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【写真1】ハードウェアから開発環境・ツールまで、幅広い組込み系のIT技術が一堂に会した「Embedded Technology 2008」
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11月19日(水)から21日(金)の3日間、パシフィコ横浜において、「Embedded Technology 2008」が開催された。本イベントは、今年で通算22回目となる国内最大級の組込み技術の総合技術展。ハードウェア、ソフトウェア、ネットワーク、開発環境・ツールなど、幅広い組込み系のIT技術が一堂に会した【写真1】。主催は社団法人組込みシステム技術協会(JASA)。ここでは本イベントの中から、ロボットに関わる展示を中心にレポートする。なお併設イベントとして、初日には「ETロボコン」のチャンピオンシップ大会も催された。こちらも別稿で紹介しているのでご覧頂きたい。
● 組込み技術を習得できる多数のロボット教材
目に見える形で展示されていたロボットは、主に教育用学習キットが多かったようだ。協栄エレクトロニクスは、μITRON(TOPPERS/JSP)組込み学習用キットと、改造した市販ロボットアーム(エレキット社製)を紹介【写真2】。改造ロボットアームは5軸で、距離・モーション・圧力・カラーなどの各種センサーを搭載するほか、DCモータの位置制御用にエンコーダも取り付けられている。また、本体を移動させる台車には2軸のDCモータが付いており、これで方向を制御する仕組みだ。学習キットのメインボードはルネサステクノロジのSH2マイコンを搭載。さらにオプションボードを追加することで、7セグメントLEDやLCD、ADC/DAC、各種入出力などもサポートする【写真3】。サンプルプログラムを動かしながら、マルチタスク処理によるリアルタイム制御の学習が可能だ。
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【写真2】μITRON(TOPPERS/JSP)組込み学習用キットと改造ロボットアーム。アームは移動できる駆動部も装備。センサーに距離・モーション・圧力・色認識や、エンコーダなどを採用している
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【写真3】組込み学習用キットのメインボード+ドータボード。マルチタスク処理によるリアルタイム制御の学習が容易に行なえる
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出版社の雑誌の付録基板などを提供しているイーエスピー企画は、学習用の各種ロボットキットを展示していた【写真4】。C言語ロボット教材の「Cロボ」には、かたつむりライントレーサや、ロボカップジュニア用のサッカーロボットなどのラインアップがある。かたつむりライントレーサは、アナログデバイセズ製の8052系マイコンが搭載されているが、近日中にARM系バージョンも発売する予定だという。
ソフィアシステムズは、組込み技術をマスターするための二足歩行ロボット完成キット「eMaster GEAR」を展示していた【写真5】。これはC言語でプログラムを組んで、デバッガーで書き込みと検証が行なえるセットで、実習に必要なサンプルプログラムも用意されている。ロボットは16軸仕様で、シリアルまたはZigBeeで通信できる。
エム・シー・エム ジャパンは、米アトメル社・AVRマイコンを利用したコントロールボードによって、市販ロボットを制御するデモを実施【動画1】。このボードはAVR Xmegaプロダクトをベースにしたもので、赤外線でコマンドを送って、ダンスやエアギター、太極拳など、さまざまなモーションが行なえるようになっていた。
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【写真4】二足歩行ロボットやライントレーサ、レスキュークローラなど、学習用の各種ロボットキットを展示していた
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【写真5】組込み技術を習得できる二足歩行ロボットの完成キット。C言語でプログラムを組んで、デバッガーで書き込みと検証が行なえる
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【動画1】AVRマイコンを利用したコントロールボードで市販ロボットを制御しているところ。赤外線でコマンドを送って、さまざまなモーションを実行
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【動画2】参考出展の「dSPACE ACE 1104/ZIP e-nuvo WHEELパッケージ」のデモ。従来の10分の1にあたる1msで制御をかけているため、車輪型ロボットの倒立の安定感が抜群だ
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dSPACE Japanのブースでは、ロボテストが教育機関向けにモデルベースのコントローラシステム実習教材「dSPACE ACE 1104/ZIP e-nuvo WHEELパッケージ」を参考出展していた【動画2】。これはdSPACEのDS1104R&Dコントロールボードと、ZMPの車輪型ロボット教材「e-nuvo WHEEL」をパッケージにしたもの。両者をケーブルで接続して、DS1104上で実行される制御システムからe-nuvo WHEELをコントロールするというもの。倒立二輪モデルはMATLAB/Simulinkから作成し、リアルタイムにDS1104へダウンロードして実行できる。デモでは制御周期を10msから1msに短縮しており、かなり粘り強く、安定した制御を実現していた。PC上のControlDeskから制御パラメータの調整が行なえるほか、外乱が加わってから制御目標に対して収束するまでの様子などがモニタリングされるようになっていた。
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【写真6】ETロボコン2009で新走行体となる予定のLEGO Mindstorms/NXT用の開発環境。GUN Cを使用でき、LEGO Mindstorms/NXTの全デバイスをC言語APIで操作できる
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もなみソフトウェアは、ETロボコン2009の新走行体となるLEGO Mindstorms/NXT用の開発環境として、「PizzaFactory3 for Mindstorms/NXT」を紹介【写真6】。これはEclipseベースの統合開発環境で、LEGO Mindstorms/NXTを利用してシステム開発をする際に必要なプラグインが同梱されており、Windows上での開発が可能だ。開発言語はGUN Cを使用でき、LEGO Mindstorms/NXTの全デバイスをC言語APIで操作することができる。TOPPERS/JSPベースのカーネルをサポートしており、統合環境で生成されたカーネルは、LEGO Mindstorms/NXTのファームウェアを完全に置き換えて動作する。
● 産業用ロボット分野で活用される組込み技術とは?
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【写真7】VxWORKSとWindowsを1つのマシン上で共存させることが可能なリアルタイムエクステンション「KUKA-VxWin」。KUKA社が実際に産業用ロボットで使用しているという
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ウェルビーンは、組込みソフトウェアの仮想化技術を中心とした製品を出展していた。その一例として、ドイツの産業用ロボットメーカー・KUKA Roboter社のリアルタイムエクステンション「KUKA-VxWin」を紹介【写真7】。これはリアルタイムOSとして有名なVxWORKSと、Windowsを1つのマシン上で共存させ、GUI・制御に専用ハードウェアを用いることなく、VxWorksの制御アプリケーションやWindowsのGUIソフトを起動できるソリューションだ。ちなみにVxWORKSは、信頼性が求められる航空宇宙・防衛システムや、リアルタイム制御が必要なロボット分野で定評がある。実際にNASAの火星探査機ローバーやホンダの「ASIMO」の頭脳も担っている。展示製品もKUKA社が産業用ロボットで使用しているものだ。このほかQNXとWindowsを共存させる「QWin」や、iTRON上でLinuxを使用できる「WB-VRT」などもあった。
日本ノーベルは組込み機器の自動検査システム「QualityCommander4」や、製品のキズ・欠陥を検出する外観検査システムなどを展示していた。QualityCommander4は、産業用ロボットと画像処理技術を利用して、カーナビ、携帯電話、タッチパネルなどの組込みソフトウェアを検査するユニークなシステム【動画3】【動画4】。従来は人手が必要だった検査をオートメーション化するものだ。まずテスト手順のシナリオを作成し、これに従って産業用ロボットがテスト対象機器のボタンやタッチパネルを操作する。この際にカーナビや携帯電話などの画面はカメラで撮影され、その表示画面が期待どおりに動いているかどうかを判定できる。ロボットによるテストであるため、間違えることもなく24時間の連続稼動が可能で、テスト工数を60%も削減できた実績があるそうだ。
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【動画3】QualityCommander4による自動検査。カーナビ、オーディオのパネルやスイッチを産業用ロボットが操作し、その結果を画像処理技術で認識する
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【動画4】静電容量式センサーに対応し、携帯電話のタッチパネルなどの組込みソフトウェアをドラッグ&ドロップで検査することも可能
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京都の楽墨堂は画像・音声処理技術、ネットワーク技術、最適制御技術を集結した二輪倒立振子型ロボットを展示していた【写真8】。ロボットが隣にいる生活~実用的なロボット開発を目的に、人と並んで歩けるサイズ、モノを運ぶ力を基本仕様としている。取材時にはデモは行なわれていなかったが、実際にランチを運んでくれたり、ジュースなどの液体を運んでも揺れずにスムーズな動きを実現するという。また、これらのロボットを構成するユニット群「楽ロボunit」も紹介していた【写真9】。PCユニット、CAN-USBゲートウェイユニット、走行ユニット、AGユニット(加速度、ジャイロセンサー)などが用意され、ユニットを自由に組み合わせて、目的に応じたロボットを素早く製作できる。
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【写真8】外観が可愛らしい楽墨堂の二輪倒立振子型ロボット。現代制御理論をベースにつくられ、ランチやジュースなどをスムーズに運ぶことができるという
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【写真9】ロボットを構成するユニット群「楽ロボunit」。PCユニット、CAN-USBゲートウェイユニット、走行ユニットなどを自由に組み合わせて、目的のロボットを製作できる
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サンリツオートメイションは、同社の遠隔IPシステムを搭載したローバーのデモを実施していた【動画5】。機体に搭載されたIPシステムは、モータ制御ボードと画像圧縮ボードで構成され、インターネットや無線LANによってリモートコントロールが可能【写真10】。映像系はVGAサイズの動画像をモーションJPEGで記録し、無線LANなどによって伝送する。2009年2月にサンプル出荷する予定の最新システムは、基板サイズがひとまわり小さくなり、音声の送受信も可能だ。旧バージョンはJAXAの騒音計測用ローバーや、レスキューロボットのプラットフォームとしての実績があるという。
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【動画5】最新の遠隔IPシステムを搭載したローバーによるデモ。最新システムは基板サイズがひとまわり小さくなり、音声の送受信も可能だ
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【写真10】機体に搭載されたIPシステムは、モータ制御ボードと画像圧縮ボードで構成。旧バージョンは、JAXAやレスキューロボットのプラットフォームとして採用された
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【写真11】Intelブースでは三菱重工のコミュニケーションロボット「wakamaru」が登場。ロボットの頭脳として、Intelのチップが搭載されている
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Intelブースでは、同社のマイクロプロセッサやコンポーネントなどを組込んだ機器の事例を中心に紹介していた。日常生活を支援するコミュニケーションロボット(wakamaru)や、出勤時に通過する改札口、オフィス内で利用するデジタル複合機、余暇で遊ぶアミューズメント機器などにおいて、同社のチップが幅広く活用されていることをアピールしていた【写真11】。
ルネサス北日本セミコンダクタは、新製品の組込み用小型画像認識ユニット「NVP-Ax135P」を利用した高速キャップ位置・傾き検出のデモを実施していた【写真12】。これは毎分1,200本ものペットボトルのキャップマークの位置と傾きをカメラで捉え、幾何マッチングによって検出結果をモニタ表示できるもの。ハードウェアの処理エンジンには同社のマイコン「SH-4A」と画像処理コアを採用している。ほかにも同ブースでは、2台の小型カメラの視差で距離を計測するステレオ距離計測装置【写真13】や、H8/Tinyシリーズ用エアコン室内機プラットフォーム、仮想ホームネットワークのデモなども行なわれていた【写真14】。
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【写真12】組込み用小型画像認識ユニットによって、ペットボトルのキャップマークの位置などを毎分1,200本の速さで検出することが可能
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【写真13】ステレオ距離計測装置のデモ。2台のカメラの視差を利用し、画面上に計測距離をリアルタイムで表示する
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【写真14】仮想ホームネットワーク(写真前)と、H8/Tinyシリーズ用エアコン室内機プラットフォーム(写真奥)
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● TOPPERSプロジェクトで組込みの世界を広げる!
NPO法人TOPPERSプロジェクトのブースでは十数社が出展しており、TOPPERSを搭載した製品の応用事例が数多く示されていた。TOPPERSプロジェクトは、ITRON仕様の技術をベースにしたμITRONカーネルの公開によって開始されたもの。組込み分野の次世代リアルタイムOSとして幅広い普及を目指しているところだ。
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【写真15】TOPPERSプロジェクトのブースその1。「機能安全」に対応する自動車制御用プラットフォーム。信号や警報機/遮断機などによって、リスクを許容範囲内に収めて安全を確保
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ヴィッツ、東海ソフト、サニー技研は共同で「機能安全」に対応する自動車制御用プラットフォームのデモを行なっていた【写真15】。機能安全とは、根源からリスクをなくす「本質安全」に対比される新しい概念。たとえば、踏切事故をなくすには鉄道と道路を立体交差にすればよい。とはいえ、このような本質安全をすべての踏切に適用することは現実的ではない。そこで信号や警報機/遮断機などの周辺の安全機能によって、相対的にリスクを許容範囲内に収めて、安全を確保しようという機能安全の考え方が生まれたというわけだ。このような概念は、将来ロボットが日常生活に入り込んできたときに応用が利くだろう。デモでは模型電車が周囲状況を確認して走行し、線路の各位置に組込まれたセンサーが踏切内への立ち入りを検知すると、信号機の表示を切り替えて、衝突事故を未然に防ぐというもの。
同じくヴィッツのブースでは、車載機器の制御を行なう「X-by-wire」ラジコンの教育コンテンツ【写真16】や、コンポーネント設計による踏切システム【写真17】、二足歩行ロボットの制御【写真18】のデモも行なわれていた。いずれもTOPPERS/JSPカーネルの拡張・改良版となる「TOPPERS/ASP(Advanced Standard Profile)カーネル」に対応した開発ボード「TOPPERS Platform Board」(サニー技研製)を利用したもの【写真19】。このボードはTOPPERS/ASPカーネルのほかに、TCP/IPプロトコル・スタック、FlexRay、CAN、LINなどの車体ネットワークもサポートしている。
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【写真16】TOPPERSプロジェクトのブースその2。ヴィッツのX-by-wireラジコン教育コンテンツ。制御コントローラから、アクセル、ブレーキ、ステアリング、ライトのデータをTOPPERS Platform Board側に送り、CANでつながれたX-by-wireラジコンを制御
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【写真17】TOPPERSプロジェクトのブースその3。ヴィッツとキャッツによる踏切システム。踏切前後にある静電センサーで列車を検知すると、コンポーネントで設計された通りに踏切が動作。キャッツの構造設計ツール「ZIPC Toy!」によってコンポーネントを組み上げられる
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【写真18】TOPPERSプロジェクトのブースその4。TOPPERS Platform BoardからLIN通信で二足歩行ロボットを制御。ロボット側はTOPPERS Automotiveカーネルを採用。ヴィッツとサニー技研の共同開発品
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【写真19】TOPPERSプロジェクトのブースその5。サニー技研のTOPPERS Platform Board。新世代のTOPPERS/ASPカーネルのほか、TCP/IPプロトコル・スタック、FlexRay、CAN、LINなどの車体ネットワークもサポート
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名古屋大学大学院情報科学研究科では、文部科学省科学技術振興調整費によって、組込みソフトウェア技術者の人材養成プログラム「NEXCESS」を社会人向けに実施しており、その内容について紹介していた。このプログラムは基礎コースから指導者コースまで用意されている。展示では開発プロセスを管理しながらドキュメントをつくるPBL(Project Based Learnig)と呼ばれる実践教育の題材として、北斗電子製の倒立二輪走行ロボット「PUPPY II」を採用した事例を紹介【写真20】。倒立二輪走行ロボットのOSにTOPPERS/JSPカーネルを採用し、用意されている倒立制御プログラムを実装した。今回のデモではZigBee通信によってPCからブロードキャストで情報を2台の走行ロボットに送信し、それらを音楽に連動させて動かせるようにしていた【動画6】。
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【写真20】TOPPERSプロジェクトのブースその6。名古屋大学大学院情報科学研究科が実施した組込みソフトウェア技術者の人材養成プログラム「NEXCESS」教材の1つ。北斗電子製の倒立二輪走行ロボット「PUPPY II」を採用
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【動画6】TOPPERSプロジェクトのブースその7。TOPPERS/JSPカーネル搭載の倒立二輪走行ロボットを制御するデモ。ZigBee通信によってPCからブロードキャストで一斉に制御情報を送信し、2台のロボットを連動させている
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テック・エス・シーは、同社が持つ組込み技術力をアピールするために、電動ヘリコプターのホバリング制御にチャレンジしていた【写真21】。ホバリング制御を実現させるためには、複数のセンサーやサーボを総合的にコントロールする必要があり、難易度が高い技術が必要だ。機体には赤外線距離センサーとジャイロセンサーが搭載され、4つのサーボモータによって、ヨー/ロール/ピッチの姿勢制御とメインロータの制御を実施。リアルタイムOSとして「TOPPERS Automotie Kernel Ver1」が利用されていた。まず第一ステップとして垂直方向のホバリングや離着陸を可能にするトライアルが行なわれていた。
東北電子専門学校はアベールジャパンと共同で、通常のクルマイスを改造した電動クルマイスを展示していた。これは、アーベルジャパンの組込み学習キット「AVES-H8/3069Fマイコンボード」(OSにTOPPERS/JSPを利用)を利用したもので、前進・後退、左・右折を自動で制御できる【写真22】。
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【写真21】TOPPERSプロジェクトのブースその8。ヘリコプターのホバリング制御。機体には赤外線距離センサーとジャイロセンサーが搭載されている。リアルタイムOSとして「TOPPERS Automotie Kernel Ver1」を利用
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【写真22】TOPPERSプロジェクトのブースその9。TOPPERS/JSP搭載の組込み学習キットを利用し、通常のクルマイスを自動制御方式に改造したという
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● ロボットの制御に使える高機能なマイコンやチップ群も
デバイス関係で目を引いたのは富士通マイクロエレクトロニクスのブースだ。同社は“FF Value”と銘打ち、FRAMマイコンとフラッシュマイコンをアピールしていた。たとえば8ビットマイコン「MB95R203」は、8kB・FRAMを搭載していることが大きな特徴だ。FRAMとはFerroelectric RAM(強誘電体不揮発性メモリ)のことで、強誘電体の電気的な偏りの向きを論理レベルのH/Lとして利用するもの。フラッシュメモリに比べて書き込み時間が短く、消費電力も小さいというメリットがある。またFRAMはプログラム・データいずれの領域としても利用でき、CPU命令で直接データを格納することが可能だ。同社のブースでは、電源を切ってもすぐにコマの色と配置を復元できるリバーシゲームやカウンタなど、FRAMマイコンを利用したアプリケーションのデモが行なわれた【写真23】。
FRAMに関わるユニークな新技術も参考出展として紹介されていた。これはFRAM内蔵RFIDにマイコンや各種インターフェイスを搭載することで、さまざまなセンサーや計測器からのデータをRFで取得できるもの。FRAM内蔵RFIDを介助者に携帯してもらい、居場所・姿勢・転倒などの情報を検知してサーバに送る「見守りシステム」が応用例として示されていた【動画7】。このRFIDには傾斜センサーや振動センサーが内蔵され、介助者の移動情報を携帯電話などに転送することも可能だ。
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【写真23】富士通が力を入れているFRAMマイコンを利用したアプリケーション。電源を切ってもコマの色と配置を復元できるリバーシゲーム
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【動画7】FRAM内蔵RFIDを利用した見守りシステムの応用例。このRFIDには傾斜センサーや振動センサーが内蔵され、介助者の移動情報を携帯電話などに転送することも可能
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【写真24】NECとNECエレクトロニクスのブースで行なわれていたマイコン開発体験。お土産に基板をもらえるためか、大盛況で予約が満員だった
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NECとNECエレクトロニクスのブースでは、マイコン開発体験コーナーが大盛況であった【写真24】。これはCQ出版社のトランジスタ技術の付録基板と、ドットLEDを組み合わせてマイコン制御を体験できる企画だ。プログラムをPCからUSB経由でダウンロードして、万華鏡、ルーレット、花火など5つのアプリケーションを楽しめるボードで、受講希望者で予約が満員になっていた。来場者の組込み技術への関心の高さがうかがい知れるひとコマであった。
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【動画8】XilinxのFPGA「Spartan3A-DSP」を利用した大日本印刷の画像処理ソリューション。リアルタイムで魚眼カメラの動画像を補正し、自由視点で切り出せる
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大日本印刷はXilinxブースにおいて、Xilinx社のFPGA「Spartan3A-DSP」を利用したユニークな画像処理ソリューションを展示。従来のソリューションは、メモリ上で画像データを記録・展開して処理する方式だったが、こちらはリアルタイムで魚眼カメラの動画像を補正し、自由視点で切り出せることがポイント。画像を展開した際の両端の歪みなど、すべての補正処理をFPGAで直接実行し、動画像をリアルタイムに変形しても画質を保持することが可能だという。また認識アプリケーションと組み合わせて、対象をリアルタイムで追跡することもできる。デモは人だかりができており、グリグリと動画をドラッグしながらリアルタイム変形させる様子を見て、感心する人も多かった【動画8】。
マイクロ・チップテクノロジー・ジャパンのブースではPICマイコンを中心に、デジタル電源(スイッチング電源)を実現するDSP内蔵チップや、3相誘導モータなどを効率的に制御できるデジタルシグナルコントローラのソリューション【写真25】、新製品のインダクティブ・タッチセンサーなどを展示していた【写真26】。タッチセンサーは、金属や手袋でも感知し、耐水性に優れており、家電製品などに応用が可能だという。
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【写真25】3相誘導モータなどを効率的に制御できるデジタルシグナルコントローラ。dsPICを利用してモータの磁界方向をコントロールすることにより、センサーレスで速度を制御
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【写真26】マイクロ・チップテクノロジー・ジャパンのブースでは、マイコンやチップだけでなく、タッチセンサーなども展示されていた
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【写真27】日本アルテラは、Nios IIエンベデッド評価キットを利用して、マンデルブロートのフラクタル図形を高速に描画するデモなどを実施
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PLD(Programmable Logic Device)で有名な日本アルテラは、システムに必要な周辺機能を簡単に実装できる32ビットRISCプロセッサ「Nios II」の組込みシステムについて紹介。Nios IIエンベデッド評価キット(略称:NEEK)を利用して部分的にアクセラレータを生成し、処理が重くなるマンデルブロートのフラクタル図形を高速に描画するデモなどが行なわれていた【写真27】。このキットは、あらかじめNios IIプロセッサが実装されているFPGA、LCDドータボードのほか、Eclipseベースの統合開発環境やチュートリアル、サンプルコードなどが同梱されており、FPGA組込みプロセッサシステムの開発が未経験でも容易に利用できるようになっている。
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【写真28】ユー・ディ・テックは、ワイヤレスで非接触電力伝送を実現するユニークなシステム「UTrans」を展示。非接触で携帯電話やマウスの充電を行なってるところ
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ユー・ディ・テックは、ワイヤレスで非接触電力伝送を実現するユニークなシステム「UTrans」を展示していた【写真28】。これは、さまざまな機器に薄型・小型のコイルモジュールを付けて、電磁誘導によって電力を発生させるもの。200W以下、75%以上の高効率で安定した伝送が可能だという。同ブースでは、本システムを組込んだ充電器などを展示していた。
同様の非接触電力伝送による充電システムは、独立系半導体商社のケーティエルでも見られた。これはFuDaTong Technology社の製品で、音楽を演奏する玩具を非接触電力伝送で動作させるデモを行なっていた【写真29】。ケーティエルのブースでは、50,000Gという耐ショック能力をもつユニークな加速度センサー(MEMSIC社)も展示されていた【写真30】。ヒータで暖められた空気と、周囲の冷たい空気の温度バランスの変化を加速度として検出する熱感知方式だという。この方式はMEMSIC社独自のものらしい。
このほか、ロボットとは少し外れるが、ヒューマンインターフェイスとして利用できそうなユニークなシステムもあった。大阪電気通信大学の机/床マルチタッチパネルディスプレイがそれだ。北陽電機の測域センサーを利用し、机や床の上を近赤外線レーザー光でスキャンすることで指などの位置を推定するもので、ポインティングデバイスの代替として利用が可能だ。アプリケーションの一例として、ハエ追い込みアプリケーション【動画9】や、デジタルディスクオルゴールなどが紹介されていた。
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【写真29】ケーティエルのブース。こちらはミュージック演奏をする玩具を非接触電力伝送で動作させるデモなどを実施
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【写真30】50,000Gの耐ショック能力をもつユニークな加速度センサー。熱感知方式はMEMSIC社独自のものだ
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【動画9】大阪電気通信大学の机/床をマルチタッチパネルディスプレイの応用例の1つ。ハエ追い込みアプリケーション。手がポインティングデバイスの代わりに
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■URL
Embedded Technology 2008
http://www.jasa.or.jp/et/index.html
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( 井上猛雄 )
2008/12/09 16:32
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