大和ハウス工業株式会社は26日、学校法人千葉工業大学、国立大学法人筑波大学らと連携し、住宅床下点検ロボット「Iris(アイリス)」の開発開始を発表。千葉工業大学キャンパス内にて記者発表を実施した。会場には、実際の住宅の床下を実大で再現した実験場が設置され、Irisの動作がデモされた。
Irisは、千葉工業大学・未来ロボット技術センター(fuRo)が開発したレスキューロボット「Hibiscus(ハイビスカス)」の基本構造を維持したまま、大幅に小型化されたロボット。本体サイズは270×400×250mm(幅×奥行き×高さ)。
4つの可動式サブクローラーと、ボディの大部分を覆ったセンタークローラーで構成され、本体上部には360度回転可能な、リアルタイム監視用カメラのほか、本体を後方から俯瞰した位置から確認しながら操作するための広角カメラも備える。走行中は本体に内蔵する高輝度LEDによって、照明を確保。また、今回は実験的に市販のハイビジョンカメラも搭載された。
Irisは、前後左右に搭載したサブクローラーを操作することで、15cm程度の段差なら乗り越えることができ、住宅の基礎部分に作られた幅50cm、高さ30cmの貫通口も自力で通り抜けられる。サブクローラーは取り外しも可能で、現場の必要に応じて、さらに長い形状のクローラーを取り付けて路面への対応能力を高めたり、完全に取り外して小型化することも簡単にできるという。
キャンパス内に設置された実験場の広さは約60平米で、床下の高さは50cmほど。内部はコンクリートの床と、土がむき出しになっているエリアが設けられている。各所に配水管など実際の住居を想定した障害が設置され、ロボットはこれらを避け、または乗り越えながら点検作業を行なう。
ロボットは床下を走行しながら、リアルタイムで映像を送信するほか、サビや水漏れ、シロアリなどの被害を確認するため、写真撮影して顧客に呈示できる。
なお、実際に人間が床下に入って確認作業をする場合に比べて、移動する速度だけを追求すれば速くすることは可能だが、今回の開発では速度よりも、いかに正確な情報を外部に伝えることができるか、ということに主眼を置いて開発しているという。
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「Iris」。fuRoのスキューロボット「Hibiscus」の機構をそのままに縮小された
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本体上部に見えるのは360度回転が可能な外部監視用のカメラ
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今回の実験では試験的に市販のハイビジョンカメラを搭載し、内部の様子を有線で外に伝えた。将来的には無線化を実現したいという
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サブクローラー。クローラー自体を取り外して、別のサイズのものに交換することも可能
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サブクローラーを閉じたところ
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サブクローラーを開いたところ
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Hibiscusの流れをくむ、クローラーで覆われたボディ。障害物を乗り越える場合などに大きな効果を発揮する
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本体サイズが小さくなったことで、狭い場所での活動が容易になった
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【動画】貫通口を通って床下に進入するIris
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【動画】貫通口を乗り越えるIris
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【動画】障害物もサブクローラーを使って器用に上る
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【動画】サブクローラーの動き
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【動画】操作画面。右の画像は、Irisの後部に搭載された広角レンズから本体を俯瞰して見たもの。周囲の様子と自機を同時に見られるため、遠隔地からでも操作がしやすい。画面左側には本体の傾きやクローラーの位置がわかる計器類がある
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千葉工大のキャンパスに設置された床下実大実験場
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千葉工業大学 未来ロボット技術研究センター(fuRo) 小柳栄次副所長
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会場でロボットの説明にあたった千葉工業大学 未来ロボット技術研究センター(fuRo)の小柳栄次副所長は、「現在は、段差を乗り越える際にサブクローラーの動作を人間がロボットに指示しながら動かしているが、将来的にはこれらをセミオート化したい」と語り、ロボットが自動的に路面の状況に合わせて体型を変え、人間は移動方向を指示するだけで簡単に操作が実現できるようにするという。
また、将来的には走行しながら床下の状況を地図化し、データを蓄積することで、数年前の状況との違いを瞬時に判断できるような研究も進めている。
小柳氏によると、大和ハウスが当初導入する予定の台数は200台前後。これらにもし、センサーを付ければレスキューロボットとしても利用可能になるという。「いざ災害が起こった場合、こうしたロボットと共に人員を投入すれば、かなりの数のレスキューロボットを優秀なオペレーターとともに災害地へ動員できる」と、その可能性を語った。
今回の開発は、経済産業省の公募事業「平成18年度サービスロボット市場創出支援事業」に応募し、採択されたことによって、同省からの支援金を受けて開始された、産学官連携プロジェクト。
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大和ハウス工業株式会社 総合技術研究所 先端技術研究グループ グループ長 片山 功氏
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会場で挨拶した大和ハウス工業株式会社 総合技術研究所 先端技術研究グループ グループ長の片山 功氏は、「弊社が住宅を販売していくなかで、顧客に長期の点検サービスも提供している。床下点検もその一つ。だが、床下は非常に狭く、人間が作業をするには、匍って移動しなければならず、肉体・精神ともに、非常に辛い仕事。現場からもこうした作業を軽減するロボットのリクエストがあった」と、ロボットの導入については、作業現場からも要求があったと説明。
また、顧客に対しては「普段見ることのできない床下の様子をリアルタイムで見ることができ、点検箇所を実際に確認してもらえる」というメリットがあるとしたほか、点検と偽って悪質な売り込みをする業者への対策にもなるのではないか、と述べた。
今後は、今年中に千葉工大の実験施設を利用し、ロボットの利便性を研究。来年度からは同社実験室において、実際の点検作業を行ないながら安全性の確認を行ない、2008年には実用化を目指すという。
■URL
大和ハウス工業
http://www.daiwahouse.co.jp/
千葉工業大学
http://www.it-chiba.ac.jp/
fuRo
http://www.furo.org/
筑波大学
http://www.tsukuba.ac.jp/
【2006月4月24日】IRS、ロボット装備レスキュー部隊「IRS-U」の想定訓練を公開(PC)
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2006/0424/irs.htm
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・ 千葉工業大学、新型レスキューロボット「Hibiscus」を発表(2006/06/05)
( 清宮信志 )
2006/10/27 00:47
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