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ロボット化する建設機械の可能性
〜本当の屋外現場で活躍する「ロボット」たち


社団法人土木学会 建設用ロボット委員会委員長 神崎正氏
 5月24日、社団法人土木学会建設用ロボット委員会主催による、第24回建設用ロボットに関する技術講習会が土木学会土木会館にて開催された。テーマは「災害復旧に役立つ建設用ロボットを目指して」−最新のロボット技術の動向とその可能性について−。

 建設用ロボット委員会は1985年に発足し、建設分野における自動化・ロボット化を推進する活動を行なっている。建設用ロボット委員会委員長の神崎正氏は、「自動化、システム化に加えて情報化というキーワードが最近は加わっている」と状況を概説し、「技術を生かした会社がこれからは生き残る」と述べた。


東京工業大学大学院 機械宇宙システム専攻教授 広瀬茂男氏
 始めに東京工業大学大学院 機械宇宙システム専攻教授の広瀬茂男氏から「東工大での屋外作業用ロボット開発の現状と未来」と題した基調講演が行なわれた。ヘビロボット、歩行ロボット、クローラ型ロボット、そして地雷探査ロボット研究の現状について講演した。広瀬氏は一貫してロボット技術を屋外移動体に活用する方向で研究を進めている。

 特に有名なのがヘビ型ロボットである。蛇は胴体が足になったり巻きついたり、さまざまな運動を行なえる。広瀬氏は長年ヘビ型ロボットの研究を行ない、蛇行で移動したり、ガラガラヘビのようにサイドワインディングで移動したり、触覚を持たせてパイプのような狭い場所でも移動できるロボットを製作してきた。2005年の「愛・地球博(愛知万博)」では最新型の水陸両用ロボットを披露して注目を浴びた。シールさえしておけば、水中のほうがかえって楽に動けるという。

 またレスキューロボット「蒼龍」を開発してきた。蒼龍は3連のクローラからなる移動ロボットである。はじめは楔形だったが実際に使うとスタックしてしまうことがあったので、いまは頭から尻の部分まで同じ太さになっている。クローラ部分など部品レベルからメーカーと開発を行なった。現在は床下点検ロボットとして民生用にも発展させようとしている。普段は日常の道具として使い、いざというときにはレスキュー用として使う。そんなシナリオだ。蒼龍5号は全体がシールされている。災害現場に多い繊維性のごみに耐えるためだ。出来合いの部品だけではどうしても限界があるという。


水陸両用ヘビ型ロボット 蒼龍5

 歩行ロボットは山歩きしていたときに見つけたザトウグモが研究のきっかけだったという。最近は建設機械のなかにも重量を支えるための補助脚がついているものがあるが、もし動けば機動性があがるのではないかと考えた。もっとも歩行は効率がよくないので、地形適応することで車輪では移動できない場所で活躍できないと意味はない。

 歩行ロボットは目的さえあれば役に立つという。最近広瀬氏らが取り組んでいるのがる法面(のりめん)作業用四足歩行ロボット「TITAN XI」だ。全重量7トンでアンカーロックボルト工法を実施する大昌建設と共同で開発したもので、測量技術を応用した自己位置同定や、構造物をよける歩容生成がポイントの大型ロボット。現在実験中だ。広瀬氏は「目的がこれだというものがなければ、歩行ロボットは役に立たない」と何度も強調した。

 広瀬氏はおよそ20年前に高岡製作所と共同で斜面も登れるキャリアーを作っていたが、その原理を応用したのがレスキューロボットのヘリオスである。寒冷地での実験も行なっているという。

 最後に、バギー車を改造しステレオビジョンや金属探知機などを組み込んだロボットアーム搭載の地雷除去ロボットシステム「GRYPHON」についてふれ、カンボジアでの実験の様子を紹介した。大型機械では入れない場所で人間と共同で地雷除去作業を行なうものだ。現地まで人が1人で乗って移動できるというのも実用面では重要なポイントだという。

 現場できちんと性能を出し使えるものを作ろうとすると、「研究としてはあまり面白くないこと」もやらなければならないという。またコンポーネントレベルからいいものを作れば、なんとか使えるものができるのではないかと述べた。

 なお広瀬教授の講演・インタビューは本誌でもこれまで何度かお届けしているので関連記事を併せてご覧頂きたい。


大型ロボット「TITAN XI」 測量技術を応用した自己位置同定法を用いる アンカーロックボルト工法を実施するためのロボット

【動画】TITAN XIの動作の様子 バギー改造の地雷除去ロボットシステム「GRYPHON」

 続いて社団法人土木学会建設用ロボット委員会土木小委員会から、4人の講演者が「建設ロボットによる災害対応事例とその技術」として、さまざまな自然災害現場などのなかで活躍する土木系ロボットに関する講演を行なった。

 建設現場でロボット技術が適応されている事例は言うまでもなく「無人化施工」である。無人化施工とは人間が立ち入ることができない危険な作業現場において遠隔操作可能な建設機械を使用し、作業を行なうことである。応急対策、復旧、復興工事において採用されている。


株式会社フジタ土木本部土木技術統括部 技術企画部 次長・藤岡晃氏 無人化施工の技術変遷

 既存のバックホウやダンプを工場で無人化して持ってくるといったことは行なわれているが、台数が少なく非常に大型のものが多い。そのため調達や運搬に時間がかかり、緊急時の初動には問題がある。

 いっぽう「ロボQ」は部品は全てユニットで構成されており、簡単に分解組み立てができるように工夫されている。2、3時間あればすぐにバックホウに取り付けができ、遠隔操縦できるようになるという。油圧ショベル本体の改造はまったく必要ない。

 最初に出動したのは2003年で、大分県別府市だったという。最近は沖縄県中城で水路掘削を行なった。また無線LANを使い2台のロボットを同時に活用して掘削土砂を運搬した。藤岡氏は、そのほか護岸復旧工事や、砂防ダム施工などに使われている事例を示した。

 ロボQは「今年のロボット大賞2006」など受賞歴も多い。九州には6台、四国に2台、中国地方に1台など、西日本を中心に、徐々に現場への普及も始まっている。最近はブルドーザ用「ブルQ」、不整地運搬用「クロQ」などにも応用展開しているという。

 また災害復旧以外にも、過酷な状況で行なわれる一般建設現場への適用も行なわれ始めている。今後は、環境条件に問題がある焼却場などの解体・撤去、廃棄物処分場の整地作業、そして高齢者等の職場復帰支援などにも展開していく予定だという。


遠隔操縦用ロボット「ロボQ」 建機の座席部分に設置して使う 各ユニットから構成され分解・運搬・組み立てが容易

鹿島建設株式会社 機械部技術1グループ課長 青野隆氏
 鹿島建設株式会社機械部技術1グループ課長の青野隆氏は「官・民が一体となり実施した無人化施工の事例」として講演した。2000年3月、有珠山での噴火がおき、泥流、土石流などの二次災害が懸念された。そこで無人化施工が検討された。当時は火山灰で流路工が埋まってしまい、それを掘削する必要があったが、現場にすぐにアクセスできるわけではない。まず現場にアクセスするために障害物撤去、舗装撤去、埋塞土掘削などもろもろの工事が必要だった。

 1993年の雲仙普賢岳の事例では遠距離操作においては中継方式が用いられたが有珠では地形が複雑なため直接方式をとる必要があった。そのため特別に認可を受け、2Wの高出力無線機を使って直接無線操縦する方式がとられた。

 また中越地震においても北陸地方整備局北陸技術事務所保有の遠隔操作仕様のバックホウを使った無人化施工が行なわれた。官保有の遠隔操縦可能な建設機械があれば迅速な搬入が可能であり、施工経験豊富な技術者による計画支援などがあれば官民一体となった迅速な施工が可能であると述べた。


青木あすなろ建設株式会社 技術本部技術部担当課長 猪原幸司氏
 青木あすなろ建設株式会社の技術本部技術部担当課長の猪原幸司氏は「民の提案力をいかした事例」と題して、2006年5月に発生した岐阜県揖斐郡揖斐川町での地すべりを例に講演を行なった。地すべりの応急対策は、1)河道掘削、2)根固めブロック設置、3)応急排水ボーリング、4)応急排土という手順で行なわれるが、このとき無人施工で行なわれたのは応急排土だった。斜面上の不安定土砂をどける作業だ。

 緊急時無人化施工においては、被災地の状況把握、他の応急工事や最終的な復旧工事との調整が重要だという。また作業環境は脆弱な走行足場、上部からの崩落の危険性があり、また、進入路確保のためには有人の助けが必要にある。施工そのものには有人・無人双方の経験が必要であるとまとめた。


独立行政法人土木研究所つくば中央研究所 技術推進本部先端技術チーム主席研究員 山元弘氏
 独立行政法人土木研究所つくば中央研究所 技術推進本部先端技術チーム主席研究員の山元弘氏は「今後の無人化施工を含む技術開発の展望」と題して、土木研究所の取り組みや国土交通省の動きについて広く紹介した。

 現在、国土交通省では、平成15年度から19年度までの5カ年計画で「ロボット等によるIT施工システムの開発」を実施している。建設業は、高齢化が進み、なおかつIT導入も遅れている。何より建設業は事故が多く、労働者1万人あたり他の業種の3.6倍の死亡者、2.5倍の怪我人が出ている。うち、重機の関連する事故が事故全体の1/4を占める。そこにRT、ITを活用し、建設CALS/EC(生産・調達・運用支援統合情報システム、紙でやりとりされていた図面等を電子化して統合して扱うシステム)と連携することで、建設生産システムをより効率のよいものへと再構築していくことが目標だ。

 なおこのプロジェクトは連携施策群「次世代ロボット」で実施される応用研究開発の一つ。屋外作業における位置特定基盤技術が応用されている。設計データ、地形データなど3次元情報の空間データの形で記述し、それに対応した施工支援や機械操作支援技術を確立することを目指している。

 これまでに自律施工に必要な環境認識、周囲環境と建機の座標変換処理技術、操作に必要な3次元情報提示、ロボット建機制御技術などを開発しているという。また、ロボットの位置、姿勢、方位を計測する技術、データ仕様の共通化などを行なっているそうだ。データは将来的には土質データなども利用した無人化施工、ロボット施工を行なえる体制を整えていくという。

 また、災害時の現場に対応するための建設機械や資材をどこにどのように配備しておくかが課題だと述べた。


ロボット等によるIT施工システムの開発 成果の一つ:周辺環境の認識 操作に必要な3次元情報提示、ロボット建機制御技術なども開発している

IT施工システムの構成図 データ交換標準の国際標準と国内標準の関係 土質データなどの利用も可能にするのが将来像

 なお現在の無人化機械では、コストや信頼性の問題もあり、センサーはあまり使われていないそうだ。そもそも遠隔操縦する無人化機械といえども、実際に操作するのは普段は普通の機械を操作している熟練オペレーターである。彼らは建機の特性を体で覚えており、例えばトン数に応じて機体がどのようにずれるのか、運動するのかを最初から入れ込んで操作を行なっている。

 そこにロボット建機だからといって特別な制御やセンサーフィードバックを行なうと、逆に操作がうまく行なえなくなる。だから結局は、ロボット建機といえども、人間のところに戻ってしまう面もあるという。


トリンブル・ナビゲーション社コンストラクション事業部マシンコントロール製品三次元セグメントマネージャー アーサー・テーラー氏
 トリンブル・ナビゲーション社(Trimble Navigation co.,ltd)コンストラクション事業部マシンコントロール製品三次元セグメントマネージャーのアーサー・テーラー(Arthur Taylor)氏は「マシンコントロールおよび最新のGPS技術」という題目で、GPSを使ったマシンコントロール技術のこれまでと現在について講演した。

 現在、マシンコントロールは世界で数万台も出荷されているという。トリンブル社は位置計測を用いたソリューションを提供する企業で、本社はカリフォルニア州サニーベールにある。グループ全体の年商はおよそ1,200億円。GPS、工学、レーザー、慣性技術などを保有している。

 1968年に農業そのほかで使うための回転式レーザーが開発された。回転レーザーを使うと高さ制御ができる。これによって、ある高さで地面を削るといったマシンコントロールが可能になった。1999年、マシンコンロトールのための3次元の制御技術が2つの会社から発表された。1つはトリンプルのGPSサイトビジョン、もうひとつはスペクトラプレシジョン社のシステムだったが、2000年に両社は合併した。

 建設機械で使うGPSの場合は、振動、ノイズなどに対する強靭さが必要とされる。もちろんそのような状況で衛星をとらえ続けなければならない。2005年、過酷なテストに耐えた商品が発売された。同社ではドーザー用、グレーダー用の3次元マシンコントールシステムなどを発売し、基盤整備などに用いられているという。たとえば曲線状の道路のカーブなどもマシンコントロールで行なうことができるそうだ。

 マシンコントロールによって無駄なく安全に作業することができるため、納期を早めたり、仕事の質を高めることができるという。たとえば、30ヘクタールの分譲地の造成において、通常の半分ほどの時間で終わらせることができたそうだ。

 1972年にマシンコントロールを売り出してからさまざまな顧客の要望にこたえ続けてきたことが、さまざまなノウハウ含め、同社製品の頑丈さに繋がっているのだという。なおGPSのボードが受ける衝撃は、リュックサックのなかに入れたときと同じ程度に抑えるようにサスペンションが組み込まれている。


回転レーザによって高さ制御ができるように GPレシーバ&アンテナ。これを建機に取り付ける

トリンブル社のシステムの利点 ゴルフコースなど広大な面積の施工も行なっている。ユーザーからのコメントも

筑波大学大学院教授 山海嘉之氏
 筑波大学大学院教授の山海嘉之氏は、「新しい建設用ロボットの可能性 ロボットスーツ『HAL (Hybrid Assistive Limb)』について」と題して講演した。医療福祉、重作業支援などがアプリケーションとして考えられているパワードスーツ「HAL」を建設現場で使うと、どのようなことが可能になるのか。

 「HAL」には随意的制御機能と、ロボット的な自律制御機能の2種類の制御機能がある。思ったとおりに動くことと、HAL自体の自律的な制御機能だ。HALは脳からの筋骨格系への指令にともなう電気信号ををキャッチして、人体よりも先に動く。それにより人間の体を自然に支える仕組みだ。また、人体の動きの情報は脳にフィードバックされている。つまり、脳からロボットを動かし、ロボットの動きによって筋肉が動き、信号がまた脳へ戻るというループができている。

 また人間の動きを「フェーズ・シークエンス」という。ある単位の連続ととらえ、それに応じて動きを生成している。1998年ごろ、自律型の3号機になってから、研究が加速し始めたという。

 現在「HAL」は、CYBERDYNE社と筑波大学の協働で研究開発が進められている。CYBERDYNEは「大学の研究成果を社会に流すパスがない」と感じた山海教授自身が設立した大学発ベンチャーだ。HALの特許は国際特許期間WIPOが2005年の重要特許として選定した。

 いまは強化型下半身バージョンを開発している。HALそのものの耐荷重を300kg程度、可搬重量100kg程度としたもので、バッテリ寿命は8時間程度としているという。雪山での登山の経験を踏まえて、ずぼっと足がはまったりしないように改良を加える予定だという。

 また全身型も改良しており、はしごや不整地歩行の実験や、稼動範囲を広げる研究を進めている。現在最新型のものでは、正座できるようになったそうだ。

 現在は、原子力プラントの解体作業用の強化防護服や、介護リハビリ目的では生体電子信号がとれない人でも歩けるように、といったプロジェクトを進めているという。実際に生後11カ月でポリオによって麻痺したあと45年間、足が動かなかった人が足を動かせるようになった。そのときの脳活動を光トポグラフィーで調べることで脳への影響も調べているという。


HALを使った50kg荷重運搬 HAL着用での不整地歩行の様子 最新型HALは正座できるようになった

原子力プラント作業用HALを開発中。この服とHALを合体させたものになるという HALのバリエーション

HAL開発体制 HALに関連した研究ジャンルは広い

日立建機株式会社 商品開発事業部 開発企画室長 生田正治氏
 日立建機株式会社 商品開発事業部 開発企画室長の生田正治氏は「建設機械のロボット化と社会貢献商品の開発」と題して、同社の地雷除去機の開発とこれからの展開について講演した。

 日立建機では危険回避、安全施工、省力・効率化、精度向上を目指し、建設機械のロボット化をねらっている。無人化するにあたっては、当然のことながら、先にニーズがあるかどうかを検討して開発にあたっている。ロボット化推進にあたって、さまざまな評価項目から考えたとき地雷除去機が最適であり、なおかつ会社のスローガンである「豊かな大地を作る」にも合致したのだという。

 生田氏は、カンボジアやアフガニスタンなど現地の状況を、生々しい写真やビデオ、統計を交えて述べた。

 現地の地雷除去員も地雷除去を手作業で行なっているため被害にあうことが多く、またアフガニスタンでは毎日16歳以下の子供のうち4人が死亡、4人が負傷している計算になるそうだ。子供は背が低いため、全身で地雷の被害を受けやすいのだという。また、地雷の色や形は子供の気を引きやすいためおもちゃと間違いやすい。それがまた悲劇を生んでいる。対人地雷は自分の家を守るため周囲に埋める人が多く、それが雨季で浮き上がって流れ、どこにいったかわからなくなり、子供たちが被害にあうことが多いのだという。

 アフガニスタンでは全土に地雷が埋設されている。生田氏らが2000年7月に初めて地雷除去機を納入したときには地雷を撤去したあとはその建機でプールを作って上げたりして子供たちとたわむれたりしていたそうだ。しかしながら同時多発テロ発生とその後の米軍による報復、そして旱魃により、再びアフガニスタンは荒廃してしまった。人の手で地雷除去をやると1,000年かかるといわれているという。

 カンボジアのような場所では地雷を除去するためには、まず木を伐採しなければならない。そのため地雷除去機兼森林伐採機というかたちで納入していたという。最終的には人間や地雷犬などによる手作業で確認することになる。

 現状、1日72人が地雷によって死亡している計算になるそうだ。そのうち9割は民間人である。このような背景から、地雷を安全に除去する機械の開発が必要だとされた。


 日立建機では1995年から開発プロジェクトを始め、カンボジアの地雷処理センターで確認を行ないながら開発していった。燃料タンクや油圧タンクの近くで地雷を爆発させる試験なども行なったという。こうして開発したのがロータリカッタ式と呼ばれる地雷除去機である。木を切ることができ、石に強く、地雷が爆発したときの高温にも耐えられるというものだ。運転席はもちろんフロントガードをつけた強化キャブとなっている。現在の地雷除去率は99.5%だという。

 いっぽうアフガンには、テロでいったん中断したが2003年には再び納入を始めた。またニカラグアにも納入している。カンボジアではいま、1ヘクタールのなかに1個だけ地雷があるといったケースが増えてきていることが課題だという。

 地雷除去機は現地の人が使うので、納入指導とアフターケアは重要なポイントとなる。アフガンのように多言語国の場合は、教育もかなりじっくり取り組む必要がある。さまざまな努力により、いま世界5カ国で52台の同社地雷処理機が使われているそうだ。

 日立建機の地雷処理機の特徴はなんといっても汎用の油圧ショベルを使っているため操作が簡単であり、地雷除去終了後にもインフラ整備に使えることだ。だが課題もまだまだ多い。今後、さらに無人化(ロボット化)で地雷処理能力の高い機械が必要だという。

 そこで開発してきたのが、従来の1.5倍〜4倍の処理能力を持つフレール型の地雷除去機である。地雷除去率は95%くらいだそうだ。また、2002年からはアフガニスタン復興支援国家プロジェクトに参加して、戦車用の大型地雷に対する対爆性能などを試験して開発を進めてきた。

 自動化においては、カメラと遠隔操作を組み合わせた無人化提案をしたが、実機では効率面で採用されなかったという。自走タイプの地雷処理機では、GPSを使ったマッピングシステムを使い、土質に応じて進行速度などを変える機能をもたせ、自動運転にする試みが進められているそうで、最終的には自動走行で地雷を処理させていきたいという。

 地雷除去機は発展途上国で使われる。そのために誰にでも簡単に運転できる機械とすることを目指しているという。また地雷原の復興支援においてもNPO法人「豊かな大地」を設立し、企業の社会的責任という意味でも取り組んでいるという。


日立建機のロボット化への取り組み さまざまな評価項目から検討した結果、地雷除去機開発へ 世界の地雷・不発弾被災者の現状

ロータリカッター式の地雷除去機の活躍の様子 同社の地雷処理機は世界5カ国で52台が納入され全てが稼働中 最新の地雷処理機のテストの様子

土質に応じた処理深さや速度調整を行なう自動化技術が開発されている GPS連動のマッピングシステム 平坦地で用いる地雷処理ロボット

千葉工業大学未来ロボット技術研究センター(fuRo)副所長 小柳栄次氏
 最後に、千葉工業大学未来ロボット技術研究センター(fuRo)副所長の小柳栄次氏が、「実用化に向けたロボット開発−レスキューロボット・住宅床下点検ロボット−」と題して講演した。技術をもって社会に貢献すること、本質的に故障しないロボットの開発に力点をおいているという。

 レスキューロボットは自然災害や人災、テロなど、大規模災害時に人命救助をするロボットだ。埋もれている人を引きずり出すことはできないので、基本的には探すことが目標だ。被災者の生存率が高い72時間(あるいは48時間)以内に、レスキュー隊員の二次災害を防止しながら動かさなければならない。

 小柳氏らのロボットは、瓦礫上を走破する能力が高い。捜索にはビデオカメラ、赤外線サーモグラフィー、マイクロフォン、炭酸ガス、アンモニアなどを検知するセンサーを用いる。操縦は基本的に遠隔操作で、ロボットに搭載されたカメラ画像を見ながら行なう。

 瓦礫の上を走れること、故障しないこと、電波、通信遅れ、ロボットの大きさ、暗闇で活動できることなどがレスキューロボットの難しさだ。リアルタイム制御と、遅れをもった人による操縦とのインターフェイスが難しい点だという。セミオートノマス(半自律)が重要になる。

 新潟県中越地震のときには下水道の15%が壊れたとされ、調査のためにパンチルトズーム機能つきのカメラを搭載した小型のロボットを動かした。通常の管内検査ロボットは瓦礫がある場所では動けないが、レスキューロボットならば移動できるからだ。サランラップとアルミテープで急ごしらえの防水処理を施したという。

 長岡で実際に動かしてみた経験から、小柳氏ら自身も、人命救助だけではなく、災害の後の復旧支援活動に役立つことがわかったという。また検査データ情報の一元化が必要であること、信頼性の高いシステムの構築の必要性、そして平常時に役立つ機能の重要性を再認識したそうだ。


 現在は、レスキュー隊員のための環境地図作成や操縦性を重視しながら、瓦礫上の走行性能を向上させている。メインカメラと俯瞰カメラを組み合わせた形の画面を見ながら操縦できるようになっており、操縦者には非常に好評だという。建機の場合はカメラは固定であることが多いが、メインカメラの視点をある程度自由に動かせることが重要だという。

 こうした知見を生かしてつくられたのが小柳氏ら製作のレスキューロボット8号機となる「ハイビスカス」である。全面クローラ型のロボットだ。超々ジュラルミンを組み接ぎしたボディ構造で、ナットは一切使っていない。ねじは絶対に緩むからだ。最近は雪のなかで動かしたりもしているという。

 レスキューロボットの仕事はどこに要救助者がいるか見つけること、そしてもうひとつはレスキュー隊員のルートを見つけることだ。そのために地図情報を作るシステムも搭載されている。

 日常用途としては床下点検を大和ハウス工業株式会社と一緒に共同開発を進めている。「アイリス」だ。何も固定してない丸いパイプを乗り越えることができるなど、住宅機材にダメージを加えることなく、移動できる点が特徴だ。労働条件の改善や顧客満足向上はもちろんだが、上述のように環境地図を作れるので、床下点検ロボットを動かすことで、住宅の定量的な評価をする「住宅診断カルテ」が作れるという。

 いまは新型床下点検ロボット「Lily」、新型レスキューロボット「Kenaf」を開発しており、まもなく公開されるそうだ。

 実用化においてはオペレータの養成、半自律化、住宅基礎部分のクラック自動検出、床下環境地図の自動作成が課題だという。またレスキューロボットにおいては「国境なきRTレスキュー部隊」を作ろうとしているという。「われわれは大学人なので、ロボットを作ることが仕事ではない。経験を通した学生を育てるのが僕らの仕事。そのような教育をしている」と述べた。


レスキューロボット「ハイビスカス」 床下点検ロボット「アイリス」

レスキューロボットの要件 雨水管のなかを探索している様子

建設用ロボット委員会 幹事長 酒向信一氏
 最後に、建設用ロボット委員会幹事長酒向信一氏が「土木関連事業は変革の時代に立っている。先進的開発投資はなかなか進まないのが現状。しかし産業界全体は非常に元気がある。ロボット関連、機械関連の人たちは熱気がある。われわれも垣根は取れてきた。常に新しい技術に挑戦していきたい。ロボットとの距離や違和感もなくなってきた。われわれも融合をはかり、技術開発に傾注できる状況になれば大いに役に立つのではないか」と閉会挨拶を述べ、会を締めた。


URL
  社団法人土木学会
  http://www.jsce.or.jp/index.html

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( 森山和道 )
2007/05/25 16:51

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