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地中レーダー搭載バギーから小型核融合まで

〜対人地雷探知・除去技術のいま

アーム搭載バギー車両「GRYPHON」と東工大 広瀬教授
 7月4日、独立行政法人科学技術振興機構(JST)の「人道的対人地雷探知・除去技術研究開発推進事業」による「対人地雷の探知・除去を目指した試作機の発表展示会 〜クロアチア共和国での評価試験実施報告と今後の展開」が、早稲田大学国際会議場 井深大記念ホールで開催。クロアチアで実際にテストされた機器類が展示され、進捗状況報告が行なわれた。

 「対人地雷」とは、人間を対象にした地雷である。'97年、カナダのオタワで「対人地雷禁止条約(オタワ条約)」が締結され、地雷廃絶に向けて世界的な取り組みが行なわれている。オタワ条約には、日本も加入している。

 外務省ではODAの一環としてNGOと協力して対人地雷除去を進めている。経済産業省は既存技術を使った地雷除去に取り組んでいるほか、文部科学省が目標として掲げている「人道的観点からの対人地雷の探知・除去活動を支援するセンシング技術、アクセス・制御技術の研究開発」に沿って取り組まれている「人道的対人地雷探知・除去技術研究開発推進事業」では、新規に地雷除去技術を開発し、実証実験を行なうことになっている。

 2002年から始まった計画は3年間の短期計画と5年間の中期計画に別れている。短期計画では金属探知機と地中レーダーを組み合わせた、デュアルセンサーの開発と活用実証試験が行なわれた。いっぽう現在も進行している中期計画では、中性子線やガンマ線を使って地雷そのものを直接探知し、イメージングすることを目指している。中期計画は、今後、国内での実験を開始する予定だ。

 ロボット技術は、その要素技術のプラットフォームとして、また、安全な距離を保ちつつ精密に動かせるセンサー取り付けアームとして活用されている。


研究領域の構成 センサー、ロボット技術などを開発した短期計画 最終的には2007年に実証できるシステムの実現を目指す

 まず、研究統括を勤める東京電機大学の古田勝久氏がプロジェクトの概要を紹介した。先端技術において期待されている分野は特にセンサーであるという意見が、国連アフガニスタン地雷除去センター(UNMACA)から出され、それを受けてセンサーを主たる開発目標としたのだという。昨年3月には香川県坂出市で、そして今年の2月〜3月にはクロアチアで実証実験が行なわれた。

 クロアチアでは、3種類の土を使って試験が実施された。普通の土と、金属探知器が苦手とするレッドボーキサイト、さらにその中に小石が入ってより検知が難しい土である。地雷探知のテストは、このなかに地雷を埋め、さらに2カ月放置したあとで行なわれた。

 金属探知器(Metal Detector : MD)単体では、余計な金属片の情報なども拾ってしまう。一般に、地雷1つを探り出すために1,000個の金属片を探る必要があるそうだ。その精度を上げるために地中レーダー(Ground Penetrating Radar : GPR)を併用する手法が研究されているのだが、地雷の深さ・形状をはっきり出すためには、センサーを地雷原の上で非常に性格にかつそれなりの速度で動かす必要がある。そのためにロボットアームを使おうという発想があったのだという。また、地雷原までのアクセスビークルとしてもロボット技術が使われている。

 センサー類そのものはそれなりの完成度を達成した。ただし現段階では「デマイナー」と呼ばれる人間の地雷除去要員のほうが熟練のためスピードが速く、今後はユーザーインターフェイスも含めて改良が必要だという。


東京電機大学 古田勝久氏 金属探知器(MD)+地中レーダー(GPR)の複合センサーが開発された

金属探知器+地中レーダーのデュアルセンサーで地雷を探る

東北大学教授 佐藤源之氏
 このあと講演は、MD+GPRのデュアルセンサーとその活用の発表に移った。

 まず東北大学教授 佐藤源之氏は「ハンドヘルド地雷探知機ALISの開発」と題して講演した。ALISとは、「Advanced Landmine Imaging System」の略。従来の地雷除去がいかに難しいかを実際に数字をあげて紹介したあと、地中レーダーと金属探知器、2つのセンサーの組み合わせの有効性を述べた。

 同じアプローチはアメリカやイギリスでも取り組まれているが、このプロジェクトで開発されたものは、レーダーにより地中の様子をイメージングする機能を持っている点が実用面において非常に優れているという。なおレーダーセンサーは土壌湿度で精度が変わるが、パラメータ変更で対応できることをクロアチアで実際に確認したという。

 佐藤氏らのハンドヘルド型は、ロボットが入っていけないような川原のような場所でもアクセスが容易で、現場適応性が高いという。なお、同じセンサーはロボットアームに取り付けることも可能で、下記の「GRYPHON」というバギーにも搭載されている。


平均すると、1個の地雷を除去するために1,000個ほどの金属片を探る必要がある ハンドヘルド型地雷探知機ALIS。金属探知器にレーダーが付けられた形

実際に探知された地雷の様子 ハンドヘルド型金属探知器とビジョンセンサを組み合わせたシステムによる視覚化デモ

視覚化の様子 複合センサー。車両のアームにつけて使う

電気通信大学教授・荒井郁男氏
 電気通信大学教授 荒井郁男氏は、「アレイアンテナを用いた地雷探査レーダの開発」と題し、地中の様子をできるだけ細かく調べることで、形状から地雷か地雷でないかを把握するための小型軽量地中レーダー開発の成果を報告した。地中のなかの様子をできるだけ高分解能で、忠実に描出することを目標としており、現段階では、3分以内で1mの長さを探査可能。砂利混じりのところに埋められている地雷も探知可能だという。

 今後は、さらに分解能を高めることを目指すと同時に、ソフトを開発することで、地雷識別能力を上げることを目指す。大きな課題はコストで、高価すぎ、現地ではあまり興味を示してもらえなかった、と率直に語った。


地雷探査レーダ このような形で装着されて使われる

東京工業大学教授・広瀬茂男氏
 東京工業大学教授 広瀬茂男氏は、「遠隔操作アーム搭載バギー車両GRYPHONによる人道的地雷探査システム」という演題で、安価な市販バギーを使った地雷原アクセス・探査システムを解説した。

 広瀬氏は多足ロボットを使った地雷探知ロボットにいち早く取り組んだことでもよく知られているのだが、実際に現地に行ってみて、一刻も早く安価で実用的なシステムを提供することが必要だと実感し、現地で使えるシステムとして、バギーを母体にした地雷探査システムを考案したのだという。

 現地ではベースから地雷原まで20km離れていることもあり、そんなところまで支援車両含めて行くよりは、ガソリンを積めば丸1日稼働できるGRYPHONのようなオールインワン・システムのほうが有効だという。なお、現地まで乗り込んで行き、現地に着いたら遠隔&自動操縦となる。

 探知方法は、ステレオカメラで地形を計測したあとに、センサーを付けたアームを使って地面を探る。地面はもちろん平らではないが、その凹凸にならうようにアーム先端を動かす。アームの反対側にはカウンターウエイトがあり、ある程度の不整地にも対応できる。

 また、長年取り組んでいる広瀬氏らしく、各種意見に対する反論も述べた。地雷に対して爆発させれば良いではないかという意見やそのアプローチに対しては、100%確実に爆発させられないことからいずれにせよチェックが必要であり、ロボット技術を使うならば自律型のほうが良いのではないかという意見に対しては、現地で求められているのはむしろ人間が使う道具としてのデバイスであるとし、さらに戦車のような完全装甲型のもののほうが安全なのではないかという意見に対しては、現地では地雷原と安全な場所ははっきり区別されており、安全な場所に本体を置き、側面から探査すれば十分であると語った。

 今後はさらに、防塵防水に加え、耐熱性も高めていくという。


遠隔操作アーム搭載バギー車両「GRYPHON」 バランスを取るための大きなカウンターウエイトが目立つ ステレオカメラがアーム下部に付けられている

先端のセンサー 作業の流れ。まず地形をカメラでスキャンしたあとに、地雷をサーチする コンソール画面。車両のカメラやセンサーからのモニタはもちろん、車両そのものの姿勢が三次元CGで示される

【動画】アームを動かす様子 【動画】地面の凹凸に対して先端部分がならう様子

千葉大学教授・野波健蔵氏
 千葉大学教授 野波健蔵氏は、『地雷探知ロボットMHVの開発および制御型金属探知器・多機能マニピュレータの開発』と題して、地雷処理車両(MHV)と、そのマニピュレータについて解説した。

 富士重工業製のMHVは2トン車に積めることを前提とした地雷探知専用のビークルで、39馬力。搭載されたスカラーアーム(マルチマニピュレーター)はセンサーを先端につけて、地面すれすれをスキャンできる。また、マスタスレーブを使って、地面上の石や薬莢を除去できる。昨年春に行なわれた国内での実証実験の反省から支援車両もまとめたという。

 また、MHVのアームも最初は前面探知が考えられていたが、アームも1リンクあたり80cmから1mに延長され、側面探知方式に変更された。金属探知器とGPRの干渉に悩まされたそうだ。


富士重工業と共同開発したMHV 側面探知作業を行っている様子

支援車両 マスタースレーブアーム

 名古屋大学教授 福田敏男氏は『環境適応型対人地雷探査システム』として、そして株式会社タダノ技術研究マネージャー・鏡原和明氏は『地雷探知センサユニットのアクセス用機械の開発』と題し、20mの長いリーチを持ったビークルの開発について語った。


名古屋大学教授 福田敏男氏 株式会社タダノ技術研究マネージャー 鏡原和明氏

 タダノは移動式の高所作業車を製造している会社だ。長いブームを持った機械と、それを支える大型車両の製造設計技術、油圧駆動アームの電子制御技術を持っていることから、このプロジェクトに参加するに至った。半径20mの範囲であれば、地下作業もできる。たとえば土手から川のほうに向かってブームを伸ばして、川原の地雷原を探査することも可能だという。

 このブームを使って、地形の変化にならいながら、1cm感覚でスキャンをしていく。スキャンだけならば6分くらいで1m四方がスキャンできるという。1m四方をスキャンし終わったら、次のマスに移動させて、またスキャンさせていくという具合だ。

 だがそうなってくると問題になるのが位置決めの制御だ。長い棒の先が制御しにくいことは、素人でも分かる。タダノのブームは8自由度のリンク機構からなっているが、安定な制御系を構成するために工夫を凝らし、目標停止位置を中心とした直径150mmの円内に入るようにという要求仕様を満たしたという。クロアチアでの実験には参加できなかったが、広範囲の作業ができることは確認したとタダノの鏡原氏は語った。

 名古屋大学の福田氏はそれに加えて、サポートシステムとして、地雷探知調査後のインフォメーション・マネージメントシステムについても述べた。GIS上で、どこでいつ何を調べたかを1m間隔で管理するシステムで、国連機関の規格とコンパチブルな情報管理システムを構築しているという。


アドバンスド・マイン・スイーパー(AMS)システム 長いブームを使ってさまざまな場所に対応可能 斜面にも対応できる

アームのリンク構成 アーム先端のレーザーレンジセンサーそのほかを搭載したセンシングユニット。このマスのなか単位でスキャンを行なっていく

超小型の核融合を使って地雷を発見せよ

大阪大学教授 糸崎秀夫氏
 この後、講演は、平成19年度の開発目標である、地雷探知除去作業の効率化、爆薬そのものの探知に関する内容に移った。

 大阪大学教授の糸崎秀夫氏は「核四極共鳴を利用した地雷探知」と題して講演した。金属探知機やレーダーを用いたセンシング技術の有効性は確認されている。だが地雷側も進歩しており金属探知機では発見が難しいものもある。レーダーは誘電率の不連続を検知しているので、金属部品をプラスチックにすると、検知が難しくなる。そのため、火薬そのものを直接検知する技術が求められている。アフガニスタンでは探知犬が使われているそうだ。地雷そのものの匂いを識別させるのである。

 だが、犬は動物であり、不安定だ。そこで糸崎氏らは「NQRディテクター」と呼ばれる機器を使って、地雷探知を試みている。使われているのは分子構造を探るのに使われている核磁気共鳴(NMR)などに近い「核四極共鳴」と呼ばれる技術だ。窒素の原子核にある周波数の電波をあてると、それぞれの分子構造によって異なる、固有の周波数を返す。そこから爆発物の有無を探るのだ。

 もちろん爆発物といっても、ものによって周波数は違うので、周波数を変えることで反応をチェックしてどういう物質かを探知する。信号は非常に微弱なので最初は本当に検知できるのかという意見もあったそうだが、非常に高感度なセンシングができることを実証した。

 展示では、硝酸ナトリウムを模擬爆発物として使ったデモが行なわれた。本邦初公開だそうだ。課題は計測時間で、0cmなら2〜3秒だが、地雷が一般に埋められている20cmほどの距離だと、200秒くらいかかってしまうのだという。そのため実際の使用シーンとしては、まずMD+GPRのデュアルセンサーで地表を広くスキャンしたあとに、スポット的なスキャンに使う、といった使いかたが考えられているそうだ。


NQRの原理 NQRディテクターのデモの様子。上に載せられているのが硝酸ナトリウムで、その直下にあるのが検知器 特有のピークが立つことで検知できる

実際に土の下に埋めた物質を検知できることは確認済み 広瀬教授のGRYPHONのアームに搭載する予定

名古屋大学教授 井口哲夫氏
 名古屋大学教授の井口哲夫氏の演題は、「中性子捕獲ガンマ線分析による先進対人地雷探知システムの開発」。こちらは三菱重工、日本原子力開発機構、産総研らとの共同研究で、中性子を地面に打ち込んで、出てくるガンマ線のエネルギー識別をして計測することで、地雷を見出そうとするものだ。まだできて3カ月くらいで、現在は機能試験中だそうだ。三次元的な空間識別をやることが目標だという。


中性子捕獲ガンマ線分析システム システム構成。AMSのアーム先端に取り付けられる

京都大学教授 吉川潔氏
 京都大学教授の吉川潔氏は、「超小型放電型中性子源による即発ガンマ線分析地雷探知システムの開発」と題して講演した。これは「超小型放電型核融合中性子源」を使って発生させた中性子と、シンチレータ複合検出器を使った計測技術によって、地雷を検知することを目指しているものだ。

 詳細は省くが、「超小型放電型核融合中性子源」とは、重水素を満たした直径数十センチの真空容器内でプラズマの「慣性静電閉じこめ」を使って核融合反応を起こす、というもの。エネルギー出力は1Wよりも遙かに低いが、高エネルギーの中性子や陽子が簡単かつ大量に生成できるのだという。

 現在、累積60時間安定して動くことを確認しており、システム全体を軽量化、かつS/N比を高くすることを目指しているそうだ。


右が超小型放電型核融合中性子源の真空容器 実験システム

JST技術参事 石川潤氏
 この後、実証実験が行なわれたクロアチア側からのコメントや、デュアルセンサーへの期待が述べられたあと、JST技術参事 石川潤氏による評価試験結果のまとめが行なわれた。

 地雷探知は、まず徐々に金属探知器で行なわれる。感度を徐々に上げながら反応が出たところをマークする。さらにGPRで地表から地中へと深い場所に向けてサーチを行ない、深い場所にある対人地雷を発見していく。日本のセンサーでは深い場所の地雷を発見できるという面では有効だが、現地のデマイナーに比べると、速度面で課題があると指摘した。

 会場では、カンボジアやクロアチアのMine Action Centerの人々も来場し、講演を聴講していた。技術は一朝一夕で進むものではないが、日本の技術と現地での地道な取り組みによって進捗していくことを期待したい。


URL
  人道的対人地雷探知・除去技術研究開発推進事業
  http://www.jst.go.jp/kisoken/jirai/index.html

関連記事
川崎重工、地雷除去システム「BULLDOG」をカンボジアで実証実験(2006/06/23)


( 森山和道 )
2006/07/06 00:01

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