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産総研、女性型ヒューマノイドロボット「HRP-4C」を発表
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 3月16日、独立行政法人産業技術総合研究所(産総研)知能システム研究部門ヒューマノイド研究グループは女性型ヒューマノイドロボット「HRP-4C」を開発したと発表し、記者会見とデモンストレーションを行なった。産総研では「サイバネティックヒューマン」と呼んでいる。

 女性がメタリックなスーツを着たような姿かたちの「HRP-4C」は産総研が中心となって開発してきた研究開発プラットフォーム用のヒューマノイドロボット「HRP」シリーズの最新型。身長158cm、体重43kg(バッテリ含む)。日本人青年女性の平均値を参考にして、人間に近い外観を実現した。自由度は42。内訳は身体部30(首3、腕6×2、腰3、脚6×2)、顔8、手2×2。バッテリはニッケル水素で腰部分に搭載している。連続稼動時間は20分を想定。全身動作生成用にIntel Pentium M 1.6GHz。頭部には音声認識用コンピュータとしてVIA C7 1GHzも内蔵。そのほか現状では姿勢センサー×1、6軸力センサー×2を搭載している。

 歩行動作や全身動作はモーションキャプチャーで計測した人間の歩行動作や全身動作を参考にして、人間に近い動作を作成した。顔はシリコンでできており、産総研の女性職員5名の平均顔を基本にして、株式会社ココロが作成した。


HRP-4C。身長158cm、体重43kg 側面。今回は膝を曲げた歩行で登場 背面

【動画】HRP-4C登場 【動画】HRP-4C登場(側面から) 【動画】方向転換

【動画】方向転換をよりアップで 【動画】音声認識モードのデモ 【動画】表情をアップで

【動画】再び方向転換して退場 【動画】方向転換 退場していくHRP-4C

 会見ではまず知能システム研究部門部門長の平井成興氏が「すごいものを作ったと自分たちでも思っている」と述べて始まり、続けて産総研の理事・産業技術アーキテクトの伊藤順司氏は、3年間かけてきた産総研内部のUCROAプロジェクトを振り返り「ロボットはまだ産業になっていない。現在のロボットはハードウェアにもソフトウェアにも互換性がなく、開発コストもかかるし開発者が限定されてしまう。そこでRTミドルウェアやハードウェアを標準化するプロジェクトを推進している。今回のロボットがこのような外見をしているのは人目を惹くため。機械的なイメージから人間的イメージに変えた。これを一つの手段として産業化を進めていきたい」と述べた。


産総研知能システム研究部門部門長 平井成興氏 産総研理事・産業技術アーキテクト 伊藤順司氏

 その後、知能システム研究部門・ヒューマノイド研究グループ・研究グループ長の梶田秀司氏がロボットのプレゼンテーションを行なった。梶田氏はまず産総研のUCROA(User Centered Robot Open Architecture)プロジェクトについて解説した(詳細は本誌過去記事を参照)。UCROAプロジェクトでは3種類の実用化指向ロボットプロトタイプを開発している。物流支援、対人サービス、そして今回のサイバネティックヒューマンだ。これら3種は全く異なったロボットに見えるが、要素技術は共通化されており、「RTミドルウェア」で統合されている。さらにこれらを開放することで、多様な企業が用途ごとにロボットを開発・生産できるフレームワークを確立することを目指す。今年度がプロジェクトの最終年度になる。

 「サイバネティックヒューマン」とは今回のプロジェクトで作った造語。産総研では人間に近い外観・形態を持ち、人間に近い歩行や動作を行ない、音声認識や音声合成を用いて人間とのインタラクションを行なうロボットだとしており、エンターテイメント、機器や住宅評価における人間シミュレータ、人間型の計測機器、人間活動のアシストを応用分野として想定している。


産総研 知能システム研究部門・ヒューマノイド研究グループ・研究グループ長 梶田秀司氏 UCROA UCROAのポイント

 産総研はこれまでにHRP-2プロトタイプ(2002)、HRP-2(2002)、HRP-3プロトタイプ(2005)、HRP-3(2007)を開発してきた。これらのプロジェクトでは外部の研究資金のサポートを受けてきたが、今回の「HRP-4C」(2009)は、産総研内部のプロジェクトであるUCROAのもとで開発された。

 「HRP-4C」のCはCybernetic HumanのCである。まず人間に近い外観のロボットを作る上で、ファッションショー等への応用を想定し、女性型デザインを選択した。データは、産総研デジタルヒューマン研究センターが保守をしている人体寸法データベースを参考にした。それによれば19歳〜29歳女性の平均値は身長158.6cm、体重53.5kg。これと比べるとHRP-2は身長154cm、体重58kg。HRP-2はずんぐりした足首があるが、実際の人間は全体的にほっそりしている。

 このような人体寸法を実現するために、省スペース化に適したコンピュータシステムとしてPCI-104バスを採用。モーター駆動には「HRP-3」用に開発された分散型サーボドライブを、顔や手首、ハンド部には小型の多軸分散型サーボドライブを採用した。ハンド部には、大きさを人間サイズとするために、人差し指から小指までが1個のモータで4本同時に屈曲する構造を採用した。親指は独立して動く。ハンド部の詳細設計は株式会社ココロが担当している。頭部には人間サイズの頭蓋内に音声認識システムなどが収まるように構成されている。


HRP-4Cの頭部とハンド部を除く骨格構造。きわめてほっそりしている。足首部分は骨格だけ見るとほぼ半分に近い大きさを達成 左からHRP-2、HRP-3、HRP-4C

頭部の構造 ハンドの構造

 ロボットのアーキテクチャは今後公開される予定。骨格部分の基本形状データと物理パラメータ、関節軸配置・関節軸方向、リンクごとの重心・慣性モーメント情報、駆動系情報(トルク変換係数、等価慣性等)が記述されたデータファイルを現在、公開準備中である。これを用いることで、ボディ本体のみだが、動力学シミュレータ「OpenHRP3」を使ったシミュレーションが可能になるという。

 動作生成に関しては、まずファッションモデルの歩行データをモーションキャプチャで取得した。そこから人間に近く、ロボットに可能な動作パターンを生成するアルゴリズムを開発し、生成された動作はOpenHRP3で動作評価を行なった。動作をHRP-4Cの関節構造を考慮したものに変換、さらに動的バランスを考慮した動作に変換することで、人間らしい動きをロボットにさせることに成功したという。

 梶田氏はシミュレーションとロボット実機によるターン動作をビデオで示した。ファッションモデルの動作にもともと含まれていた手のゆれもロボットで再現することで、従来よりリアルなロボットの動作が実現できたという。

 HRP-4Cの頭部の音声認識エンジンには、IPAコンソーシアムによる「Julian」が用いられている。これを頭部に搭載されたコンピュータで実行する。そして音声認識結果と全身動作の制御をRTミドルウェアによって接続することで、音声認識による動作を実行している。将来的には視覚処理モジュールなども搭載し、RTミドルウェアを介して機能拡張を行なっていく。


アーキテクチャは公開予定 【動画】生成された歩行パターン 最終的なシステム構成イメージ。現在は視覚処理モジュールなどは搭載されていない

 「人間に近い形状を追求しつつ、気持ち悪くないデザインを追及した」という外観デザインにおいては、2種類のデザインを検討した。極力人間に近づけるものと、ロボットの胴体に首を載せるドール系のデザインである。前者ではリアルさを追求しても不気味な印象を与えてしまい、後者ではどうしてもおもちゃ的な印象を与えてしまう。そこで産総研ではリアル系とドール系の折衷案を採用した。メタリックなスーツはテクノロジーを強調し、違和感の解消を実現できたとしている。

 なお頭部の顔については、人間そのままではなく、鼻はきれいに対称で小さく、目はやや大きくなっており、人形っぽいデザインになっている。実際にデザインを行なった株式会社ココロ企画部の島田康氏によれば、イメージは「和」の人形だという。産総研側から送られてきたのはのっぺりとした顔の平面画像だけだったため、そこからまず耳の位置などを考えてスキンヘッドを起こし、顔のパーツのアウトラインを決めていったという。

 ココロの「アクトロイド」は皮膚のしわまで再現されているが、人間そっくりを目指すと逆に見る側は、人間と違う部分を探してしまう。かといって人間と離れすぎると今回のコンセプトとはずれてしまうため、そのあたりのバランスを考えながらデザインしていったという。

 ボディから下のカラーリングやスタイリングも島田氏が行なった。実際には四角い箱のような形状をそのように感じさせず、細く見えるようなツートーンカラーが施されている。また、研究者たちにも手入れがしやすいものになっているそうだ。


検討されたデザインの例 完成したHRP-4C スペック

頭部 横顔。鼻骨のふくらみなどはなく、人形的な顔になっていることが分かる 頭部を上から見下ろす

顔を正面から 顔のアップ。電源オフの状態のため口は少し開きぎみ

眼球のアップ 瞳は敢えて人間とは異なる放射線状の模様が刻まれた意匠となっている

HRP-4Cを開発したヒューマノイド研究グループ
 なおHRP-4Cは3月23日に東京ミッドタウンにて開幕する第8回「東京発日本ファッション・ウィーク」に出演予定となっている。愛称はまだない。開発費用は2億円程度、1体あたりの販売価格は素のボディのみで2,000万円程度を目指したいという。

 今後はより人間に近い歩行・動作生成、安定化技術の開発を行なっていく。梶田氏は今後について、腰のロール軸を使うことで、今後はより安定で大股な人間に近い歩行を目指し、また不整地歩行も大いにやっていきたいが、モーターの出力が小さくなっているため、不整地突破はできるだろうが、大きな段差を乗り越えることは難しいだろうと展望を述べた。また比留川氏は「ファッション業界にはロボットが好きな人が多い。演出によっては面白いショーになるのではないかと考えている人もいる」と語った。エンターテイメント分野に向けたコンテンツ開発支援技術の研究開発も実施する予定があるという。


HRP-4Cの上半身 ボディ側面。腕は少し人間より長いことがわかる バストライン

下から見上げる 背面胴体部分 ヒップライン

首部分は少し太め 2自由度の手 人間の手と比べると大きい

すらっとした脚 脚部付け根部分 膝裏部分

足首部分の機構は特許出願中のため詳細は非公開 記者の靴(27cm)と比較してみた

「驚き」の表情とポーズ 「怒り」の表情とポーズ

「HRP-4C」表情集



URL
  産業技術総合研究所
  http://www.aist.go.jp/
  ニュースリリース
  http://www.aist.go.jp/aist_j/press_release/pr2009/pr20090316/pr20090316.html

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( 森山和道 )
2009/03/16 23:33

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