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働く人間型ロボット「HRP-3 Promet Mk-II」発表

〜屋外現場でナット締め

 6月20日、川田工業株式会社、独立行政法人産業技術総合研究所(産総研)、川崎重工業株式会社は、防塵・防滴機能を備え、実環境で働く人間型ロボット「HRP-3 Promet Mk-II」を開発したと発表し、川田工業のハンガーにてデモを行なった。

 「HRP-3」は経済産業省の技術開発プロジェクト「人間協調・共存型ロボットシステム(Humanoid Robotics Project、HRP)」のあとを受け、NEDO技術開発機構による「基盤技術研究促進事業(基盤促)」の一環として開発されたロボット。人間型ロボットが実際の環境で働くために必要な基盤技術の開発を行なうためのロボットだ。2005年9月には、プロトタイプ「HRP-3Pを発表していた」。

 今回発表された「HRP-3」は、3本の指を持ったハンドと手首の回転自由度を付けて作業性を向上させ、HRP-2の外装デザインを行なったデザイナー・出淵裕氏による外装をつけたもの。名前も「Promet Mk-II(プロメテ・マークツー)」と、2002年に発表された「HRP-2 Promet」の流れを汲むものになっている。また、中身はHRP-3Pと比べてもまったく別物になっているという。

 HRP-3の基本スペックは、身長160cm、体重68kg(バッテリ含む)。関節自由度は42(首2、腰2、腕7×2、脚6×2、ハンド6×2)。手首部分に1自由度、そして5自由度のハンドと合計6自由度が追加され、HRP-2に比べて12自由度増えた。これにより、複雑な手先作業に対応することが可能になった。ハンドの指は3本で、電動ドリルを把持できるようになった。


HRP-3。身長160cm、体重68kg バストショット。出淵氏によるデザイン画をベースに3DCADデータを起こし作成した アオリで見たところ

背面のバックパックにはロゴがあしらわれている 5台のカメラとレーザー測域センサーを内蔵した頭部側面。いかにも研究用らしく前後でパカッと分かれるようになっているようだ 全部で6自由度となった3本指のハンド

ひざ部分。関節部分は排水と廃熱の工夫がこらされている 遠隔操縦コクピット

 大きな特徴は雨天の屋外での運用を視野に入れていることで、関節軸部や伝送実装部分には1時間あたり100mmの非常に強い雨にも耐えられる防塵・防滴機能を備えている。同時に、ロボットからの廃熱を促す機構を装備している。また、滑らかな歩容生成と滑り検出技術とそのフィードバックによって、非常に滑りやすい氷上を車で走行するときとほぼ同じ状況に相当する摩擦係数0.1程度の路面での歩行も可能な制御技術を持っている。

 また歩行時の制御技術であるZMP概念を支持面が同一平面にない場合にも拡張した「一般化ZMP」手法により、両足だけではなく腕も添えて体重を支えつつ、もう片方の腕で作業を行なうことも可能だ。ロボット全体の動力学的なバランスを保つ「脚腕協調制御技術」によって、腕と足を併用した作業も行なえる。これらの技術を組み合わせることによって、HRP-3は、ロボットの立ち位置から離れた場所にある物体も、腕で体重を支えて操作できる。

 アクチュエータには歩行に適した高効率ACモーターを新規に開発している。バッテリはニッケル水素(48V)、駆動時間を従来の60分から122分にまで伸ばしている(前進、旋回動作を繰り返し実施した場合)。

 頭部には制御用距離認識3眼ステレオカメラシステムと、遠隔操作用2眼カメラ、合計5台のカメラを内蔵している。手先の作業性を考慮し、首軸の作動範囲も拡張されている。またレーザ式測域センサをロボットの環境認識用に同じく頭部に搭載している。

 制御システムは、耐ノイズ性や拡張性に優れる分散制御と、省電力に優れる集中制御のハイブリッド型。下半身、ハンド、姿勢センサーなどはおのおの分散制御されており、CANで運動系のホストCPUにつながっている。いっぽう首や腕など上半身は集中制御となっている。

 川崎重工業は、簡単な指令で多自由度の人間型ロボットを動かすための全身操作技術と遠隔操作コクピットの開発を行なった。ロボットは上述の「脚腕協調制御技術」によって全身のバランスを自律でとりながら、操縦者の命令に従って動く。たとえば、物体を取るときは、手先の目標だけ指示すれば、腕や足の各関節の動きはロボットが自動的に生成して適切な姿勢を取る。同社らはこれを「自律・遠隔ハイブリッド型全身動作制御技術」と呼んでいる。


HRPシステム概念図そのほか 3本指となり高機能化したハンド

脚腕協調制御技術 遠隔操作技術

デモ

 当日は、工事現場での支援作業を想定したデモンストレーションが行なわれた。遠隔操作されたHRP-3は電動工具を持ち、川田工業の業務分野のひとつである橋脚を模した鉄骨のしたでボルトとナットを使った工事作業を行なったあと、滑りやすい路面として設定されたサンドブラストの砂場を歩行、最後にシャワーを浴びてHRP-3ならではの防水性能を見せた。


【動画】きれいな歩行でHRP-3が登場 【動画】旋回して作業場所である橋脚鉄骨下まで歩く 【動画】ドライバーを把持する

【動画】足元に障害物があってすぐ間近まで寄れないという設定のため、片腕をついてバランスをとりながら目標に電動ドリルを近づける 【動画】ナットに電動ドライバーをはめる 【動画】別角度から、片手で体重を支え、ドライバー操作を行なう様子

【動画】同じく別角度から。人差し指で電動ドライバーのトリガーを操作し、ナットをはめる 【動画】再び上体を起こし、もとの姿勢に戻る。ドライバーを置くが失敗 【動画】滑りやすい路面をそろそろと歩行。見た目ではほとんどわからないが、滑りをフィードバックして滑らかな歩容を生成しているという

【動画】防水性能を示すデモ。激しい雨のなかでも行動可能 【動画】マスターアームを使った操作の様子。練習のときには一度も失敗しなかったそうだが、今回は2回失敗してしまった 【動画】操作の様子。画角がかなり狭いこと、カメラからの伝送がうまくいかず画面がときどき荒れる。大人数であったことと、カメラのフラッシュの影響らしい

電動ドライバーを把持した右手 「働くロボット」の後姿 大勢の報道陣が見守った

今後の課題は基盤技術の安定化とコストダウン

 川田工業代表取締役・川田忠裕氏と同社執行役員機械システム事業部長の五十棲隆勝氏、そして機械システム事業部・ロボティックス部・赤池一彦氏は、1999年度以降の東大の「H6」、「H7」から始まる川田工業のロボット開発の歴史について述べた。その後同社はHRPシリーズに関わるようになり、ヒューマノイドロボットの研究開発を行なってきた。

 HRP-3を開発したNEDO技術開発機構の基盤技術研究促進事業「実環境で働く人間型ロボット基盤技術の研究開発」は2007年3月末で終了している。今後は、これまでに蓄積したノウハウを活かしながら2年間程度の実用化研究を行ない、基盤技術の安定化とコストダウンを目指す。具体的な目標価格は「HRP-2」が3,800万円だったのに対して、1,500万円程度を目指すという。

 用途は研究教育用のほか、エンタテインメント用途、そのほか。また、人間型ロボットにこだわらず、セル生産ロボット、人間支援型ロボットの開発を、2010年度を目途に進めていくという。


川田工業代表取締役・川田忠裕氏。川田社長は「MkII」のことを「マー君」と呼んでいるらしい 川田工業執行役員機械システム事業部長・五十棲隆勝氏

機械システム事業部・ロボティックス部・赤池一彦氏 左から、HRP-2、HRP-3、HRP-3Pの3ショット

URL
  川田工業
  http://www.kawada.co.jp/
  ニュースリリース
  http://www.kawada.co.jp/mechs/mk-II/index.html
  独立行政法人産業技術総合研究所
  http://www.aist.go.jp/
  ニュースリリース
  http://www.aist.go.jp/aist_j/press_release/pr2007/pr20070621/pr20070621.html
  川崎重工業
  http://www.khi.co.jp/
  【2005年9月9日】防塵防滴、スリップ対応でタフになった人型ロボット「HRP-3P」(PC)
  http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2005/0909/hrp3.htm
  【2003年2月27日】産総研、「働く人間型ロボット」の最終成果を発表(PC)
  http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2003/0227/hrp.htm

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産総研、等身大ヒューマノイド用多指ハンドを開発(2006/09/13)


( 森山和道 )
2007/06/21 21:39

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