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NECとNTT、子ども見守りシステム「メルロボ連絡帳」を開発

~PaPeRoが携帯電話と連携

 10月25日、日本電気株式会社と日本電信電話株式会社は、NECが開発した「パーソナルロボットPaPeRo」と、NTTサイバーソリューション研究所が開発した携帯電話を使ってロボットとやりとりができる「ActionSwitchプラットフォーム」を連携させた、新しい保護者参加型子ども見守りシステム「メルロボ連絡帳」を開発したと発表し、共同実験実施について記者会見を行なった。

 「メルロボ連絡帳」は保護者が携帯電話から電子メールを送信することで、PaPeRoに対して動作指示を行なうシステム。iモーションを使った動画送信、またはPaPeRoに写真を撮らせることで、ロボットと子どもとのコミュニケーション状況を遠隔地から確認することもできる。

 撮影された画像やテキストはサーバー上に蓄積され、保育士がブログ化することで保護者に伝えたり、コメント機能そのほかを使うことで、従来よりも密接な情報共有を行なうことができるという。


メルロボ連絡帳システムのメリット。従来よりも保護者が積極的に関われるという システム構成 PaPeRoにメールで動作指示ができる

 両社は今年11月~12月まで、世田谷区の幼児才能開花教育「まいとプロジェクト」と、南アルプス市の社会福祉法人「マコト愛児園」にて、共同実験を行なう。

 PaPeRoに歌を歌わせて、PaPeRoのボディに内蔵されたタッチセンサーを使って子供に拍子をとらせ、保護者がその様子を動画を見て評価するというシナリオ内容の実験になる予定だ。歌については、今回は、あらかじめセットされた4つの曲の中から保護者が選ぶ。保育園にはBフレッツ回線を引き、PaPeRoへのアクセスは無線LAN経由で行なう。また、保育士がPaPeRoを使って写真を撮影し、ブログを書いて情報共有する実験も行なう。

 すでにプレ実験を7月から実施しており、月に1~2日、1日2、3回、1回あたり2時間程度の実験を行なうという。実験を通して、アプリケーションそのものの需要や安心度、満足度、システム全体の使い勝手や耐久性試験を行なっていく。


プレ実験の様子 最初にPaPeRoから保護者にメールが来る PaPeRoにメールで動作のリクエストを送信

PaPeRoがサーバー経由でリクエストを受信し、歌を歌う 子どもはPaPeRoの体を触りながら一緒に拍子をとって遊ぶ PaPeRoはその様子を撮影

保護者は撮影された動画を見て評価をメールで返す 評価はPaPeRo経由で保育園に伝えられる リモコンを使ってPaPeRoで写真撮影することもできる

写真はサーバーに蓄積される 保育士が写真を見ながら連絡帳ブログを書く 連絡帳は親子で閲覧することもできる

【動画】パペメロ開始 【動画】メールを受信して「リクエストが来てるよ」と呼びかけるPaPeRo

【動画】リクエストで「山の音楽家」を歌うPaPeRo。ぐるぐる回っているのは4人くらいを対象にした動作モードのため 写真撮影用のリモコン。ZigBee搭載でPaPeRoそのものではなくサーバーに対してコマンドを送信する

 両者の共同研究は2004年末から始まったという。NECはNTTに対し、セキュアな情報通信基盤を期待し、NTTは人間とのインターフェイスとしてのロボット技術に期待しており、そのなかで託児・知育施設における保護者参加モデルを考案したという。ロボットとネットワークを介することで、保護者が従来よりも施設での活動に参加できるようになることを狙っている。

 今回のシステムには、NTTが開発した、文章からロボットに必要なキーワードを抽出してコマンドに変換する技術と、不正アクセスやロボット持ち去りによる個人情報漏洩を防ぎ、保護者のメールアドレス、対応する子供のID、ロボットのIDを一元管理する技術、そしてNECが開発したサーバーから指示を受信して動作に反映させていく技術を使った。

 外部サーバーからの情報によるロボット動作が可能になったことで動作のバリエーションが広がり、より親しみのわくロボットサービスが実現可能になるとしている。なおPaPeRoの動作はサーバーからのコマンドによるものと自律動作が非同期、すなわち並列に行なえるシステムとなっている。これにより、万一、サーバーとの通信が途絶しても、自律動作により子供とのコミュニケーションはある程度成立するようになっている。


NTTによるキーワード抽出技術が使われている 不正アクセスを防ぐセキュアな技術となっているとのこと ロボットが自律動作中でもサーバからのコマンドを受信して自然に行動開始できる

 NECメディア情報研究所所長の山田敬嗣氏は実験の背景について、子供や高齢者に対する見守りやサポートのニーズが高まっていること、ロボットの技術が高まっていることの2点を挙げ、ビジネスの可能性があるかどうか探っていきたいと述べた。

 名称については、ロボットがメールをやりとりできることからメルロボ、そして連絡帳化できることから「メルロボ連絡帳」と名づけたとNTTサイバーソリューション研究所 所長の小川克彦氏は語った。


NECメディア情報研究所所長 山田敬嗣氏 NTTサイバーソリューション研究所 所長 小川克彦氏

 似たようなアプリケーションとしてウェブカメラなどを使った定点監視があるが、それとは違って、子どもと一緒に遊べるエージェントとしてPaPeRoを使うことで、通常の監視とは違うアプローチができればいいという。ロボットであれば子どもの正面に自分で移動して回り込むこともできる。IT機器とのインターフェイスのひとつとしてロボットも考えられるので、さまざまな使い方の可能性も探っていきたいという。

 なお、今回の実験は短期間であることから、顔認識技術など個別に子どもを認識する技術は組み込んでいない。将来的に、個別の子供を認識するためには、RFIDとも組み合わせて使っていく可能性もありえるとの見方を示した。

 NECメディア情報研究所所長の山田敬嗣氏は、実用においては、技術的側面よりもむしろ、社会がロボットサービスを受容してくれるかどうかという問題のほうが課題であるという見方を示した。今後、このような実証実験を続けることで見極めていくことになるのだろう。


URL
  NEC
  http://www.nec.co.jp/
  ニュースリリース
  http://www.nec.co.jp/press/ja/0610/2503.html
  NTTサイバーコミュニケーション総合研究所
  http://www.ntt.co.jp/cclab/index2.html
  まいとプロジェクト
  http://www.might-project.com/
  マコト愛児園
  http://www.makotoaigien.com/

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( 森山和道 )
2006/10/25 17:12

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