宇宙航空研究開発機構(JAXA)と三菱重工業(MHI)は3月25日、H-IIBロケットの開発状況に関する説明会を開催した。
H-IIBロケットは、JAXAとMHIが共同で開発している新型ロケット。メインエンジンLE-7Aのクラスタ化(1基→2基)と、推進薬の搭載量の増加(1.7倍)が図られており、これらによる能力向上により、重さ16.5トンの宇宙ステーション補給機「HTV」(H-II Transfer Vehicle)を打上げることが可能になっている(ちなみに、メインエンジンのクラスタ化は、日本では初めて)。
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H-IIBロケットと、従来のH-IIAロケット204型との比較
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主要な変更点は、第1段が太くなったことと、エンジンのクラスタ化
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開発状況。基本的に、フェアリング以外の開発は完了している
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H-IIBロケットについて、詳しくはプレス公開時のレポート等を参照して頂きたい。
現在、H-IIBロケットの試験機(初号機)は種子島に搬送されており、3月27日に第1段実機型タンクステージ燃焼試験(CFT)が実施される予定。これは、H-IIBロケット実機の機体を使って行なう燃焼試験で、「H-IIBロケットの開発としては最大のヤマ場」(中村富久プロジェクトマネージャ)。クラスタエンジンはMHIの田代試験場にて、実機を模した厚肉タンクステージ燃焼試験(BFT)が行なわれてきたが、本物の機体を使って行なわれる燃焼試験はこれが初めてとなる。
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CFT/GTVの試験目的。GTVではエンジンの燃焼は行なわない
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CFT/GTVのスケジュール。どちらもフェアリングは付かない形
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打上げ本番よりは規制範囲は狭い。SRB-Aが付くのでGTVの方が若干広い
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これまでの作業で、H-IIBロケット用に新たに開発した第1段誘導制御計算機に不具合が見つかっているが、CFTの実施には支障がないことが確認され、予定通り、3月27日午後3時半より1回目の燃焼試験が行なわれる見込みだ。ただし、この調査に時間を要したため、第2射点への機体移動は当初の3月26日午前9時から、同11時へと2時間延期された。
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1回目の作業スケジュール
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2回のCFTでの確認項目
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CFTでのエンジン燃焼時間は、1回目が10秒、2回目(4月11日)が150秒。順調であればこの2回で終わるが、予備として3回目が実施される可能性もある。その後、5月にフライト用エンジンに交換され、7月に最終確認である地上総合試験(GTV)を実施。試験機の打上げは、公式には「2009年度中」としか明らかにされていないが、9月あたりになる可能性が高いようだ。
なおフライト用のエンジンについては、田代試験場にて領収燃焼試験が行なわれていたが、これも完了。当初予定の2回から、最終的には5回になったが、これは3回目の試験において、燃焼の後半で比推力が少し下がる現象が見られたため、対策を施して、確認のための試験を2回追加したのだという。検討の結果、原因はエンジンの燃焼室にあるガス漏れ防止用の部品において、水素の漏れが少し大きかったことだと分かったという。
・領収燃焼試験の履歴
回数 | 試験日 | 燃焼時間 |
1回目 | 2008年12月6日 | 50秒 |
1回目 | 2008年12月13日 | 50秒 |
1回目 | 2009年1月9日 | 47.6秒 |
1回目 | 2009年3月17日 | 50秒 |
1回目 | 2009年3月21日 | 50秒 |
■URL
宇宙航空研究開発機構
http://www.jaxa.jp/
三菱重工業
http://www.mhi.co.jp/
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( 大塚 実 )
2009/03/26 17:51
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