサーボモーターに、原点を設定しつつ、組み立て作業を行なう。ちなみにそれぞれのサーボモーターを、決まったチャンネルに接続する必要はない。CH1を使い回して、原点を設定してやればいい。また、原点が「0」以外になるのは、CH13とCH19になるサーボモーターのみ。具体的にはレッグユニットの「膝」にあたるサーボモーター2個だ。CH13が「-90」、CH19が「90」となるのだが、もちろんこの原点出しもコントロールボードのCH1に接続して行なえばいい。
膝以外のサーボモーターは全て「0」設定である。そうなると膝以外の設定を、一気にやってしまいたくなるのだが、それは混乱の元になってしまうことが多い。やはり組み立てを進めつつ、小まめに原点出しをした方がいい。なお、組み立ての最終段階、アッパーアームなどの固定作業は次回、じっくり行なう。というかそろそろ、KHR-2HVの組み立てを終わらせて、完成させたいのだけど……。いずれにしても、あとひと頑張り! 気を抜かないで行こう!
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このサーボモーターは、アッパーアームを取り付けるタイプ。原点出しをしてから、アッパーアームを軸に差し込む
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アッパーアームはサーボモーターのケースと平行にするのが基本だが、どうしても微妙に角度がついてしまう場合もある。微妙な角度は後から修正できるので、気にしなくていい
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「立ったぞ、高橋! オレのKHR-2HVが立ったぞ!」
-KHR-2HVを組み立てた友人が午前3時に、熟睡中の筆者にかけてきた電話-
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・ 高橋敏也の「KHR-2HV“超”初心者入門」 -Mission03- 「KHR-2HV、怒濤の組み立て編、パート1」(2008/10/24)
2008/11/04 18:39
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