1月18日、株式会社国際電気通信基礎技術研究所(ATR)と三菱重工業株式会社は、秋葉原ダイビルにある総務省委託研究「ユビキタスネットワーク技術の研究開発ユビキタスネットワーク制御・管理技術」プロジェクトの実験スペース「Ubila秋葉原ユビキタス実証実験スペース」にて、複数のロボットが連携・協調して人間にサービスを提供する「ネットワークロボット技術」の公開実験を行なった。
ATRのほか、株式会社東芝、日本電信電話株式会社、三菱重工業株式会社、松下電器産業株式会社は、平成16年度から総務省委託研究開発プロジェクト「ネットワーク・ヒューマン・インターフェースの総合的な研究開発(ネットワークロボット技術)」を実施している。今回の実験は、その一環としてデモされたもの。
なお、会場となった「ユビキタス実証実験スペース」については、昨年末に行なわれた研究室公開の記事を参照して頂きたい。
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ネットワークロボット実験の概要
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ロボットの認識技術と、プラグアンドプレイを実現するネットワーク技術がコア技術
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今回の秋葉原実験の概要
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今回公開された実験は3種類。1つ目はATRのコミュニケーションロボット(Robovie-II)による、案内ロボットサービスのデモンストレーション及びロボットの遠隔制御実験。石黒 浩氏らによる研究だ。
対人ロボットが公共空間で人間に対してサービスを行なうことが期待されているが、現時点のロボットのスペックではどうしても不十分である。十分にサービスを提供するためにはロボットの背後に様子をモニターしている人間がいて、必要に応じて介入できることが望ましい。いっぽう、ロボットに任せておいても十分サービスできる場合もある。よって、半分自律、半分遠隔操縦といったインターフェイス技術が必要になる。
また、半自律できるようになれば人間は1台のロボットに張り付く必要はなく、それぞれ違う場所でサービスを提供している複数台のロボットを同時に扱うこともできるようになる。
2つ目は、三菱重工製のロボット「wakamaru」と画像認識技術、そして東京大学森川研究室が開発した履歴情報を利用したレコメンデーション・システム「Synapse」の連携による、家庭内生活支援ロボットサービスの実験・デモンストレーション。
wakamaruのみならず部屋天井に設置されたカメラ画像からユーザーの動きを検出。場所、移動履歴、姿勢、手の位置・動かし方、顔の方向・動かし方など5つの基本状態を組み合わせて認識することで、行動認識を行なって、どんなサービスをどのタイミングで行なうべきか判断するというものだ。
また、ふだん家に帰ったときの自分の行動を振り返ってみれば分かるように、人間の行動はある程度パターン化している。その履歴を使えば、ある程度のサービス・レコメンデーションは行なえるのではないかというのが基本コンセプトだ。
3つ目は、NTTサイバーソリューション研究所によるネットワークロボット・プラットフォームを用いて、wakamaruやRobovie、そして「バーチャル型ロボット」と呼ぶソフトウェア・エージェント・タイプのロボットなどと、慶應義塾大学徳田研究室開発システム「u-Photo」の接続連携に関するデモンストレーションだ。
ロボットに付けられたマーカーを「u-Photo」で撮影することでイベントが駆動し、ロボットがサービスを開始する。実世界の物体に対して「写真を撮る」という行為を行うと、ネットワークを介して、その物体に対して働きかけが行なえるというものである。
ネットワークロボット・プラットフォームによって、それぞれのロボット、センサー情報が統合され、連携されているという点が味噌だ。各ロボットやセンサーからのデータはNTTの開発したXMLベースの記述言語「FDML(Field Data Markup Language)」でプラットフォームに送られる。FDMLでは、いつ、どこで、だれが、なにを、の基本4情報が記述される。そして慶應義塾大学・徳田研究室がサービスメタ情報をXMLで再帰的に定義して異機種間で情報を活用できるようにするために開発した記述言語「CroSSML(Domain-Crossover Services Markup. Language)」で表現され、サービス間をまたいで活用される、という仕組みだ。
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Robovie-II
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京都にあるATRから半遠隔操作されている
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解説するATR知能ロボティクス研究所の石黒 浩氏(右)と神田崇行氏(左)
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wakamaru
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天井カメラが移動体の動きを捉える
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u-Photoデバイスでマーカーを撮影してロボットに案内サービスを提供させる
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ユーザーの履歴から好みと思われるチャンネルを推薦する
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ネットワークロボット・プラットフォームを使ったデモの様子
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共通プラットフォームの仕組み
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なお、それぞれのデモンストレーションは、昨年行なわれたシンポジウム「人とロボットがつながる次世代電脳空間」などで行なわれたものと基本的には共通している。基本コンセプトは、異機種のロボットやセンサー、デバイスを共通プラットフォーム上で接続することで、情報システムが空間を超えて人間にサービスを継続提供することを可能にしよう、というものだ。
ATR知能ロボティクス研究所所長の萩田紀博氏は、自由度そのほか、ボディ構成の違うロボットを共通コマンドで動かす取り組み「RobovieMaker」や、各国でロボットのネットワーク連携の研究が始まっていることについて触れ、「いまはテキスト、音声や動画がネットワークを流れているが、将来はそれだけではなく、ロボット・コンテンツが流れるようになる」と語った。
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ATR知能ロボティクス研究所 萩田紀博氏
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「ネットワークロボット」の研究は他国でも行なわれている
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■URL
ATR知能ロボティクス研究所
http://www.irc.atr.jp/index-j.html
ネットワークロボットフォーラム
http://www.scat.or.jp/nrf/index.html
総務省:ネットワーク・ヒューマン・インターフェースの総合的な研究開発
http://www.soumu.go.jp/menu_02/ictseisaku/ictR-D/051020_2_1_1.html
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・ NTTコア技術シンポジウム「人とロボットがつながる次世代電脳空間」レポート(2006/11/02)
( 森山和道 )
2007/01/19 16:29
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