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NTTサイバーコミュニケーション総合研究所長 宮部博史氏
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10月31日、第4回NTTコア技術シンポジウム「人とロボットがつながる次世代電脳空間」が竹橋の学術総合センター一橋記念講堂にて開催された。主催はNTTサイバーコミュニケーション総合研究所とNTTサイバーソリューション研究所。
まずはじめにNTTサイバーコミュニケーション総合研究所長の宮部博史氏が「日本はこれまで技術立国として現在に至っている。まだロボットは大きな産業になっていないが、転換期にある。ネットワークにつながることで安全安心を社会にもたらせる可能性がある」と挨拶した。
● トークセッション1:人とロボットの距離感について(近い存在?/遠い存在?)電脳とロボットがつながる意味とは?
続けて、株式会社東芝研究開発センター技監の土井美和子氏と、ATR知能ロボティクス研究所所長の萩田紀博氏によるトークセッションが行なわれた。まず、両氏から講演が行われた。講演内容をまとめる。
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東芝研究開発センター技監 土井美和子氏
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東芝の土井氏はユビキタス・コンピューティングの紹介から話を始めた。インターネットや携帯電話が普及し、RFIDも普及しようとしている。また車の価格のなかで電子機器が占める割合は、今日ではハイブリッドカーだと47%にもなっている。PCではウエハの12%が使われているが、ハイブリッドカーにはウエハの96%、ほとんど一枚分の半導体が使われているという。見えない形で電子機器は普及しているのだ。
そのなかで考えなければならないのが、精神的、物理的な距離感だ。パーソナル・スペースという概念で知られるエドワード・T・ホールは対人距離を密接距離、個体距離、社会距離、公衆距離の4段階に分類している。この距離感は信頼関係を反映しており、信頼関係ができてくると、近づく。
物理的な距離はインターフェイスとはどういう関係にあるのか。土井氏はホールの図に加えて機器と対人距離感の関係を示した。携帯電話は近く、遠隔講義は遠いという。ではロボットはどこに位置するのか。ロボットは移動できるので物理的に相手との距離を変えることができる。これまでの機器は固定であることを前提とされていたが、自分で移動できるロボットのインターフェイス設計は違うものになるという。
東芝では2003年にROBODEXにてロボット情報家電のコンセプトモデル「ApriAlpha」を発表し、愛知万博では複数の人の声を聞き分けられる「聞き分けアプリ君」や追従機能を持つロボットを出展した。現在も研究を続けている。
物理的に移動するだけでは、お互いの距離感を詰めることにはならない。物理的に近くても精神的に遠い、という人間関係は、職場でもよく見る。ではどうすれば感覚的距離を詰められるのか。
赤ん坊は間違えても間違いを許される。東芝では、反復発話など幼児のように親和性を感じさせる動作を取り入れることで、間違いを許容してもらうことを狙っているという。実験の結果、若者はロボットが認識ミスをすると親和性に対してマイナスに評価するが、高齢者は比較的許容してくれるようになったという。音声認識率はユーザーの発声の多様性を学習していくことで上げていくようにしているそうだ。
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E.T.ホールによる対人距離分類と機器操作
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東芝のホームロボット開発経緯
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音声によるロボットを介した家電コントロールが目的
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床センサ、顔検出情報などを利用した実験の例
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反復発話など幼児の動作を取り入れてロボットに対する評価を上げることをねらう
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ATR知能ロボティクス研究所所長 萩田紀博氏
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ATR知能ロボティクス研究所の萩田氏は、ロボットはいわば「存在感メディア」であると話を始めた。マニュアル不要でアイコンタクトやボディコンタクトができる究極のインターフェイスだと述べた。また、大阪市立科学館でのデモの様子を見せた。まず簡単なゲームをやることで子ども達の集団をまとめて、別の展示にまとめて連れて行くものだ。このようなことができるメディアはロボットの他にはない。
ロボットは次世代のコミュニケーションメディア、存在感のあるパートナーになりえるという。ロボットは相手との距離感を縮めることができるのである。ではそれはどのような手法で実現できるのだろうか。重要な点の1つがアイコンタクトである。
萩田氏はロボビーによる視線の実験を見せて、実際に人間が視線を感じるようにロボットの視線方向を決めるためには、精度の高い人の位置検出が必要だと述べた。ただし精度を高くとはいっても数センチ程度である。
また対人距離は大人と子供、シチュエーションによっても変わってくる。距離感は不変ではなく、変化するものだという。
人間は柔軟なので今は人間がロボットに合わせている段階だ。これを人にロボットが合わせるようになることが目標だ。またロボットを受けいれる人はロボットに対する距離が近づく。
ロボットに対する愛着は出てくるのだろうか。それはモノに対する愛着とは違うのか。萩田氏は、英語をしゃべるロボビーを小学校に持っていったときの様子を示した。RFIDを個別の児童につけて認識し、名前を直接呼んで、英語で簡単な指示課題を行なったという。
最初はみんなロボットによってくるが、2週間経つとあまりよってこなくなる。存在感のあるメディアは人間の社会的モデルを反映させた導入を考えていかなければならない、愛着がわくかどうかは人間の社会関係モデルがヒントになると述べた。
現在は、ロボットが過去の履歴に基づいて話ができるようにすることで、距離感が変わるかどうか調べているところだという。30分くらい違う話がいろいろできると、愛着が持てる、徐々にその段階に入ってきたという。
ではネットワークはロボットに何をもたらすのか。いわゆるロボットであるビジブル型ロボット、エージェントであるバーチャル型、埋め込みセンサーを使うアンコンシャス型の3つをつないでネットワークロボットと呼んでいる。
このプラットフォームはユビキタスネットワークとも親和性が高い。ネットワークを使うことで、単地点サービスから多地点サービス、連携サービス、データベースを用いた履歴ベースのサービスが行なえるようになる。最後に萩田氏は、「RobovieMaker」を使って関節数の使うロボットを共通コマンドで動かすといった取り組みを紹介した。
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ロボットは目を合わせられる「存在感メディア」
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5cm程度であれば目があったような感じがするが、15cm程度だと視線がずれているように人間は受け取る
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対人距離は大人と子どもでだいぶ違う
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学校に英語を喋るRobovieを導入したときの様子。2週間経つとあまり寄ってこなくなる
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昨年のRobovieを使った実験の様子。履歴に基づいて喋る
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ネットワークロボット概念図
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ネットワークロボットによって、多地点サービス、連携サービス、データベースを用いた履歴ベースのサービスが行なえるように
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1つのコマンドで構造の違うロボットを動かすことができる
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2人の講演終了後、NTTサイバーソリューション研究所ヒューマンアプライアンスプロジェクト・プロジェクトマネージャーの下倉健一朗氏が司会で、トークセッションが行なわれた。テーマは人間とロボットの距離感、愛着。
2人の講演の共通キーワードの1つはアイコンタクトだった。土井氏は、通常のカメラとロボットの目として設定されたカメラとでは意識が違うと語った。萩田氏によるとそれは「情報のオンオフ」の違うによるのではないかという。普通の監視カメラは知らない間に撮られていて「オフ」ができないが、ロボットの場合、人のほうを見るというアクションによって「オン」になったことが分かる。
また、愛着については、土井氏は、一番最初の使いやすさが重要で、そのあとは人間が機械に合わせるのか、それとも人にあわせるのか、人間のほうも分からない、お互いに寄り添っていくことで愛着が生まれていくのではないかと述べた。
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NTTサイバーソリューション研究所ヒューマンアプライアンスプロジェクト・プロジェクトマネージャー 下倉健一朗氏
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人とロボットの距離感についてトークセッションが行なわれた。
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● トークセッション2:ロボットには個性が必要か? ロボットには感情が宿るのか? 人とロボットはどのようにつながっていくのか?
トークセッション2は、大阪大学大学院工学研究科 知能・機能創成工学専攻教授の石黒浩氏、Production I.Gの脚本家・櫻井圭記氏によって行われた。テーマは「ロボットには個性が必要か? ロボットには感情が宿るのか? 人とロボットはどのようにつながっていくのか?」。
最初にお断りしておくが両氏の講演内容は下記の本誌記事にそれぞれ重なっているところが多いので合わせて参照されたい。
・立花隆ゼミ、瀬名秀明×櫻井圭記対談を開催~人間と機械の境界を探るキーワードが乱舞
・研究者自身のコピーロボット「ジェミノイド」公開~存在感の実装を目指すアンドロイドが誕生
・等身大“コピーロボット”で存在感の本質を追求する~大阪大学 石黒 浩 教授
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大阪大学大学院工学研究科 知能・機能創成工学専攻教授 石黒浩氏
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石黒氏は、ロボットの見かけの問題がほとんど研究されてこなかったと指摘。娘のコピーロボットを作ったことが現在の研究に至るきっかけだったと講演を始めた。
石黒氏の娘のコピーロボットはほどん動かないがインパクトがある。見かけと動きを比べたときに動きと同じくらい見かけも重要だと石黒氏は考えている。今年は自分自身のコピーロボット・ジェミノイドも作った。
人の脳は人を認知するために、いわば「チューンナップ」されており、自然なコミュニケーションメディアをつくろうと思ったら究極的には人型であるべきだというのが石黒氏の考えだ。そこで人間のようにある程度動ける上半身とセンサネットワークによる知覚と見かけがあればコミュニケーションロボットのテストベッドになるだろうと考えて、NHKのアナウンサーをモデルにアンドロイドを製作した。ボディのシリコン皮膚の動きなどにはココロのノウハウが生かされている。
ハードウェアが人間らしい「見かけ」だとすれば、「動き」はソフトウェアの問題になる。人間は死なない限り完璧に静止することはなく、人間はその動きにものすごく敏感だ。また人間は同じように肩をたたかれたからといって同じように振り返ったりはしない。だから同じように振り返ったら人間ではないと思ってしまう。人間らしさに徐々に近づくと同時に、人間の奥深さに気づく経験をしているそうだ。
現在、石黒氏はコミュニケーション用途の世界では当面は自律型ロボットではなく、ハイブリッド型の遠隔操作型のロボットが主流だと考えていると語り、ジェミノイドのデモの様子をビデオで見せた。リアルなロボットができると、これまでにない実験ができるという。なお、「ジェミノイド」は実在人間のコピーで、かつその間が情報的に繋がっているものだと定義している。
石黒氏はジェミノイドを見たときの印象を「逃げられない鏡を見ているよう」で、また「ロボット上にプログラミングされた自分の動作を見ても自分だとは思えなかった」という。自分の認識している自分の動きと客観的な動きはだいぶ違うことを実感したそうだ。
ジェミノイドを使った研究ミーティングの様子も示し、5分程度あれば自分も参加者も対話に適応してごく普通にミーティングができるという。ある程度人間らしい形と、コンテンツがあれば、強い引き込みが比較的簡単に起きると述べた。
また、対話中に自身のコピーロボットが誰かに触れられると、メンタルに何かを感じるそうで、「確信を持って言えるが『何か』を共有している」と語った。
最近は哲学的なテーマにも迫っていけるのではないかと考えているそうで「われわれは自分で思っているほど客観的な自分と一致した自分自身のイメージを持っていない。ジェミノイドに簡単に適応してしまうことからも、心と体は結構離れていると思う。そのことがこういうロボットを通じて強烈に意識できるようになってきた」と言い、「それを考えることがコミュニケーションやメディアの本質を追求することに繋がるし、このような基礎研究が次の時代のメディアを変えることになるかもしれない」とまとめた。
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石黒氏が開発してきたロボット
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人間は対話相手を擬人化する
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不気味の谷を超えるためには工学的知識だけでは不十分
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半自律の遠隔操作型ロボットの概念図
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石黒氏が提唱するアンドロイドサイエンス
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別の人が操作するジェミノイドと対話する実験も行なっている
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Production I.G 脚本家・櫻井圭記氏
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Production I.Gの櫻井氏は、まず最初に2032年を舞台にしたSFアニメ映画「イノセンス」のプロモーション映像を見せた。「イノセンス」は「攻殻機動隊 GHOST IN THE SHELL」の続編で、人間は、なぜ人間に似せた人形を作るのかということをテーマにした作品だ。
携帯電話やロボットなどいまの技術をひとつの見取り図に収めるための考え方として、櫻井氏は「人称」を取り上げた。携帯電話やパソコンは「I」という一人称の呼称を使うことが多いという。またBMI(Brain Machine Interface)技術も進んできて、SF作品で取り上げられ続けてきた「電脳」も徐々に実現に近づきつつあるようにも見える。
いっぽうロボットは、ソニーAIBOに代表されるように、相棒=「他者」として認知されることが多い。つまり二人称だ。櫻井氏は、あるAIBOオーナーの「音声認識機能が無い初代AIBOと、その機能があり、自分の名前を呼んだらちゃんと認識できる2代目を遊ばせることは、初代が不憫でとてもできない」という意見を紹介し、マルクスの「資本論」を引きながら、たとえ勘違いであったとしても、いったん社会的に普及してしまったら感情移入は避けられないのではないかと述べた。
そして、一人称的な技術は、マクルーハンがいうところの「内爆発」であり、二人称的技術は、強いて言えば「外爆発」的なメディアと言えるのではないか、そしてITは三人称的メディアだと捉えられるのではないかと語った。
また、「攻殻機動隊」の脚本を書くときに参考にした本としてウォルター・J・オングの『声の文化と文字の文化』を挙げた。書き言葉が発明されると、人はあたかも書くように話すようになってしまった。いうなればオリジナルがコピーに影響を受けたのだ。メディアが発明されると、メディアに引っ張られる形で人間も変わる。ロボットも同じことが言えるのではないかという。
「ロボットが出てくることで人間のコミュニケーションも変わるのではないか。人間がロボットにどれだけ近づけるのかという問いもあっていいのでは」と櫻井氏は語る。
たとえば、ただのプログラムであるものに「コンピュータウイルス」という名前をつけたように人間は物事をアナロジーやメタファで置き換えて理解しようとする。ネーミングすることでわれわれの意識が変わるとも言えるという。
また、一人称の技術に対して、「4人称」の技術があるのではないかという。アイヌ語の方言の一つにもともとある概念に刺激を受けたもので、「we」と「they」を合わせたような人称概念だという。
「個」からなっているはずのインターネットのなかの議論が、あたかも集団全体の意志をもっているかのように、流れが一方向にできていく様子が見えることがあることから発想したものであるという。「インターネットは多様な意見が書き込まれる場であったはずが、実際はそうはなっていない。個々人とは別次元の位相の主体が垣間見えるような気がした」そうだ。
最後に「攻殻機動隊 S.A.C.」シリーズ最新作「Solid State Society」のプロモーション映像を見せて、「スタンドアローン・コンプレックス」の意味を解説した。
このタイトルには、2つの意味が重ねられているという。「スタンドアローン」とは、すなわち、いちおう独立している個々人のことで、それが集まっていること=コンプレックス(複合体)という意味がまず1つ目。もう1つの意味は、情報から独立し「スタンドアローンでいたい」と思いながら、いっぽうで、情報から隔絶されることの不安感や矛盾を抱えた心(コンプレックス)のこと、だそうだ。
「SFは、昨今は現実のロボット技術に追いつかれている感じがあるが、リアルに追いつかれないようにフィクションも加速するように頑張っている」とまとめた。
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内爆発と外爆発
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櫻井氏の語る「人称世界」のまとめ
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4人称世界の可能性
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トークセッションの様子
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講演後、続けてトークセッションが行なわれた。司会はNTTサイバーソリューション研究所長・小川克彦氏。小川氏は「攻殻機動隊S.A.C.」も見ているそうだ。会場からは「タチコマ」云々といった質問も出た。
「攻殻機動隊」の背景舞台は、別々の属性をもった「人型の存在」が混在する世界である。人型をしているのだが、中身は生身の人間だけではなく、半ば機械化したサイボーグであったり、生命を持っていない完全なロボットだったりする。
この世界で重要な概念が「ゴースト」である。ゴーストとは生物は持っているが、機械は持っていないものだとされている。このことに対して石黒氏は「研究と似ているかもしれない」という意見を述べた。どういうことか。攻殻機動隊の世界では、機械への置換などを通して人間からさまざまな要素をそぎ落としていく。そのなかで、最終的に置き換えきれない何かがゴーストであるとされている。いっぽう、石黒氏は研究のなかで、人間の本質とは何かということを、人間に似たロボットを作り、そこから要素を削り落としていくことで探っていこうとしている。そこが似ているというわけだ。
櫻井氏は、石黒氏とジェミノイドが向かい合って喋っている様子がすごく面白いと印象を語った。「あれを攻殻機動隊に引きつけて考えると、作中に登場するスーパーハッカー『人形つかい』みたいな感じかもしれない」と述べ、「人形使い」は操っていた人形(ロボット)を自分自身の身体の延長として感じていたのだろうと語った。実際、石黒氏も自分自身の延長として感じているそうだ。「自分の写真を切り刻まれたら嫌な感じがする」と例を挙げ、それ以上に繋がっている感じがするという。
会場からの質問では、毎日並列化を行なうため共通のソフトウェアを持つはずのタチコマ(ロボット)が個性を生じたことと4人称概念の関係や、タチコマであっても感情移入はできるので必ずしも人型がベストとは言えないのではないかというものが出た。
● デモセッション
最後に、「研究事例に見る人とロボットのつながり」をテーマに、「デモセッション」が行なわれた。デモそのものは別室で行なわれていたので、講演会場では技術背景が解説され、映像を中継する形で実演内容が紹介された。
まず始めにNTTサイバーソリューション研究所 主幹研究員 下倉健一朗氏が、先日リリースされたばかりの「メルロボ連絡帳」について解説を行なった。NECの「PaPeRo」と携帯電話を使ったコミュニケーションアプリケーションだ。平文からのキーワード抽出とコマンドへの変換、ユーザー管理技術、サーバーと連携したロボットサービス技術がポイントとなっている。詳細は本誌既報のレポートをごらんいただきたい。
ATRの荻田氏は「どんどんやったらいいのではないか。その結果問題点も見えてくる」とコメントを述べた。
続けて、バーチャルエージェント「手話ロボのシュー」が紹介された。バーチャルロボットのひとつで、電車内など公共交通機関内での情報提供、特に聴覚障害者の人を対象にしたアプリケーションだ。テキストだけを出せばいいではないかと思われるかもしれないが、それだけでは理解が不十分になってしまうことも多い。そこでバーチャルロボットに手話をさせることにしてテキストと同時に出すようにした。
実際に聴覚障害の人たちに見てもらったところ、CGによる身体的特徴については好評価を得たという。手話は文章ではなく簡単に単語だけを並べるかたちで実験をしている。現在、オンラインアンケートで意見を収集している。
大阪大学の石黒教授は「役に立つような気がする。ただ、立体感が足らない。だからアンドロイドのほうがいいかな(笑)」とコメントした。
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メルロボ連絡帳
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メルロボのシステム
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バーチャルエージェント「手話ロボのシュー」
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手話が分かりやすいようにデザインされている
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【動画】動作の様子
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ネットワークロボットについてはATR萩田氏が説明した。基本的には3つのタイプのロボット――バーチャル型、アンコンシャス型、ビジブル型を組み合わせて使うことで新たなサービスを生み出すことを目標とするものだ。それぞれのロボットが共通ネットワークにプラグインできるかどうか、それぞれ相互乗り入れすることでアップグレードできるのかがサービス共有では問題になる。
課題は大きく分けて4つ。3タイプが強調連携する技術、ネットワークにつながってコンテンツを安全安心にやりとりするための技術、行動・状況認識技術、状況を踏まえた対話技術だ。
現在、進められているネットワークロボット技術では、他のネットワークと相互乗り入れするために慶應義塾大学・徳田研究室が開発した記述言語「CroSSML」、そしてロボットから情報を吸い上げるためにNTTが開発した記述言語「FDML」を使っている点が味噌だという。
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ネットワークロボットの課題
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ネットワークロボット・プラットフォーム
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デモ全体
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デモされていたアプリケーションは、今年のCEATECで展示されていたものと同じで、徳田研究室の「u-Photo」で撮影することで、ロボットがサービスを提供するというもの。
まずビジブルロボットとしては、Robovieと、カメラとプロジェクターをひとつにしたロボットがある。また画面にはバーチャル型ロボットが、ブースで何をやっているかを解説している。床にはセンサーが置かれており、人が混んでいるかいないかがわかる。全てのロボットやデバイスはネットワークに接続されており、情報を共有して連携してサービスを提供する。
具体的には、ロボットに付けられたマーカを「u-photo」で撮影する。するとロボットがが写真を撮る(というサービスを実行)。そして少し離れたところにある、もうひとつのロボットを撮影すると、先ほど撮影した画像を映し出すというデモンストレーション。
同時に2つのキューが来たときにも干渉が起きないような仕組みがあり、あらかじめ設定したサービスとどのサービスがマッチングするか判断して提供することができるようになっているという。このような技術を背景にネットワークやロボットにかかわらずプラグインできるようになると、いろんなところで情報がやりとりができるようになる。現在、日本だけではなくEUもネットワークロボットのプロジェクトを立ち上げたそうで、今後は、どこの国に行っても使える仕組みの実現が期待されている。
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デモにおける情報の流れ
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Robovie
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床センサーは人の混み具合を検知する
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まずRobovieを「U-Photo」で撮影
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それを別のロボットが映し出す
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最後に、石黒氏がアンドロイドの解説を行なった。今回デモされていたのは娘アンドロイドと、万博でも活躍した「リプリーQ2」。人間は、人間っぽい形のものには人間っぽい動作を期待する。アンドロイドは究極のビジブル型ロボットと言えるという。
現在は遠隔操作となっているが、送っているのは声だけで、残りの動作や反応は自律機能による。自由度は42で、顔だけで13ある。顔をつつかれていやいやをする様子や、肩を掴まれて「なにをするんですか?」と振り返るシーンは会場でもうけていた。アンドロイドの技術は、安全なロボットを作るうえでも役に立つ技術になるのではないかという。
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ジェミノイドの遠隔操作
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センサネットワークを使った行動認識
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リプリーQ2(奥)と石黒教授の娘さんをモデルにしたアンドロイド
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最後に、NTTサイバーソリューション研究所長・小川克彦氏が「ロボットの応用は始まったばかり。櫻井さんらの映像は技術者の夢の一つだろう。ロボット技術をいろんな角度から見つめていきたい。皆さんのご支援をお願いしたい」と全体をまとめた。
■URL
NTTコア技術シンポジウム
http://waza.jp/
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( 森山和道 )
2006/11/02 01:03
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