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研究者自身のコピーロボット「ジェミノイド」公開

〜存在感の実装を目指すアンドロイドが誕生

ジェミノイドと、ATR知能ロボティクス研究所客員研究員で大阪大学教授の石黒浩氏
 7月20日、株式会社国際電気通信基礎技術研究所(ATR)知能ロボティクス研究所は、人間の持つ「存在感」の本質を理解して工学的に応用することを目的として、遠隔操作機能を有する実在人間型ロボットのプロトタイプ「ジェミノイド(Geminoid)」を開発したと発表した。

 ジェミノイドはこの研究の当事者であるATR知能ロボティクス研究所客員研究員で大阪大学教授の石黒浩氏と生き写しのロボット。ATRでは「実在人間型ロボット」あるいは「ドッペルゲンガー(Doppelganger)型」と呼んでいる。なおGeminoidとは、ふたごを意味する「gemin」と、「〜のような」を意味する「-oid」からの造語。

【お詫びと訂正】初出時「Geminoid」の語源について表記が誤っておりました。お詫びとともに訂正させていただきます。


ジェミノイド「HI-1(Hiroshi Ishiguro 1号機)」。研究当事者である石黒浩氏自身のコピーロボット 頭部。頭骨の形からコピーされており、生え際部分には石黒氏自身の頭髪も使われている 頭部正面。細かい部分まで再現されている

頭部側面 手先。プログラムによって微妙に動き続けている

【動画】ジェミノイド経由で挨拶する石黒氏 【動画】頭部の動き。会話の内容は「ジェミノイドが触られると自分が触れていると感じる」とのこと 【動画】触られて嫌がる石黒氏(ジェミノイド)

【動画】特に操作していなくてもプログラムである程度動き続ける 【動画】石黒氏自身とジェミノイド。「存在感」の研究について解説中

 ジェミノイドは46自由度を持ち、エアーコンプレッサーで駆動する。通信や電源のケーブルは尻の部分から出ており、椅子の軸部分を通して見えないように隠している。本体は石黒氏の全身を型どりしてコピーした。頭部は頭蓋骨の外形をMRIで撮像してコピーしたという。皮膚表面はシリコンゴム製である。本体を作製したのは株式会社ココロ。本体製作期間はおよそ半年で、ソフトウェアに2、3カ月程度かかっているという。

 実在の人間とロボット技術とを融合することで、人間の動作やしぐさ、外観をコピー。実際の人間の「存在感」を写し取って、モデルとなった人間が別の場所に同時に存在する、いわゆるテレイグジスタンスを実現する、あるいはそのためには何が必要かを探るテストベット・ロボットとして開発された。

 人間の存在感は人それぞれ固有のものである。コミュニケーションにおいては、対話相手が本人の情報を持っているかどうか、どんな相手と喋っているのかが重要なポイントとなる。つまりモデルとなる人物と、社会背景に関する情報が必要となる。

 一言で言い直すと、相手が誰であるかによって対話のありようが変わるということだ。「存在感は人と人との関係の間で問われるものである」と知能ロボティクス研究所ネットワークロボット研究室・主任研究員の西尾修一氏は説明した。ジェミノイドを使った存在感の研究においては、本人(モデル)の情報を被験者が持っているかどうかが比較的重要であるということだ。

 そこで各種比較実験の容易さや、どのように感じたかを調査しやすい知人や家族などを被験者としやすいことから、研究者本人である石黒氏をコピーしたという。

 今後、石黒氏自身の家族を含む人々と対面させて、反応を計測するなどして、人それぞれが固有に持つ存在感を醸し出させるためには何が必要なのかを探っていく。

 たとえば、仕草や声などを少しずつ足したり引いたりしていくことで、ジェミノイドの持つ存在感を変化させていく。そうすることで、何が石黒氏らしさを醸し出させているのか探り当てることを目的としている。ジェミノイドと被験者が対話したときと、モデル(本人)と対話したときとでどのような差があるのか、どの程度存在感は伝わるのか、また存在感が伝わることでコミュニケーションにどのような効果があるのかを検証していく。

 なお現時点の知能技術では、挨拶など定型化した応答ならば人工知能でも可能だが、機械が自然なコミュニケーションを行なうことは難しい。それでは人間の存在感の研究には不十分であると判断されたため、操作は遠隔操作で行なう。

 そのためATRではコミュニケーションロボット「Robovie」シリーズ開発を通じて得られた「異種ロボット動作の共通化研究」や「自然な対話動作生成」といったノウハウを活用して、人手による操作をシステムが補助する遠隔制御プラットフォームを開発した。もともと、本当に役立つコミュニケーションロボットを開発しようと思ったら遠隔操縦機能は必須だと考えていたのだという。


遠隔制御プラットフォーム。5台の赤外線を使ったモーショントラッカーで唇の動きをとらえてリップシンクする 操作者は、唇のまわりにマーカを付ける。やはり操縦者それぞれによって「らしさ」に違いが出るという 解説するATR知能ロボティクス研究所ネットワークロボット研究室・主任研究員の西尾修一氏

ジェミノイドを操作する石黒氏 目的は存在感の研究

 ジェミノイドは人間に似せたロボットであるため、会話を行なうときにはリップシンクが必要となる。そのため操作者は唇の動きをモーションキャプチャーするためのマーカを唇の回りにつけて、本体の動作をマウスで操縦する。現時点ではロボットからの触覚フィードバックなどはない。

 今後、より人間の動作そのものとシンクロする操縦インターフェイスや、床センサーそのほかとの組み合わせによる自然な対話動作の生成も検討されているという。人間の動作は相手がどのくらいの距離にいるかによっても異なってくるが、位置や距離を計測すれば、それに応じて動きを切り替えることも可能になる。視線や微小な動作の自動化も研究対象だという。


ジェミノイドについて解説する石黒氏 自分自身の身体の延長のように感じるという 記者とジェミノイド経由で対話する石黒氏。あちこちにコピーロボットがあれば出歩く必要がなくなるはずだという

 石黒氏は「ロボットを操作していると自分がそのロボットになったように感じる。ジェミノイドが触られると自分自身が触られたような感じがする」という。現在のロボットはあまり動くことができないが、その動きに、自分自身が合わせてしまうような感覚があるそうだ。

 また、これまでは他者から見て自分がどういう存在かということを自覚していなかったそうだが、自分自身では気づかない癖なども客観的に見ることができるようになったという。「内面と外面、身体と心を分離することは可能ではないか」と述べ、今後さらにATRでのこれまでの知見をいかしながら研究を進めていきたいと述べた。

 また現時点では石黒氏本人の存在感に焦点をあてた研究となっているが、将来的には、人の持つ存在感の研究へと一般化していくという。

 なお本誌では石黒氏へのインタビューを近日中に掲載する予定である。


URL
  ATR
  http://www.atr.jp/index_j.html
  知能ロボティクス研究所
  http://www.irc.atr.jp/index-j.html
  大阪大学石黒研究室
  http://www.ed.ams.eng.osaka-u.ac.jp/indexj.htm


( 森山和道 )
2006/07/21 02:50

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