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三菱重工・飛島工場でH-IIBロケット試験機が公開


H-IIBロケットについて説明するJAXAの中村富久プロジェクトマネージャ(右)とMHIの後藤智彦プロジェクトマネージャ(左)
 宇宙航空研究開発機構(JAXA)と三菱重工業(MHI)は12日、現在共同で開発しているH-IIBロケットを、MHI名古屋航空宇宙システム製作所の飛島工場(愛知県海部郡飛島村)にて公開した。製造はすでに完了しており、2月17日(火)にも種子島へ向けて出荷される予定。

 H-IIBロケットは、日本の基幹ロケットとして運用中であるH-IIAロケットの技術を最大限活用して開発した新型機だ。特徴は第1段のエンジンLE-7Aを2基搭載すること(メインエンジンのクラスタ化は日本のロケットでは初)。推力が2倍の新型エンジンを開発するには、一般に10年程度の長い開発期間と、膨大なコストが必要になる。しかも成功するとは限らない。すでにH-IIAロケットで実績のあるLE-7Aエンジンのクラスタ化であれば、低コスト、低リスク、短期間で推力を2倍にできる。

 H-IIAロケットからの変更点としては、このほか、第1段の直径が4mから5.2mに大型化したこと、宇宙ステーション補給機「HTV」(H-II Transfer Vehicle)用の大型フェアリングを新規開発したこと、などがある。第1段は大型化により、推進薬をH-IIAロケットの1.7倍搭載できる。また推進薬のタンクも改良しており、前後のドーム部を国産化したほか、接合方式も従来の溶接から摩擦攪拌接合方式(FSW)へと変更された。ただこの新型タンクについては、今後H-IIAロケットにも適用されていく見込みだ。


H-IIAロケットからの変更点。大きく変わったのは第1段で、これにより打上げ能力がかなり向上している 主要諸元の比較。第2段は基本的に同じだが、重いHTVを支える必要から、構造が少し強化されている 摩擦攪拌接合方式(FSW)により、品質が向上。また自動化が可能になり、低コスト化も実現する

 この日、プレス向けに公開されたのは、H-IIBロケット試験機(初号機)のコア機体(第1段と第2段)の部分。飛島工場での組み立てはすでに完了しており、2月17日に種子島に向けて出荷される予定だ。


公開されたH-IIBロケット試験機の第1段。ノズルが2つ見える。機体も太い 中のエンジンが見える状態だが、打上げ時には白いパネルで覆われるそうだ エンジン部分の土台は真円ではなくて楕円状になっている。この方が無駄がない

手前がH-IIBロケット試験機の第1段、その向こうにあるのが第2段だ ちょっと見えにくいが、機体には「H-IIB」の文字も 第1段の上側。第2段の直径は4mのままなので、ここで細くなっている

これは第2段。構造が多少強化されているとのことだが、外からは分からない 第2段のエンジン側。エンジンは従来と同じLE-5Bが使われる 第2段の外周部。黒いシートは打上げ前に取り外すらしい

 第1段と第2段は分離したまま、別々のコンテナに入れられて種子島宇宙センターへ輸送。現地で組み立てた後、3月下旬にも第1段実機型タンクステージ燃焼試験(CFT)を実施する予定だ。


第1段実機型タンクステージ燃焼試験(CFT)と地上総合試験(GTV)は最終試験。これが終わればいよいよ打上げ 厚肉タンクステージ燃焼試験(BFT)は、エンジンは実機と同じだが、供給系は実機を模擬したものだった 開発スケジュール。CFT/GTVが無事に終われば、試験機は夏期にも打上げられる予定になっている

 H-IIBロケットの開発費は、JAXA側が187億円、MHI側が75億円(MHI分は設備投資とのこと)で、合計262億円。試験機の製造コストはこれとは別に、147億円がかかっている。ただし製造コストについては、運用機(2号機以降)になれば下がる見込み。

 コストについては多少補足しておきたい。H-IIAロケットの場合は、最も安かった打上げ(15号機)でも85億円かかっていたが、この202型では、静止トランスファー軌道(GTO)へ3.7tの衛星を運ぶことができる。一方、H-IIBロケットはGTOに約8tを持って行く能力があるので、3tクラスの衛星であれば2機同時に搭載することも可能だ。そうなれば1機あたりのコストは半分になるので、世界の打上げ市場で受注するための競争力は高くなる。これがH-IIBロケットの狙いの1つだ。

 ちなみに、H-IIAロケットについては、すでにMHI側に打上げ業務が移管されていたが、H-IIBロケットは当面、JAXAが打上げの主体となる。これについて、JAXAの中村富久H-IIBプロジェクトマネージャは、「何機目になるか具体的に決まっているわけではないが、流れとしては、H-IIAロケットと同じように、MHIが打上げサービスを担うようになる」と言及。試験機の打上げについても、「主体はJAXAだが、MHIには主体的に作業をしてもらう。時代にあった仕事の分担をする」と述べた。


URL
  宇宙航空研究開発機構(JAXA)
  http://www.jaxa.jp/
  三菱重工業(MHI)
  http://www.mhi.co.jp/

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( 大塚 実 )
2009/02/13 18:24

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