9月7日、株式会社テムザックとマイクロソフト株式会社は、ロボットアプリケーション開発ツール「Microsoft Robotics Studio」を使ったソフトウェア部品の共通化で協業すると発表し、記者会見を行なった。産学官で開発されているさまざまなロボット間の相互運用性を向上させることで、研究プロジェクト間の技術交流、用途開発を促進することがねらい。
テムザックは自社のロボットの「Microsoft Robotics Studio」への対応を進め、共同研究先の大学や部品ベンダーにも「Microsoft Robotics Studio」ならびに「Microsoft Robotics Studio」が採用している「分散システムサービスプロトコル(DSSP)」の採用をよびかける。マイクロソフトは「マイクロソフト・イノベーション・センター」を通じ、テムザックに対して画像認識や機械学習などの応用ソフトウェア部品やハイ・パフォーマンス・コンピューティング環境を提供する。
なお今回の協業は技術・マーケティング領域におけるもので、資本的な提携はない。
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【動画】テムザック4号機が挨拶
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ロボットアプリケーション開発ツール「Microsoft Robotics Studio」
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マイクロソフト株式会社CTO(最高技術責任者) 加治佐俊一氏
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まず、マイクロソフト株式会社CTO(最高技術責任者)の加治佐俊一氏は、以下のようにパソコンの歴史を振り返りながら、今回の協業について語った。
マイクロソフトは1975年に創業された。パソコンは、当初は教育・娯楽から趣味、そして研究開発、商用化へと進んできた歴史的経緯がある。趣味、教育・娯楽用途として使われているうちに、多くのソフトウェアベンダーが出てきた。同時に、部品価格の下落が起きた。そして急激な勢いで商用化へと拡大していった。いっぽう研究開発分野では、ワークステーションを使ってマルチユーザーやネットワークを活用した利用が行なわれていた。それらがうまく組み合わさって現状のエコシステムを形成している。
ロボティクスも同様に、教育・娯楽、趣味、研究開発、実用化・普及と4つの段階がある。それぞれの分野のロボットはあるが、それぞれの設計思想が独立していて分断されている。だが今後、教育娯楽分野ではキラーアプリケーションの発掘、研究開発分野では高度な制御技術や用途開発の推進が起きるものと思われる。両者を融合すれば、市場形成の流れを作れる可能性がある。その流れを作っていくのがマイクロソフトであり、その考えの表れのひとつが「Microsoft Robotics Studio」だという。
「Microsoft Robotics Studio」発表に代表されるマイクロソフトによるロボットへの取り組みが始まることになったきっかけは、同社のビル・ゲイツ氏が、近藤科学のホビーロボット「KHR-1」の動作デモを見て、ロボットにおいてもBASICと同じようなものを出すべきだと考えたこと。昨年発表されて以来、これまでのダウンロード数は10万件にのぼるという。
だが『Microsoft Robotics Studio プログラミング』(毎日コミュニケーションズ)のような解説書は出ているものの、日本での知名度はまだ高いとは言えない。同社でも、Robotics Studioの日本におけるユーザーの実数は把握していないのが現状だという。
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パソコン普及への変遷
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ロボット普及に至る道筋
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『Microsoft Robotics Studio プログラミング』(毎日コミュニケーションズ)
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マイクロソフト株式会社 技術統括室 CTO補佐 楠正憲氏
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マイクロソフト株式会社 技術統括室 CTO補佐の楠正憲氏は、マイクロソフトはロボットアプリケーション開発に対して、「実行環境」「開発環境」「サービス・サンプル」の3つの分野から取り組んでいると述べた。
ロボット制御には高いプログラミングスキルが必要だし、実行環境も必要だ。それを、これまでよりも簡単にロボットのソフトウェアを、しかも「一枚岩」としてではなく、色々なコンポーネントの集合体として分かち書きできるものとしようというのが「Microsoft Robotics Studio」の基本的なコンセプトだという。
ロボットの場合、PCのそれとは異なり、ソフトウェアがリアルな世界でリアルな物体を動かす。そのためにはソフトウェアが正しく動いてもモノが正しく動くとは限らないし、物理法則も重要だ。そのために、開発においては従来型のプログラミング環境だけではなシミュレーション環境も非常に重要となる。また、実際に動かすためのサンプルプログラムも必要だ。
「Microsoft Robotics Studio」は、同社のビジュアルプログラミング言語「VPL」と「C#」を使っている。サービスをブロックとして抽象化し、それをつなぎ合わせることでプログラミングが出来る。会見でも、データの流れをアイコンで表現したプログラムを示し、実際に実行してシミュレーションする様子が披露された。
もう一つの特徴は、これまでのロボット制御ソフトウェアは、ひとつのロボットしか動かせなかったが、Microsoft Robotics Studioではそれぞれのロボットの持つインターフェイスを定義することによって、別のロボットも動かせる点。もちろんそれぞれのロボットごとに各関節自由度などは異なるが、例えば同じように2輪で移動するロボットであれば、それぞれのハードウェア・ドライバの違いなどを気にすることなく、アプリケーションを開発することが可能になる。これは開発者にとっても大きなメリットとなるという。
とはいっても実際に、Windowsで動作しているロボットは少ないのが現状だ。だが、例えばWindowsが動作しているパソコンとつなげることによって、Robotics Studioからロボットをコントロールすることもできるし、また、Windows Embedded CE6.0を使ってロボット自体を動かすこともできる。また自律制御できるノード(ロボット)自体が自律分散協調動作するといった形もありえる。楠氏は「幅広い種類のロボットを操作できる」と語った。
なおMicrosoft Robotics Studioの非商用ライセンスは無償。商用ライセンスは399ドル。ウェブサイトからダウンロードできる。
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実行環境、開発環境、サービス・サンプルが一つになっている
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Microsoft Robotics Studioの総合シミュレーション環境
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データの流れをアイコンで表現したプログラム
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【動画】シミュレーションの様子
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Microsoft Robotics Studioの展開
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テムザック社長の高本氏(左)とマイクロソフトCTOの加治佐俊一氏
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今回の協業は、マイクロソフトからテムザックに持ちかけたもの。まず、産学連携による研究開発や、実用化分野で既に実績があり、大学でのロボット開発環境についても多くの知見を持っていることから同社を協業パートナーとして選んだのだという。
テムザックの高本陽一代表取締役社長は、「役に立つロボットを作ることが理念」だと語り、「T-53援竜」の災害復旧支援など、これまでのロボット開発の実績をプレゼンテーションした。
高本社長は「仲間同士のコミュニケーションがなかなかできない。いろいろなプログラムが別個に進化してきており、横につなげるのが難しい。ロボットはそろそろ実用化段階。一緒のプラットフォームが構築できれば、たとえば援竜の腕の技術を他のロボットに応用することも簡単にできるようになる。そうなれば、いろいろな技術が一挙に花開く時代が来るのではないか」と語った。
特にマイクロソフトのロボットアプリケーション開発プラットフォームに対しては「信頼性、拡張性、利便性に期待している」という。
マイクロソフトはパートナープログラムを通し、製品情報を提供し、共同でマーケティングしていく。またテクノロジーイノベーションプログラムを通して、技術的にも協業していく。そうすることで、色々な技術がエコシステムを通じて流通し、新しい用途がどんどん作れるようになるのではないかという。
また、Linuxはオープンではあるが、サポートされない。それに対してWindowsの場合はサポートがある。テムザックの高本氏は「今後、ロボットを商品として販売いく場合にはサポートしてくれることも非常に重要」と述べ、「ロボット屋にしかわからない問題もたくさんある。3次元の立体的コミュニケーションの世界をマイクロソフトと一緒に開いていきたい」と述べた。
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ロボット開発のアプローチ
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協業の内容
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DSSによる相互連携とRobotics Studioによるアプリケーション展開イメージ
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早稲田大学 創造理工学部 高西敦夫教授
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産学連携の一例として、記者会見にはテムザックとの関連も深い早稲田大学 創造理工学部の高西敦夫教授も出席した。
高西敦夫教授は「日常に使っているコンピューティング環境でロボットを制御できれば、それにこしたことはない。Windowsでロボットを制御できるならば嬉しい。ロボットが違っても共通の知識やノウハウはたくさんある。本格的にロボット専用をうたったOSはこれが始めてではないか。そういうところに期待している。両者が連携し、広めていくことで、これまでの課題を解決できるようなロボットのマーケット創生に繋がるのではないか」と期待を述べた。
実際にWindowsを使ったロボット制御への取り組みに関しては、テムザックもこれから進めていく予定で、まだ実績はない。だがマイクロソフトの楠氏は「ハイパフォーマンスコンピューティングの分野でもWindowsは遅いと当初言われていたが、実際には高速化可能だった。これまでできないといわれていたことにもチャレンジしていくことで技術的課題は明らかになっていく。Windowsはそれだけ柔軟なアーキテクチャを持っている」と自信を見せた。
今後、マイクロソフトでは「おもちゃの分野とも提携を進めていく」という。
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記者会見にはテムザックのロボットも登場
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こちらは「番竜」
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留守番ロボット「ロボリア」
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■URL
マイクロソフト
http://www.microsoft.com/ja/jp/
ニュースリリース
http://www.microsoft.com/japan/presspass/detail.aspx?newsid=3181
Microsoft Robotics Studio
http://www.microsoft.com/robotics/
テムザック
http://www.tmsuk.co.jp/
ニュースリリース(PDF)
http://www.tmsuk.co.jp/admin_tools/data/070907_1.pdf
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( 森山和道 )
2007/09/07 19:09
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